初代勇者な賢者と嫁な女神、ハッピーエンドの後に新米勇者の仲間になる   作:ケツアゴ

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クルースニク外伝 ②

「……あー、眠いから忘れてたや。なんか助けを求めて来たし、そのコンドルモグラの子供から話し聞いといて。じゃあ、お休み」

 

「お、おいっ!?」

 

 レガリアさんは背中にしがみついていたモグラを降ろすと棺桶の中に入り込む。この人、一度寝たら中々起きないからな。夜行性だから朝になったら眠いってのは理解するけど、俺だって夜遅くに働いて眠いんだっての。

 

「ったく、もう体にガタが来てんじゃねぇのか? 未だ餓鬼だって小さいってのによ」

 

 レガリアさんの奥さんと娘は俺も知っている。仕事が無い日は家族サービスってのがレガリアさんのモットーだし、俺だって居候させて貰って居るからな。あのお転婆娘も俺をレリック兄ちゃんって呼んで懐いているしよ。……兄ちゃん、か。結局どっちだったんだろうな。

 

「モキュ!」

 

「ちょっと待ってろ。今、考え事を……うん? おい、まさかお前……」

 

 ズボンを引っ張られたので考え事を中断したんだが、俺の言葉に首を傾げる姿に猛烈に嫌な予感がした。そうだよ、このコンドルモグラって餓鬼じゃねぇか!

 

 コンドルモグラは小型犬程度の全長の二足歩行のモグラで、横穴だらけの広い空間を掘って生活する友好的なモンスターだ。コンドルの名前の通りに背中には翼があって知能も高い。何せ自分達の手で掘った穴から採取した鉱石やら金やらをドワーフ製の掘削の道具を交換したり、大人ならこっちの言葉を理解する位にな。

 

「モキュモキュ!」

 

「だから分かんねぇんだって……」

 

 何かを必死に伝えているのは身振り手振りで分かるんだが、如何せん俺には通じないし向こうにも俺の言葉は通じない。ったく、大人が出てこいよ、大人がよ。取り敢えず朝飯にするかと干し肉のサンドイッチを取り出したんだが、コンドルモグラがそれをジッと見ながら鼻を動かす。

 

「……ほらよ」

 

「モキュ!」

 

 少し分けてやったら何か鳴いてから食べ出したが礼でも言ってるのか? ったく、親は何してるんだよ、親は。

 

「まさか捨てられたんじゃねぇのか? おい、そうなら俺達と……いや、何でもない」

 

「モキュ?」

 

 元々言葉が通じないから俺が何を言ってもコンドルモグラは首を傾げるだけだ。まるでヌイグルミみたいな見た目が気に入って、俺も餓鬼の時はどんな生態なのかを調べたっけな。

 

 例え子供に何か問題があっても捨てず、親が死んだ場合は群れ全体で残された子供を世話するっつう絆の深いモンスターだ。なら、迷子か……巣に何か起きたかだな。

 

「まあ、俺は巣の場所は知らねぇが、あのドワーフの爺さんなら知ってるだろうから連れて行ってやるよ」

 

 干し肉をもう少し与えながら頭を撫でてみるとゴワゴワした感触が伝わって来た。まあ、フカフカな訳が無いよな。

 

「モキュ! モキュモキュ!」

 

 何かを伝えたいってのは必死に前足を動かして飛び跳ねている動きで分かるんだが、生憎チンプンカンプンだ。レガリアさんが話せたら良いんだが……いや、無理だな。幾ら何でもコンドルモグラと話せる筈が無いっての。

 

 

 

 ……っと、思っていたんだが、目の前の現実をそっちに置き換えたい。だってそうだろ。命の恩人で尊敬している人がモグラと談笑しているんだからよ……。

 

 結局、昼前に起きたレガリアさんにどうするか相談したんだが、返事は自分が情報を聞き出すって物だった。どうするんだって思ったんだが、まさか流暢にかいわをするとはな。……何でだよ!?

 

「モッキュッキュッキュッキュ」

 

「モーキュキュモキュ? モッキュ! ……レリック君、分かったよ」

 

 分からないで欲しかったぜ、助かったけれどな。ってか、コンドルモグラの言葉だなんて何処で覚えたんだよ!?

 

 

「この子の名前はモグルーだ。男の子だってさ」

 

「いや、それがどうしたよ……」

 

「え? だって名前を知っている方が助かるだろう? 何時までもこの子だのあの子だのって呼ぶのは大変だし」

 

「……そーだな」

 

 いや、理解はするぜ? レガリアさんが不思議そうにするのも当たり前だよ。でも、本当によ……。

 

 

 

「取り敢えずモグルーを預けに爺さんの所に行こうか。準備も必要だしね」

 

「……ああ、分かった」

 

 準備、その言葉とレガリアさんの目の色が変わった事で俺も気持ちを入れ替える。どうやら迷子のコンドルモグラを巣に送り届けてバイバイっては行かないらしい。準備っつったら一つだけ……戦いだ。

 

「なんかね、グリエーンにも遂に魔族がやって来たみたいなんだ。勇者選出の噂は聞かないし、今回はオレジナが出すからオジさん達がどうにかしないとねぇ」

 

 レガリアさんは懐から水筒を取り出して中身を飲み込む。真っ赤な液体が数滴だけ口元から垂れていた。

 

 

 

 

 それは昨日の昼過ぎの事、丁度レガリア達がドワーフの老人の所を訪問していた時の事だった。老人が住むのは近くに同族すら居ない辺境のトッテツ山の麓。彼が住む家の反対側の山の更に反対側には大きな横穴が開いていた。

 

 そこはコンドルモグラの巣穴。大柄な人が手を広げて楽々通れる程の大きさは一見すれば無駄であり、外敵を招くだけに思えるだろう。だが、ちゃんと理由は存在する。群れに所属するコンドルモグラの数は多く、外に出て物資の交換や餌の確保をする事も有るので大勢が一気に逃げ込む為に広いのだ。

 

「モーキュ! モーキュ!」

 

 雑食性で虫や小鳥を補食する事も有るが基本的に大人しいコンドルモグラだが、この日は警戒を示す鳴き声が巣の中に響く。角度を調整して声が響き易くなった内部にはその声が直ぐ様に全体に広がり、警戒の鳴き声が響いた方向とは別の方に向かって幾つかのグループに分かれながら逃げ出した。

 

「待て! 直ぐに戻って来い!」

 

 だが、猛々しさを感じさせる女性の声が続いて響き、壁に開いたコンドルモグラが入り込める位の大きさの穴から次々に顔を見せ始めたではないか。やがて壁に無数の穴が開く広大な空間に三人組の姿が現れる。何故か最初に警告を出したコンドルモグラを引き連れて。




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