初代勇者な賢者と嫁な女神、ハッピーエンドの後に新米勇者の仲間になる   作:ケツアゴ

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クルースニク外伝 ⑤

 私にとって、この世の男は全て好みなの。美醜も老若も人か獣かさえも関係無いわ。男であるだけで誘惑し、互いを貪り合うのに値する。

 

 彼もまた、私の好み。私の愛は大き過ぎるから大勢に分配する必要が有るの。だから彼も私の恋人になって貰って愛を受け取って貰いたかったのだけれど……。

 

(あらあら、凄いわね)

 

 男を誘惑し堕落させる。全ての男は私の魅力に敵わない。他に誰か愛する者が居たとしても、私への愛の前には無価値になるの。それが私の、レリル・リリスの力。この世で最も魅力的な存在が私。

 

 でも、彼は違った。初めて目にした瞬間から他の男と同様に気に入ったのだけれど、私を見ただけで恋に落ちない相手なんて初めてだったわ。だから言葉で誘惑してオマケでアイリーンだって付けたのに恋に落ちないだなんて……興奮するじゃない。

 

 だから裸を見せてあげたわ。私は全ての男を平等に扱う。人間もエルフも獣人もドワーフも魔族も獣も。皆、大切な恋人。でも、貞淑な私は簡単には体を許さない。私を喜ばせてくれたなら、どんなプレイだって受け入れるわ。でも、恋人ってだけじゃ駄目。

 

(私、そこまで軽い女じゃないもの。恋人とは先ずピュアなお付き合いからよ)

 

 でも、彼は別。燃え上がちゃったもの。責任取って最後の一滴まで絞り出して貰うわ。どうせだったらアイリーンも混ぜようかしら? 嫌がるだろうけれど、大切な部下と一緒に楽しみたいもの。彼にはその価値が有るって分かるわ。

 

 私に恋をしているのにその場で跪いて脚を舐めさせて欲しいと懇願しないなんて滾っちゃう。……そんな風に思っていたのに、彼の価値は私の予想を超えていたわ。

 

「……もう良いでしょう。此奴には食べる価値も無い。死体を晒して腐り果てなさい」

 

 アイリーンは私の忠臣。女の子だけれど、その価値が有るから傍に置いているの。だから普段は私に暴言を吐く事も有るけれど、私への暴言は許さない。

 

 ……さっきの色ボケセクハラ上司ってのは幾ら何でも酷いと思うけどね。貴女の言葉には寛容な私だけれど、帰ったらお仕置きしましょうか。

 

 

「そう。じゃあ、頑張って」

 

 もう今の時点で合格だけれど、此処まで来たら最大まで価値を発揮してちょうだいな。危なくなったら止めてあげるし、私の愛も沢山あげる。私はアイリーンが彼を殺そうと襲い掛かる姿を楽しみだと感じていた。

 

「らぁっ!」

 

 彼の拳がアイリーンの顔面に叩き込まれる。微動だにせず、当然無傷。蹴りも、手刀も、ミスリルの鎖を巻いた手での殴打だってアイリーンには一切通じない。アイリーンが口を少し動かしただけで鎖が消え去ったわ。相変わらず食べるのが好きね。武器を失った彼はそれでも闘志を衰えさせずに拳を振るう。でも無駄ね。

 

「もう満足かしら?」

 

「ぐっ!」

 

 無造作に伸ばしたアイリーンの腕は彼の拳撃を弾き飛ばし、首を掴んで持ち上げる。どれだけ暴れても腕は外れず、ミシミシと肉と骨が軋む音が聞こえたわ。さて、もう止める頃ね。その後は押し倒して私の魅力に溺れて貰えば私の恋人が一人増える。

 

(ああ、楽しみね。あの反抗的な態度が従順になって私の愛えお求める姿が。アイリーンみたいに椅子にしてあげようかしら?)

 

 だけど私は止める事が出来なかった。突然吹いたオレンジ色の突風。その正体は見えたわ。見えたからこそ私は動けず、アイリーンの腕は肘から先が切り落とされる。地面に落ちて激しく咳き込む彼とアイリーンの間に彼女が入り込んだ。

 

 

「はいはい、選手交代よ。此処から先はこのナターシャが相手をするわ」

 

 ナターシャ、その名を私は知っている。彼女の顔に見覚えがある。持っているナイフだって名前も力も知っている。三百年前の魔王様から受け継いでいる記憶に存在する相手。初代勇者の仲間の一人が私の前に姿を現した……。

 

 

「……帰りましょう。此処は痛み分けでどうかしら?」

 

「別に良いわよ? 私だって貴女相手は面倒だし?」

 

 互いに笑みを浮かべているけど牽制しあう。でも殺気は隠さない。見た目と違って敵意しか無い。……可愛い子だから傍に置きたいけれど仕方無いわよね。

 

「レリル様っ!? 私は戦え……きゅう」

 

 腕を押さえて吼えるアイリーンを眠らせ、転がった腕を拾い上げる。ああ、怖い怖い。彼の方は少し情報を得たから手を出さないっぽいけれど、彼女の方は隙有らばって所ね。私も此処で背中を見せれば殺す所なのに……。

 

 首を狙えない事もなかったけれど、そうしたら間違い無く私と戦いになるからって腕だけにしたって所かしら?

 

「じゃあ、次会う時はベッドで楽しみましょうね」

 

「嫌だ!」

 

 私がウインクと投げキッスをしたのに酷いわね。ちょっと傷付いちゃった。……そんな無碍な態度も興奮するじゃないの。

 

「あら、残念」

 

 でも今の内よ。絶対に貴方の心を射止めて私の愛の奴隷にしてあげる。私はアイリーンを抱えたまま転移したのだけれど、大切な事を思い出したわ。

 

 

「……あっ。名前聞いていなかったわ。まあ、良いでしょう。あの子なら何か有っても生き延びそうだし」

 

「へぇ。面白い子に会ったらしいね。私にも詳しく教えて欲しいね」

 

 此処は私の居城の一つなのに何故か背後から聞こえて来たのは同僚であり、唯一私と同格のリリィ・メフィストフェレスの声。可憐な少女の姿をしていても、弱いって理由で仲間を虐げる少し困った子なの。私の部下の中にはリリィを嫌う子が少なくないわ。

 

 そんな彼女は私が慌てて帰って来た様子やアイリーンの姿に随分と興奮して目を輝かせている。この子、強い相手と戦うのが好きで、どうせ死ぬなら格上と戦って敵味方に莫大な損害を与えて死にたい、そんな物騒な事をうっとりしながら言うのだから変な子ね。どうせだったら恋人の十人や二十人を作って、時よ止まれ、お前は美しい……とか囁いて貰うとかないのかしら?

 

「ヒ・ミ・ツ。あの子達は私が貰うわ」

 

「ケチだね。まあ、良いや。ちょっと心当たりが有るからね。勇者の仲間の子孫が受け継いだ武器を使いこなしているって報告が有ったんだ。是非とも放置して今より強くなって貰わないと困るよ」

 

「相変わらず困った子ね」

 

「君だって同じだろう? ……あっ、そうだ。君の部下の中に数名欲しいのが居るのだけれど構わないかい? ちゃんと私の部下から同じだけあげるからさ」

 

「駄ぁ目。私の部下は私の部下よ。我慢しなさい」

 

 本当にリリィったら唐突なのだもの。あれじゃあ側近のビリワックも苦労してそうね。断られた事で頬を膨らませて不平不満を示すリリィだけれど、私は人差し指で突っついて空気を抜く。こうやって見ているだけなら可愛い女の子なのに……。

 

 

「ねぇ、リリィ。今から私のベッドに来ない?」

 

 そんな可愛い子をベッドに誘わないだなんて失礼よね、常識的に考えて。逞しい男や美形な優男も好きだけれど、可愛い女の子も大好きだわ。この子がベッドの中でどんな顔をするのか凄く興味が……あれ? 何時の間にかリリィが居ないわ……あれぇ?

 

 

 

 

「……相変わらずだなぁ、彼女。あれじゃあアイリーンも苦労してそうだよ」

 

 

 

 

 

 

「……不覚! 人間如きに腕を切り落とされるだなんて!」

 

 翌日、切り落とされた腕はくっつけたのだけれど、アイリーンは余程ショックだったみたいね。テーブル一杯に並べられた料理を次から次へとやけ食い……じゃなくて何時も通りだわ。

 

「牛の丸焼き追加!」

 

「まだ食べるの? ……レリル様。僕、仕事の打ち合わせがあるんだけどさ」

 

 アイリーンの食欲は凄まじいもの。下級魔族の子達じゃ配膳が間に合わないからってこの子がやっているのだけれどお人好しよね。私と入ったベッドの中では凄く激しいのに。

 

「あらあら、大変ね、スカー。中級魔族の仕事じゃないでしょうに」

 

 服の上からでも分かる筋肉。触っているだけで興奮して来るし、アイリーンには悪いけれど……。

 

 

「……次ぃ!」

 

 あっ、駄目だわ。これでスカーを連れて行ったらアイリーンがキレるわ。誘うのは別の子にしようっと。

 

 

 

 

「牛の丸焼き追加ぁ!」

 

 

 

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