初代勇者な賢者と嫁な女神、ハッピーエンドの後に新米勇者の仲間になる   作:ケツアゴ

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ツンデレ男と乙女心

  人はふざけている時と真面目で真剣な時の二つが有るわ。何処かの使い魔だって偶に……本っ当に偶にだけれど真面目な態度を取る事が有るもの。真剣だと思わせて直ぐにギャグに走るけれど。だけど、此処まで真剣な眼差しで正面から見詰められるのは本当に久し振りね。

 

「頼むから聞いてくれ。俺は変態じゃねぇ。ミニスカセーラー服に関しては忘れろ。マジで頼むから……」

 

「え、ええ……」

 

 私が休暇で遊びに行っている間に仲間として同行する事になったレリックさん。初対面の時は乱暴な物言いで少し怖い人に見えたけど、二度目の時はアンノウンの悪戯で変態扱いしちゃって、その後少し話したらぶっきらぼうなだけで優しい人だとは思ったけど……。

 

 私の両肩に手を置き、ジッと目を見てくるレリックさん。会って間もない人なのに何故かもっと前から知っている気がしたわ。それこそ小さい頃に話し掛けられた気もするし、顔だって何処かで見た気がするの。でも、何処で何時だったかは不明だわ。

 

「っつーか、どうなってるんだ、あのアンノウンって奴は……」

 

「えっと、慣れるしかないと思います」

 

 何処か遠い目で呟いた内容に私は察する。私が居ない間、アンノウンの遊び相手って消去法でレリックさんしか居ないって事を。だって賢者様と女神様には悪戯しないもの、基本的に。私も苦労が顔に出ていたのか少し同情した目を向けられるけど、変態っぽい服装をさせられた事は無いしレリックさんよりはマシよね。

 

 ……あれ? これって被害がレリックさんにも向かって私の負担が減るパターン? って、駄目よゲルダ。他の人が苦労するにを安心するなんて。心に芽生えた黒い思いを追い払おうと頬を挟むように手で叩く。レリックさんに変な子だと思われていないかしら。

 

「……何やってんだ?」

 

 怪訝そうな、もしくは心配する様な視線から目を逸らす。うん、普通は自分の頬を急に叩き出したら変に思うわよね。

 

「えっと、秘密です」

 

「そうか。なら、別に良い」

 

 言えない。貴方が苦労すれば私の苦労が減って嬉しいと思ってましただなんて正直に言える筈が無いわ。我ながら苦しい誤魔化しとは思ったけれど追求されずに助かったわ。

 

「おい、そろそろ飯だと言ってたから行くぞ。……それと賢者様やシルヴィア様達へのと同じ言葉遣いで良い。兄妹……じゃなくて家族みたいなもんだろ、仲間って。変に気ぃ使うな」

 

「……そう? なら、そうさせて貰うわね、レリックさん。……あっ!」

 

「……どうした?」

 

「ちょっと思い出した事が有って。気にしないで」

 

 そうだわ。レリックさんってちょっとお父さんに似てるのよ、目の辺りはお母さんかしら? うーん、もしかしたら遠い親戚なのかも知れないけれど……。

 

 何せお父さんの出身世界はちょっと特定の種族への蔑視が強かったり、特権階級の中身が腐っているって楓さんが言ってたし、お父さん達も故郷については話したくないって感じだった。なら、関係有っても下手に聞き出すのも嫌な思い出に繋がる可能性が有るわね。それに知らなかった親戚と偶然会うなんて低確率がそうそう起きないわよね。

 

 馬鹿馬鹿しい考えを止め、私はレリックさんと一緒に賢者様達の所に向かう。今日のお昼ご飯は何かしら? お肉だったら嬉しいわ。

 

 

 

「おや、楓さんと会ったのですか」

 

「ええ! それで招待を受けてソリュロ様と一緒に色々な遊びを体験したわ!」

 

「楽しかったなら何よりだ。それで昼からはどうする? 体を休めるのか?」

 

 お昼ご飯を食べながら休暇中の話をしたのだけれど、こうして旅の話をするだけでも楽しいわね。この救世の旅も何時かは笑って話せる日が来るのかしら? 賢者様と女神様は私の話を笑顔で聞いてくれていて、レリックさんは無言で鶏肉のソテーを食べていたのだけれど楓さんの名前に少し反応したわ。

 

 ……うん、矢っ張りパップリガと関係が有るのね。楓さんと同じで白神家に関わるなって忠告してくれたし。私がちょっと気になってレリックさんを見ていると、何を思ったのか鶏肉のカリカリに焼けた皮の付いた美味しい部分を切り取って私の皿に乗せて来た。くれるのかしら? お肉だって分厚くジューシーな部分で嬉しいけど……。

 

「……要らねぇのか? アンノウンの野郎が『ゲルちゃんは育ち盛りだから食い意地が張っている』っつってたぞ」

 

「……張ってないです、多分」

 

「多分とか言ってる時点でな。……良いから食っとけ。俺は適当に買い食いにいく予定だったから多少減っても構わないからよ」

 

 アンノウンったら本当に失礼ね! 私が居ない間にレリックさんに何を吹き込んだのか分かったものじゃないわ! 聞き出そうとしても無駄でしょうけど一言文句を言おうと立ち上がって周囲を見回すけれど何時の間にか姿を消している。

 

「おい。食事中に立つな。ほら、座っとけ」

 

「はーい」

 

 レリックさんに怒られちゃった。私に注意したレリックさんの手が頭に乗って私を座らせる。ちょっとだけ身の上話を聞いたのだけれど世話になってる人の所にも私と同じ歳の女の子が居て相手をしていたらしいし、扱いに慣れているのかしら? 差し詰め妹の世話を焼くお兄ちゃんって所ね。……ちょっとだけ羨ましい。私も兄弟が欲しかったもの、まあ、そうしたら村の皆に頼る事が更に多かったのでしょうけど。

 

 ……違うわね。私、一緒に居てくれて守ってくれる人が欲しかったのよ。近所のトムさん達は親切にしてくれたけど一切気を使わずに済むかって言うと別だし。だから上の兄姉が欲しかったんだわ。そして出来れば頼りになるお兄ちゃんが……。

 

「お兄ちゃんかぁ……」

 

「……」

 

 レリックさんは今度は私の呟きに反応せず、私は深く腰掛ける。物凄い大きなオナラみたいな音が私のお尻の下から響いたのはその瞬間だった。ええっ!? 私、オナラなんてしていないわよっ!?

 

「……腹でも下したか?」

 

 レリックさん、止めてっ! そんな真剣な眼差しで心配されたら余計に恥ずかしいから! 思わず身動ぎすれば更に鳴り響くオナラ。……あれ? もしやと思って立ち上がり、手で椅子を押せば更に鳴る。しかも一回毎に微妙に違うオナラの音が。

 

 謎は全て解けたわ。この事件、乙女の尊厳に掛けて必ず犯人を当てて見せる!

 

「なんだ、テメェが屁をぶっこいてるのかと思ったぜ」

 

「レリックさんは少しデリカシーを持つべきだと思うの」

 

「……おう」

 

 余計な事を呟いたレリックさんを軽く睨み、鼻を利かせて臭いを探る。漂う方向に視線を向ければドアの隙間から此方を覗く目と視線が合わさった。

 

 

「アンノウーン!!」

 

 あーもー! この遣り取りは久し振りね! ……でも、私は逃げ出したアンノウンを追い掛けない。だって……。

 

 

「甘いわよ!」

 

「あ痛っ!」

 

 予め掴んでおいたフォークをテーブルの上に投げれば空中で跳ね返り、私の鶏肉のソテーを狙っていたアンノウンが姿を現した。ふふん! アレが囮だなんて見え見えなのよ。さて、食事中だし、さっさと食べてしまいましょうか。

 

「アンノウン、机の上に乗っては駄目ですし、ゲルダさんの椅子に仕掛けた悪戯だって食事中に相応しく有りませんよ」

 

「はーい。ゲルちゃん、ゴメンね」

 

「もう慣れたし別に良いわ。どうせ後で女神様のお説教が待っているもの」

 

「えっ!?」

 

 恐る恐ると言った様子で女神様を見るアンノウン。女神様は静かに微笑みながら拳を鳴らしていたわ。……所であれってどうやるのかしら? 私も一度鳴らして見たいのだけど、鳴らせた事が無いのよね。

 

「……何か凄ぇな、色々と」

 

「大丈夫よ、レリックさん。私も慣れたから。……少し時間が必要だけれど」

 

 経験者としてレリックさんにエールを送りましょう。それにしても第一印象とは全く別の人ね。態度がチンピラだけど本当は優しい人っぽいし、これから一緒に旅をするし、もっと知っておく必要が有るわよね。

 

 

「ねぇ、レリックさん。後で行くって言ったお出掛けにご一緒しても良いかしら? 私もちょっと出てみたいの」

 

「勝手にしろ。邪魔しなきゃ別に構わないからよ」

 

 うーん、素直じゃない人ね。……さてと、何を見て回ろうかしら? 戻る最中に聞いたのだけど、確か小さなドラゴンを連れた子供とピエロのコンビが広場で見せ物をしているって話だったし、気になるわね。どんな見せ物なのかしら?

 

 




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