初代勇者な賢者と嫁な女神、ハッピーエンドの後に新米勇者の仲間になる   作:ケツアゴ

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ツンデレとロリコン 人助けに行く 中

「こんなんで目的地にマジで着くのかよぉおおおおおおっ!?」

 

 前後左右に振り回されて、さっきまでの絶景の余韻が完全に吹き飛んじまった。まあ、こんなんで舌は噛まねぇが、流石にずっと続けば吐きそうになるな、こりゃ。担々麺を食ってたら実際吐いてたっつうーか、こんなのに乗せる予定だったら直前に食い物勧めるなやっ!

 

 思い出すのは鳥トンの野郎が言っていやがった事。要するに大義名分やら自分を正当化する理由が有れば、他人を苦しめても問題無いって糞みたいな話だ。

 

 んで、今回の件はあくまで俺が自分の意志で飯を食った後(実際はギブアップしたが。ありゃ人間が食うもんじゃねぇよ)、自分の意志で食い物を食ってたらゲロ吐くだろう移動方法で目的地に向かったって事になる。彼奴は存分に正当化するだろうよ。あくまで俺の意思を尊重したまで、とかほくそ笑みながらな。

 

 例えそれが俺が断れない内容だったとしてもだ。あんな性格破綻者がリーダーだなんて他のキグルミ共には同情するぜ。……まあ、他の連中も鳥トン同様にアンノウンが気に入ったのを集めたって話だし、似たり寄ったりな気もするがな。なら、同情するだけ損か? 損だな、うん。

 

「……おい、そろそろヤベェぞ」

 

 上下左右構わず激しく動き回る風船は俺達をぶら下げたまま地面に向かい、足が掠る寸前に上に向かって行くんだが、かなりの量の空気を吐き出したからか萎んでいやがる。今は上へ上へと向かっているし、こんな体を固定された状態で高い所から落ちたらシャレにならねぇ。

 

「……うへ?」

 

 だが、風船が萎んで落ちるより前にプツンと糸が切れる音がして、実際に遙か上空で俺達をぶら下げている糸が切れたんだ。そのまま何処か遠くに飛んで行く風船。俺達二人は無慈悲に落ちて行く。

 

「あの糞野郎、今度会ったら絶対にぶっ殺すっ!」

 

 俺は未だにハッキリ見える距離にある町の酒場があるだろう場所を睨む。大規模魔法が使えるならぶち込んでやりたい気分だ。

 

「!!」

 

 黒子も賛同しているし、今はこの場を切り抜けて酒場に戻る為、俺は懐から札を取り出そうとするが入っていない。

 

「……ヤベェ。ちょい飲みの予定だったから飛行に使えるの持ってなかった……」

 

「!?」

 

「おい、黒子っ! お前の所のリーダーはどうなってんだっ!? ついでに一番上のボケ使い魔は本当にどうなってんだよっ!?」

 

 思わず心の底からの叫びが出て、それに対して黒子はどう反応したかってーと……。

 

「……」

 

「いや、さっきは喋っただろうがっ! もう一度喋れやああああっ!!」

 

 俺の叫びに対し、黒子は先程と違って黙して語らず。喋る余裕が残ってないって可能性も有るが、思わず喋っただけであの慌てようだ。敢えて喋らないって可能性も有るな。……にしても変な奴だぜ。黒子の格好をしながら目立ちまくってる癖に、黒子らしく全くの無言に徹しようとかよ。

 

「お前、どうしてそんなのを貫いてるんだ? 全く意味が分からねぇんだが」

 

「……」

 

 背中併せな上に沈黙で答えられたので判断は出来ないが、体を固定するベルトが繋がっているからか少しうなだれたのが伝わって来る。もしかして本人も意味不明だと思ってるのか? 

 

「ったく、アンノウンの野郎、何の意味が有って……意味なんて特に無くて、その場のノリで喋らないキャラ付けをしたんじゃねぇのか?」

 

「……」

 

 相変わらず無言だが、何となく俺の予想に賛同しているのが伝わって来る。……此奴にだけは同情してやっても良いんじゃねぇのか? っと、考え事してる場合じゃ無ぇか。さっさとベルトを外さねぇと着地が不安だ。

 

 下を見れば結構な高さで、下手すりゃ足を挫きそうだ。そしてパンダの頭の形をした風船が大きな口を開けて待ち構えている。ああ、胴体だけだった理由はアレだな。そんな風に何処か諦めながら口の中に視線を向ければ地上とは全く違う光景が広がっている。何処かの島で、建設途中の巨大な砦で建設するには少ない人数が作業している。

 

「成る程な。風船の口の中を通って転移するから風船式移動術か。……最初の風船での飛行の意味は有るのかよっ!? 無いんだろうな、どうせっ!」

 

「……はぁ」

 

 背後で諦めて切った奴の溜め息が聞こえ、俺達は砦の上空に転移した。その時に見えたのは兎の耳と額に角を持つ魔族の女と、其奴に腕一本で宙吊りにされている女。十代半ばにギリギリ入った程度のキリンの獣人だ。案の定、魔族の女は手を離し、当然のように其奴は落ちて行く。その時、ベルトを斬る音と共に黒子が躊躇無く飛び出した。

 

「ありゃ放置で大丈夫だな」

 

 足手纏いにはならないと聞いてたが、黒子は脅威の脚力で水平の壁を真下に向かって駆け抜けて女に追い付く。あっちを放置して良いなら、俺の仕事はこっちで魔族の相手をする事だ。空中でベルトを引き裂いて着地。目の前にドロップキックが迫っていた、

 

「お前達の存在なんて丸分かりだったピョン!」

 

 どうやら兎の耳は伊達じゃなく、現れた時には既に俺達の存在に気が付いていたらしい魔族の先制攻撃を見た俺は驚く。いや、先に言っておくが先手を取られた程度で俺は動揺なんかしねぇ。その程度、驚くに値しないからな。俺が驚いたのは魔族の服装が関わっている。ノースリーブのシャツにミニスカだったんだが、パンツが見えたから驚いたんでも無い。これでもそれなりに女を抱いてるんだ。今更パンツが見えた程度で驚くかよ。

 

「ノーパン……」

 

「あぁっ!? しまったっピョンッ!? トイレの後で脱ぎっぱなしだったピョンッ!?」

 

 咄嗟に差し込んだ腕に足の裏が触れる瞬間、俺は呟いた。そう。魔族の女はパンツを穿いていなかった。ピッタリと足を合わせてのドロップキックだが、それでも見える物は見える。まさか敵の股ぐらを至近距離で見るなんて思ってもみなかったし、相手も何処かの女みてぇなノーパン主義じゃなかったのか動揺を見せ、互いに動きが乱れた。

 

 防御の腕と攻撃の足のせめぎ合いは数秒間拮抗し、俺が数歩分後ろに下がる結果となった。

 

「……ちっ! 途中で乱れてこれかよ。まあ、俺もちゃんと踏ん張ってなかったがな」

 

 此処は重要だ。だって俺だって万全の構えで防御した訳じゃ無いし、一方的に負けたとは言えないだろ。次だ、次。お互いお試しみたいなもんだし……ん?

 

 一瞬、嗅ぎ憶えの有る臭いが鼻に届く。遠い記憶の中、忘れ去りたいが忘れる事は許されない記憶。俺が家族を失った日にも嗅いだ体臭だ。

 

「……今は敵に集中だ。上の空の上に素手で戦うにはキツい相手だろうが」

 

 そうだ、今は敵だけを見ておくべきだと俺は構えを取り、魔族の出方を窺う。涙目でプルプル震えながら俺を睨んでいた。

 

 

「よ、よくもラビト様の大切な所を見たピョンねっ! ダーリンにも未だ見せてないのにどうしてくれるピョンッ!? てか、何者だっピョンッ!」

 

「勇者の仲間だよ、これでもな。てか、お前が勝手にノーパンでドロップキックなんかしたんだろうが」

 

「嘘付けっピョン! なんで勇者の仲間がキグルミ姿で出て来るっピョン!」

 

 ……そんなの俺が知りたい。どうして俺はモグラのキグルミ姿で魔族と相対してるんだよ……。

 

 

 

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