初代勇者な賢者と嫁な女神、ハッピーエンドの後に新米勇者の仲間になる   作:ケツアゴ

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大熊猫と黒子の事件簿 ~六美童密室っぽい殺人事件~  ①

 六美童(ろくびどう)、それが街の人達の話題の的になってる人達だとアンノウン様から聞かされた。何でもオットロの街を治める領主様は何と言うか、色々とご盛んな方らしくて奥さんとお妾さんの六人が同時期に男の子を産んだらしい。その上、面倒な事に一ヶ月も間が開いていない正式な奥さんの息子が一番遅れて産まれたものだから少し跡目争いっぽくなっていて……。

 

「最初は街の多くが子供達に同情していたってさ。長男がどうとか跡取りがどうとか、そんな理由で周囲の大人達が争う姿を見て育つなんて可哀想だってさ。オンリーワンな使い魔の僕には無関係な話だけどね」

 

 領主の所の跡目争いに対して子供の心配をする事に驚くけれど、よく考えればエルフが気の良い体育会系の世界だった事を思い出す。殆どが漁師になる種族らしいけれど、海に接していない街だからかエルフの姿はそれ程見ない。……この世界に来てから、男女共に日焼けした筋肉の塊みたいな人達ばかり擦れ違っていたから新鮮な気分がした。

 

「何でも成長した六人はタイプの違う美少年だらけらしくて、ファンクラブみたいなのが結成されたんだってさ」

 

 だから……六美童? そんな噂になりそうな人達が注目されるのに違和感は感じない。例えば豪傑揃いのエルフだらけの街ならば見た目の美しさで注目されるのに違和感が有るけれど……あれ? 思い出したんだけれど、この街って神殿を中心にした信仰心の深い人達が参拝に訪れる場所じゃなかったのかな? ちょっと違和感が。浮ついてるって言うべきか……。

 

「自分で望んで移住した人なら兎も角、二世三世になれば信仰心が薄いのも出て来るし、参拝者目当てに店を開いた商人の家系とかが増えてるんだよ。まあ、信仰心じゃ腹は膨れないからさ。神頼みとか君もしない方が良いよ?」

 

 えっと、確かアンノウン様って大勢の神様の悪乗りで創られた存在だった気がするんだけれど……。

 

「そうだよ? それで、それがどうかした? そんな事よりも街の端を見てごらん。大きな屋敷が六つ有るでしょ? それぞれに六美童が一人ずつ住んでいるのさ」

 

 いえ、何も……。僕はこれ以上は何も言わない(喋ってないけれど)で言われるがままに街の端をグルリと一周目で見渡せば確かに六つの屋敷。六色世界の色にしているらしく、それぞれやねの色が違っていた。

 

「青い屋根の屋敷が本妻と六男のタラマが主と一緒に住んでる屋敷さ。ぶっちゃけ思うんだけれど、友達なら兎も角として、奥さん六人も必要? お金持ちが貧困者を養う為とか、政治的理由なら分かるけどさ」

 

 それを僕に尋ねられても答えれない。確かに時折目移りはするけれど、雄の本能だから仕方が無いんだ。でも、僕は基本的に一途だ。僕が初めて出会った時のアンノウン様は今よりずっと未来の姿なんだけれど、一緒に居た幼女に僕は恋をした。一目で心を奪われたんだ。

 

 ……あっ、でも少し羨ましいかも。タイプの違う美少女に囲まれるのってロマンが有るからね。

 

「……君もイシュリアと同族かぁ」

 

「!?」

 

今、凄い侮辱を受けた気がした。あの女神様の同類扱いもだけれど、アンノウン様に呆れられるだなんて。しかも真っ当な理由だ。創造主が奥さん一途な人だから一夫多妻に理解が無いんだろうな。此処は僕が魅力を語るべきだろうか?

 

「いや、一切興味が無いからしないで。それで兄弟間は別として正妻と妾の仲が最悪らしくてさ。橙屋根に住む長男の母親は長子を産んだ自分こそが正妻に相応しいし、長男であるマヨッツこそが跡継ぎになるべきだって主張しててさ。他の妾を見下しているし、街の人達にも嫌われてるよ。そのマヨッツが殺されたんだ」

 

 どうやら少し予想していた通りのドロドロした骨肉の争いらしい事に僕は少し怖じ気付く。そんな事件が起きた街でパンダのヌイグルミを乗せたフラミンゴを連れた黒子姿の不審者だなんて僕なら取り敢えず捕まえるかな?

 

「そこの不審者! 大人しく付いて来い!」

 

 ほら、誰かが怪しいのが居るって通報したのか武装した兵士達が僕を取り囲んでいる。うん、此処は大人しくしているべきだよね。こんな所で騒ぎを大きくしたくない、そんな僕の真横から拡散式のビームが放たれて兵士達はグリンピースのキグルミ姿になった。武器だって大根やゴーヤだ。

 

「不審者だなんて失礼な! 彼は小さな女の子に性的に興奮するし、顔も声も必死に隠して行動するだけだよ!」

 

 失礼なのはアンノウン様だし、余計に警戒される事を大声で叫ばないで欲しいんですけど!? 

 

「怪しい奴だと思っていたが、本当にヤバい奴だったのか……」

 

「子供達を守るんだ!」

 

 騒ぎを聞きつけた街の人達は完全に僕達を……いや、僕を警戒してしまっている。アンノウン様のせいで。アンノウン様のせいでっ!!

 

「逃がすな! 隣のフラミンゴはモンスターかも知れないから警戒しろ!」

 

 狭まる包囲網。武装した兵士達が僕を捕らえるべく迫るけれど、この程度なら楽に突破可能だ。でも、フラミンゴを抱えながら兵士達に怪我をさせないでってのは少し無理がある気がする。何だかんだ言ってもアンノウン様が何処かから連れて来たフラミンゴだから早々危ない目にも合わないだろうと僕は判断した。

 

 ……さっき足を踏み続けられた事を根には持っていないよ?

 

「!?」

 

 パンダだけ抱えて逃げる為に手を伸ばした時、フラミンゴと目が合った。ウルウルと涙が滲み、見捨てないで欲しいと訴えかけている風にさえ見えて来る。駄目だ、見捨てられない。僕は助けを求めて来た相手を放って逃げたりはしちゃ駄目なんだ。少し僕が怪我をしても一緒に逃げよう。フラミンゴを抱えるべく僕は手を伸ばす。

 

 

「クアッ!」

 

 そしてフラミンゴの足は僕の頭を踏みつけ、そのまま上空へと跳躍。翼を広げて空の彼方に消えて行った。……はい? フラミンゴってあんな鳴き方だっけ? そんな事よりも彼処まで楽々と飛べたの!? 確か助走が必要だった気がするんだけれど……。

 

「いや、君だって僕が連れて来たんだから普通のじゃないって分かってたでしょ? フラミンゴみたいなモンスターだよ。時給食パン十斤で雇ったんだ」

 

 それって高いのか安いのか分からない。

 

「因みに君の給料を食パンに換算すると七斤分」

 

 僕の方がフラミンゴより低かったっ!? いや、でも衣食住有りだし。いや、でも……。何と言うか凄く釈然としない

 

「あっ、今日から時給を食パン十一斤にする?」

 

 是非お願い……危なっ!? もう少しで時給が食パンになる所だった。だって十一斤分じゃなくて、十一斤だって言ったからね、今。

 

「……ちっ! まあ、そんな事よりも早く逃げよう。それともパンダビームる?」

 

 ……本当にこの方はノリだけで行動するなぁ。

 

「ノリだけじゃないよ? その時の気分と流れと面白そうかどうかで行動を決めているんだ、適当に!」

 

 いや、それをノリだけで行動するって言うんじゃ……。

 

 

 

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