初代勇者な賢者と嫁な女神、ハッピーエンドの後に新米勇者の仲間になる   作:ケツアゴ

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パンダもドン引き

悍ましい血筋、呪われた一族。他人を呪う為に生まれて来た。それが私が幼い頃から投げ掛けられた言葉。何の事は有りません。私の一族は小国の王に仕える一族であり、呪いに関する専門家だっただけ。呪いとは本当に厄介な物で、対抗する為に呪いの研究を続ける内に本職になったのですが、それが不気味だったのでしょうね。

 

「彼奴に関わると呪われるんだってさ」

 

「この前、将軍の親戚が病気になったらしいけど、絶対連中の仕業だぜ」

 

 不気味な一族が重宝される事の嫉妬からか陰口を叩かれる事が多く、親の会話を聞いた子供もそれに習う。私の一族が誰かを呪い殺した記録は少なくても公式には残っていないが、要するに気に入らない不気味な者達を迫害する口実が欲しかったのだろう。……実の所連中も信じちゃいない。だってそうでしょう? 本当にその様な恐ろしき一族なら関わろうとしないでしょうしねぇ。

 

 さて、そんな一族出身の私ですが、他の身内が異常なだけで感性は普通でした。ほら見た事かと鬼の首を取った様に騒ぐ連中が居るでしょうから術を悪事や復讐に使いはしませんでしたが、その心はねじ曲がって行くばかり。どうせ結婚も嫌々嫁いでくる娘と行うのだろうと、私を受け入れてくれる人など居ないと思っていたのですよ。

 

「……そう。アナスタシアと出会う迄は……」

 

 魔族が出現して各地で暴れる中、他の世界に派遣された私は危機に陥り、勇者一行に助けられたのです。そればかりか勇者一行の仲間に選ばれた私は生まれて初めて己の術を正面から頼りにされ、不気味に思われる事無く賞賛され、本当に嬉しかった。前を向いて歩けると信じたのです。

 

 アナスタシアへの恋心に気が付いたのも旅の途中。真面目だったのが遊びを知って享楽に更けて堕落したシドーに呆れ、手間を掛けさせられるアナスタシアの姿に怒りを覚え、それでも彼への友情も芽生え……。

 

 

 

 

 

「はーい! お終い! シリアスもウェイロン視点のパートも終わりー! 此処からは僕のターンさ!」

 

 あらゆるシリアスぶっ壊し、ギャグで全てを押し通す。それが僕さ。アンノウンなのさ! 取りあえずマスターが相手をしたがっていたウェイロンを探しているんだけれど、どうやら罠を張っていたみたいだね。

 

「ふむふむ。嫌がらせには最適かな?」

 

 僕が進んでいる廊下は何処までも続いて見えるし、壁に書かれた梵字は子供の血によるものだ。しかも魂でも縛り付けているのか壁や天井から現れたのは術で作られた死霊系モンスター。材料は推して知るべし。

 

「助けて……」

 

「痛いよ……」

 

 全身を刃で貫かれた状態で魂を固定して留めたのが本人の物らしい死体からはみ出している。足が腐ってグチャグチャだから這いながら僕に向かって進むんだけれど、マスターやゲルちゃんが見れば到着が遅れた事を悔やむんだろうね。

 

「勝てないから嫌がらせを、か。……取りあえずパンダビィィィム!」

 

 うん、まあ僕には無関係だからビームで全部吹き飛ばす。でも剣が刺さった状態からキグルミ状態になって天に昇って行ったから大丈夫じゃないかな? このまま生まれ変わった時にキグルミ以外の服じゃ落ち着かないだろうけれど問題無し。

 

 だって僕には関係無いから。

 

「それにしても面倒だなぁ。これ、多分そのまま進んでもループする奴だよ。こんなの仕掛けた奴の性根の悪さが伝わってくるよ。今度僕もイシュリアの城に使ってトイレに行けなくしてやろうっと」

 

 本日二度目のパンダビームで壁や床を破壊し、鼻歌交じりに先に進む。妨害も有ったけれど僕には一切問題無いし、さっさと終わらせようか。僕の目当ては直ぐ其処に居る。ウェイロン。先代勇者の仲間。そして今は魔族の味方。

 

「確か異名は……忘れちゃった」

 

 どうせ僕の相手をすればギャグ的な終わり方をするんだし、気になった人だけ過去の話を読んで調べてくれたら良いよ。絵を発注する程度には気に入ったキャラだった作者だけれど、他の作品にも出てる僕程じゃないしさ。

 

「むむっ! 逃げ出すかと思いきや向かって来るだなんて良い度胸だね」

 

 もう階段を進むのも面倒だったので天井を突き破って進んだらウェイロン発見! 前に僕にギャグな負け方をした分際で待ち構えていたよ。僕視点な時点で終わり方はお察しなのにさ。

 

「……逃がす気も無い癖に何を仰いますか。まあ、私は生涯の目標が叶ったので満足ですし、最後に意趣返しだけして終わらせて貰いますよぉ」

 

「意趣返しって僕に自慢の術を跳ね返された時の事? ほら、ゲップで水の竜をさ」

 

「クシャミじゃないですか!」

 

「……そんなに違う? どっちにしろ情け無いし、細かいなぁ。そんなんだから好きな子を他のに取られるんだよ。てか、君って臭いんだけれど、幾ら死体でも体臭気にしたら? だからフられたんだよ」

 

 あれ? あれれ? ウェイロンったら僕が折角アドバイスしてあげているのに青筋なんか額に浮かばせちゃってさ。度量が狭いって言うか人間が小さいって言うか……。

 

「だからフられたんだね。まあ、オンリーワンな上にナンバーワンな僕には分からない感情だけれどさ」

 

「……ふふ、ふふふふふ! 落ち着け、落ち着くのですよ、私。もう手に入れたでしょうに。愛しいアナスタシアの心を。ほら、お出でなさい」

 

「ええ、そうね。愛しい貴方の頼みなら聞いてあげるわ」

 

「なんだ。アナスタシアじゃなくってアナスタシアに胸以外が似ている魔族じゃん。確か美風だって? それで心を手に入れたっていうアナスタシアは何処だい」

 

 ウェイロンの呼び掛けに応じて現れたのは口調が変わってるっぽい魔族の女の子。何か洗脳されてるっぽくて性格が変わってるし、自分を別人だと思ってるみたいだね。

 

「……えっと、今まで何かゴメンね?」

 

「何を謝っているのですか? 謝られても許す気は有りませんが」

 

 余程僕の言葉が気に食わないのかウェイロンの放つ空気が変わり、周囲が異空間に包まれる。どうやら随分と準備していたらしく、僕は真っ暗な空間に立っていた。辺りに明かりが無いのにウェイロンと美風の姿だけはハッキリと見えて、何やら力が上がっている。それに全身に入れ墨みたいなのが浮き出てるぞ。

 

「それってイメチェン? オシャレに目覚めたばかりの思春期の時にしそうな失敗だね」

 

「ふざけるな! 私を馬鹿にしているのか! この空間では魔人となって力を増した私が更に強化され、逆に私が許した相手以外は……」

 

「あっ、ゴメン。船の中でちょっと食べ過ぎた。……ゲェップ!」

 

 僕の口から漏れ出たゲップ。それはウェイロンが作り出した空間をウェイロンと美風の二人と一緒に吹き飛ばした。

 

「ふざけているし、馬鹿にもしてるよ。だからギャグで倒したのさ。……君なんかの相手でマスターが落ち込んだらどうするんだよ、全くさ! プンプン!」

 

 にしても美風だっけ? 幾ら見た目が似ているからって中身をそっくりに作り替えて満足しようとか……ドン引きだわぁ。散々引っ張ってそんなのか! こんな終わらせ方って有るか! そんな読者の声が聞こえて来そうだね。

 

 

「さて、読者への謝罪は僕がしたし、気を取り直して二人の戦いでも見ようか。先ずはレリッ君からで……」

 

 

 

 

「男のツンデレに価値なんざ無ぇんだよ、糞餓鬼が!」

 

 ……君が言う? 僕でもドン引きだわぁ……。

 

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