オルタさんと恋したい   作:ジーザス

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感覚を短くして投稿出来ました!...次は大丈夫か?しっかりしろよ〜


他者との相違

凛と同盟を結び、帰宅中に戦闘をしてどうにか〈アーチャー〉を納得させた泉世は、翌日いつのものように士郎と登校していた。珍しく2人だけの登校ではあったものの、ギクシャクすることなく普段通りに学校に到着していた。

 

「士郎、悪いんだが英語の教科書貸してくれ。家に忘れてきた」

「またかよ。最近忘れ物多いぞ泉世」

 

泉世と別れてから教室の自分の机に座って一成と話していた士郎に、つい先程別れたばかりの泉世が現れてそう話しかけてきた。荷物を持っていないところを見ると、どうやら教室で中身を確認して、忘れ物をしたのを思い出して借りに来たようだ。口では文句を言いながらも、士郎は流れるようにカバンから教科書を取り出して泉世に渡す。

 

普段の泉世なら教科書を忘れることなどないのだが、ここ1週間ほどは忘れがちになっている。その理由として、学業にあまり集中できない命の駆け引きがあるからだ。とはいうものの、それは泉世に限ったことではない。士郎や凛だって同じ状態だ。仕事量が2人と比べてやや多いとはいえ、それを言い訳に使用していては情けない。実際、凛や士郎は忘れ物など一切していないのだから。

 

「忘れたくて忘れたわけじゃない。入れたつもりで学校に来てただけだ」

「いや、自慢げに言っているけど誇ることじゃないからな?」

「2年間忘れ物をしなかった俺だぞ。これを誇らずにいられるか」

「...泉世はそんなキャラではなかったはずだが?」

 

普段の優等生らしさがまったく見られない泉世に、さすがの生徒会長もとい一成は反応に困っている。入学当時から定期試験で2位をキープし続けている泉世が、このように真逆のキャラとなっていれば驚くだろう。

 

一成にとって泉世とは、優等生で眉目秀麗・頭脳明晰・運動神経抜群でありながら、友好関係も広く人情に熱い。そんな欠点が何一つないまさに完璧な存在だ。

 

だが目の前ではどうだ。

 

教科書を忘れたことを誇りにしているような、残念さを周囲にありったけ放出している残念人間だ。それほどのギャップを眼にして自然体でいられるはずがない。

 

一成が泉世を褒める理由は、士郎と義兄弟ということも一理ある。一成は生徒会長であり成績優秀者でもあるため、定期テストの学年順位で上位に食い込む。だがその上に常にいるのは泉世と凛だ。トップ争いから陥落したことのない存在ならば、学校のことをある程度把握している生徒会長である一成がまったく知らないはずがない。

 

もちろん友人だからということもあるのだが。

 

「聞いたか衛宮?美綴のこと」

 

3人で固まっていると、不意に声をかけられた上に衛宮が2人いるため、どちらに声をかけたのか直ぐに判断がつかなかった。

 

「あいつはどっちに聞いてるんだ?」

「さてな。あいつはお前たち2人の呼び方を変えない。よって今の話をふったのはどちらにも考えられるが、美綴綾子のことならば泉世の線が高いだろう。何しろ弓道部に籍を置いて貢献している尚且つ部活内でも慎二と関わりが深いのはお前だからな」

 

こういうときに一成のように士郎は「衛宮」、泉世なら「泉世」と呼び方を変えてもいいだろうに。普段から2人を「衛宮」と呼んでいたとしても、今なら呼んだことのない下の名前で呼んでも、それに対して何かを言う2人ではない。むしろそれの方がありがたいと言うだろう。

 

「いや、俺は何も知らない」

「じゃあ教えてやるよ。僕も今朝道場で聞いたんだけどさ、新都で見つかったんだってね。それも誰もいない路地裏でさ。眼はイってて、制服はボロボロだったって話。何があったか知らないけど、普段偉ぶってるあいつがどんなふうに捨てられたのか。友人として少しばかり興味が湧かないか?」

「慎二!」

 

慎二の言葉に泉世が怒り、歩を進めて慎二の胸ぐらを掴みあげる。普段見せることのない泉世の様子に、生徒たちは眼を丸くして驚いていた。

 

「冗談だよ冗談。ただの噂じゃないか」

「冗談でも言っていいことと悪いことの区別ぐらい、高2になってもわからないのか?今の言葉には美綴への侮辱が込められていた」

「そんなふうに曲解するなよ。まるで僕が悪いみたいじゃないか」

「お前が悪いだろうが。まるで美綴が自分から事件に巻き込まれに行ったって言ってるようなもんだぞ。美綴がそんなことする奴なわけないだろ」

「どうだろうねぇ。学校では真面目でも外ではハメ外してたり、あいつがそういう遊び(・・・・・・)してても、僕はそれほど驚かないよ」

 

悪びれる様子もなく、まるで自分は悪役にされかけている善人ですと言わんばかりの態度だ。友人の悪口を言われることは誰もが嫌うことだろう。泉世だって同じだ。だが泉世は大切に思うあまり、押さえつけられなくなることがある。

 

暴力に発展することはないが、時には殺意を向けてしまうことだってある。自身で抑えようにも我慢ならない。ぶつけなければ爆発させてしまう。

 

「お前は何処まで美綴を愚弄すれば気が済むんだ。副部長のお前がだらしなくて、部長の美綴がどれほど苦労しているのかわかっているのか?練習メニュー作成に下級生への指導、大会メンバーの選出も全部考えているんだぞ。なのにお前はどうだ。毎日毎日下級生の女子生徒と話をして練習にも参加しないどころか、喧嘩を美綴にふっかけているじゃないか。そんなお前が冗談を口にして誰が信じるんだ」

「離せよ衛宮。僕に触れるな」

「美綴が行方不明になる前、最後に会ったのはお前だろうが」

「...世間話をしただけさ。憶測で話をするなよ。思いつきで言葉を発すると、お前の信頼を失うことになるぞ」

「こいつ!」

 

今にも殴りかかりそうな泉世を、士郎と一成が2人がかりで止めに入る。少しでも動くのが遅れていたなら、慎二は泉世に殴り倒されていただろう。顔面が誰か判別できなくなるまでに。

 

「離せ2人とも!あいつを殴らせろ!」

「今殴ればお前が悪者になるって」

「それでもいいんだよ!美綴を馬鹿にしたあいつを放っておけるかよ」

「なんだ衛宮。もしかしてお前、美綴のこと好きなの?あっははははは!こいつは傑作だぁ」

「美綴に後遺症が残ってみろ。タダじゃおかないからな」

 

眼で殺そうとするかのように、殺意を乗せた視線を向ける泉世に慎二が少しばかり後退る。人を大切に思うが故に、怒りは底を知らない。怒りは際限なく溜まり、泉世という人間を変質させていく。

 

1限目の予鈴があと少し遅ければ、泉世は本気で慎二に殴りかかっていただろう。泉世にとっては最悪のタイミングであり、慎二にとっては幸運なタイミングだった。自分を押さえつけていた2人を無理やり引き剥がし、教室を出ていく泉世。教室を出る瞬間に、慎二をもう一度睨んでから教室へと戻って行った。

 

その様子に少しばかり安堵した2人は、大きく長いため息を吐き出した。泉世の行動に愛想を尽かしたのではなく、何も起こらなかったことに対する安堵のため息だった。

 

「チャイムのタイミングに助けられた」

「あいつの言い分はわかるが、少しばかり大袈裟だと思うんだが? 」

「泉世はそういう奴なんだよ。仲間や友人が傷つくのを嫌って、仲間や友人を傷つける存在を許さない。ある意味〈正義の味方〉みたいなもんだ」

「行きすぎな面も否めないが、間違っているわけではない...か。まだまだ俺も修行が足りん!」

 

そこで「いや、そうじゃない」と突っ込まないのは、士郎の優しさだろう。10年前は怒りを表に出さなかった泉世が、近頃ではよく出すようになっている。それは良い事なのか悪いことなのか。士郎には判断がつかない。

 

これまでの不満が少しの刺激で爆発しているのか。爆発するだけの理由があるからなのか。そうなってしまったのも〈聖杯戦争〉という代物のせいだろう。欲望を叶える為ならば、仲間や友人を捨てるようになるのは、ゲームやアニメの世界ではよくあることだ。

 

それが現実として有り得るこの〈聖杯戦争〉を、泉世はどのような心境で戦っているのだろうか。マスターの本性が垣間見える争いは、傍から見れば嘆かわしいことだろう。それを理由に貶され迫害されることになっても、マスターは〈聖杯〉を求める。

 

悲願を達成するにしても結局は同じことだ。

 

泉世が去っていった場所をぼんやりと眺めながら、士郎は〈聖杯戦争〉の在り方に悩むのだった。

 

 

 

 

 

その日の夕方。2人に結界解除作業の役割から外してもらい、俺は〈アインツベルンの城〉に来ていた。来ていると言っても城の中にいるわけではなく、侵入者避けの結界の前に立っているだけなのだが。制服に制カバン、片手にはレジ袋を持ちながら森の中に佇んでいる。傍から見れば不審者や変人と罵倒されるだろうけど、俺からすれば何もおかしな点はない。

 

結界の前に立ってみるとよくわかる。目の前には何もない(・・・・)ように感じさせるこれは、巨大な《認識阻害》の術式だ。すぐ側にありながら、ないと思わせる初歩的な魔術。基本でありながらも、こうして永きにわたって使用されるほどの魔術は、世の中にそうそうない。

 

簡単な魔術ほど魔術師は忌避する傾向にある。《認識阻害》を毛嫌いする少数の理由は簡単に看破され、自身を危険に晒す行為になるからだ。大抵の理由は、《認識阻害》ではなく本人固有の魔術を使用することが多いことにある。使用者の固有魔術は希少であり公開されることが少ないので、効果や発動条件などを知られない。また強力な固有魔術は一瞬で勝敗を決めることがある。

 

そういうこともあって《認識阻害》の魔術は、あまり大っぴらに使用されることが少ない。諜報やスパイとして活動する際は多用されるが。初歩的でありながら看破する方法が数少ないからだ。看破されることがあるとしたら、それは使用者の技量が不足していたか、解除できる魔術を敵が持っていたかの2択となる。

 

それなのに何故俺が見つけられたのか。そこで活躍したのが、幼い頃に仕込まれた暗殺の極意の1つだ。

 

〈暗殺者たる者、周囲の警戒を怠るべからず。常に魔術に対する心得を保つべし〉

 

初めて聞いた時、なんとも日本チックな極意だと思ったものだ。正直、今でも失笑してしまう。

 

...話を戻そう。暗殺を成功させるためには、数多ある情報を厳選して確率を高める必要がある。標的が一般人ならば、さほど苦労せず終わらせられる。

 

実戦経験のある傭兵やSPに警備させていることがあっても、それは一般社会での話だ。魔術社会ではそれらは役に立たない。肉弾戦ならば警備に分があるだろうが、魔術を使った中・遠距離からならば、魔術の方が圧倒的に有利だ。

 

ただ標的が魔術師であったならば話は別だ。標的となる魔術師の大半は、異端者や一部の能力に特化した者ばかりだ。そういった輩は周囲の目を警戒する。常に《認識阻害》の術式を行使して、身の安全を第一にして生活する。そんな奴らを発見するためには、意識を覚醒させなければならない。

 

一般人で言う第六感である〈感〉を使ったり、空気の流れや温度などから存在を読み取る。鍛錬を怠らずに愚直に続ければ、そこそこの技量に達して実用することができる。暗殺者として完成させられた俺ならば、如何に御三家であるアインツベルンでも逃れる術はない。

 

だからこうして結界の位置を知ることができる。掌を結界に触れさせると、透明な壁に阻まれて一定以上奥には入り込めない。ここで無理矢理押し入ろうとすると、結界を張った張本人であるイリヤに見つかってしまう。実際10年前に言峰が侵入したことを、アイリスフィールはすぐさま認識した。

 

今はイリヤを警戒させるときではないし、少しばかりのイタズラもしてみたいという思いがあった。だから無理矢理押し通るのではなく、結界をすり抜ける(・・・・・)ことにした。すり抜けるといっても、実際は術式を軽くイジって細工をするだけだ。

 

上手く誤魔化せたところで全力ダッシュする。自分の予測では、もし失敗していたなら瞬時にメイドが抹殺しに来るだろう。城に辿り着くまでに見つかるかどうかで、俺の《術式変換》が上手くいってるかがわかる。

 

果たして。どうにか城の壁まで辿り着き、壁をよじ登る。もちろん侵入してからは《認識阻害》を発動させている。侵入したことが知られなくとも、無関係な人間が敷地内を歩けば、バレるかもしれない。予期しない場所に監視カメラや仕掛け、術式が配置されているかもしれないから。

 

地面から10mほど登ってから気配を探る。建物にこれだけ近ければ、術式で誤魔化されることはないだろう。それにイリヤは魔術師でありマスターなのだから、魔術師特有の波長や気配は見つけやすい。

 

数分かけて探索していると、真上に引っかかるものを感じた。窓枠をつたって登り、中を覗いてみる。そこには背中をこちらに見せながら、せわしなく腕を動かしているイリヤの姿が薄らと見えた。レースに邪魔されてよく見えないが、何かを懸命に動かしているようだ。

 

「このこの!」

 

どうやら戦闘中らしい。少しだけ待って戦闘が終わるのを待つべきか、今すぐ入るべきか悩みどころだ。

 

「あァー!電池がない!いい所なのにぃ!エネループぅぅ!」

 

どうやらリモコンの電池切れらしい。

 

コンッコンッ

 

窓をノックして開けてもらうことにした。壁に張り付いたままでいるのは、いくら鍛えた俺でも辛いものは辛い。

 

「ノックの音が聞こえたような...え、何で此処にいるの?」

「久しぶりイリヤ。言う通りお茶しに来たぞ」

 

窓を開けて左右を見渡してから俺を発見すると、イリヤが眼を丸くして驚いた。その素っ頓狂な表情に笑い出すのを堪えながら部屋に入る。部屋を見渡すと、無駄な装飾がなく必要最低限の家具しかない部屋だった。閉塞的な空間に少しばかりテンションを下げる。

 

「何にもないんだなこの部屋」

「寝るだけの部屋だもん。何か必要なら食堂とかに降りればいい。って違う違う!どうやってここに来たの!?侵入されたことにも気付かないし、敷地内走ってれば掴めるはずなのに」

「《認識阻害》を使った」

「それだけでここまで来れるわけないもん!」

 

ふくれっ面で怒るイリヤは中々に可愛い。年齢通りの身体付きでもないのもあるのだろうけど、今はアインツベルンの当主ではなく、年相応の少女な雰囲気をまとっているからだろう。〈聖杯戦争〉ではマスターらしく、的確に強力無比な〈バーサーカー〉を操ってくる。

 

そのギャップがまた、イリヤをイリヤらしく見せているのかもしれない。周囲を見渡して見つけた椅子に座ってから、イリヤの質問に答える。

 

「《認識阻害》といっても使い方には色々あるんだよ。アインツベルンが使っている《認識阻害》は、【此処にあるものを見ない。あるとしても何も無いように見える】っていう暗示に近い代物だ。逆に俺は【此処にいるがいないように感じる】っていう代物。【誤魔化し】と【馴染む】的なニュアンスだな」

「同じ術式にも意味が違うだけでそんな使い方があるんだ。真っ当な使い方をしてたら気付かないと思うけど」

「生憎、俺は戦闘魔術は得意じゃない。むしろ術式の開発や構造の理解を知る方が得意だ」

「戦闘員ではなく研究員ってこと?」

「簡単に言えばね」

 

〈アンソニアム家〉の歴史の中で5本の指に入ると謳われたけど。実際それは使える数が誰よりも多くて、理解が早かっただけの話だ。何かに特化したわけでもなく、全部を苦労せずに扱えるという点だけを評価した結果だ。

 

鍛錬しなければ使うことも出来ないが、ある程度の知識を得れば使うことができただけ。それを使うために努力したわけでも、使いたいから努力したわけでもない。もともと戦闘に適さない〈アンソニアム家〉が歴史に名を残せたのは、そういったオールマイティな魔術才能が評価されたからだ。

 

ここ100年程、それだけの能力を持たない当主がいたから余計に俺は担がれたのだと思う。評価されることが嫌だったわけじゃない。誰かに評価してもらえることは素直に嬉しかったし、家族が誇ってる姿は好きだった。でもいつからかその期待が煩わしいものになった。

 

いつ何処に出向いても色眼鏡でしか見られない。誰もが苦戦することを、苦労することなく達成してしまうことに喜びを感じなくなった。どう成功させようと、誰も才能のおかげだと言って俺自身を褒めてくれなかった。

 

家族やそれらの関係者は、 才能を褒めただけで俺自身を褒めた(・・・・・・・・・・・・・・・)わけではない。誰も俺を見なかった。才能のみしか見なかった。その時俺は自分をどうしてほしかったのか。それは今でも分からない。

 

言峰が授けてくれた〈八極拳〉は努力する必要性を感じた。あれは才能なんぞに頼れるものではなく、努力による成果でのみ鍛え上げられることを知った。ある意味俺が求めていた物だったのだ。

 

「泉世、何で泣いてるの?」

「え?...ははははは。何で泣いてるんだろ俺」

 

痛いわけでも悲しいわけでもないのに涙が溢れてくる。拭っても拭っても溢れてくる。人間は自身が理解することもなく、涙を流してしまうことがある。それは自覚しないうちに溜まっていた哀しみや苦しみが、自然と外へ流れ出た結果だ。

 

「イリヤ?」

「私はホムンクルスに近い存在だから、あんまり人間のことはわかんない。でも時々思うことがあるの。人間って弱くて脆いでしょ?自分じゃ解決できないことを無意識に抱え込んで傷つく。それで自分自身が壊れていく。そんなこともあるのかなって」

 

椅子に座った俺と同じ目線に立つイリヤが、優しく俺の頭を撫でてくれる。その手の優しさはアインツベルン当主ではない。普通の人間と一緒だ。ホムンクルスであったとしても、この温度と優しさは紛れもなく本物だ。

 

「優しいんだなイリヤは」

「強くて優しい当主。素敵でしょ?これでも18歳なんだからお姉さんって呼んでもいいよ?」

「遠慮しとくよ」

 

イリヤのちょっとしたイタズラ心ではあったものの、救われた気がしたのは錯覚ではないだろう。3年間という人生経験の差はそれなりに活躍しているらしい。生活内容は大きく異なるため、あまり当てにならないが。俺は名家としての生活と養子としての生活、イリヤは御三家としての生活とマスターになるための生活。

 

相反する生活であっても、共感できる部分が少しあるだけでも喜ばしい。いつか本心で語り合うことが出来ることがあれば、訪れて欲しいと本気で思う。

 

「結構後回しになったけど、お茶しに来たのが本命?」

「それ以外に敵地の真ん中に訪れないだろ。まず誘ったのはそっちなんだから」

「正当な手続きをしてから来てくれたらいいのに。そうしたら敵同士であっても、それなりの対応はするわ 」

「何日前に出さなきゃならないんだよ」

 

的にわざわざ電報なんか打っても無視されそうだしなぁ。イリヤが正面から受け取るはずないし、ましてやメイドだったらそのまま破り捨てそう。イリヤに危害が加わると恐れるだろうし。マスターからの差し出しならば、それぐらい当然の危惧だろう。

 

マスターであり当主でもあるイリヤを、命を賭して守る役目を担っているのだから。宛先にどうするか尋ねないのも問題はあるが。

 

「さてと、お母様について聞かせてよ。手を出さない交換条件に」

「もちろんそのつもりだ」

 

イリヤが淹れてくれた紅茶を飲みながら答える。お湯の温度が合わなかったのか、淹れ方が悪いのか、それともイリヤ自身が不器用なのか。いやそれらが合わさった結果、相乗効果でこのようなちんちくりんな味になったのだろう。

 

2日前に〈アーチャー〉が淹れた紅茶を、楽しく味わってしまったのもあるだろうが。

 

「ゴホッ、なんちゅう味だよ。どうやったらこんな味になるんだ」

「セラが淹れたようにやっただけなのに...」

 

落ち込むイリヤに「壊滅的な腕だな」とは言えない。下手をしたら、〈バーサーカー〉を喚び出されて首を落とされるかもしれない。口は災いの元と言うように何も言わない方が身のためだろう。

 

「さっきまでゲームをやっていたようだが」

「電池が切れたの。エネループがないと続きできないし」

「ふーん。おっと、こんなところにレジ袋があるじゃないか」

 

わざとらしいおどけた口調で持ち上げた袋の中身を探る。すると、なんということでしょう。中から電池がでてきたではありませんか。それもエネループが。

 

「え、なんでエネループが」

「家に電池切れを起こしてるやつがあって買ってたんだ。予備を買っておいてよかったよかった」

「さすが泉世おにいちゃん!」

「抱きつくなよ。18歳なんだろ?」

「今は良いの」

 

満面の笑みで微笑まれては、引き剥がすにも引き剥がせない。年齢にそぐわない身体付きと無邪気さ。それらが何故か微笑ましく思えてしまう。それがイリヤという存在の意味なのかなと思いながら、イリヤが自らの意思で離れるまで自由にさせておいた。

セイバーのちょろさについて

  • 原作通り
  • ちょろインのまま
  • 足して2で割った性格
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