百合の達人   作:うみうどん

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一話

 突然で悪いが俺は今、戦っている途中だ。自己紹介などは戦いながら教えよう。

 周りが瓦礫の山に埋もれていく中、小さな少女を姉の方に放り投げ、俺は身長の何倍もある化け物と対峙した。

 

 その化け物はヨダレを垂らし、俺を捕食するかのような動作を見せる。ふむ、俺とて食われるのは勘弁だ。というかまだ俺は死にたくはない。とある楽しみを奪われたくないので、こんな所で死ぬわけにはいかないのだ。

 

「おい化け物。お前が何なのかは知らんが、こちとら楽しみを奪われて正直怒っているんだ。手加減は出来ると思うな」

 

 俺は化け物に向かって構えを取り、突っ込んだ。

 燃え盛る炎の中、あの姉妹の叫び声が聞こえてくる。心配するな少女達よ、俺は君達の笑顔を奪いたくはないのだよ。そして、即刻俺のことは忘れたまえ。俺は不純物であり、本来ならば君たちとは関わってはいけない存在なのだから……。

 

 俺は疾走する。愛する物の為に。

 さて、ここで二つほど問題だ。

 

 一つ、俺はこの化け物にどうやって勝ったか。

 二つ、俺の楽しみとは一体なんなのか。

 

「おい化け物、この世にはな、美しいものが存在するのだよ。少女同士が咲かせる可憐な笑顔。会話。そして恋愛。いいか、化け物よ。もう一度言うぞ。この世には美しいものが存在する」

 

 瓦礫に押しつぶされていく化け物に向かってこう告げる。

 

「百合は最高だ」

 

 この世の真理、可憐な少女同士の恋愛。

 これ以上に素晴らしい物が存在すると思うか? いや有り得ない。この世に百合ほど美しいものは無い。そう断言できる。

 そして、その美しいものの邪魔をするというのなら、俺は人知れず拳を振るおう。その為にこの肉体。人間の限界を超え、達人という領域にまで達したのだから。

 

 ──ー

 

 日本某所。

 

 俺は親友の風鳴弦十郎ととある場所へ来ていた。その場所とは同人ショップと呼ばれる所で、俺たちは休日との事もあり、ラフな格好で赴いていた。

 しかし、肉体から発せられる達人特有のオーラで一般人は俺たちを見るなり目線を合わせずにいた。しかし、この際そんなの御構い無しだ。今日は特別な日なのだから。

 

「アキ、ここか……。この場所で【ひだまりみらい先生】の新作百合本が出ると……」

「ゲン……。ああ……情報は確かだ。現に俺は一週間前から予約済みだ」

「……! 流石だな」

 

 ふっとゲンが少し笑う。ゲンは元々百合というものに興味がなかったが、一緒に公安をやっていた頃にゲンに無理矢理見せたところ見事にハマった。

 今では仲間と共に世直しの旅をしており、金はそこから得ている。それに公安時代の貯金も合わせると、かなりの額であり、一生旅をして暮らせるぐらいだ。

 

「弦十郎さん……秋人さん……早くしないと売り切れてしまいますよ」

「! マズイッ! 俺は予約していないから手に入らんかもしれん! アキ! 俺は先に行くぞ!」

 

 後ろから気配も感じさせずに、突如として現れた青年。代々忍者の家系で、今は風鳴弦十郎の懐刀として活躍している男、緒川慎二が現れ、ゲンに一言言うと、目にも止まらぬ速さで疾走していった。一般人に被害を及ぼさず器用な奴だ。

 

「さて……僕は一足お先に手に入れましたのでこれで失礼します」

「ああ……そういえばシン。あっちにお前好みのおねロリが歩いていたぞ」

「!? なんと! 早く行って観察せねば!」

 

 そういうと、シンは姿を消す。もはや一ミリも気配を感じない。どうやらまた腕を上げたようだ。

 さて、俺もさっさと行って本を取ってくるとするか。

 

 俺がショップへ向かおうとしたその時だった。

 

「待って……おくれ……! 鞄を返しておくれ……!」

「へへ……! 誰が待つかよ! ババア!」

 

 運悪く、ひったくり現場に出会ってしまう。……仕方がないこれも世直しの一環だ。

 

「どきやがれっ!」

 

 帽子を深く被った男が手に刃物を持って、ちょうど俺に突進してきた所だった。それを俺はすれ違いざまに、男を投げる。動作はただすれ違っただけ。すれ違っただけなのに、男は宙へグルグルと回転しながら飛んでいた。

 

 俺は落ちてくる鞄を手に取り、鞄の持ち主であるお婆さんに返す。

 

「どうぞ」

「ああ……どうもありがとう……この中には大切なものが……」

「ええ」

「ここ最近家にくる女の子に渡す物だったのよ……本当にありがとうね」

「いえ、お気をつけて」

 

 俺はお婆さんに荷物を持たせ、その場を去る。投げられた男は頭から打ったようで気絶していた。そして、この視線……俺をこの世の者では無いような目で見てくる民衆。まあだが、これも強大な力を持った故の罪だろう。

 しかし……それにしても……

 

「おばロリ……か? いやおばJKの可能性も……」

 

 新たな百合の可能性を模索し始めたのであった。




秋人:弦十郎と公安に入る。その時の極秘任務でアメリカに渡った事があり、その時に小さな姉妹を助けた。18歳という若さで達人の領域へ。

弦十郎:前までカンフー映画とかアクションばっかりだったけど、秋人の仕業で百合の道へ転げ落ちた。
男女恋愛主義者の外道が父親。

慎二:おねロリだったらなんでも美味しく頂いてしまう。ここ最近のお気に入りは小学生の女の子がOLの女性をからかって遊ぶ本が大好き。

ひだまりみらい先生:みんな大好き百合作家
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