「素晴らしい……やはり……ひだまりみらい先生の本は最高だ……」
「ああ……ボーイッシュな女の子と内気な女の子が繰り広げるラブロマンス……最後の『響……私のことをずっと離さないで』と泣きながら訴える姿は涙が溢れて仕方がない……」
俺たちは近くにあったオタク専門の喫茶店に入り、互いに本を読み感想を言い合う。
しかし……本当に最高だった。オリジナル作品とはいえ、この完成度。もはやみらい先生がこの世界を体験しているのでは? エッセイなのではとか思い始めている。
「くっ悔しいです! いつもだったらおねロリ以外地雷なのに…………ぐっ! こんなの泣いちゃうじゃないですかぁ……」
シンもティッシュがいくらあっても足りないぐらいに号泣している。
おいおい、ここは喫茶店だぞ、気持ちは分かるが抑えろ。
「まあいいか、この時ぐらい泣かせてやろう……」
俺は手に持っていた百合小説を読み始める。この小説もいい、記憶喪失の女の子が、先輩と名乗る女性に手を引かれいろんな場所へ旅をする。その間に芽生える恋愛感情、記憶の復活。未だドキドキする展開が待ち構えているのだ。
俺が本を開いたそんな時だった。
「きゃああ!」
外がかなり騒がしくなる。
この騒動には覚えがあった、ここ数日間の間突如として人類の前に立ちはだかった正体不明の生物。いや、あれは生物と呼称して良いのだろうか、災害と呼称するのが正しいだろう。
俺たちは外に出ると、案の定カラフルな気色の悪い生き物がそこにいた。
一応俺たちはノイズと呼称しているが、実際のところの名前は分からない。
そして、このノイズ。厄介なことに人間が触れると、炭化してしまう。その光景を俺たちは何度も見た。助けられる命も助けられなかったのだ。
「ゲン!」
「おうよ! アキ!」
ゲンが一発、拳を前に突き出す。その拳圧でノイズは木っ端微塵に吹き飛んだ。しかし、これで決定打を与えられるほど、ノイズは甘くはない。
「はあ!」
シンが懐からクナイを取り出し、ノイズの影に突き刺す。あれはシンお得意の影縫いという技だ。しかし、人間の技がこれで効くことが分かったのだ。今はその事実だけでいい!
俺は掌に、空気を圧縮しそれをノイズに押しやった。ノイズと掌の間に空気を挟んでいるので、俺は炭化することもなく、ノイズを消しとばす。これでようやく一体撃破した。
しかし、相手が悪すぎる。こうもここまでの達人が三人集まって、一体が限界なのだ。
「……! せっかくの余韻の邪魔をして!」
ゲンが両手で拳を放つ準備に入る。
そのまま目にも止まらぬスピードで、ゲンは拳を連打した。その拳圧でノイズが次々と吹き飛ばされいていく。
「ずぁらっ!」
ゲンが横に一閃蹴りを放つと、その衝撃波がノイズをスパッと切り飛ばしてしまった。
あいも変わらず規格外な奴だ。
それにノイズはゲンみたいな力を一気に放出するタイプの方が合っているみたいで、どうも俺たちみたいな相手の動きを予測して受け流すタイプの武術には不向きだそうだ。
ノイズが次々と消し飛んでいく中、俺は一際オーラが違うノイズを発見する。
そのノイズはどの個体よりも黒く、そして禍々しいオーラを発していた。それに気づいてないゲンがその黒いノイズに拳圧を放つ。しかし、黒いノイズはそれを避け、ゲンに触れる一歩手前まで近づいてきた。
ゲンが後ろに避けようとすると、黒いノイズは手を伸ばす。
これはかわしきれないと思った。しかし、俺がいる。
間一髪のところで、ゲンを俺は投げた。
黒いノイズの攻撃はゲンには当たらず、空振りに終わる。
「すまん、アキ」
「いや、それよりもあのノイズ」
「ええ……実力は僕達と……一緒?」
黒いノイズはその場にただ佇むだけ。それにゲンの攻撃を見て思った。あのノイズは何かしらの武術を納めているのではないだろうかと。
俺たちが膠着状態に入った時だった。
横から歌が聞こえる。
それは、どこかで聞いたことのあるような歌。
しかし……一体どこで……?
その歌が近づいてくる。そして、その歌を歌っている人間の姿を見て俺たちは衝撃を受けた。
金髪のボーイッシュな女の子が何か鎧のような物を纏い、黒いノイズに肉薄する。
あの女の子が使っている武術はゲンとよく似ている。しかし、それ以上の衝撃があった。
まさか……ひだまりみらい先生の響というキャラクターが……存在しているなんて。
みらい先生の響:天然タラシではあるが、昔から幼馴染の未来の事が好きだった。しかしその気持ちを素直に開かせないボーイッシュな女の子