ポケットモンスターガラスの心   作:lane

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激突!ジムリーダー!!

 

サトシさんは、あれからバトルサブウェイに行ってしまった。なんでもあそこには腕利きのトレーナーがゴロゴロいるそうだ。

 

少し手こずっていたようだけど、今度は勝ってくる、と自信に満ちた表情をポケモンセンターから見送った。

 

ヨーギラスの回復には1日かかり、わたしはその間、わたしはライモンジムのジムリーダー、カミツレさんについて調べていた。

 

電気タイプを扱う。キャッチコピーはシャイニングビューティーらしい…

モデルも兼業しており、その雑誌に心を惹かれたが、勝つまでは読まない!そう決めていた。表紙を飾るオシャレな服を見るだけでドキドキするぐらい、いわゆるカミツレさんのファンになってしまいそうだから。

 

ポケモントレーナーが超えるべき壁。それがジムリーダーだ。ジムは各地方に八つあり、どのジムも生半可な実力ではクリア出来ない。ポケモントレーナーになるのは自由だが、その道は狭く厳しく険しいことを忘れてはならない。一つのバッジも手に入れられず、引退する。そんな話は枚挙に遑がない。

ジムバッジは2個あれば十分優秀なトレーナーだと扱われる。しかし、その2個集めるのがどれだけ険しい道か。

 

 

ライモンジムを目の前にわたしは道の険しさを再認識した。それでも進むんだ!

 

緊張した面持ちでジムの入り口に入る。すると、煌びやかな意匠がふんだんに施された鉄のレールがそこにあった。

 

「あなた、挑戦者ね?」

 

後ろから声を掛けられる。振り向くとそこには金髪の綺麗な女の人がいた。この人が、スーパーモデル、カミツレさん…

 

「ユキです。ジムに挑戦しに来ました」

 

声、裏返ってなかったかな…?

 

「分かったわ。じゃあ、フィールドはこの先よ」

 

彼女が指差した先はジェットコースターだった。何故室内にジェットコースターなのか。

 

「これに乗るんですか…?」

 

「ええ、怖気付いたかしら?」

 

「いえ、乗ります」

 

部屋の内装や、ジェットコースターに気を取られていたけれど、わたしはジムに挑戦しにきたんだ。

 

ジェットコースターに乗り込む。電気タイプのジムらしく動力は電気を使うということだろうか。

 

「所持しているポケモンは何匹?」

 

「1匹です」

 

「OK、わかったわ」

 

カミツレさんとジェットコースターに乗っている。その事実が、わたしを緊張させる。ふわぁ…横顔もきれい…

 

話しているうちに、フィールドに着いたようだ。フィールドの真ん中には審判の人が待っていた。

 

「これよりライモンジム、カミツレと、ブラックシティのユキのジム戦を行う。使用ポケモンは1体。どちらかが戦闘不能になった時点で試合終了とする」

 

胸がドキドキする。これがジム戦。でも、わたしはサトシさんとバトルしたんだ。あの時の張り詰めた糸のような緊張感があったけれど、

冷静に見極める。それだけだ。

 

「ようこそ挑戦者。私の愛しのポケモンとあなたのポケモン。どちらが本物か…」

 

「ここで競いましょう!エモンガ!」

 

カミツレさんが繰り出したポケモンはエモンガと呼ばれるポケモンだ。でんき、ひこうの複合型タイプ。ヨーギラスが有利か。彼女に電気対策をしても、おそらく、勝てないだろう。弱点をさらけ出しているのが狙いなのか、それとも。

 

「ヨーギラス、おねがい!」

 

どのみち、わたしのポケモンはヨーギラスだけだ。関係ない。

エモンガは弱点がいわ、こおりタイプのみのポケモン。そこから照らし合わせた彼女の対策はおそらく、アイアンテールだろう。

 

そこに照準を合わせる。きっと来る。

 

「まずは攪乱から!かげぶんしんよ」

 

エモンガの分身が広がる。ヨーギラスは増えたエモンガに戸惑っている。大丈夫、ヨーギラスには、ピッタリな技がある。

 

「ヨーギラス、なしくずし!」

 

分身したエモンガと本物のエモンガには僅かな違い、隙がある。それを見抜いたヨーギラスは、エモンガの本体目掛けて堅実にダメージを与える。

 

弾き飛ばされたエモンガは空中で一回転し、浮遊する。どうしても空中に居座られると分が悪い。

 

「能力変化についてはある程度わかっているみたいね…」

 

こちらを観察されている。情報を与える前に、速攻してまずはその余裕を崩す!

 

「ヨーギラス!いわなだれ!」

 

エモンガの頭上に岩の雪崩を起こす。さぁ、どうくる!

 

「エモンガ、でんげきはで撃ち落としなさい」

 

エモンガが、上に気を取られているうちに、いま!

 

「ヨーギラス!羽にかみつく!」

ヨーギラスの攻撃は決まった。羽の根元に噛み付いた。エモンガは何とか振り払うが、ふらふらと地上に落ちる。よし!ひとまずこちらの土俵に持ち込んだ!

 

「やるじゃない」

 

しかし、依然として、カミツレさんの余裕は消えない。そうだ、まだ奇襲が上手くいっただけ。次は地上でこの人を上回らなければ勝てない!

 

「でんこうせっか!」

 

地上からでんこうせっかだ。サトシさんのピカチュウほど速くない!

 

「ヨーギラス、躱してこわいかお!」

 

サトシさんの時には通用しなかった戦術も、今なら通用する。

まだだ、まだこんじょうは発動させない。こんじょうは奥の手。なるべく麻痺にかかる前に倒す!

「エモンガ!ボルトチェンジ」

 

眩い電気がヨーギラスに当たった瞬間カミツレさんの元まで素早く戻っていく。 ダメージはないが、距離を取られた。ここからとるだろう戦法は、遠距離で近づけさせないこと!

 

「エアスラッシュを連射!」

 

風の刃が、ヨーギラスに迫る。消耗する前に何とかしないと!

 

 

「いわなだれで相殺して!」

 

いわなだれをすり抜けた刃が、ヨーギラスを襲う。完全には無効化出来なかった…!

 

「判断力もなかなかね」

 

こちらの動きが鈍れば彼女はすぐさま隙を突いて一撃で決めるつもりだ。もっと気を引き締めないと!

 

次は何をしてくる?ヨーギラスをじわじわと追い詰められる感触。まるで蜘蛛の糸だ…!

相手に対応するだけじゃダメ!こっちから攻撃しないといけない!

 

「エレキネットで動きを封じなさい!」

 

「ヨーギラス!躱して!」

 

今、突っ込んでも返り討ちにされる。でも、このネットはこちらの動きを封じるもの!なんとかしなくちゃ!

 

「ヨーギラス!すなあらし!」

 

辺りが砂に包まれる。ヨーギラスは砂の中でも目を開けていられる。だから、今、わたしのほうが有利!攻めるなら今!

 

「アイアンテール!」

 

向こうが見せるまで温存するつもりだったけれど、エレキネットのフィールド効果を避けるために一つカードを切る!

 

砂嵐の中から傷ついたエモンガが吹っ飛ぶ。やがて砂嵐は収まり、ヨーギラスが現れる。今のでせいでんきに触れたようだ…

しかし、エモンガに入ったダメージは十分!このまま、攻める!

 

「いわなだれで追撃!」

しかし、ヨーギラスの体は動かなかった。しまった!やはり麻痺!

わたしが勝負を急いだからだ!

 

「エモンガ今よ!アイアンテール!」

 

鈍色の輝きがヨーギラスを襲う。立て直さなきゃ…!

 

「エレキネットで動きを封じなさい!」

 

ヨーギラスは電気の糸に絡まり身動きが取れなくなる。ダメージはないものの、これじゃあなにも出来ない…

 

「アイアンテールで仕留めなさい!」

 

「ヨーギラス!!」

力が抜ける。甘かったんだ。わたしは。届かなかった…目を瞑る。

 

身動きが出来ず、ヨーギラスは衝撃に体が強張るその時!

 

眩い光がヨーギラスの体を飲み込んだ!

 

「まさか、これは…進化!」

声が聞こえ、薄ら目を開ける。そこには光に覆われていた!

 

戦いの中で進化…!?そんなことが!?

 

これが、進化…

光が晴れると、そこには薄い水色のサナギが居た。あれが、サナギラス…よく見れば、脱皮で、麻痺が解けている!

 

意識をバトルに切り替える。体に力が戻る。ヨーギラスが答えてくれたんだ!なにがなんでも勝ちにしがみつく!

 

サナギラスは明らかに激しい動きは出来ない。でも、この距離なら、いける!

 

「サナギラス!ストーンエッジ!」

「エモンガ!躱しなさい!」

尖った岩が、エモンガの地面から勢いよく突き出す!

 

まともに弱点技を受けたエモンガは動かなくなった…

か、勝った…?

 

「エモンガ戦闘不能。よって勝者、ブラックシティのユキ!」

 

審判から告げられた勝利の言葉を飲み込むまでどれほどかかっただろう。

 

「や、やったぁ!」

 

サナギラスに駆け寄り、少しひんやりする体に抱き着く。

またかよ、こいつ、しょーがねーなと言われた気がするけど、

ギュッと抱きしめる。

 

「ありがとう…、サナギラス…わたしが焦ったばっかりに。ごめんね…」

 

気にすんなよ、とでも言わんばかりに短く鳴く。いつまでそうしていただろうか。目の前にはカミツレさんがいた。

 

「あなたのサナギラス。素晴らしかったわ」

うん、わたしのサナギラスは世界で1番さいきょーなサナギラスなんだ!

 

「これがライモンジムのバッジ。ボルトバッジよ」

 

稲妻模様が描かれたキラキラと輝くバッジを見る。これがバッジ…!

 

「きれい…」

「ほら、受け取りなさい」

 

「は、はい!」

差し出されたバッジを受け取る。やった…!本当にわたし、バッジを手に入れたんだ…!

「カミツレさん…ありがとうございます!」

頭を下げてお礼を言う。えへへ、バッジ…

 

「ユキちゃんとのバトル。よく考えられた戦術だったわ。痺れてクラクラきちゃった」

 

そうだ…!戦術…!エレキネットの厄介さに動揺して、砂嵐を巻いた後、一旦冷静になっていれば…

 

「先に勝負を急いでアイアンテールを指示したわたしの戦術負けです…」

 

そう、あの時、ヨーギラスがサナギラスに進化しなければ、負けていたのはこちらだった…!

 

「あなたは私のプレッシャーの中、終始冷静に務めていたわ」

 

「次のジム戦も応援してるわ、ユキちゃん」

あぁ、ダメだ、泣かないって旅に出る前に決めたのに、わたしは、もう何回も泣いている…!

 

「カミツレさん…!」

目に大粒の涙を溜め、今にも決壊しそうなわたしの顔を見て。

 

「もう、泣き虫さんね」

 

頭を撫でてくれる。2日前に旅立ったのにお母さんを思い出して…!

決意したのに…!

「ぐずっ、わたし、泣かないもん」

精一杯の強がりを胸に勝者として笑顔を浮かべる。

 

「またバトルしてください!」

 

そう、次も楽しく激しくて痺れるポケモンバトルを!

 





ユキ「ボルトバッジ、ゲットだぜ!」

サトシ「俺の決めゼリフガーーー!!!」

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