継ぎ接ぎだらけの中立区   作:緋寺

103 / 303
二つ目の駆逐隊

午後からは下呂大将に与えられた廃材の整理と、早速艤装の作成が始まった。廃材と言いながらもゴミらしさが一切無いそれらは、洗浄の必要すらいらないものが沢山。すぐにでも作成に進める。

私、若葉は当然、姉である初春の艤装組み立てをメインに始めていた。私の艤装を組み立ててくれたのは摩耶だが、初春型の艤装に一番詳しいのは私だ。整備のために分解を何度もしているし、主機の仕様だって理解している。それに、姉のものは私が作りたいというのが本心。

 

工廠には私の他に、統括の摩耶と、シロクロ、そしてセスが集まった。全員私以上に工廠に慣れ親しんでいる手練れ。セスは艤装作成という形で参加はあまり無いのだが、エコのメンテが出来るなら問題ないだろう。

 

「一応姉さんからどういう艤装だったかは聞いたんだが、若葉のものとはまるで違っていた」

「ああ、あたしも聞いておいた。主機の接続以外は別モンみたいだな」

 

なんでも姉の艤装は、私の使っているものとは似ても似つかないらしい。浮遊する主砲やら、それを掴んでおくアームやら、さらにはヘッドユニットまで浮いているなど、本当に訳の分からないもの。

とはいえ私の艤装も背中に接することなく浮いているので人のことは言えない。この姉があるから、妹である私があるわけで。

 

「主機のシステムが至るところにあると思えばいいのだろうか」

「多分な。アームみたいなモンは大将のくれた廃材にあったから、多分それらしいものは出来るだろうよ」

 

それに、私から先に姉に言っておいた。本来のものと同じものはおそらく出来ず、私達と同じ継ぎ接ぎの艤装になるだろうと。ただし、なるべく似せて作るから安心してくれとも。

姉は快くそれを受け入れてくれた。姉だけでは無い。他のみんなもだ。この施設を守るために戦えるようになればそれでいいと心強いことを言ってくれた。

 

「まずは確実に戦えるようにしような。少なくとも航行出来るところまで持っていってからだ」

「ああ、まずはそこまでだな。若葉もそれなりにやってきたんだ。任せてくれ」

「頼もしいな。なら初春の艤装は若葉に任せるぜ」

 

摩耶の言う通りだ。まずは海上に立ち、自由に動き回れるようになるまでは今日中に持っていきたい。ならば、初春型の艤装に一番慣れている私がやるべきだろう。

 

「私がユウグモのかな」

「なら、あたしが風雲のだ。シロクロは霰のを頼むぜ」

「あーい。すぐに作っちゃうよ!」

 

あの時の叱咤激励の縁で、セスは夕雲のものを受け持つ。シロクロは仲のいい霰のためと躍起になっていた。これで役割分担は完了。

私は姉の、シロクロが霰の、セスが夕雲の、そして摩耶が風雲の艤装を受け持ち、艤装作成に乗り出すのだった。

 

 

 

午後いっぱいを使い、工廠から夕暮れを確認したところで本日の作業は終了。私は主機が完成し、明日の朝一にでも装備してもらい、海上を航行してもらえるかというところまで来た。武装はおろか、例のアームなどはまだ取り付けることは出来ていないが、確実に前進しているため、充実した時間を過ごせたと思う。

 

「よし、今日のところはこれで終わらせっか」

 

摩耶の方は、半分近く組み上がっている状態。技術がどんどん上がり、パーツもほぼ揃っている状態だからか、わずか数日で1人分。風雲の艤装は夕雲と同じように作ればいいため、それよりも早く完成することだろう。

 

「艦娘の艤装は、エコとはまるで違って困るね」

 

などと言いながら、セスも摩耶と同じくらい組み上げていた。さすがとしか言いようがない。生きている艤装であるエコが扱えるのなら、艦娘の艤装を一から組み上げるのは容易いか。

 

「明日、アラレに装備してもらおー!」

「そうだね……多分海に出られるよ……」

 

シロクロの方は主機が完成。2人がかりというのもあるが、整備にこなれているクロと、直感的なパーツ選定のシロが組み合わさることで、トントン拍子に作業が進んだようだ。

このペースで行けば、1週間どころかかなり早めに4人分の艤装が揃う。最初に摩耶が言っていた通りだ。

 

「あっちもそろそろ終わるよな」

「ああ、多分」

 

その艤装を使う4人だが、今は鳳翔指導の下、私達が受けた訓練を受けている。

練度は高いかもしれないが、治療と療養が含まれ、風雲以外は海上の航行もここ最近していない。そのため、身体が鈍っていた。それを鍛え直すという理由で、鳳翔が新たな駆逐隊の育成に乗り出している。

都合よく4人駆逐艦が揃ったため、私達第五三駆逐隊に並び立つ第九二駆逐隊として結成された。リーダーはまだ決まっていない。

 

「充実していたが、あまり思い出したくないこともある」

「お前、何回吐いたよ」

「数えてないな。だから姉さんが心配だ」

 

姉はまだ痛みが完全に取れたわけではないのだが、練度の差を縮めたいと、誰よりも躍起になって参加している。そのおかげで禁断症状が軽いのだが、やはり少し気にしていた。

私達の時ほど急ピッチでは無いとは聞いているが、それでも心配は心配。無理をしていたら強引にでも止めなくては。

 

工廠を片付けた後、訓練をしているであろう浜辺に向かった。全員が倒れている可能性もあるため、工廠組全員で。艤装を担当したものが受け持てば、誰の手も煩わせないで済むだろう。

 

「調子はどうだーって聞きたいところだが、聞かなくてもわかるなコレ」

 

案の定、ゼエゼエ言いながら倒れている4人。この光景には覚えがある。その時の私は当事者側。

 

「初春さんの身体も考え、今日は少し控えめにしたつもりですが、皆さん練度の割に身体が鈍りすぎですね。今後もゆっくり慣らしていきましょうか」

 

これでも私達の一番最初よりも軽めにされていたそうだ。あの時は相当詰め込まれたものである。

それでもこうなってしまうのだから、余程鈍っていたか、鳳翔が力加減を間違えているかのどちらか。私は後者だと思うのだが。

 

「あ、アラレ、大丈夫!?」

「……」

 

無言で首を横に振った。ただでさえ静かで口数が少ない霰は、もう一言も言葉に出せないほどである。この中では一番回復しているとはいえ、限界を超えるレベルの訓練のため、こうなっても仕方ない。五体満足の私達もこうだった。

 

「4人は若葉達が薬湯に連れていく」

「お願いします。なんだか、若葉さん達の一番最初を思い出しますね」

「ああ。明日からはもう少し加減してやってくれ」

 

私は姉を、摩耶が風雲を、セスが夕雲を、そしてシロクロは2人がかりで霰を抱え上げ、そのまま風呂へ向かった。今回も私達の時と同じように、薬湯が用意されている。あれに浸かれば死ぬほどの疲れもあっという間に吹き飛ぶだろう。

 

「姉さん、大丈夫か?」

「……あまり大丈夫ではないのう」

「すぐに風呂に運ぶから、もう少しの辛抱だ。若葉の油臭さは我慢してくれ」

 

艤装作成のままにここに来たため、どうしても油の匂いはしてしまうだろう。これだけは我慢してもらわなければ。すぐに身体も洗えるし。

 

「若葉よ……お主もこれを?」

「ああ。鳳翔曰く、これよりハードだと」

「……なんぞ、凄まじいのう」

 

もう笑うしかないようだ。笑える元気があるだけマシか。

 

 

 

4人は薬湯に浸けたらすぐに回復した。私達の訓練も、客観的に見たらこうなるのか。さっきまで疲労困憊で立つことすら辛そうにしていたのに、今はもう平常通り。訓練をした後と思えないほどに。

 

「あしたも……これ……やるのかな……」

「やると思いますよ」

「……そっか……がんばる」

 

風呂を広くしてもらったおかげで、私達も一緒にシャワーを浴びるくらいは出来るため、訓練組の会話は丸聞こえ。元々あちら側におり、洗脳を解かれたことでこちら側に戻ってくることが出来た九二駆の話は、少し気になった。

霰は一番へばっていたようだが、挫けてはいないようだった。強くなれることというより、この施設を護れることが嬉しそう。

 

「夕雲も頑張らなくてはいけません。皆さんの無念を晴らすためにも、夕雲は強くなり、提督の野望を……いえ、提督はもういないんでしたね」

「そう、そうなのよ。私、みんなの仇討ちを目標にしてたのに、もういないなんて言われてもさ……」

 

夕雲と風雲は、姫として提督に仕えていた者だ。その提督は偽物だったわけだが。仇討ちをすると幻覚と幻聴に誓った風雲だが、その仇は実はもういないと言われてしまった。

 

「あの大淀さんが黒幕だったのよね……そんな感じしなかったんだけどなぁ」

「ですね。裏がそんなに黒かったなんて」

 

提督に仕えていたということは、大淀とも深く関わっていたことだろう。姫や人形の前ではあんな本性を見せてこなかったようだ。

 

「……みんな待ってて。仇討ち、ちゃんとするから。提督じゃなくて大淀さんになっただけよ。だから、お願い。もう少し待ってて。お願い」

「ごめんなさい、ごめんなさい、大丈夫、ブレてません。貴女達の無念を晴らすために尽力します」

 

夕雲と風雲は禁断症状に移行。霰は時間も経ったおかげで禁断症状をほとんど見せなくなったが、この2人は姫だったせいでかなり深い。まだまだ苛まれることになるだろう。

 

「時間がかかってるのはわかってるわ。でも、必ず、必ず仇は取るから。大淀さんは必ず貴女達のところに連れていくから」

 

割と物騒だが、今の目的は風雲の言った通り、大淀を終わらせることだ。風雲達が見ている幻覚、無念のままに死んでしまった亡霊達の下へと送り、今までやってきたことを後悔させる。

とはいえ、あまり気負わない方がいいとは思う。1人で仇討ちをしているわけではないのだから、私達と一緒にその目的を達成したらいい。

 

「風雲よ。そんなに気負うでない」

「気負ってなんてないわよ。でも、この人達は許さないと、早く殺せって言ってくるのよ。その願いは、責任を持って私が叶えなくちゃ」

「それを気負っていると言うんじゃ。もう少し肩の力を抜いた方がよい」

 

そんな風雲を宥める姉。最初から禁断症状があって無いようなものだったためか、その辺りには随分と余裕がある。ずっと客観的に見てこれた。

 

「お主の見えておるもののけが何を言っているのかはわらわにはわからん。じゃがな、駆逐隊として結成したんじゃから、わらわ達も頼れ」

「わかってる、わかってるけど」

「お主は真面目じゃのう。わらわ達は同じ境遇、1人で背負うなと言うておるんじゃ」

 

苦笑しながら頭をポンポン叩きながら撫でる。見た目は風雲の方が歳上に見えるのだが、姉は振る舞いやら話し方のせいで誰よりも歳上に見えた。まるで祖母が孫をあやすように、風雲を落ち着けていく。

 

「わらわ達は4人で九二駆、一蓮托生、そうじゃろ?」

「……そうね。1人で戦ってるわけじゃないものね」

 

姉に慰められていくうちに、禁断症状も薄れていったようだ。目の焦点は定まっていき、落ち着いていく。

 

「ゆうぐもちゃんも……だいじょうぶ、だいじょうぶ」

「ふふ、ありがとうございます霰さん」

 

夕雲も霰に撫でられて禁断症状を薄れさせていた。

やはり持つべきものは仲間だ。嬉しいことも辛いことも分かち合える仲間の存在は大きい。加えて風雲にも姉がいる。頼れる者が多いことはいいことだ。

 

「まずは鳳翔さんの訓練を乗り越えて、五三駆に追い付かないとね。並び立って、みんなで仇討ちよ!」

「うむ、それでよい」

 

九二駆はこれでうまく行きそうだ。遠目で見て安心。

 

「よかったな若葉」

「ああ」

 

一緒にシャワーを浴びている摩耶に言われ、自然と笑みが溢れた。

やはりみんなで楽しく生きていかなければダメだ。私だけ楽しくても意味がない。

 

「姉さんのことは心配してなかったんだ。だが、夕雲はアレがあったからな……」

「最初のぶっ壊れたヤツな。セスのおかげで何とかなったヤツ」

「ああ。あの中で一番危ういのは夕雲だと思っていた。それも今は安心している」

 

完治まではあと少しだろう。禁断症状が見えなくなれば、本当に終わりだ。霰は一足早くそこに辿り着いたが、夕雲と風雲はまだまだあるだろう。だが、それも今は仲間達のおかげでさらに薄れている。

五三駆と成り立ちが少し違う九二駆だが、仲間同士の連帯感は負けず劣らずな気がする。たった一度の訓練であるが、真っ先に成長したのは身体ではなく心のようだ。

 

「負けていられない」

「ああ、頑張れよ。あたしも全力でサポートしてやっからさ」

「頼んだ。摩耶は頼りにしている」

 

先は見えたが勝ち目がまだ薄いこの戦い。施設の者の心は、常に一つだ。一丸の思いで、この事件を解決していきたい。

 




五三(ゴミ)駆逐隊と並び結成された、第九二(クズ)駆逐隊。大淀への当て付け駆逐隊ですが、仲間意識は高め。53と92で組み合わせる感じ、わかる人はいるかな? 偽骸神と偽骸神龍の関係性。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。