継ぎ接ぎだらけの中立区   作:緋寺

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集う潜水艦達

夜間警備で伊504を発見したシロクロ。それを追跡したものの、通信範囲外まで一気に逃げられてしまった。それにより、この施設は常に監視されていたということを知る。おそらくこれからも監視は続けられるだろう。ならばと、こちらもそれに対策を取る。毎日海中も警備することにより、伊504を捕縛する方向に向かった。

それをするためには、この施設の潜水艦が足りない。シロクロと呂500だけでは回せないので、来栖提督が匿っている潜水艦をこちらに寄越してくれるそうだ。その潜水艦達は暗殺部隊の襲撃を受けた夜に私が救出した潜水艦達である。

 

「到着は明日ですね。みんな、若葉さんに感謝しているそうです」

「みたいだな。治療も行き届いているようでよかった」

 

事が済んだのでみんなが就寝。私、若葉も三日月と共に再び眠りにつく。だが、さっきまで普通に会議までしていたものだから、妙に目が冴えてしまった。なので、眠くなるまでは三日月と話をしながら時間を潰す。

明日の朝が辛くなりそうではあるが、こんな状況なのだ。私達だけではないと思われる。明日は事が始まるのが遅くなりそうだ。

 

「助けてよかったな」

「はい。若葉さんの行ないが正しかった証明ですね。私も自分のことのように嬉しいです」

 

情けは人の為ならずと言うが、あの時は絶対に死なせてなるものかとガムシャラに救出していただけなのに、こんな形で自分に返ってくるとは思いもよらなかった。三日月が言う通り、私のあの時の選択が正しかったと実感する。

大分無茶をしたとシグにすら指摘されたが、こうなってくれたのなら無茶した甲斐があるというものだ。

 

「楽しみです。でももう部屋はありませんよね」

「鎮守府とここを往復するんじゃないか……?」

「大変そうですけど……。もしかしたらまた施設が拡張されるかもしれませんね」

 

医療施設がどんどん軍事施設になっていくように思える。あまりよろしくない傾向ではあるが、今更言っても仕方ない。全てが終わったら、また改装されるかもしれない。

 

 

 

翌日は遅い開始だった。夜中に全員起きる羽目になったせいで、最速で起きたものが日が昇ってからという大惨事。鳳翔すらも少し遅かったレベル。

私と三日月はその中でもさらに遅かったようで、目を覚ましたら下呂大将と新提督は既に撤収済みであった。来栖提督は潜水艦達にこちらに来るよう指示した後、ここに到着次第帰投するとのこと。今後の方針もそこで決めるそうだ。

 

朝イチに連絡はしていたようで、到着は朝食後そこまで時間が経っていないくらいのタイミング。それくらいと踏んでいた来栖提督が工廠で待ち構えている。鳳翔も付き添いとして参加。

私も救出した潜水艦達の元気な姿が見たかったため、便乗させてもらった。当然三日月も私の隣。

 

「おう、来た来た。先導はお前らか」

「最初は私だけでいいって言ったんだけど、この子達が聞かなくて」

「姉貴達が抜け駆けしやがったンだからさー」

「そうだそうだー。あたいらも久しぶりにここに来たかったんでい!」

 

救出した潜水艦達を施設まで連れてきてくれたのは、足柄と二四駆の残り。江風と涼風は海風と山風だけが鳳翔の随伴でここに来ていることをずっと根に持っていたらしい。海風と山風がこの場にいたら、姉妹喧嘩が始まっていたかもしれない。

潜水艦達はこの施設に襲撃してきたものの、来栖鎮守府からここまでの海路は流石に知らない。治療されて記憶を失ったわけではなくとも、そもそもこの施設を襲撃することに特化されていたのだろう、それ以外のことは全く教えられていなかったようだ。それなら案内役は必要。

 

「到着よ。浮上してちょうだい」

 

足柄が海中の潜水艦達に通信を送る。すると、海面にブクブクと泡が浮かんできた後、1人、また1人と潜水艦達が浮上してきた。

その姿は私達が戦った時と同じウェットスーツ姿の艦娘。本来の水着ではなくこちらを着用しているのは、この状態での活動が身に染み過ぎているせいなのだとか。海中は暗いので、通常よりもこの服装の方が警備に適しているようにも思える。

その中の1人が代表として私の前に出てきた。その顔は見覚えがある。いや、当然私が救ったのだから全員の顔は見覚えがあるのだが、それ以前から知った顔。伊168だ。

 

伊168(イムヤ)よ。貴女が私達を助けてくれたのよね。みんな、ちゃんとそのことは覚えてる」

「かなり強引な手段だったが、別状が無いようで何よりだ」

 

積極的に握手を求めてきたので、それに返す。私が後頭部に爪先が食い込むレベルの蹴りを打ち込んでしまっているため、ちゃんと治療されるかは心配だったが、今の調子を見る限り大丈夫なようだ。入渠しているのだから問題ないとは思うが、若干不安はあった。

 

「一応、今回の潜水艦隊のリーダーをやらせてもらってるわ。先任の伊168とは別人だから、そこは間違えないでね」

 

それもあってウェットスーツを着ているらしい。先にいた伊168が通常、後に来た伊168がコレ。同じ艦娘が複数人いるため、服を変えることで差別化にもなっているようだ。私が服を切り裂いてしまった者もいるが、わざわざ作り直してもらったりもしているのだとか。洗脳されていた象徴でもあるのだが、これはこれで気に入っているのかもしれない。

 

「御礼を言いたかったの。あそこで助けてもらえたから、私達は生きることが出来る。本当にありがとう」

「どういたしまして、だ。若葉はあの時出来ることをやったに過ぎない。むしろ、あれだけしか救えなかったのが残念でならない」

「胸を張ってよね。確かに私達よりも前に自爆させられた子達は気の毒だけど、誰も助からなかったわけじゃないんだから」

 

そう言ってもらえるとありがたい。私達は出来る限りのことをした。全員救うことは出来なかったが、ここにいる11人は施設のみんなの力で今ここにいることが出来ている。それを感謝されているのだから、わざわざ否定する理由もない。

 

「ああ、助かって本当に良かった」

「それで良し。じゃあ、今日から私達はここで、この施設の安全を守り続けるわ。司令官、任務の説明お願いね」

「おう、まずは身体を拭いてきなァ。すぐに全員に伝えるからよォ」

 

ゾロゾロと上がってきた潜水艦達が来栖提督について施設の中に入っていく。私の側を通る者はお辞儀をしたり手を振ったり。全員が私に何かしらの感謝を表してくれる。

助かったのは私だけの力ではない。自爆装置を破壊したり、そもそもの自爆を食い止めたりはしたが、最終的には飛鳥医師の手腕もある。その辺りもよろしくお願いしたい。

 

来栖提督からの説明はおおよそ小一時間程度。それが終わったら一斉に帰投になる。それまでの時間、江風と涼風から質問責めに遭った。途中からそれを止めようとする海風や、ただただ海風についてきた山風まで加わりてんやわんやだったが、それはそれで楽しい時間を過ごす事が出来た。

 

 

 

昼には潜水艦隊のみを残して来栖提督達も帰投。残された潜水艦隊は早速近海警備を始めてくれた。本日やってきた11人と、既に施設にいるシロクロと呂500を加えた14人によるローテーションとなる。

伊504はシロクロと呂500の3人で追跡しても逃げられたので、1回のローテーションで倍の人数は欲しいと考えている。1回につき6人とし、昼と夜で2交代制。当然休憩も設け、その時間もなるべく変則的に設定する。2人は休息になり、今日はシロクロと呂500がそこに当てはまることに。

 

その第一陣、昼の部の海中警備隊が出撃していくのを確認している。今回は伊168は行かず、夜の部に加わるらしい。それまでは自室に待機となる。

部屋に関しては、11人が共同部屋でいいというなかなか凄いことを言っていた。本来2人部屋ではあるが、職人妖精を足柄が連れてきてくれており、手早く1部屋を改装。潜水艦娘は小柄なものが多いので、警備に出ていない最大8人が待機出来ればいいと小さめのベッドだけが並んだ部屋になっていた。

 

「みんなここの役に立ちたいのよ。せっかく貰えた命なんだもの」

「充分ありがたいさ」

「……みんながさ、私の周りにいるのよ」

 

昼の部が出て行くところを見届けながら、伊168が呟く。

人形にされていたということは薬を入れられていた。つまり、禁断症状が11人全員について回っている。それをあまり感じさせないのは、姉のように人形としての活動期間が少ないからのようである。罪悪感が少なめなおかげで、取り乱すほどの禁断症状にはならない。

それでも幻覚や幻聴はあるらしく、この伊168もあの場で散っていった人形達の亡霊が見える時があるのだとか。無視出来るくらいなので表情にも出さないようだが。

 

「この子達のためにも、私達は役に立つから」

「気を張らないでくれ。力んでいたら出来ることも出来なくなるぞ」

「それもそうね。適度に力を抜かないと」

 

よくわかっている。切り替えも早い。

 

「あの中には、若葉に忠誠を誓いたいくらいの子もいるわよ。散るはずの命を救ってもらったんだもの」

「あまり重く考えないでほしいな」

 

それは私が蹴り飛ばしてでも自爆を止めた者。自爆を寸前のところで食い止めたことで、私に対して大きな感謝を持っているらしい。

忠誠を誓うというのは流石に言い過ぎ。助かった命なのだから、その分自由に生きてもらいたい。ましてや他人のために使うだなんて以ての外である。こういう協力関係ならありがたいのだが、跪かれるような関係は流石に望んでいない。そうされるために助けたわけでもないし。

 

「お前もか?」

「うーん、まぁ感謝はしてる。後頭部壊れたんじゃないかって思い切り蹴られたのが最後の記憶だったけど、あれのおかげで私は死なずに済んだっていうのも理解してるし」

「その節はすまなかった」

 

あの時は私もリミッターを外し、理性というブレーキを完全に手放していたので、生きていればそれでいいくらいの気持ちで蹴り飛ばしていた。だからこそそんな相手に忠誠は勘弁してほしい。

 

「他の子はどうか知らないけど、私はほら、生きていれば儲け物くらいで考えてるから。さっきも言ったけど、若葉には感謝してるんだよ。ホントに」

「みんなそれくらいでお願いしたいな」

「それは無理かなー」

 

こんなこと言いながらも、伊168からは好意の匂いもする。命の恩人に対してそういう感情を持つのは当然と言えば当然か。私も飛鳥医師のことは少なからず尊敬、信頼しているのだから。

 

「ま、期待してて。あっちの大将は私達が絶対見つけ出すから」

「ああ、期待している」

「最悪、ここに来れないように追い返せばいいわよね。捕まえられれば最高だけど」

 

無茶はしないようにが前提条件だ。前にシロクロと呂500が追跡したときも、通信範囲外に出ないように行動していたが、今回の潜水艦隊にも同じようにやってもらうことが決まっている。

何度も何度も繰り返せば、監視を諦めてここから出て行ってくれる可能性も高い。ガッツリ交戦するということになった場合は話が変わるが、呂500が言うには、タービンを積んだ状態での高速退避をする場合はほぼ非武装。交戦は無いと見ている。こちらは人海戦術でガンガン攻め込むのみ。

 

「後悔させたげるわよ。人様を利用するだけしたんだから」

「ああ、それでいい」

「追い詰められる側にしてやるんだから」

 

伊168から少し苛立ちの匂い。やはり利用されていたという事実は気に入らないようだ。誰だってそうだろう。私達だって最初は捨て駒にされていたわけだから、その気持ちは痛いほどわかる。

 

「ところでさ」

「なんだ」

「2人はどういう関係なの。型も違うわよね」

 

ここまで話してようやく私と三日月の距離感にメスを入れてきたようである。如月はいの一番にそこに踏み込んできたが、伊168は少し間を置いてから来た。

 

「大切な人だ」

「はい、大切な人です」

 

それくらいしか言うことは無いだろう。それだけ話した後、三日月はいつも通り左腕を抱きしめる。

伊168はちんぷんかんぷんと言った表情を浮かべたが、あまり触れない方がいいのだろうと話題を終わらせた。

 

ここからはこちらのターンだ。ずっとこちらを監視していた伊504を探し出し、最悪は撤退。あわよくば捕縛して、救出する。伊504も被害者なのだから、救ってやらなければいけない。

攻めに攻めるという戦術は今までにあまり無かったが、たまにはこういうのもいい。待ち続けているからあちらもやりたい放題やってくる。手痛い反撃にしてやる。

 




ウェットスーツ艦娘っていないですよね。強いて言うならゆーちゃんやルイ?
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