憑依妖魔学園紀番外編(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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スキルと私

「翔チャンがいると敵の攻撃範囲がわかるから助かるよ~。江見睡院先生直伝かと思ったら、宇宙人だったからだとはな~」

 

《遺跡》探索中に葉佩がとんでもないことを言い出すものだから、皆守はギョッとして江見をみた。探索中は自分より前に同行者を行かせることは絶対にない葉佩である。ゆえに敵の殲滅が終わるまではその区画に入れず、皆守と江見は前の区画で基本待機となる。にもかかわらず初見の敵の情報や攻撃範囲がわかるだと?なんだそれは。

 

「H.A.N.T.に情報追加してくれてたんだな、ありがとう!最近はランダムじゃなくて確定だし!」

 

「隠す必要なくなったしね」

 

「暗視ゴーグルごしにわかるから助かるんだよ、ほんとに!」

 

葉佩が大感激しているところ悪いがどうやっているのか微塵も気にしない葉佩に皆守はどうつっこもうか考えていた。

 

「電波でも飛ばしてんのか?」

 

「天香サーバからね」

 

「インターネットかよッ!」

 

「《遺跡》でも安定してる通信環境で《生徒会》すら内容閲覧できないみたいだから利用しない手はないでしょ?無線は安定しないから有線になるんだよ、結局は」

 

「い、意外と現実的なんだな......」

 

《生徒会》メンバーにインターネットに詳しい人間がいないことが原因であるとは思わなかった皆守は言葉をにごす。もっとこう、電波を飛ばしてハッキングしてるのかと思っていたという顔である。肩透かしというか残念というか。

 

「歴史遺産の技術を使いこなしてこそって変な縛りをしたがるオタクばっかだからね。紙媒体に拘るのを説き伏せるのが私の仕事。効率悪いからね」

 

「......そうか」

 

「そういうこと」

 

葉佩に渡している情報に関しては諜報担当として情報局の権限をフル活用しているだけであり、情報そのものがアカシックレコード(またの名を攻略本)じみているのを言わないのは江見なりの優しさだった。

 

「ここは新手が多いなァ」

 

わくわくしながら進んでいく葉佩の後ろを江見たちはついていく。基本H.A.N.T.情報に頼りきりの葉佩はなんの躊躇もなく次の扉を開き、江見が注意深く辺りを見回し、危険がないか、罠や敵の存在を探る。それを皆守が眺めているのが常態化していた。いつものように葉佩が嬉嬉として飛び込んでいく。

 

皆守は江見が江見睡院の遺品に手をかけるのをみた。葉佩の鑑定によると超古代文明のオーパーツが組み込まれていて、よくわからない原理でうごく銃らしい。

 

「───────?」

 

その突如、ピリッと右目の奥に静電気のような感覚が走ったのか、江見は片目を瞑る。そして、なんの躊躇もなくトリガーを引いた。皆守はとっさに避けた。さっきまでいた場所には命中した電撃に引き裂かれ、甲高い声を立てて化人が血を撒き散らして死んだ。ぶわっと冷や汗が溢れ出す。

 

「おいッ!」

 

「動いちゃ駄目、怪我するよ」

 

「───────チッ」

 

「九龍、何体か仕留め損なってるよ」

 

「えっ!?うわああああ、マジごめん、大丈夫かッ!?」

 

江見の言葉に葉佩は前へと飛び出し、日本刀で正面の敵を居合の要領で一刀の元に斬り捨てる。続けて接近していた化人を刀を振った勢いのまま蹴り飛ばし、振り向きざま左手に握られた銃で追撃する。一歩後退して体制を整えると、敵の一撃が振って来た。日本刀で弾き返し、眉間に向かって正確に銃弾を打ち込み距離をとる。

 

あとは江見がたんたんと近づいてくる化人に電撃銃を浴びせる。かと思えば、違う色をした宝石を銃にセットした。次の一撃は凍りついた。

 

「大丈夫かッ!?」

 

「翔のせいで死ぬかと思ったぜ」

 

「え?」

 

「化人近づいてるのわかってるくせに何もしないから、私の攻撃待ちかと思って」

 

「待ってねえよ、せめて攻撃するとき言え」

 

「甲太郎なら避けられるでしょ」

 

「無茶言うな」

 

「避けられるよね?甲太郎なら」

 

「なんで九龍に聞くんだよ、本人が無理って言ってるだろうが」

 

「ん~、難しいなァ。ぼんやりと見ていないようでいて、しっかり俺の動き追ってるみたいだし。そうじゃないと回避させられないっしょ?いや~、俺愛されてるね~」

 

「お前いいかげんにしろよ」

 

皆守はためいきをついた、そのときだ。目の端に影がうつった。ヒュッと風を斬る小さな音が笑おうとした江見の真横を通過した。重い音が響き、続いてドサリと鈍い音が閉ざされた古き部屋に大きく響いた。江見は固まる。青ざめる。それっきり静まり返る中、アロマをかかえたまま皆守は葉佩が化人を一刀両断したままの姿を真っ直ぐに見つめていた。

 

「びっくりしたぁ~~!奇襲多すぎだろ、この部屋ッ!」

 

「びっくりしたあ......さすがに怖かったよ、九龍」

 

「ごめん、ごめん!叫ぶ時間も惜しくてさ!怪我はない?」

 

「おかげで大丈夫だよ、ありがとう」

 

「甲太郎は大丈夫か?」

 

「……ああ」

 

江見は顔色が悪い。そりゃそうだ。敵に対して向けられる殺気を間近で見たのだから。皆守はこういうところは普通の感性なんだなとぼんやり考えた。

 

「いくら江見のスキルが優秀でも仕留めきれなきゃ意味がないってことだな、九龍」

 

「うッ......痛いとこつくなよぅ......!」

 

「がんばれ、九龍」

 

「ガンバリマス......」

 

次の攻撃がどこからくるのかわかっているくせに、教えなかった葉佩の意図は今のところ皆守は測りかねているところがあった。

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