憑依妖魔学園紀番外編(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話) 作:アズマケイ
「さあて、困ったな。お風呂どうしよう」
「俺達入るからお前くるなよ?」
「え~ッ!?夜会まで時間ないのに理不尽すぎない?」
「やめて翔ちゃん俺達お婿に行けなくなるぅ!」
「どうしようかな。阿門とこに借りに行くか、瑞麗先生んとこに借りに行くか」
「まてまてまて正気かお前。なんでその二択なんだ」
「門前払いされない?」
「腐乱死体始末したままで夜会にでろと?贄にされる可能性があるから今夜だけは《遺跡》に行くなって忠告されたのにガン無視して助太刀した私に何か言うことはないのか、君たち」
「それはそれ、これはこれ、だ」
「それに関しては嬉しいよ、すっごく。でもさあ......さすがに翔チャンが大人のお姉さんだってわかってると、お風呂とトイレだけは勘弁してってなるんだよ。わかってくれよ、翔チャン。俺達男の子なんだから!」
「なんだよ、甲ちゃんも九ちゃんも。いつもなら私を優先していれてくれるのに」
「今夜は《夜会》だから9時前に風呂はいって行きたいやつが多いんだよ、わかれ」
「混んでるんだよ~ッ!」
「誰のせいでこんなことになったか、わかってるのか甲ちゃん」
「それについては謝る、すまん。悪かった。だがまだ人間の尊厳までは捨てたくないんだよ。男の矜持ってやつだ。そもそも今入ってるやつらは、お前の事情知ってるやつらばかりだろうが。多数決とっても却下されるんだが?」
「はあ......わかったよ、あきらめる。ダメもとで瑞麗先生と阿門に聞いてみるとするよ」
「いやだからなんでその2択なんだよ」
「私から男子寮の大衆浴場という選択肢を奪っておきながら、まだ潰そうとするとか血も涙もないね、甲ちゃん」
「もっとなんかこう、あるだろ?部活練のシャワーとか」
「今の時間帯の校舎にファントムが常駐してるの九ちゃんから聞いててそれいうのか、甲ちゃん。正気?學園祭の襲撃忘れたのか?」
「いや......だから、俺は思いつかないだけであるはずだろ......なあ九ちゃん」
「ううーん、正直なところ全く思いつかない」
「おい」
「だってさー、女子寮の大衆浴場は男子寮と同じくやっちーたちが使ってるだろ、今。事情はわかってても俺と入れ替わった時の月魅みたいに、白岐さんくらいしか許してくれないと思う」
「それはカウンセラーも同じだろうが......。だからって《生徒会長》んとこにシャワー浴びに行くってどんだけ図太いんだよ、アホか」
「今夜は危ないから《遺跡》が近い生徒寮ではなく《生徒会長》邸宅で泊まってねって、実質お泊まり会なのでは?」
「やめろ、大体あってるが言い方が悪意あるぞ」
「他に言い様がない気がするけど」
「だいたいファントムが怪しいって九ちゃんに忠告されたばかりだろうが。真っ先にねらわれかねないのはお前だぞ、翔ちゃん」
「その私を真っ先に排除しにかかったやつがなんかいってる」
「いやだから、それはな......」
「みんなが風呂出るまで待っててよ、翔ちゃん。俺たちも待ってるからさ」
「嘘つけ。お前ら揃って湯冷めするからってすぐ阿門邸いく未来しか見えない」
「大丈夫大丈夫、置いて行かないよ、安心して」
「そこまで薄情じゃねえさ」
「マラソンで一緒に走ろうねとか、テスト勉強しないよね、って約束並みに信用できないんだけど、君達。1回私の目を見ていってみろ」
あからさまに目を逸らされて、私はため息をついた。そして携帯のバイブレーションが鳴ったので、そのまま携帯をひらく。
「あ、よかった」
「ん?」
「え?」
「瑞麗先生いいって」
「はッ!?」
「はいぃッ!?!」
「まてまてまて何だと!?何考えてんだ、カウンセラーッ!今の翔ちゃんは体と精神が融合して、男になっていくんだから気をつけろって忠告した張本人じゃねーかッ!」
「る、る、瑞麗先生の部屋にお呼ばれされるとか羨ましすぎるぞ、翔ちゃん!ずるいッ!!」
「おいこらどさくさに紛れて何言ってんだ、阿呆!」
「痛いッ!常識的に考えろよ、普通に考えて青少年の夢じゃないかッ、美人すぎる保健医の部屋にお呼ばれしてシャワー借りるとかッ!」
「うるせえよ、唾飛ばすな汚ねえな」
「なに騒いでるのか知らないけどさ、《遺跡》の件について対応に追われてるはずの瑞麗先生とそんな雰囲気になるわけないじゃん。あと30分もないんだよ?」
「ダウトーッ!そのにやにやはなんだよ、翔ちゃんッ!!」
「......そういや、雛川とカウンセラーとどっちが好みか八千穂が聞いたとき、カウンセラーって即答してたな、翔ちゃん。弟みたいに思われてるやつから噛み付かれると可愛い反応するもんだって」
「えええええッ!?なんだよそれ、聞いてないッ!えっ、マジでもう女の人好きになっちゃうレベルなのかよ、翔ちゃんッ!この裏切り者ォッ!!」
「いや、わかんねーぞ九ちゃん。やけに生々しいくらい具体的だったからまさか女も男もいけるとかいうオチじゃないだろうな」
「えええッ」
「君ら、いつから成績表に《想像力豊かです》って書かれるようになったんだよ。童貞もここまでくると妄想たくましいな」
「誰が童貞だよ、失礼なっ!」
「翔ちゃん、いくらなんでも言っていいことと悪いことがあるんだが?」
「いやだって......ほら、ねえ?」
「翔ちゃん、翔ちゃん、女性から男性にだってセクハラは当てはまるんだぜ?」
「その生暖かい視線はなんだよ、やめろ。不愉快だ」
「あはは、冗談だよ、冗談。この体の持ち主が童貞じゃないんだから、そこそこモテてる君らが童貞なわけないよね、わかってるって、心配しなくてもさ」
「はあ......デリカシーってもんがねーのか、お前は」
「大人のお姉さんにそう言われると新しいトビラ開きそうになるけど、翔ちゃん男の子だしなあ」
「いっぺん黙れ」
「いたっ」
私が吹き出しているとメールが来たのか、またバイブレーションがきた。
「あ、阿門とこも大丈夫みたい」
「......まじかよ」
「さすがに俺も鍵貰ってないのに入る勇気はないな~......セキュリティすげーんだもん」
「なんで知ってんだ、そんなこと」
「《ロゼッタ協会》による内部資料です」
「おい」
「まさかどっちも大丈夫だとは思わなかったな~......さあてどうするか」
私はメールを見比べながらひとりごちた。