五等分あらため六等分の花嫁   作:ウサガミ

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■等分の花嫁2

コンコンコンとノックを三回する。

ある程度小さめで部屋の中にのみ聞こえそうな声で呼び掛ける。

 

「六歌だけど、例の本返しに来たよ」

 

ドアを静かに開け顔を出し左右を確認した後に私を一瞥する部屋の主。

 

「…入って」

 

家族相手に警戒しすぎだと思うけどなあ…

 

 

ーーー

 

私の訪ねた部屋の主は三玖だ。

私と三玖の共通点はどちらも社会科が得意科目というところだ。

ただその範囲が違う。

三玖は主に歴史、さらに詳しく言えば日本史が得意だ。

その理由は四葉からもらった戦国時代が舞台の歴史シミュレーション系のゲームらしい。

…戦国時代じゃなく中国の三国時代の方だったら世界史が得意になったのかと益体もないことを時折考える。

 

私は地理が得意だ。とある事情で登山にハマり地図の読み方を覚えていったのが要因だ。

 

お互いの得意の範囲は違うがその範囲が重なる瞬間が少なからずある。

戦国武将などが戦ったり陣を張ったりする場所は山だったり川の近くもあるのだ。

時代が違えど日本なのだ、何もファンタジーのように異次元で戦ってるわけではない。

だからそれはある意味必然だった。

 

おそらくその山は有名な戦いで武将が陣を張った場所だったのだろう、そこへの登山に私が誘った時に三玖は迷う素振りを見せた。

結局、四葉ほどの体力や私ほどの持久力があるわけでもない三玖は誘いを断る。

 

しかしその時の三玖の素振りが気になり、後でその山のパンフを確認してわかったのだ。

三玖は歴女というやつだと。

 

ーーー          

 

私が返した本を隠し本棚に戻す三玖に疑問を投げかける。

 

 

「あのさ、三玖は私以外にこのこと話す気はないの?」

 

「ないよ」

 

即答である。

 

「…六歌にだってホントは知られたくはなかった」

 

「私は良い趣味だと思うけどね」

 

「じゃあ周りの女子にそんな子いた?」

 

「…いなかったね」

 

「でしょ?」

 

会話が続かない。

三玖には家族だからこそ私の今の言葉響かないのかもしれない。

でも、もし家族以外の誰かが一歩でも踏み込んで来てくれたなら三玖は自分の殻から抜け出せる、そんな気がする。

 

家族だからこそ見えるものがある。

同時に家族だからこそ見えないものもある。

他人でもまた然り。

それは人それぞれ立場立ち位置があるための必然だ。

 

まあ、私のように考える人は少ないだろう。

実際人は自分の視野でしかものを見れない、それもまた事実なのだから。

 

 

「わかったわかった降参だよ」

 

ホールドアップのポーズをとり降参の意を示す。

 

「わかったならそれで良い」

 

 

コンコンと外から音がなる。

それ確かトイレノックなんですが…

 

 

ーーー

 

三玖の部屋に新たに来たのは四葉と例の男子生徒、

確か上杉風太郎とか言う名前だったかな?

要件としては男子生徒くんは家庭教師になったから下のリビングで皆で勉強しようとのことだ。

 

 

 

「嫌」

 

「大体なんで同級生の貴方なの?この街にはまともな家庭「それさっきも聞いた!!」 

 

至極当たり前の反応をする三玖。

何故か正座で座る四葉と例の男子生徒。

そしてその二人の要件を完全拒否する三玖。

似た反応を既に味わったのか三玖の言葉を遮りツッコミのような言葉を被せる男子生徒。

 

「…あのー六歌は?」

 

彼の代弁者なのかおずおずと私にも聞いてくる四葉。

 

「これは私も三玖と同意見かな、だって普通にまだ同じ範囲を習ってる同級生より大学生とか社会人の人が適任じゃないかな?」

 

「そう、私もそれが言いたかった」

 

三玖の賛同と同時になんとも言えない苦悶の表情を浮かべる四葉と男子生徒くん。

 

 

「わかったよ」

 

「上杉さんまだ一花と二乃がいますよ!」

   

大概の人が納得すると思われる一般論で押されて今はこれ以上は無理と悟ったのか男子生徒くんと四葉が部屋を去る。

 

それを見送る私と三玖。

 

 

「こういうのって外堀を埋めるって言うんだっけ」

 

「若干違うかもだけど。まあ、どっちにしろ出来ないと思うけどね」

 

 

「あ、そう言えば六歌、私のジャージ見た?」

 

「見てないよ。ないの?」

 

「うん、さっきまではあったんだけど…」

 

「…そう言えば男子生徒くん、上杉風太郎が来たのは今日だったよね?」

 

「そうだけど、まさか…?!」

 

 

  

ーーー

 

三玖の部屋を粗方探し終えて結論として男子生徒くん、上杉風太郎を被疑者と仮定して廊下で待ち構える事にした私達。

 

 

「…」

 

「…」

 

そして一花の汚部屋から出てきた容疑者。

溜め息でも出そうな雰囲気で歩き出すがその進路上には私と三玖がいる。

 

 

「フータローだっけ?聞きたいことがあるの」

 

「三玖の体操服が無くなったんだって、ちなみに赤のジャージね」

 

「そうか、見てないな」

 

「さっきまではあったの、フータローが来る前まではね…」

 

 

ジト目で男子生徒を見る、いや疑う私と三玖。

ようやく疑われてると察して顔を青くする男子生徒。

 

「盗っ「ってない!!」

 

なんだろう、男子生徒くんってツッコミの天才かな?

絶妙すぎて私は一瞬本題を忘れかけた。

そんな一瞬の空白のあとに下のリビングから声をかけられる。

 

「おーい、クッキー作りすぎたんけど。食べるー?」

 

 

二乃ちゃんの声に反応して見るとリビングの見える範囲にジャージ姿の二乃ちゃんがいた。

私はジャージの胸元にある漢字を見逃さなかった。

 

 

「見間違えかな、二乃ちゃんのジャージに《三》っていう漢数字が見えるよ」

 

「…二乃」

 

「疑いは晴れたようだな」

 

潔白を証明され清々しい顔をした男子生徒くん。

そのすぐ後に汚部屋から出てくる一花と四葉。 

 

「ふわぁ…」

 

「あれ?上杉さんに三玖と六歌こんなところでどうしたんですか?」

 

「何ちょっとした勘違いがあっただけだ、それより早く下のリビングに行くぞ」

 

 

先に降りていく3人を見つつ私はポカンとしてしまった。

 

 

「…ま、まあ、誰にでも間違えはあるよね三玖」

 

「それよりも問題は二乃」

 

 

 

ーーー

 

目的はまちまちだがリビングに集まったのを見て男子生徒くんは気をよくしていた。

これで家庭教師が出来るとでも思ったんだろう。

 

「よし、これで5人は揃った。勉強を…」

 

だが一瞬で間違えに気がつかされる。

 

「美味しい~何味これ?」

「こっちも美味しいよ一花」

 

「なんで私のジャージ着てるの?」

「だって料理で汚れたら嫌じゃん」

「今すぐ脱いで!」

「ちょ!止めて!」

「返して!」

「後で!後で返すってばあ!」

 

 

「上杉さん、ご心配なく私は勉強してますよ」

 

 

男子生徒くんの味方じゃないけど、

四葉、名前を書くだけじゃ高校生の勉強にはなってないと思うよ。

       

「私、五月にもクッキー渡してくるね」

 

そういって小皿に少しクッキーをとりわけ、場を離れる私。

 

 

ーーー

 

コンコンコンと三回ノックした後ドア越しに話す。

 

「五月、クッキー食べる?」

 

「彼は?」

 

男子生徒くんのことか。

 

「まだリビングにいるよ」

 

「なら私はいりません!」

 

「そっか、じゃあ取り分けたこのクッキーも私が食べるね?」

 

慌ててドアを開ける五月。

 

 「ま、待ちなさい六歌!取り分けた分があるなら私の部屋で食べましょう!」

 

「かかったね?」

 

「うぐ…もう意地悪ですね。…入ってください六歌」

 

ーーー

 

「やっぱり五月も同意見なんだね」

 

「当然です、いくら頭が良くてもあくまで彼は同級生です。アドバイスならともかく家庭教師になるのは不自然ですし、それに彼はあの時…」

 

「あの時?なんのこと?」

 

「いえ、何でもありません」

 

「そう?ふあ…眠くなってきたなあ。私そろそろ自分の部屋に戻ってるよ」

 

「大丈夫ですか?また登山に行ったりしてるんでしょうか?」

 

「最近は行ってないよ。雪山登山は今のままじゃ無理そうだから体力作りの真っ最中なんだよ」

 

「それで体を壊すようなら本末転倒でしょう?ほどほどにするんですよ六歌」

 

「うぐ…了解でーす…」

 

 

そう言いながら五月の部屋から自分の部屋に戻る。

 

今日は変な夢見なければ良いな。

 

大火事の夢もデタラメ人間の万国ビックリショーも今の私は求めていないのだから。

 

日常というかけがえのないものが今の私には大事なのだから。

 

 

 

 

 

 

   

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