とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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今回も一話完結の短編です。


では本編をどうぞ!

※十月十八日《七の皮盾》を《七の青壁》に変更。


プレイヤーキラーとの遭遇

 □<ウェズ海道> 【狩人(ハンター)】レント

 

「ん〜今日もクエスト大成功だったね〜お兄ちゃん」

「そうだな、最近は大分このゲームにも慣れてきたし、クエストも安定してこなせる様になってきたな」

 

 今、俺達は王都西の<ウェズ海道>でのクエストを無事に終えたところだった。

 

「やっぱり<エンブリオ>が()()()()になると戦闘もやりやすくなるね!」

「お前はそうかもしれないが、俺の【ルー】は進化してもあまり強くはならなかったからなぁ」

 

 つい最近、俺達の<エンブリオ>は第二形態に進化した。

 ミカの【ギガース】は武器としての性能とステータス補正が大きく上昇し、スキル(バーリアブレイカー)のレベルも上がった。そのため王都周辺の多少強いモンスターも、アクティブスキルと併用すればほぼ一撃で倒すことが出来る様になった。

 

「いや、お兄ちゃんの<エンブリオ>も獲得経験値補正(光神の恩寵)が+150%になったじゃない。それに新しいスキルも覚えたし」

「それは嬉しいんだが…………ステータス補正は一切変わらなかった(オールGのままだった)し、新しく覚えたスキル……《全技能(オールスキル)》も()()()()()()()()()()だしなぁ……」

 

 新スキル《全技能》の効果は“下級職・上級職で取得したジョブスキルを()()()()()()()()()()()()()()全て使用可能にする”と言うものであった。

 ……デンドロのジョブシステムでは、現在就いているメインジョブに関係するジョブスキルしか使えないため、このスキルがそういった制限を無くすスキルであることはわかるのだが…………。

 

「それはつまり下級職一職目の今では何の意味もないスキル、という事なんだよなぁ」

「まあまあ、お兄ちゃんならすぐにレベルが上がるし別にいいじゃない」

「……そうだな、そろそろ【狩人】のレベルも50になりそうだし、次のジョブを考えるか」

 

 そうして俺達はいつも通りに王都への帰路についていった。

 

 

 ◇

 

 

 喋りながらしばらく歩いて行くと、ようやく王都が見え出した。

 ……ふむ……しかし…………

 

「ミカ、()()()()()()()()?」

「うん、さっきからずっと見られているよね?」

「ああ、…………それに《殺気感知》にも反応があった」

「ふーん…………そこの人達、いったい私達に何の用かな?」

 

 ミカは【ギガース】を取り出し、俺は弓に矢を番えて視線を感じた方向に振り向いた。

 

「ゲッヘッヘ、なーんだ、気付いていたのか〜」

「…………」

 

 すると、山賊っぽい格好をして手に剣とデカイ盾を持ったモヒカンの男と、頭に黒い覆面を被った男が物陰から出てきた。

 

「そっちの覆面の男、それだけ殺気を飛ばしてくれば嫌でも気づくさ」

「ていうか、気配の消し方下手すぎ、もっと上手く隠れたら? ……で、一体何の用?」

 

 まあ、大体察しはつくが…………

 

「そりゃあ悪かったなぁ〜、生憎隠密系のジョブは取ってなくてなぁ。……それと要件だが、俺達はいわゆるPK(プレイヤーキラー)ってやつでなぁ、取り敢えず金目の物置いてくかキルされるか選べや。<マスター>同士なら何やっても犯罪じゃないからなぁ〜」

 

 やっぱりそういう類いの連中だったか。……格好からしてそういうRP(ロールプレイ)をしているのが丸わかりだったしなぁ。

 しかし、さっきから()()()()()()()()()()()()()()あっちの覆面の男はいったry「おい……」ん? 

 

「貴様らは“カップル”か?」

「「はっ⁇」」

「貴様らはカップルかと聞いていルゥ〜〜〜〜〜‼︎」

 

 なんかいきなり叫び出したぞコイツ! ってか、カップルって…………

 

「いや、俺達はカップルじゃなry「黙レェェェェェェェェェェェェェェ‼︎」えぇ……」

「貴様らは男女二人だけで行動していたぁ〜〜! つまり汝らカップル罪ありき‼︎加えてぇぇ〜さっきから仲睦まじい空気を醸し出しながらくっちゃべりおってぇ〜〜ギルティ(有罪)‼︎」

 

 あーこれはダメだな。人の話とか聞かないぐらいに拗らせていらっしゃるタイプだわ。隣のモヒカンの男も呆れた顔をしているし。

 

「我が名は“ボッチー“‼︎貴様らの様な悪しき存在をこの世から一片残さず爆☆滅させるモノなりぃぃ〜〜〜〜‼︎出でよぉぉ〜〜〜〜【ベンヌゥゥゥゥゥ】‼︎」

 

 すると、男の左手から()()()()()()が現れた。あれは……ガードナーの<エンブリオ>か⁉︎

 

「フゥフハハハハハァァァァ〜〜〜‼︎さあ! いけぇ〜い【ベンヌ】よ! あの忌々しいカップルを爆☆殺するのだぁぁぁぁぁぁ〜〜〜‼︎《爆・炎・鳥(エェェェェェクスプロォォォォォジョン)》‼︎」

 

 その声と共に青い鳥……【ベンヌ】が()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お兄ちゃん! ()()()‼︎」

「ちぃぃ! 《空想秘奥(ブリューナク)》! 《ハンティングアロー》‼︎」

 

 俺の放った青白く輝く矢が、炎をあげる【ベンヌ】に直撃し…………

 

ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン‼︎

 

 その結果起こった大爆発に俺は吹き飛ばされた。

 

 

 ◆◇◆

 

 

 ■<ウェズ海道> 【戦士(ファイター)】モヒカン・ディシグマ

 

「ハァーッハッハァー! この世に蔓延る悪しきカップルをまた1組消しとばしたゾォォ〜〜‼︎」

 

 あー……まーたボッチーの悪い癖が出てるな…………全く、さっきもオレの<エンブリオ>のスキルで爆発を防がなかったらこっちまでヤバかっただろうに…………

 

「おいコラ、自分達の近くでそのスキルを使うなっていつも言ってるだろ…………って、聞いてねーし」

 

 はあ……コイツ(ボッチー)も以前まではこんな性格はしてなかったんだけどなぁ…………

 こうなった理由は現実(リアル)で付き合っていた彼女に盛大にフラれたのが原因なんだが…………まさか、デンドロ内で男女ペアの<マスター>を片っ端から爆殺する様になるとはなぁ…………

 まあ、オレもリアルでのストレス発散の為に野盗ロールプレイなんてしてるから人の事は言えないが。

 

「取り敢えずあの二人から金目の物をry「へえ? 誰に何をするって?」……なっっ!」

 

 爆煙が晴れた其処には、二人組の片割れである白髪の少女が立っていた。

 

「ヌゥァゼだぁぁぁぁぁぁ! 何故生きているぅぅ〜!」

「ん? だってお兄ちゃんのお陰で爆発自体は遠くで起きたし、あとは距離を取って伏せていれば問題なかったよ? …………あと、私とお兄ちゃんはカップルじゃなくて血の繋がった兄妹だからね」

 

 チッ、途中で【ベンヌ】が撃ち抜かれた所為で威力が足りなかったか。

 

「だがヨォ、頼りのお兄ちゃんは其処で伸びてるぜぇ〜」

 

 もう一人の金髪の男は地に伏せたままピクリとも動かない。《看破》で見てみるとHPも()()()()()()()()おそらく【気絶】しているんだろう。

 

「ん? お兄ちゃん? …………ふーん、()()()()()()()()……だって私の方がお兄ちゃんよりも強いからね。……だいたい、そっちの覆面の人はさっき<エンブリオ>を自爆させたからもう使えないでしょ?」

 

 そう言って、地に伏せた男に顔を向けた少女は、すぐに手に持った大型のメイスの様な<エンブリオ>を構えこちらに向き直った。その表情は非常に鋭く、すぐにでも此方へ飛び掛かってきそうだった。なので、オレも少女に向かって自身の<エンブリオ>を構えた。

 

「フゥフハハハハハァァァァ! 私の【ベンヌ】の攻撃に耐えたコトは褒めてやろう‼︎だがぁぁぁ【ベンヌ】のスキルが自爆だけだと思ったら大間違いダァァァ〜〜! さぁ甦れ《再誕(リ・ボー)「《ハンティングスロー》」コヒュッ!」

「なにぃ⁉︎」

 

 ボッチーの喉には()()()()()()()()()()1本の投げナイフが刺さっており、その所為でスキルの発動は中断されていた。

 ……そしてナイフが飛んで来た方向を見ると、【気絶】したと思っていた男が何かを投げた姿勢で起き上がっていた。

 

「あの野郎っ! 実は【気絶】なんてしてなry「はい隙あり《スマッシュ》」なあ‼︎」

 

 声に反応してボッチーの方を見ると、男に気を取られていた隙に接近していた少女が、手に持ったメイスでその頭を叩き潰しているところだった。

 

【パーティーメンバー<ボッチー>が死亡しました】

【蘇生可能時間経過】

【<ボッチー>はデスペナルティによりログアウトしました】

 

 そんなアナウンスが、ボッチーが死亡した事を伝えてくる。

 

「さて、一人目は終わり。……次はそっちか」

 

 ボッチーをキルした少女が此方に向き直る。その表情は()()()()()()だった。

 

「ヒイッ! セッ《七の青壁(セブン・シャッター)》‼︎」

 

 その表情に怯んだオレは自身の<エンブリオ>……【アイアス】のスキルを発動して少女との間に青い光の壁を作り出した。

 この《七の青壁(セブン・シャッター)》は強固な光の障壁を作るスキルだ。その防御力はボッチーの【ベンヌ】の自爆も防ぎきるほど! これで隙を作って逃ry「邪魔、《スマッシュ》」

 

ガッシャァァァァァァン! 

 

 そこには少女が無造作に放った一撃によって、鉄壁の筈のスキルがまるでガラスであるかの様に砕け散る光景があった。

 

「なっ! 何でこんなあっさry「隙が大きすぎだ《パラライズアロー》」がッ⁉︎」

 

 その光景に動揺していると二の腕に矢が突き刺さり、その後すぐに体が動かなくなった。

 

こひぇはまふぃ(これは【麻痺】)?」

「ふむ、流石に【麻痺蜂の矢】を使うと効果が早いな」

 

 そんな声と共にメイスを持った少女が近づいて来た。

 

まっひぇ(待って)……」

「ん? そっちが先に仕掛けて来たんだし……それに<マスター>なら別に()()()()()()()()()?」

 

 そんな言葉と共に無表情で赤い目を光らせた少女が手に持ったメイスを振り下ろし…………

 

【致死ダメージ】

【パーティー全滅】

【蘇生可能時間経過】

【デスペナルティ:ログイン制限24h】

 

 

 ◇◆◇

 

 

 □<ウェズ海道> 【狩人】レント

 

「やれやれ、傍迷惑な連中だったな」

「そーだねー、あっアイツらが落としていったアイテムがあるよ! 拾っとこう」

 

 PKとの戦闘を終えた俺達は【ポーション】でHPを回復させつつ、連中が落としていったアイテムを拾っていた。……うーむ、大した物は落とさなかったな。これじゃあ【ポーション】代を補填出来るかどうかか……

 

「しっかし、カップルに間違われるとはね〜。いや〜私が美少女過ぎるのが悪いのかな〜」

「アバターがリアルから大分弄られているからな、身長とか」

「お兄ちゃんひど〜い! 身長と髪の色と目の色ぐらいしか変えてませ〜ん!」

 

 しかし、さっきはコッチの策が上手くハマったな。

 

「しかしお兄ちゃん、()()()()()()とかよくやるねぇ。……私はパーティー用の簡易ステータス画面で気づけたし、それに合わせて立ち回ったけど」

「有効な手ではあっただろう? 連中の《看破》では俺の状態異常までは判らなかったようだし」

 

 今回の戦いはミカの【ギガース】がモヒカンの<エンブリオ>に相性で勝っていたり、俺のスキル(空想秘奥)で覆面男の<エンブリオ>の爆発の威力がある程度抑えられたことが勝因だったのだろう。

 

「やはりデンドロの戦いは相性が重要だな」

「そーだねー、あと獲物の前で舌舐めずりとかは三流のやる事だよね〜」

「まあ、わざわざ俺達の前に出ずあの<エンブリオ>で奇襲して爆発させていれば良かったのにな」

 

 そんな話をしつつ俺達は王都への帰路に戻っていった。




あとがき・おまけ、各種オリ設定・解説

兄:PKもゲームの楽しみ方の一つではあるのだろう、まあ襲い掛かって来たのならPKKする(殺す)だけだし。

妹:本気になったら無表情になる。

全技能(オールスキル)》:【ルー】の第三スキル
・下級職・上級職で取得したスキルを全て使用可能にする。
・副次効果として《ペンは剣よりも強し》などのオフに出来ないスキルもオフにすることが出来る効果もある。

モヒカン・ディシグマ:今回のかませその一、モヒカン
・ボッチーとはリアフレ
・相方の行動に困惑しながらも自分もPK行為を楽しんでいた。
・今回の一件で“もうPKからは足を洗ってこれからは清く正しいモヒカンとして生きるよ”と言ったとか。

ボッチー:今回のかませその二、覆面
・メインジョブは【魔術師(メイジ)
・デンドロ発売の少し前に今まで付き合って来た彼女に手酷くフラれた。
・そのせいでデンドロ内ではリア充爆破マシーンと化した。
・今回の一件で相方とも相談しPKからは足を洗って、デンドロ内で新しい出会いを探す事にしたとか。

【爆炎再誕 ベンヌ】
TYPE:ガードナー
能力特性:自爆・再誕
到達形態:Ⅰ
保有スキル:《爆炎鳥(エクスプロージョン)》《再誕鳥(リ・ボーン)
・ボッチーの<エンブリオ>
・モチーフはエジプト神話に伝わる不死の霊長“ベンヌ”
・紋章は“太陽を抱く鳥”
・《爆炎鳥》は【ベンヌ】を自爆させるスキルで、その威力は到達形態に比例。
・発動前に高威力の攻撃を受けると誘爆してしまう。
・《再誕鳥》は破壊された【ベンヌ】を自身のMPを注ぎ込むことで再生させるスキル。
・自爆以外の方法で破壊された場合、消費MPは大幅に増大する。
・………まあ、スキルの発動宣言をする前に喉を潰されてはどうしようもなかった。

【青壁皮盾 アイアス】
TYPE:アームズ
能力特性:障壁展開
到達形態:Ⅰ
保有スキル:《七の青壁(セブン・シャッター)
・モヒカン・ディシグマの<エンブリオ>
・モチーフは“ギリシャ神話の英雄大アイアスが持つ盾”
・紋章は“盾を構える英雄”
・形状は青い大楯。
・スキル《七の青壁》はストック制の障壁展開能力。
・ストック数は七つ、一度使ったストックは1時間で回復する。
・また、遠隔・間接攻撃を受ける場合は強度は上昇する。
・障壁は耐久値が無くなるか、一定時間経過、または自身が消すまでその場に存在し続ける。
・………なのだが、到達形態が上でバリアブレイク特化の【ギガース】とは相性が悪かった。

【麻痺蜂の矢】:【パラライズ・ホーネット】の毒針で作られた矢
・刺さった相手を一定確率で【麻痺】させる。
・兄はこれと《パラライズアロー》組み合わせて【麻痺】させる確立を上昇させた。


読了ありがとうございます!次回も短編の予定です。
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