それでは本編をどうぞ!
□<ノズ森林> 【
「あるーひー、もりのーなかー、くまさーんにー、であーったー」
私は今、歌いながら
そういう訳で私も戦士系のジョブクエストを受けようと思ったんだけど……戦士系、と言うか前衛物理職のジョブクエストを受けるには、ある程度の実力がある事をギルドに証明しなきゃならないみたいなんだよね。確かに前衛物理職のジョブクエストは、殆どが討伐・護衛系だから実力のない人には任せられないだろうけど。まあ、実力をギルドに証明するためのジョブクエストもあったし、私もその中から“指定されたモンスターの討伐”のクエストを受けている最中なんだけどね。
「でもやっぱり、お兄ちゃんがいないと狩りの効率は落ちるよね〜。特に索敵面で」
ここ<ノズ森林>の奥地には擬態や隠密に優れたモンスターが生息しているからね。さらにそういった相手は状態異常を使って来ることも多いし。【狩人】のジョブに就いているお兄ちゃんが居れば、そういったヤツらもこちらから狩りに行けるんだけど……まあ、そういった連中の奇襲に関しては
むしろこの森の中で私にとって厄介なのは、仲間を読んだりして物量で襲い掛かって来るタイプなんだけど。私の戦い方は一体一体メイスで相手を叩き潰していくスタイルだから、どうしても相手の数が多いと対処しきれないのが出てくるし。やっぱそういう時にはお兄ちゃんのフォローが無いとキツイ。
まあ、そういった連中に対処できる人にとって、此処は相当いい狩場らしいんだけどね。
「私も対処はできるんだけどね〜…………ん? ……おっと後ろかな? 《スマッシュ》」
振り向きざまに放ったスキルが、
……まあこうやって下手な歌や独り言で敵を誘き寄せて、それを“近い勘”で把握して返り討ちにする……というやり方で今は狩りをしている。
「あっ、【レッサーカメレオンバジリスク】は指定されたモンスターの中に入っていたね。ラッキ〜」
まあ、コイツも“遠い勘”に少し反応があったから選んだんだけど。
…………私が生まれつき持っている勘には主に二種類ある。一つ目は自分や周りに降りかかる直近の危険を感知して、それをどうすれば回避出来るのかを示す“近い勘“。もう一つはいつか遭遇する危険に対応するための行動を示す“遠い勘”…………正直言ってコッチの勘は私にもよくわかっていないし、反応も大分曖昧に感じる…………がある。
…………この前エルザちゃんのピンチに反応したのは“遠い勘”のほうで、これまでのパターンからするといつか私に降りかかる危険に対して
「“遠い勘”の方は変な方向に反応することもあるからなぁ〜……
その反応は私をこの森の奥に行かせたいようだった。
「まっしょうがない、所詮ここは私にとってはゲームの世界だし気楽にいきますか!」
そうして、私は森の奥へと足を踏み入れていった。
◇
「…………あれ、何?」
そこで目にした光景は…………何とも言葉にし難いモノだった。
『クマ────ッ! 撃っても撃ってもキリが無いクマ! 一体この
そこには様々な種類の大量の魔蟲系モンスターが、
…………一瞬モンスター同士の争いかと思ったけど、よく見るとあっちのクマは着ぐるみだし頭上に名前もないから多分<マスター>かな。……普通ならクマの人が蟲たちにあっさりやられそうなもの何だけど……ガトリング砲の殲滅力と周辺の地形を利用した立ち回りでむしろ圧倒している。……と言うより、あれは蟲たちの動きを完全に先読みしているね、あれだけの立ち回り私でも出来るかどうか…………
まあ、あの蟲たちの動きも明らかにおかしいしね…………さっきから大量に倒されているのに1匹たりとも逃げようとしていないし…………それも同じ魔蟲系と言うだけで全く違う種類のモンスター達が。
「うーむ、あの蟲たちの動きは明らかにおかしいね…………
『クマッ⁈そこの少女‼︎そっちに何匹かいったクマ!』
どうやら蟲たちが私にも気づいたらしい。…………とりあえず目の前に迫ってきた【ポイズンホーネット】を打ち払い、死角から飛び掛かってきた【ハイドスパイダー】を
「ヘーイ! そこのクマさん! 悪いけどチョット横入りするよ‼︎
『へぇ…………いや、むしろ一緒に戦ってくれると助かるクマ。俺の攻撃が届かない部分のフォローをお願いしてもいいクマ?』
「オッケー! …………ところでクマさんお名前は?私はミカ!【戦士】をやってるよ‼︎」
『俺の名前はシュウ・スターリングだクマ、【
これが私と…………後の<超級>、<アルター王国三巨頭>の一人“シュウ・スターリング”との出会いだった。
◇
『あーやっと片付いたクマ……いくら何でも数多すぎクマー……』
「ホントにねー……」
あの後、主にシュウさんがガトリング砲で蟲たちを薙ぎ払いつつ、私が攻撃範囲の外や死角から迫るヤツを潰していく形で戦って、どうにか包囲していた連中を全滅させた。…………やっぱり範囲攻撃が出来ると殲滅能力がダンチだね!
…………まあ、コイツら数は多かったけど行動パターンはほとんどただこっちに向かって来るだけだったので、後半は殆ど作業だったんだけど…………やっぱり数多すぎ!
『いやー、ミカちゃんがいてくれて助かったクマ……流石にあの数を1人で相手にするのはキツイクマ』
「さっきの戦いかたを見る限り、一人でも時間をかければ大丈夫そうだったけど…………それよりも《看破》で軽く見てみたけど、コイツら全員
『なるほどな、さっきのコイツらの行動はそれが原因か…………つまり
ガサガサガサ!
その言葉に応えた訳じゃ無いだろうけど、森の中から何かがこっちに向かって来る音がした…………すぐに私とシュウさんは戦闘態勢を取ってそちらに向き直った。
『KIEEEEEEEEE‼︎』
そうして森の中から現れたのは全長五メートル程の白いカマキリだった…………頭の上には【テンプテーション・マンティス】の文字があった。
「フーン、あからさまな名前だね……コイツが元凶か」
『そうみたいクマね』
そう言ったシュウさんがガトリング砲を【マンティス】に向けてぶっ放した。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ‼︎
『KIEEEEEEEEEEEEE⁈』
しかし、放った弾丸は【マンティス】の外殻に大半を弾かれてHPをたいして減らせていなかった。
『チッ!
「オッケー…………来るよ!」
『KIEEEEEEE‼︎』
さっきの銃撃に怒った【マンティス】が腕の鎌を振りかざして襲い掛かってきた。その速さは以前戦った【
「さて、動きを封じるならまずは足を狙うのが鉄板だよね! 《スマッシュ》‼︎」
『KIEEEEEEEEE⁉︎』
そんな事を言いつつ私は【マンティス】の後脚の一本を砕いていった。
…………うん、さっき
『なるほどな……アレなら援護は要らなさそうクマね。じゃあコッチも準備するクマ……“バルドル第一形態”』
その言葉と共にシュウさんのガトリング砲が腕に装着された大砲に変わっていた。やっぱりあのガトリング砲は<エンブリオ>だったみたいだね。じゃあ、アレを打ち込む隙を作る為にもう少し削りますか!
『KIEEEEEEEE⁉︎』
その後、私の攻撃で後脚が殆ど使いものにならなくなった【マンティス】は、ただ闇雲に鎌を振るう事しか出来なくなっていた。そこに鎌を振っても届かない方向から接近したシュウさんが【マンティス】に大砲を向け…………
『いい加減コレで終わりクマ!《ストレングス・キャノン》‼︎』
放たれた光弾が【テンプテーション・マンティス】の上半身を吹き飛ばした。
◇
「あー今日は疲れたよー。しばらく蟲は見たくなーい!」
『同感クマ…………でもまあ実入りは良かったクマ』
あの後【テンプテーション・マンティス】を倒した私達は、ソイツが落とした【宝櫃】(中身は換金アイテムだった)と他の蟲たちのドロップアイテムを拾って王都に戻ってきた。そして、それらのアイテムを換金し二人で半分づつ分けた…………モンスターを倒したのはほとんどシュウさんだったし、私は途中参加だったから取り分は3割くらいで良かったんだけど『助けてくれたお礼も兼ねているから半々でいいクマ』と言われて押し通された。
そういえばずっと気になっていたんだけど…………
「そういえば、なんで着ぐるみなんて来てるの?それ着ない方が絶対動きやすいし強いでしょ」
『うむ…………それは聞くも涙、語るも涙の事情があるクマ』
「ふむふむ」
『チュートリアルでキャラクタークリエイトがあっただろ? そこで俺はリアルの自分をベースにアバターを作ろうとしたクマ』
「あー私もそうしたよ」
『そこでうっかり間違って何も変えずに決定したクマ』
「…………クマー」
ああうん、それじゃ着ぐるみは脱げないよね…………デンドロは現実視だとリアルと変わらないし…………
「ていうか管理AIは対応してくれなかったの?」
『…………その時担当した管理AIが面白がって変えさせてくれなかったクマ…………おのれ! ハンプティ‼︎』
管理AIにも色々いるんだね…………チェシャさんはあたりだったのかな…………
『その後もこの何の効果も付いていないネタ装備の着ぐるみ買うのに初期費用がほぼ全部吹き飛ぶし、ティアンの人達からも変な目で見られるから各種施設も利用しにくいし、同じ<マスター>からもネタプレイヤー扱いされるし、それでヤケになって“いっそこのまま着ぐるみキャラを貫いてやる!”と語尾をクマ語尾に変えたりしたけど正直キツイクマ…………』
「あ、あはは…………でもクマ語尾は似合ってるよ?」
『ありがとうクマ…………』
うーん、すごい苦労してるなぁシュウさん…………あっそうだ。
「せっかくだからフレコ交換しようよ! シュウさんとはまた一緒にパーティーを組んで見たいし!」
『それはかまわないクマ…………ありがとうクマ」
そうして、私達はお互いにフレンド登録をした。
「じゃあ私は達成したジョブクエストの報告があるから……またね〜シュウさん!」
『おう、また会おうクマ」
こうして私とシュウさんの初めてのパーティープレイは終わったのだった。
あとがき・おまけ、各種オリ設定・解説
妹:今回の主役
兄:今回は出番なし
・司祭系のジョブクエストでとある
シュウ・スターリング:みんな大好きクマニーサン
・強制着ぐるみ縛りプレイで序盤はかなり苦労していた。
・当時はまだティアンが<マスター>の奇行に慣れていなかった。
・この後子供にお菓子を配るなどしてティアンからの信頼を得ていった。
【ポイズンホーネット】【ハイドスパイダー】:<ノズ森林>のモンスター
・今回は【魅了】されていたのでその真価は発揮されなかった。
【テンプテーション・マンティス】:今回の敵
・魔蟲限定の魅了スキル《テンプテーションフェロモン》を使い、魔蟲を操って狩りをする性質がある。
・そのため亜竜級の中でも危険度は非常に高く、操っている魔蟲次第では村一つを滅ぼした事例もある。
・だがスキル特化で自身の能力は亜竜級の中では低い。
・その為チートキャラ二人にはあっさりやられた。
読了ありがとうございます………クマニーサンの口調や行動はコレで良かったかな………次も短編の予定です。