とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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今回からの章は中編を予定しています。


それでは本編をどうぞ。

※3/22 召喚師についての文章を大幅に加筆・修正しました。


そうだ、ギデオン行こう
第四形態と旅行準備


 □王都アルテア 【召喚師(サモナー)】レント

 

「お兄ちゃん! 旅に出ようよ‼︎」

「いきなり何を言いだすんだ?」

 

 指名クエストと<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>との戦いが終わって現実では約五日、こちらでは半月程した頃にミカが突如そんなことを言い出した。

 ちなみに【大狩人(グレイト・ハンター)】はカンスト出来たので、今は面白そうだと思った【召喚師】のジョブに就いている。

 

「だって、この前フォルテスラさんが王都を出て別の街に行くって言ってたから、私もどこかに行きたくなったんだもん!」

「つまり、王国の別の街に行きたいってことか。だったら初めからそう言え。…………まあ、俺も他の街を見てみたいとは思っていたし別にいいぞ。で、どこに行きたいんだ?」

「うーん、フォルテスラさんは王都南のギデオンって街に行くって言ってたし、私もそこに行って見たいな〜。なんか決闘が盛んらしいし!」

「決闘ね……聞いた話だと、この世界の決闘は“死んでも死なない”んだってな」

 

 何でも、決闘が行われるコロシアムでは特殊な結界が張ってあるらしく、その結界の中で起きたことは、例え人が死んだとしても結界を出れば元通りになるらしい。

 …………まあ、そんな結界が無いと、命が一つしかないティアンは迂闊に決闘も出来ないだろうからな。

 

「あと、決闘に勝ったら賞金とかも貰えるらしいよ!」

「ふーん……で、お前は決闘をやりたいのか? まあ、お前なら結構いいセン行くんじゃないか?」

「どうだろうねー、まずは実際の決闘を見てからかな。私のレベルもまだ低いし〜」

 

 …………そうは言っているが、ミカの直感は一対一の決闘の様な状況では非常に有効である。

 何せ攻撃は全て先読みされる上、奇襲・不意打ちの類は一切通じず、更に相手の切り札すらもおおよそ看破してのけてしまうのがミカの直感である。それを突破するには単純にミカの処理能力(スペック)を上回る必要があり、さらに<エンブリオ>である【ギガース】がステータス補正に特化しているため、ミカが対応出来る範囲がより広くなっているのもそれに拍車を掛けている。

 実際、俺もミカ相手に戦って勝つのは難しいだろう……対戦ゲームとかでも俺の勝率は三割ぐらいだからな。それにコイツは直感以外の能力も普通に高いから、単純に腕前で上回ることも難しいし。

 …………まあ、この世界なら広範囲攻撃スキルで決闘場全てを攻撃するとか、解っていてもどうしようもない程に理不尽なスキルとかで攻略される可能性もあるか?

 

「それに私達の<エンブリオ>も()()()()に進化して凄く強くなったし、そろそろ行動範囲を広げてもいい頃だと思うんだ!」

「<エンブリオ>は第三形態までは下級、第四形態からは上級<エンブリオ>と呼ばれている様だからな。…………この国に元からいた<マスター>が言っていた話だそうだが」

 

 実際、ミカの【ギガース】はスキルこそレベルが一つ上がっただけだが、装備としての性能は倍近くになった。さらに、ステータス補正もこれまでの進化の際と比べても遥かに多く上がっており、HP・STR・END・AGIの補正がAに届く程だった。

 …………それに対して俺の【ルー】は…………

 

「俺の<エンブリオ>は上級に進化しても大して強化されてないんだよなぁ……」

「イヤイヤ、お兄ちゃんの<エンブリオ>は今、掲示板とかで話題の()()()()()を覚えたじゃない! それもかなりチートっぽいヤツ‼︎」

「その覚えた必殺スキルである《我は万の職能に通ず(ルー)》が今のところは意味のないスキルじゃ無ければなぁ……なんか前にもこんな事を言った気がするんだが……」

 

 俺の<エンブリオ>【百芸万職 ルー】の必殺スキル《我は万の職能に通ず》は常時発動(パッシブ)型のスキルで、その効果は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 第四形態の現在では、二十個の下級職と十五個の上級職に追加で就くことが出来る様になっており、元からのジョブ枠と合わせるとその最大合計レベルは三千に達する。

 …………ジョブレベル制のゲームで、最大レベルが増える事が凄く強い事なのは解っているんだが…………

 

「レベルが五百にも達していない今の俺には意味の無い必殺スキル、という事になるんだよな……ステータス補正も皆無だし。…………まあ、《光神の恩寵(エクスペリエンスブースター)》のレベルが四になって補正が+250%になったり、《百芸創主(スキルマイスター)》で素材に出来るスキルが四つに増えたりしたから全く強くなっていない訳では無いが……あと、TYPEがテリトリーからルールってのに変わってたな」

「私もTYPEがエルダーアームズに変わってたね、掲示板とかだと上級になったらカテゴリーが上位のものに変わる事があるって情報が出てたっけ。……まあ、お兄ちゃんの<エンブリオ>は大器晩成型みたいだしね、そのうち役に立つよ! と言うかそれでステータス補正まで高かったら完全にブッ壊れだし。…………それに特典武具の【ヴァルシオン】とも相性が良いでしょ?」

「そうだな、そう言う<エンブリオ>なんだから仕方がないか。…………そうすると今後はどんなジョブビルドにするかだな」

「え? 今就けるジョブに片っ端から就けばいいんじゃない? お兄ちゃんの<エンブリオ>ならジョブビルドなんて如何とでもなるでしょ?」

 

 成る程、そう言う考え方も有りか…………確かに今の俺なら下級職をカンストさせるのはそこまで難しくは無いし、レベルが上がれば【ヴァルシオン】の補正も上がって行くからな。

 …………さてと、今後のジョブ構成も目処がついた事だし本題に戻るか。

 

「それで、確かギデオンに行くと言う話だったが、一体どうやって行くんだ?」

「え?」

 

 そう、俺が言うとミカはポカンとした表情を浮かべた。

 

「だから移動手段の話だ、まさか徒歩で行く訳では無いだろう?」

「…………考えてなかった。…………お兄ちゃんよろしく!」

「はぁー……。まあ、ちょうど()()()()()から別に良いんだがな。…………とりあえず、マリィさんのところで準備をするぞ」

「オッケー! お兄ちゃん!」

 

 そういう訳で、俺達は旅行の準備の為にマリィさんのお店に行く事になったのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □<マリィの雑貨屋> 【剛戦棍士(ストロング・メイス・ストライカー)】ミカ

 

「はい、これが中古の小型馬車ね。お値段は三万リルになるわ」

「ありがとうございます、マリィさん」

 

 あれからマリィさんのお店に来た私達は、旅行の準備として中古品の小型の馬車を買ったのだった…………馬車だけじゃ動けないけど、お兄ちゃんには何か考えがあるみたい。

 

「それじゃあ、他に必要なアイテムを買っていくぞ」

「分かったよ」

 

 そうお兄ちゃんに言われたので、私は各種消費アイテムと《着衣交換》スキル付きの私服を買うことにした…………この世界では街中で鎧をつけていても特には咎められないけど、せっかく遠出に行くんだからオシャレとかもしたいしね!

 お兄ちゃんはMPポーションなどを買いつつ、今後のジョブレベル上げの為に使い捨てのメインジョブ変更アイテムである【ジョブクリスタル】を見ていたんだけど…………

 

「使い捨てアイテムなのに高いな【ジョブクリスタル】、一個数万はするんだが。…………マリィさん、使い捨てじゃない【ジョブクリスタル】とかは無いんですか?」

「うーん、【ジョブクリスタル】自体がサブジョブのレベルを上げている時に、メインジョブのスキルが必要になった緊急時の為に持っておくアイテムだから使い捨てで十分なのよねぇ」

「そうなんですか……「まあ、ウチにはあるんだけど」……あるんですか⁉︎」

「ええ、倉庫に仕舞ってあったはずだからちょっと待っててね」

 

 そう言ったマリィさんは店の奥に行き、しばらくして戻ってきた時には手に“先端にクリスタルの付いた長さ五十センチくらいの杖”を持っていた。

 

「これは【ジョブクリスタル・ロッド】と言う杖で、装備スキルに装備者のメインジョブを変更する《ジョブチェンジ》のスキルが付いているわ。…………値段は十五万リルぐらいでいいかしら」

「【ジョブクリスタル】の値段と比べると、かなり安いんですがいいんですか?」

「ええ、さっきも言った通り【ジョブクリスタル】は使い捨てで十分だから、この杖には需要が無くて倉庫の肥やしになってたからね。…………それにこの杖は昔、私が作った物だから必要としてくれる人のもとにあった方が私としても嬉しいわ」

「…………分かりました、じゃあそれを買わせていただきます」

「ええ、お買い上げありがとうございますね」

 

 …………さて! コレで準備が終わったしようやく旅に出れるね‼︎

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □王都アルテア南門前 【召喚師】レント

 

 あのあと、俺は色々なギルドをハシゴして様々なジョブに就くだけ就いた。

 就いたジョブは、まず狩人派生で条件を満たしていた【弓狩人(ボウ・ハンター)】【毒狩人(ポイズン・ハンター)】【罠狩人(トラップ・ハンター)】【夜行狩人(ナイト・ハンター)】、司祭派生で条件を満たしていた上級職の【司教(ビショップ)】と派生下級職の【祓魔師(エクソシスト)】、後は有用そうなスキルが手に入る【弓手(アーチャー)】【闘士(グラディエーター)】【騎兵(ライダー)】【盗賊(バンディット)】【魔術師(メイジ)】【付与術師(エンチャンター)】と言ったところである。

 

「流石に下級職を全部埋めると、今後取りたいジョブが出てきた時に困るからこのくらいでいいか」

「イヤイヤお兄ちゃん一気に取りすぎでしょ、ジョブビルドとか完全に無視してるよね……まあ提案したのは私だけどさ」

「別に構わないだろ、まだ下級職の空きは十個以上あるしな。…………お前もクエストの届け物は持ったか?」

「うん、ちゃんとアイテムボックスに入れておいたよ。これをギデオンのギルドに届ければいいんだよね」

 

 この届け物は旅の準備が終わった後、アイラさんに王都を出る事を伝えに冒険者ギルドに行った時に、彼女から“ギデオンに行くならついでに受けていかないか”と斡旋されたクエストの配達物である。

 何でも、以前の生態系の変動のせいで王都と他の街の交通量が減ってしまったので、この手の配達系クエストが冒険者ギルドに結構溜まってしまっているのだとか。

 

「…………ところでお兄ちゃん。いい加減に移動手段について話してくれてもいいと思うんだけど」

「そうだな。…………まあ見たほうが早いだろう……《召喚(サモン)》──【ホースゴーレム】」

 

 その言葉と共に俺は銅色をした馬型のゴーレムを召喚した。

 

「おお! お兄ちゃんこれは?」

「コイツは俺の召喚モンスター【ホースゴーレム】だ。【召喚師】に就いてから《召喚契約(コントラクト)》してな」

 

 ちなみに召喚師ギルドの人曰く『輸送用の召喚モンスターで戦闘能力はあまり高くないので、最初の召喚モンスターとしてはハズレ』との事…………まあ、月一召喚ガチャが面白そうだから就いて見ただけだし、ちょうど良い感じの移動手段になった(後付け)から別に良いんだけどね!

 …………とりあえず、召喚されたブロンに馬車を取り付けて行く。

 

「よしっ! 出来たね、ステータスのお陰か思ったより楽だったね。……ところでお兄ちゃん、この仔の名前はなんて言うの?」

「名前? …………じゃあ、色から取って“ブロン”で良いだろう」

「わかったよお兄ちゃん! ハイよーブロン‼︎」

「動かすのは俺だけどな」

 

 こうして俺達のギデオンまでの旅路が始まったのだった。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

妹:お兄ちゃんがレベルを上げて物理で殴る方向に行っちゃった………

兄:ジョブビルド? 何それ? 美味しいの?

我は万の職能に通ず(ルー)》:【百芸万職 ルー】の常時発動型必殺スキル
・その効果により第四形態現在、兄は二十六の下級職と十七の上級職、合計レベル三千までのジョブに就くことが出来る。
・必殺スキルとしてはしては外部コスト(経験値)事前準備(レベル上げ)が必要なので、その真価を発揮するのはまだ先のことになる。
・スキルとしては、ぶっちゃけると劣化【勇者】………なのだが、<マスター>としての不死性と獲得経験値増加スキルによってレベル上げの効率は上回る。

マリィさん:今回、兄妹のお陰で在庫が売れて大満足

【ホースゴーレム】:今回の移動手段
・兄の月一召喚ガチャ最初のモンスター。
・移動用の為、召喚時間と燃費に特化しており、騎乗スキルが無くとも騎乗を可能にする《騎乗補助》のスキルも持っているが直接戦闘能力は低い。

【ジョブクリスタル・ロッド】:今後の兄にとっては重要なアイテム……主にレベル上げで

祓魔師(エクソシスト)】:司祭系統派生下級職
・主に聖属性攻撃魔法と対悪魔・アンデット用の特攻スキル、呪怨・精神系の状態異常回復・耐性スキルなどを取得出来る文字通り“魔を祓う”ジョブ。
・転職条件に“聖属性スキルによる悪魔・アンデットの一定数討伐”がある。
・上級職は【高位祓魔師(ハイ・エクソシスト)】がある。


読了ありがとうございました。次はギデオンへの道中の予定です。
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