それでは本編をどうぞ。
□決闘都市ギデオン 【
「いや〜ここギデオンは活気があるね、お兄ちゃん!」
「そうだな、南のレジェンダリアに近いからか、色々な人種の人もいるしな」
あれからギルドに荷物を渡してクエストを達成した俺達は、一旦ログアウトして一眠りし、次の日に再びデンドロにログインした。
そして、まずはガイツさんとトム・キャットの決闘のチケットを購入した。
「一般席だけど手に入って良かったね、お兄ちゃん。えーとこっちの時間で明日、中央闘技場でやるんだっけ?」
「ああ、何せ決闘ランキング第二位と第一位の試合だからな。…………それまではこのギデオンを観光しよう」
「そうだねー…………ん?」
そうやって適当にぶらついていると、どうもミカが何かに気付いた様だ。
そちらを見ると、そこには黒い犬……あるいは狼の着ぐるみを着た人がいた。
「おーい! そこの着ぐるみの人、ひょっとしてシュウさんじゃない?」
『ん? おお、ミカちゃんとレントくんだワン、久しぶりだワン』
「久しぶりだねーシュウさん、着ぐるみ変えたんだ? それって特典武具?」
『……ああ、色々あってな。その口ぶりだとミカちゃんも<
「うん、特典武具はお兄ちゃんが手に入れたけどね」
『おー、レントくん凄いワン』
「いえ、色々上手く噛みあっていただけなので」
この人はシュウ・スターリングさん。ミカのフレンドで、曰く非常に複雑な事情があって着ぐるみを着ているとのこと。
…………まあ、デンドロは自由だからな、どんなネタプレイも他人に迷惑をかけなければ許容されるだろう。
「ところで、シュウさんも明日の決闘を見に来たの?」
『そうだワン。……この国に以前からいたって言う<マスター>の事も気になっていたからなワン』
「じゃあ、今日これから一緒にギデオンを観光しない? 私達も明日の決闘まで暇だから、これから観光するんだ」
『別に構わないワン。ちょうど気分転換したいところだったしワン。俺は前にもギデオンに来た事があるから案内するワン』
「ありがとーシュウさん!」
「ありがとうございます、シュウさん」
こうして、俺達はシュウさんと一緒にギデオンを周る事になった。
◇
『じゃあミカちゃんはもう三職目の上級職ワン、早いワン。俺はまだ二職目の【
「そうかな? お兄ちゃんとか上級職カンストして、今四職目だし」
「俺の<エンブリオ>はレベル上げに向いているからな」
『それでも凄く早いワン。…………ついたワン、ここが<アレハンドロ商会>だワン』
俺達は昨日出会ったアレハンドロさんの店にやってきていた。俺とミカは道中消費した各種アイテムを買いに、シュウさんはドロップアイテムを売るのが目的である。
ちょうど店にいたアレハンドロさんに挨拶しつつ、商品を見ていく。
「王都の店とはやっぱり品揃えが違うね」
「ああ、決闘都市にある店だからか、それともレジェンダリアに近いからか特殊効果のある装備品が多いな」
「いや、二人共お目が高い。その通りです、当商会ではレジェンダリアから仕入れた希少なマジックアイテムも販売しております」
『高性能なアクセサリーが売っているのは嬉しいワン』
…………着ぐるみは全身装備だから、他にはアクセサリーぐらいしか着けられないからな。
そうして消耗品を買い揃えつつ店内を見てみると、とある場所に人が集まっているのが見えた…………あれは、ガチャ?
「お兄ちゃん! ガチャがあるよ!」
「そうだな……すみません、あのガチャは一体なんなんですか?」
ガチャについて店員さんに聞くと、あれは元々<墓標迷宮>で出土したレアアイテムで投入した金銭を供物にして100倍から1/100の価値のアイテムを何処からか召喚する物らしい。そして、この店で買い物をした客だけが回せる取り決めになっているとのこと。
…………ちなみにこのガチャは少し前に購入したもので、前の所有者はガチャの回しすぎで破産したとか。
「お兄ちゃん、せっかくだし回そうよ! とりあえず十万リルで‼︎」
「…………一回だけだぞ」
「わかってるよー、シュウさんはどうする?」
『あー、俺はやめとくワン。今は懐に余裕が無いし…………それに、俺がこういうのをやると大当たりか大外れの二択になるワン』
「「あー成る程ね」」
この人もミカと同じで規格外側の人間だろうからね、それも多分オールマイティに突き抜けてるタイプ…………そう言う人達って運気とかもなんかおかしい事が多いし。ガチャ回したら呪いのネタアイテムとか出そう。
それじゃあ列に並ぶか。
「どんなアイテムが出るんだろ楽しみだね。ガチャは回すまでのこの瞬間がいいんだよねー………………むうぅぅ……」
「どうした? なんかいきなり不機嫌になったが」
「…………お兄ちゃん、ガチャは何が出るのかが分からないから楽しいんだけど…………
「…………また何か感じたのか?」
「うん…………このガチャは回せって……」
「……じゃあガチャ回すのはやめるか?」
「いや回しとく……遠い勘に従わないとロクなことにならないし。……はあ〜、私の勘って危険察知がメインだから、こう言うのには普通反応しないんだけどなぁ……」
…………ミカの勘も大概融通が効かないところがあるからな。
さて、そうこうしているうちに俺達の番になった様だ。
「こうなったらお兄ちゃんのガチャに期待だよ! さあ! 十万リル突っ込んで大当たりか大外れを引くのだ‼︎」
「…………そんなに期待されてもなぁ」
まあ、金には余裕があるし一回ぐらいなら十万リル突っ込んでも大丈夫か…………おっ出たな、えーと書いてある文字は「C」だから、等価値の十万リルのアイテムか。
「十万入れて十万の価値のアイテムが出たんだから当たりの部類か」
「何が入っているんだろうね! 【墓標迷宮通行許可証】とか(笑笑)」
「おいバカやめろ…………えーと【ライトニング・デスジャベリン】ね、投げ槍だから狩人系統の技能で使えなくはないし、今のレベルなら装備出来るから当たりだな。効果はMPを込めると着弾時に電撃を放つみたいだな……あと、決して手に持ったままスキルを使わないでくださいって書かれているな」
「うーん、普通に当たりだね。面白く無いなー」
「ならお前が大当たりを出せ。勘では何か出るって話なんだろ?」
「そうだねー、じゃあ十万リル突っ込んで回そうか」
そう言ってミカがガチャに十万リルを入れて回すと…………そこからは虹色の鉱石で出来た「S」と書かれたカプセルが出てきた。
俺達以外の周りの店員さんや客が凄いどよめいている。
「おー、凄い豪華なカプセルが出たね」
「そりゃあ最高ランクのカプセルだからな。確か100倍の価値だから一千万リルのアイテムか…………なんか周りが凄いコッチ見てるし早く開けたらどうだ?」
「わかったー…………【尾竜剣鎧 ドラグテイル】ね…………‼︎」
カプセルから出てきたのは竜の顔を模した鎧で、背中には剣の様なパーツが付いていた…………ていうか、その特殊な命名の仕方はひょっとして
周りの客も何人かが気がついたようだし…………その想像できる由来やミカの反応を見る限り、少し面倒そうな物みたいだな。
「お兄ちゃん、詳しい話は人がいないところでしよう。シュウさんも来て」
「わかった」
『わかったワン』
俺達は足早にその場を離れていった。
…………ちなみにガチャの方からは「俺はガチャを回すぞ〜〜! ジョジ○〜〜‼︎」「当たりが! 出るまで! 回すのを! やめない‼︎」「リルッ、リルが溶ける〜〜‼︎」「今のは乱数調整だからっ! 次は出るはず…………‼︎」「ガチャァ……! ガチャァ……‼︎」……みたいな声が聞こえてきた。
…………やっぱりガチャの闇は深いな…………
◇◇◇
□決闘都市ギデオン 【
あのあと、店を出た私達はこの【ドラグテイル】の事を話し合う為に人気の無いところに来ていた…………二人もこの鎧の問題には気づいているみたいだね。
「さてミカ、その鎧は特典武具だな」
「うん…………しかも死んだティアンの人が持っていた物みたい」
『やっぱりそう言う物だったかワン。…………それが知られると、特典武具持ってるティアン殺しに走るヤツが出て来る可能性があるな』
「そうなんだよね…………特典武具持ってるティアンは強い人しかいないだろうし、さらにガチャで「S」のカプセルだす確率はかなり低いからそんなバカな事をする人は早々いないと思うんだけど……」
「ティアンの人が死んだら特典武具も消滅するって話は聞いていたが…………回収してガチャに突っ込むとか色々雑過ぎないか?
『同感だワン。…………まあ、当てちゃった物はしょうがないワン。あとは色々と落ち着くのを待つしかないワン』
「そうだな、だからあまり気にしすぎるなよミカ。…………それでその鎧の性能はどんな感じなんだ」
「…………ありがとう、二人共。……この鎧の性能はこんな感じだよー」
【尾竜剣鎧 ドラグテイル】
<
強力な剣尾を持つ竜王の概念を具現化した至宝。
極めて高い硬度を持つと共に、伸縮自在の剣尾を有している。
・装備補正
攻撃力+1500
防御力+1500
STR+50%
END+50%
AGI+50%
・装備スキル
《竜尾剣》
《???》※未開放スキル
…………改めて見ると凄い性能だね、お兄ちゃんの【ヴァルシオン】と比べても総合的には桁外れの性能だし、ランクが二つ違うとここまで性能が違うんだ…………でも、装備枠で上半身と外套の二つの枠を使うみたい。あと、まだ使えないのスキルもあるし。
…………元になった<UBM>はどんなスペックだったんだろう、あとそれを倒したティアンの人も。
「逸話級と古代伝説級だとここまで性能が違うのか」
『俺の【ふぇいうる】よりも総合性能はかなり高いワンね』
「まあ、当てちゃった物はしょうがないし有り難く使わせて貰うけど…………どこで試そうかな、あんまり人目につきたく無いし」
『それなら心配いらないワン。ここギデオンにある闘技場は、試合をやっていない時には結界を使った模擬戦の為のレンタルが出来るワン。結界には不可視化の設定が出来るから人目も気にしなくていいワン』
「じゃあ空いている闘技場に行こうか、お兄ちゃんちょっと付き合ってくれる?」
「わかった、そのぐらいならいいぞ」
『俺も付き合うワン』
◇
それから、私達は今日空いている決闘都市六番街の第六闘技場に来ていた。
『ついたワン。ここが今日空いている第六闘技場だワン』
「確か決闘場には特殊な結界が張ってあって、その決闘が終わったら結界内で起きた事は全て無かった事になるんだったか」
「そうみたいだね…………ん? あれは……?」
闘技場の近くまで行くと、そこにはフォルテスラさんとネイちゃんとシャルカさんがおり、見知らぬ男性と話しているようだった。
「おーい! フォルテスラさんにネイちゃんにシャルカさん久しぶり〜!」
『おーす、フィガ公、久しぶりワン』
「ああ、ミカちゃんにレントくん。久しぶりだね」
「あ、シュウ。久しぶりだね」
あれ? あっちの男の人はシュウさんの知り合いなのかな?
「ふむ、なんかお互いの知り合いに会ったみたいだし、改めて自己紹介した方が良さそうだな。……俺はレントと言います、コッチは妹のミカでフォルテスラさん達とは以前一緒にパーティーを組んだ事があります」
「レントの妹のミカです! フォルテスラさん達とはお兄ちゃんと一緒にパーティーを組んだ事があって、シュウさんとは友達です!」
『シュウ・スターリングだワン。ミカちゃんとフィガ公とは友達だワン』
「俺はフォルテスラと言う、こっちは俺の<エンブリオ>のネイリング。シャルカは俺のパーティーメンバーでレントくん達とは以前に一緒に戦った事がある。あとこいつはフィガロと言って、最近知り合ってよく決闘をしている」
「メイデンwithエルダーアームズのネイリングだよ! よろしくね!」
「僕はフィガロ。シュウとは友達で、フォルテスラとはよく決闘をしているんだ」
「私はシャルカと言います。フォルテスラ達の付き添いですね」
ふーん、フィガロさんって言うんだ、シュウさんの友達でフォルテスラさんの決闘仲間みたいだね。あと、ネイちゃんもエルダーアームズになったんだ。
とりあえず、挨拶も終わった私達はお互いが闘技場に来た目的を話し合った。フォルテスラさん達は普通に決闘をしに来たみたい。こっちの事情も説明すると彼等も納得した見たい。
「成る程……そう言う事情なら決闘場を使った方がいいか。ところでミカちゃんは誰と決闘するつもりかな?」
「とりあえずお兄ちゃんに頼みたいと思います。いいよねお兄ちゃん?」
「ああ、別に構わないぞ」
「そうか……しかしレントくんとミカちゃんの決闘か、少し見てみたい気もするな」
「私も二人の戦いは見てみたいな!」
「見るのは構わないけど……結界は不可視化するつもりだし……」
「あの結界は確か特定の人間だけに見えるようにする設定も出来たはずですよ」
あれれー? なんだか妙な話になって来たぞ〜?
「えーと、ほら! フィガロさんのことは……」
「僕は構わないよ。決闘は闘うのも観るのも好きだからね。…………それに、二人共凄く強そうだから楽しみだよ」
『あー、フィガ公は脳筋だけど悪いやつじゃないから大丈夫だワン』
そうして、なし崩し的に私とお兄ちゃんの衆人環視による決闘が決まったのだった。
あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説
兄妹:なんかいつのまにかガチで戦うことになった………
シュウ・スターリング:ワン語尾にもだいぶ慣れた
・少し前に王都付近でトラブルに巻き込まれたので、その気分転換も兼ねてギデオンに来ていた。
【ライトニング・デスジャベリン】:兄のガチャ結果
・電撃を放つスキル《死雷放電》は非常に威力が高いが、無制御のスキルなので手に持って使うと自身にも電撃が流れる。
・また、スキルを使うたびに耐久値が大きく減るので、実質十万リルの使い捨て投げ槍みたいなもの。
【尾竜剣鎧 ドラグテイル】:妹のガチャ結果
・《竜尾剣》は尾で鎧と繋がった背中のブレードを、SPを消費して装備者のAGIの倍の速度で伸縮・操作するスキル。
・その長さの最大は装備者の合計レベル×一メートル、攻撃力は装備者のSTR+【ドラグテイル】の装備攻撃力になる。
・実は何代か前の【龍帝】が所有していた特典武具、なので《竜王気》はオミットされている。
【尾竜王 ドラグテイル】:【尾竜剣鎧】の元になった<UBM>
・純粋性能型でSTR・END・AGIがそれぞれ五万ぐらいあり、《竜尾剣》はそれらの倍のスペックを持つ剣尾を十キロ以上は余裕で伸ばせるスキルだった。
・つまり、攻撃力十万・硬度十万・音速の十倍の攻撃が十キロ以上先から飛んでくる相手だった。
・更に《竜王気》の達人で剣尾に集中させて相手の防御を突破、一点に集中させて相手の攻撃を防ぐとかも出来た。
・他にも広域を探知するスキルもあり、それで強そうな相手に片っ端から戦いを仕掛ける好戦的な性格だった。
・だが、貫こうが八つ裂きにしようが再生する【龍帝】とは相性が悪く、戦いの末に討伐された。
ガチャ:あの後は爆死祭りだった模様
読了ありがとうございます。次回は兄VS妹です。