それでは本編をどうぞ。
□決闘都市ギデオン・中央闘技場 【
「いや〜、人がいっぱいいるね〜、この中央闘技場もほぼ満席だよ!」
「そりゃあ決闘ランキング第二位と第一位…………このアルター王国トップ2の試合だからな」
今、俺達はガイツさんとトム・キャットの試合を観に中央闘技場に来ていた。周りを見てみると多くの人がこの闘技場に詰めかけていた。
やはり、このギデオンでもトップクラスのイベントなのだろうな、決闘ランキング第二位と第一位の試合は。
「さっきのセミイベントもレベルが高かったからね〜。本命の試合も楽しみだよ」
「アルター王国の決闘のレベルは西方三国一らしいからな」
実際、先程の試合もかなりレベルが高かった。ジョブのレベルだけでは無く、自身の戦闘技術や戦術も非常に高くて実に参考になった。
また、闘技場の結界には中の時間の進みを緩やかにする機能もあるらしく、AGIが低い観客でも試合を楽しめるようになっているようだ。
「あと、試合の賭けもやってたね」
「確かオッズはガイツさんが10倍ぐらいで、チャンピオンのトム・キャットが1.2倍だったな。…………決闘ランキング一位と二位の賭けにしては随分差があったが」
「チャンピオンがよっぽど強いのか…………あるいは<エンブリオ>がとんでもない性能なのか、かな?」
闘技場の受付カウンターでは、競技の参加エントリーの他にも試合の勝敗を当てるギャンブルも行われていた。そこでのオッズは大幅にガイツさんが不利と言う内容だった。
…………少し戦っているところを見た感じだとガイツさんも相当強いと思ったのだが、それでもこれだけオッズに差があるということは、ミカの言う通りトム・キャットの実力がとんでもないのか、<マスター>として有している<エンブリオ>がヤバイのか、だろう。
ちなみに俺達はギャンブルには参加しなかった…………昨日のガチャで結構散財してしまったからな、しばらくギャンブルは控えることにしたのである。
「それも、これから始まる試合を見れば分かるだろう」
「そうだねー…………あっ、始まるみたいだよ」
見ると、会場のざわめきが少しずつ鎮まっていった…………どうやら試合開始の時間になったようだ。
『会場の皆様! お待たせいたしました! 只今より本日のメインイベント! 決闘ランキング第二位! ガイツ・ランド対決闘ランキング第一位! チャンピオン、トム・キャットの試合……決闘王者防衛戦を開始いたします‼︎」
そのアナウンスと同時に会場は歓声に包まれた。
『まずは東の門! 挑戦者の入場です! 冒険者パーティー<黒牛戦団>リーダーにして決闘ランキング第二位! “黒牛”の二つ名を持つ【
そのアナウンスと観客の歓声と共にガイツさんが入場してきた。
その装備はパーティー名や二つ名の由来になっている牛を模した黒い軽鎧を身につけて、手には槍を持っていた。
『そして西の門! チャンピオンの入場です! アルター王国決闘ランキング第一位! 最近は増えて来ましたが、あの伝説の<マスター>! “化猫屋敷”【
すると先程以上の歓声の中を歩いて来たのは頭に猫を乗せ、目を前髪で隠している青年だった。
「ふーん、アレが以前から王国にいたって言う<マスター>か…………中々奇抜な格好だねー」
「まあ、<マスター>だしな。…………あの猫は<エンブリオ>か?」
そして両者は舞台の上に立ち、ウィンドウを展開した…………あれは結界の設定ウィンドウで、試合直前にルールを確認し両者合意の上で戦闘を開始するらしい。
『今日こそは勝たせたもらうぜ、トム』
『悪いけど、そう簡単に負けてあげる訳にはいかないなー』
二人はそんな会話をしたあと設定を終えて開始位置に着き、それぞれの準備を終えて結界が起動された…………どうやら始まるようだ。
『それでは本日のメインイベント! 決闘王者防衛戦…………試合開始ィ‼︎』
そのアナウンスにより試合が開始される…………と同時に、
『《ランスシュート》! 《ラピッドアロー》』
『おっと……ッ!』
ガイツさんがアクティブスキルを使って手に持った槍を投擲し、トムが減速状態の結界内でも姿が霞む様に見える程の速度でそれを回避した…………がその槍が途中で
しかし、その爆発もトムはその速度を持って回避し、頭の上の猫を遠くに放り投げていた…………が、そこに武器を弓に切り替えていたガイツさんの連射が襲いかかる。
『疾ッ……──いざいざ躍らん《
『チィ! 《ブラストアロー》!』
それらの矢をトムはあるものは避け、あるものは手に持った剣で弾いていくが、その矢の中には先程の槍と同じで着弾時や時間経過でスキルを発動するタイプの物が混ざっている様で、ガイツさんはそれらを的確に使い分ける事でAGIに勝るトムに少しずつダメージを与えていった…………が、その間にトムの<エンブリオ>のスキルが行使された。
そこに、アクティブスキルにより衝撃波を纏った矢が直撃するが、トムは
「倒された? ……いや違うね」
「さっき放り投げられた猫の方で何かが…………」
そちらを見ると猫が変形し
『《スナイプアロー》!』
『疾ッ!』
ガイツさんはすぐにそちらにも矢を放つが、二人のうち一人がその矢を弾きもう一人はすぐに距離を取った。
そして、一人が応戦している間に距離を取った側が二人、さらに四人と増えていき、瞬く間に応戦している者も含めて八人のトムが舞台の上に現れていた。
「分身? でもさっき分身する前にの本体もやられていたし……」
「おそらく
「じゃあ…………あれって八人同時に倒さないとダメなんじゃない?」
舞台の上では八人のトムのうち四人が近接武器を持ちガイツさんに突っ込み、残り四人が弓や投剣で援護射撃をしていた。そしてそれら全員が最初の本体と同じ速度で動いていた。
ガイツさんは遠距離攻撃をかわし武器を剣や槍に持ち替えて応戦しているが、人数差とAGIの差で少しずつダメージを負っている。
「これはひどい、決闘ランカーって殆どが一対一の戦いに特化してるよね? 八人同時に倒すのは厳しくない?」
「そうだな…………それに【猫神】は超級職、相応のステータスを持っているから上級職のティアンでは相手をするのはきついか? むしろ、人数とステータスで負けている相手にこれだけ持ち堪えられているガイツさんの技量は凄まじいな」
今も、斬りかかってきたトムの一人をカウンターの《レーザーブレード》のスキルで斬り捨てるが、そのまま猫になって消えてしまい、すぐに遠距離にいたトムの一人が分裂し再び八人に戻った。
「ご丁寧に分身のうちの一体だけは、常にガイツさんの攻撃範囲の外に置いているね」
「技量ならガイツさんが勝っているんだが、トム・キャットの技量も決して低くはない。…………というか八人同時制御とかどうやっているんだ? オートで動かしている訳ではないみたいだし」
「実は管理AIが動かしてるんじゃない?」
そんな会話をしている間にも、ガイツさんはどんどん追い詰められていった。先程から何人かのトムを倒してはいるが、その度に増殖されており数を減らすことが出来ていない。
ガイツさんが装備している鎧は特典武具でありHPとSPの自動回復スキルがあるらしく、それが無ければもう終わっていただろう。
「でも、まだ何かあるかな?」
「ああ、ガイツさんは諦めている様子がないし…………トム・キャットもそれを警戒して慎重策を取っている様だな」
だが痺れを切らしたのか、それとも早めに決着をつけたかったのか、後衛のトムのうち二人が近接武器に持ち替え前衛に回り、そのまま六人でガイツさんに仕掛けていった。
それに対し、ガイツさんは一本の剣を取り出した。
『《サンダースラッシュ》!』
『『『ぶにゃー』』』
その剣でアクティブスキルを発動させると、雷を纏った刀身が
そして、これまで以上の速さで残りのトムに斬りかかっていく。
『《レーザーブレード》! 《ランスシュート》! 《フィフス・スラッシュ》!』
『ぶにゃー』『ぶにゃー』『ぶにゃー』
そのまま周りにいたトムを伸ばした光剣、もう片方の手から投げた槍、伸長した刀身による五連続斬撃で倒していく。
「お兄ちゃん、あの剣はひょっとして特典武具?」
「おそらくな…………効果は刀身の伸長とAGIの増加かな」
会場の人間も驚いているところを見ると、今回初めて使った武器なのだろう。
…………しかし…………
「相手の増殖速度の方が早い…………というか、さっきより早くなってない?」
「おそらく、今まで増殖速度を少し落としていたんじゃないか? …………それも、ガイツさんや観客の反応から考えて
「…………切り札を隠していたのはガイツさんだけじゃ無かったみたいだね」
ガイツさんの切り札に対し、トムが取った対処法はシンプルなものだった…………本気で増殖させた分身達を、片っ端から突っ込ませて肉壁にしたのである。
それらの分身達に、ガイツさんはアクティブスキルと特典武具を使って対処していくが、相手の増殖速度を上回ることが出来ない様だ。
「今はなんとか対処しているが…………」
「うん、あれだけ使っていれば、
そうして戦ううちに、ある時からガイツさんがアクティブスキルを使えなくなった…………SP切れである。
相手のSPが切れたと判断したトムは一気に攻勢を強めていく。ガイツさんも応戦していくが、今までアクティブスキルを使ってかろうじて凌いでいた相手にスキルなしで戦えるはずも無く…………
『『『疾ッ‼︎』』』
『グハッ!』
…………最後は三人のトムの剣に身体を貫かれて敗北した。
『試合終了ォォ──! 勝者は王者トム・キャット! やはり決闘王者の壁は厚かったぁぁぁ──‼︎』
本日のメインイベント・決闘王者防衛戦は、チャンピオン、トム・キャットの勝利で終わったのだった。
◇◇◇
□決闘都市ギデオン 【
決闘の観戦を終えた私とお兄ちゃんは、その余韻に浸りながらギデオンの街を歩いていた。
「いや〜、今回の試合は凄かったね! …………しっかし、トム・キャットのあの<エンブリオ>、どうやったら攻略出来るんだろう?」
「ふむ…………広範囲攻撃でまとめて倒すか、相手より圧倒的に高いステータスで増殖速度を上回るとかかな。あとはスキルそのものを封印するとか、<エンブリオ>や特典武具次第ではそう言う事も可能だろう」
やっぱりそんな感じになるよねー。私の【ギガース】じゃ相性が悪いかな、防御スキルは破れても回復系は効果範囲外だし。
むしろ、そういう相手はお兄ちゃんの方が、後々どうにか出来る様になりそう。
「そういえばフォルテスラさんやフィガロさんは、決闘ランカーを目指すって言ってたよ」
「そうなのか…………じゃあ、いつかはあの二人の戦いを中央闘技場で観れる時も来るのかねぇ」
「そうだといいねー」
…………私の勘でもそう言う未来は解らないからね、今から楽しみだよ!
「で? お前は決闘ランカーは目指さないのか?」
「うーん、フォルテスラさんやフィガロさんとの決闘は楽しかったけど…………やっぱり私は一つの国に留まらず、この世界のもっと色んなところを見てみたいかな!」
「…………そうか、それもいいだろうな。…………その時は俺も付き合おう、他の国やこの世界の事も個人的に気になっているしな」
「ありがとうね、お兄ちゃん! …………と言っても、この世界で旅をするには相応の実力が必要みたいだからね! もっと強くならないと!」
「そうだな、じゃあ明日からはレベリングでもするか。俺も就けるだけ就いた下級職のレベルを上げなければならないからな。…………あと、各ジョブの上級職への転職条件も調べないとな」
「お兄ちゃん、レベル上げるジョブがめちゃくちゃ多いからねー」
「はぁー、どこかにジョブの転職条件が簡単にわかる様なアイテムは落ちていないものか…………」
「そんなアイテムなら強いモンスターのドロップ品だろうし、落ちてはいないんじゃない?」
そんな会話をしながら、私達はギデオンを歩いていった。
あとがき・おまけ、各種オリ設定・解説
兄妹:いつかは他の国にも行ってみたいと思っている。
ガイツ・ランド:ティアン達人勢の一人
・実際、トム・キャットがいなければ普通に【超闘士】になれるレベル。
・最後に使った剣は【蟷螂伸剣 マンティスライス】という逸話級特典武具で、AGIへの補正と刀身の伸縮・この剣を使って発動するアクティブスキルのSP消費軽減の効果がある。
《連続換装》:【連装闘士】の奥義
・《瞬間装備》《瞬間装着》の“スキル名発声無しでの発動”・“クールタイムの大幅削減”・“一度に複数の装備を変更可能にする”効果を持つパッシブスキル。
トム・キャット:いつから僕が本気で増殖していると錯覚していた?
・今回の試合は会場の<マスター>に自分の実力を見せる意味もあった。
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