それでは本編をどうぞ。
□王都アルテア 【
あの後、お兄ちゃんと別れた私とミュウちゃん達は王都アルテアの様々な所を見て回っていた。
「この王都は本当に活気がありますね、姉様」
「まあ、このアルター王国の首都だからね」
『騎士の国と言うだけあって巡回している騎士もよく見るね』
ミュウちゃん達も中々楽しんでくれているみたいだ。この王都アルテアはまさにファンタジーな街並みだから見応えがあるしね。
それに、騎士団の人達が定期的に見回っているみたいだから治安もいいし、過ごしやすい所だよ。
…………そうやって、しばらくぶらついていると見覚えのある人に出会った。
「あっ! 葵ちゃんなのです! 久しぶりなのです」
「…………ミュウちゃん、久しぶり……」
そこにいたのはミュウちゃんの同好の士…………もといフレンドの
そして、その隣には五歳ぐらいの幼女と高校生くらいの女騎士がいた…………二人共左手に紋章が無いから多分ティアンだね。
「ところで一体何をしているのです? そちらの二人は?」
「…………今はこの子……レフィちゃんのお姉さんを探している。…………コッチの女性は聞き込みをしていて、事情を話したら手伝ってくれた……」
成る程、人探しの最中だったんだね。するとと女騎士が葵ちゃんに話しかけてきた。
「あの、葵さんこちらの方達は……?」
「…………この二人は私のフレンドの<マスター>、信頼出来る……」
「初めましてミュウと言うのです」
『僕はフェイ、ミュウの<エンブリオ>だよ』
「ミュウちゃんの従姉のミカです」
「そうですか、お二人とも<マスター>なんですね…………申し遅れました、私は第一騎士団所属の騎士リリアーナ・グランドリアといいます」
◇
あれから、彼女達……特にレフィちゃんの休憩を兼ねてその辺りの喫茶店で詳しい話を聞く事になった。
まず、急に逸れたお姉さん──名前はリファさんと言うらしい──を探していたレフィちゃんを、たまたま葵ちゃんが見つけて一緒に探す事になったらしい。
そして、とりあえず近くを巡回していた騎士達に聞き込みをしたらしくて、その中の一人のリリアーナさんが人探しの為に同行する事になった様だ。
ちなみに、他の騎士達も手分けして探しているとのこと。
「成る程、事情は大体分かったのです、そういうことなら私達も協力するのですよ。…………何より、プリキュアを目指す者として困っている子を放っては置けないのです!」
「…………流石は同士、そう言ってくれると思っていた……」
そうして二人は硬い握手を交わした…………まあ、手伝うことに関しては構わないけどさ。
…………それに
【クエスト【探し人──レフィ・シュタイン 難易度:四】が発生しました】
【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】
協力を申し入れるとそんなアナウンスがあった…………難易度が四ねぇ。
「ちょっとリリアーナさん、こっちに」
「何でしょうか?」
私はミュウちゃん達から少し離れたところにリリアーナさんを呼んだ。
「さっき受けたクエストの難易度が四だったんだけど…………これは明らかに高すぎるよね。普通の人探しの依頼なら二以上にはならないだろうし…………何か事情があるんですか?」
「…………それをどうして私に?」
「強いて言うなら勘です。…………あと、迷子の案内にしては騎士団の動きが少し大仰かなと思いました。…………まあ、話す気が無いならそれでも良いですけど」
「…………分かりました、お話します」
リリアーナさん曰く、最近王都で行方不明者が何件か出ており王都警備担当の第一騎士団はその調査をしていたらしい。
この件も行方不明事件に関わりがある可能性があるとして、既に騎士団の方で調査が進められているようだ。
また、リリアーナさんがレフィちゃんについているのは、人探しの手伝いの他にも彼女が二次被害にあって行方不明にならない様にする護衛も兼ねているとのこと。
「ふーん、成る程ねー。…………だから難易度が四なのか」
「はい…………騎士団にいる捜索に特化したジョブの持ち主でも行方不明者は見つかっていません」
ただの人探しにはならないみたいだね…………とりあえずレフィちゃんに少し話を聞いてみるかな。
「レフィちゃん、お姉さんが居なくなった時のことを詳しく聞かせてくれないかな?」
「…………私とお姉ちゃんが買い物に行っている時、みんながよく使っている路地裏で近道しようとしたの。…………お姉ちゃんが路地裏に入って姿が見えなくなって…………あとを追いかけたらいなくなっていたの……」
「…………そして、そこに私が通りかかって今に至るという感じ……」
ふーん…………じゃあ次はリリアーナさんに聞いてみよう。
「探索系のジョブの持ち主でも見つけられなかったという事ですけど、具体的にどんな感じだったか分かりますか?」
「途中までは追跡出来ても、あるところから反応が途切れるという話らしいです」
ほーん、そんな感じなのか…………。
「ふーん、成る程ね」
「何か分かったんですか?」
「いや? 全然さっぱり」
そう言うと、私以外の全員がずっこけた…………しょうがないじゃん、こう言う推理とかはどちらかと言うとお兄ちゃんの担当だし。
そもそも、私はミステリものには致命的に向いてないし。
「…………あの意味深な質問は一体……」
「単に状況を確認しただけだよ?」
「姉様…………どうしてリファさんが消えたのとかは解らないのですか?」
「検討もつかないね。…………それに方法を考えるのはあんまり意味がないだろうし」
この世界にあるジョブスキルや<エンブリオ>の事などを考えると、人一人を消す方法なんていくらでもあるだろうしね。
どちらかと言うと動機の方を考えるべきだと思うけど…………今回は情報が少な過ぎてどうしようもないし。
…………まあ、私には特に問題にならないけど。
「じゃあ、お姉さんを探しに行こうか」
「いや、さっき何もわからないと言ったじゃ無いですか。それとも闇雲に探すんですか?」
「大丈夫だよリリアーナさん。確かに行方不明事件の事とかお姉さんの事とかは分からないけど…………
やっぱり私にミステリものは向いてないね…………何せ、醍醐味の過程が分からず
◇
そうして私達はお姉さんが姿を消した路地裏に来ており、そこには二人の騎士が見張りをしていた。
「リリアーナさん、あの騎士達は?」
「あれはリヒト団長の指示です。行方不明者が最後に目撃された地点に見張りを立たせておけと。あと必ず二人以上で行動しろとも」
へー、リヒト団長かアイラさんのお父さんで、デンドロ初日に私が出会った騎士何だよね。あれ以来会う機会がなかったけど、本当に優秀みたいだね。
…………見張りは行方不明者の姿が
「お疲れ様です。何か変化はありましたか?」
「リリアーナ殿。いえ、何も変わりはありませんでした…………そちらの方達は?」
「行方不明になったこの子のお姉さんを探している<マスター>です。というわけでこの路地裏を調べさせて貰いますね。あ! レフィちゃんはここでこの騎士の人達と一緒にいてね…………大丈夫! お姉さんが必ず私達が連れて帰ってくるから! …………そう言うわけでこの子の事をよろしくお願いしますね。じゃあ行こう」
「「え、ええ……?」」
とりあえず色々まくし立てて騎士達を煙に巻きつつ、レフィちゃんを彼等に預けて路地裏に入って行く…………私の勘は説明が難しいし、ここは巻きで行こう。
すると、他の皆んなも急いで後を追ってきた。
「ミカさん! 一体どういう事何ですか、説明して下さい!」
「ごめんねー、リリアーナさん。私の勘はこうすればいいって解るだけだから説明が難しくて」
「勘? それがあなたの<エンブリオ>何ですか?」
「いや、これは生まれつき持っているものですよっと。…………ああ、みんなも戦闘準備をしといてね、多分荒事になるから」
「…………お願いなのです、姉様の言う通りにして下さい。…………姉様の勘は必ずあたるのです」
そうして私は《着衣交換》で戦闘用の装備に切り替え、ミュウちゃんも戦闘準備をし始めた。
…………それを見たリリアーナさんと葵ちゃんも準備してくれたね。
「さて、最近解放された【ドラグテイル】の
そのスキルを起動すると、私を中心とした半径約二百メートル四方の物体の位置が手に取る様に分かった。
…………これが【ドラグテイル】の第二スキル《竜意圏》の効果、『自身を中心とする装着者の合計レベル×1メートルの範囲内の物体の位置を把握』する能力である。
まあ、物体の位置を把握することがメインのスキルで、識別能力は生物か非生物かを区別出来るぐらいなのだが…………今回は例外みたい。
「ふーん、成る程こうなるのか…………そこの壁だね」
本来なら物体の正確な形状すら把握出来るスキルなのだが…………今は
…………そして、私は【ギガース】を担ぎながらその場所に向かっていった。
「ああ、三人共ちょっと離れててねー、危ないから」
「一体何をする気なんですか、ミカさん?」
「んー、私は扉の鍵を持っていないから、手っ取り早くマスターキーで開けちゃおうかなっとね………………《チャージインパクト》‼︎」
ノイズが走っている壁に、私が放ったチャージ時間に応じて威力を引き上げる戦棍士系統のスキルが突き刺さり…………その壁に
…………<マスター>の力で無理矢理こじ開けたからマスターキー…………なんちゃって。
「なっ!」
「「「「「どわぁ⁉︎」」」」」
「よっと」
そして、その砕けた空間から五人の男性と一人の眠らされて縛られた女性が飛び出てきた…………あの女性がリファさんだね。
私はすぐにリファさんをキャッチして、男達から距離を取ってみんなに合流した。
「はい、葵ちゃん。お探しのお姉さんだよ、ちょっと預かっておいて」
「…………は、はい……」
「それよりミカさん! あの男達は……⁉︎」
「んー? 多分、王都連続誘拐事件の主犯とかじゃない?」
正直言って細かいところは解らないけど…………まあ、縛られた女性と一緒に居たんだからギルティでしょ。
あと、出て来た男達のうち二人の左手には紋章があった…………<マスター>二人、ティアン三人か。
そんな事を考えていると、<マスター>の一人が喚きだした。
「クソッ! どうして俺の【アガルタ】が⁉︎」
「空間を隔絶させる<エンブリオ>があるなら、空間を破壊する<エンブリオ>があっても不思議じゃないでしょー」
まあ、私も【ギガース】が空間まで破壊出来る事は今初めて知ったけどね。
「さてと、大人しく無抵抗で捕まるなら酷いことはしないよ?」
「チィ! 相手は女四人だ! やっちまえ‼︎」
私が投降を呼びかけると、もう一人の<マスター>がそんな事を言った…………じゃあ、残念だけど酷い事になるね。
「<マスター>二人は私がどうにかするから、皆はティアンの方をよろしくね…………《アクセラレイション》《パラライズ・ストライク》」
「ミカさん⁉︎」
まず、アクセサリーの効果でAGIを上昇させた私は最初に喚いていた方に接近して、【戦棍鬼】で覚えた攻撃した相手をその衝撃で【麻痺】させるスキルを使い足を薙いだ。
「ガアァ⁉︎」
その結果、相手の両足は粉々に砕けていた…………いやしょうがないでしょ、今の私のSTRは各種補正込みで八千は超えるし。そこに《ストライク・ペネトレイション》とかの効果を含めるとどうしてもこうなるんだよ。
…………まあ【麻痺】にはなってるし、もう動けないから別に良いよね。
「クソッ! 役立たずが! 《天衣迷彩》!」
もう一人の男がそう言うと、その姿が一瞬にして消え去った…………成る程ね、隠密系の<エンブリオ>か。自分だけじゃなく他人の姿も消せるなら誘拐にも使えるかな。
…………ただ、
「私には丸見えなんだよね。《竜尾剣》」
「何ィ⁉︎」
展開したままの《竜意圏》には全力で逃げようとする姿がはっきりと写っていたので、《竜尾剣》を伸ばしてその片足を切断した。
そうして相手が倒れ込んだところに剣尾を操作して、残っているもう片足を貫き地面に縫い付けた…………これでログアウトも出来ないでしょ。
…………さて、後はティアンの方だね。そう思って振り向くと、
「ヒィイ⁉︎」
「ごめんなさいィ‼︎」
「騎士様ァ! 投降するので命だけはお助けをォォ⁉︎」
私がそちらを向いた瞬間、一人は腰を抜かし、もう一人は地面にうずくまり、最後の一人に至ってはリリアーナさんに泣きついていた…………あれぇ?
「…………どういう……事だ……?」
「…………どうもこうも無く当然……」
「…………姉様、目の前であんな残虐ファイトを見せられたら、心が折れるのも無理はないかと……」
『正直、無理もないね』
えー、殺さない様に手加減したのに〜。問答無用でミンチとかにはしてないのに〜。
「リリアーナ殿! これは一体何が⁉︎」
「え、えーと……これはですね……」
すると、さっき見張り騎士の一人が路地裏に駆け込んで来た…………流石にこれだけ騒ぎを起こせば気づくよね。
じゃあ、この<マスター>達はどうするかな、と考えていると…………その二人の身体が光の粒子に変わり、代わりに大量のアイテムがばら撒かれた。
「自害したんだ。…………まあ、<マスター>を拘束し続けるのは難しいし、これで良いかな」
◇
あの後、リリアーナさんからの連絡を受けた騎士団の人達がすぐに駆けつけて、三人の誘拐犯は御用となった。
そして…………、
「お姉ちゃん!」
「レフィ!」
レフィちゃんとリファさんの姉妹も無事再開する事が出来たのだった…………やっぱり姉妹は一緒に居ないとね。
…………そんな事を考えている私に一人の人物が近づいてきた。
「やあミュウくん、久しぶりだね。…………今回は行方不明事件を解決してくれて感謝する」
「リヒトさんも久しぶりですね。今回は人探しのクエストを受けたついでだったので、そんなに気にしなくて良いですよ」
そう、私とお兄ちゃんがこの世界で初めて会ったティアン、アルター王国第一騎士団の団長リヒトさんである。
「それでも、君達が騎士団が調べていた事件を解決した事に変わりは無いからね。騎士団としても何もしない訳にはいかないよ。後で報酬を用意しよう、何か要望はあるかな?」
「別に私は特に欲しい物は無いので、普通にお金とかで良いですよ。…………二人はどうする?」
とりあえずミュウちゃんと葵ちゃんにも聞いてみた。
「…………いえ姉様……私は今回本当に何もしていないので……」
「…………私も……」
「んー、そんなに気にしなくていいのに。私だって今回は適当に【ギガース】を振り回しただけだし。…………それにこういうのは相手の顔を建てる事も必要だから、何か受け取った方がいいよ?」
実際、リリアーナさんが協力していたとは言え、事件を解決した<マスター>達に何もしないのは騎士団としても肩身が狭いだろうし。
「…………じゃあ【墓標迷宮探索許可証】が欲しいのです」
「…………私もそれで……」
「分かった、【許可証】二枚と金一封を用意しよう。後で騎士団の詰所で受け取ってくれ」
そう言うと、リヒトさんは騎士達の元に戻っていった。
…………そして入れ替わりにレフィちゃんがこっちに来た。
「あの! 今日はお姉ちゃんを助けてくれて本当にありがとうございました! その…………これはお礼です」
すると彼女は私達に三つの花束を手渡した。
「えっと…………うちはお花屋さんをやってるので…………その、こんな物しかないけど……」
「いーや、十分だよレフィちゃん」
「とても嬉しいのです!」
「…………うん、とても綺麗……」
そうして私達はその花束を受け取った。
【クエスト【探し人──レフィ・シュタイン】を達成しました】
クエストも達成したし、今回はこれで一件落着って事で!
あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説
妹:今回の探偵役(直感&物理)
・【ギガース】の効果が発揮される範囲は以外と広く、ダメージ減少系や防御に使われている魔法、スライムやスピリットの特性、【救命のブローチ】や《ライフリンク》などの身代わり系にも適応される。
・今回空間が破壊されたのは『空間を隔絶させるスキル』の効果が減衰し無くなった為、亜空間を維持できなくなったから。
・ステータス上昇アクセサリーは【ラーゼクター】にやられて以来、強敵への対策の一つとして買い集めていた。
【尾竜剣鎧 ドラグテイル】:妹は《竜尾剣》の扱いにも大分慣れた
・第二スキル《竜意圏》の解放条件は“合計レベル250以上”及び“《竜尾剣》で300体以上の相手を倒す”であった。
・このスキルは地龍種の竜王であった【ドラグテイル】が開発した重力属性のスキルであり、主に質量や重さなどで物体の位置を把握している。
・その副産物として空間が歪むなどして重力が変動していると、それをノイズとして感知する事も出来る。
・《竜意圏》はSPを継続消費するスキルだが、感知するだけなので消費は少ない。
・ちなみに人間態と竜人態で体格が大きく変わる【龍帝】に合わせて、鎧のサイズは自由に調整出来る特殊な構造をしており、妹が装備出来るのもそのおかげである。
リリアーナさん:今後も<マスター>にはよく振り回される事になる
・原作からデンドロ内で約六年前なので、現在は十四歳ぐらい。
・今は第一騎士団で新人騎士として修行中で、まだ【聖騎士】には就いていない。
・その理由は「単独で亜竜級を倒せるぐらいの実力を持ってから【聖騎士】に就くべし」という父親の教育方針。
・そこには次期【天騎士】になってほしいという期待もある。
誘拐犯達:実はとある非合法組織の末端
・最近増えてきた<マスター>を利用して組織の拡大を狙っていた。
・今回の事件は<マスター>がどの程度使えるのかを測るための試みの一つ。
・ちなみに自害した<マスター>は王国で指名手配されたので“監獄”行き。
【秘匿領域 アガルタ】:<マスター>誘拐犯Aの<エンブリオ>
・物体の内部に居住用亜空間を作る<エンブリオ>。
・現実と亜空間は隔離されており通常の方法では感知出来ず、マスターが認めたモノしか出入り出来ない。
・展開と解除には時間がかかり、解除時に内部に物体がある場合には自動で外に排出される。
【消失天衣 カミカクシ】:<マスター>誘拐犯Bの<エンブリオ>
・自身の姿・音・匂いを隠蔽する外套型<エンブリオ>。
・自身に接触しているモノにも効果を及ぼせるが、その質量には限界がある。
リヒトさん:久しぶりに登場
・今回の件で<マスター>が犯す犯罪を解決するには、同じ<マスター>の力が必要だと改めて思った。
・だが、どこぞの悪いスライムとかのせいで騎士団内に<マスター>に嫌悪感を抱く者が増えているので、その調整に苦労している。
・騎士団は今回捕まえた連中の証言を基に、行方不明者を全員救出する事に成功している。
読了ありがとうございました、意見・感想・評価・誤字報告などはいつでも待っています。