それでは本編をどうぞ。
※2/2 原作のラーニング新情報に合わせて、あとがきのフェイの説明文の内容を一部変更しました。
※3/12 メタル系モンスターが希少という情報が出て来たのでボスモンスターの設定を変更しました。
□王都アルテア 【
本日、俺は王都で【魔石職人】としてのジョブクエストをやり終わって、適当な喫茶店で妹達と一緒にくつろいでいた。
…………もうそろそろ【魔石職人】もカンスト出来そうだし、その上級職の【
今はお茶菓子を食べ終わって、《
「それで? もうそろそろ夏休みは終わりそうだが、現実の方の準備はいいのか? 宿題とか」
「宿題は大体終わってるし、新学期の準備も順調だよ」
「私も大丈夫なのです。…………ただ、デンドロをやる時間は減ると思うのです……」
「それはしょうがない。リアル優先だしな」
『そうだよ、ミュウ』
俺も夏季休講が終わって大学が始まるから、ログイン時間が減るだろうしな。
…………うーむ、このスキルはコッチの調整の方がいいか……? むしろコッチのスキルを組み合わせて…………。
「お兄ちゃん、本当にマメにスキル開発するねー」
「正直、組み合わせと調整範囲が多すぎて終わりが見えないからな。こういうのは徹底して試行回数を重ねないと」
「兄様は本当にマメなのです」
…………本音を言うと、こうやって地道に細かい努力を重ねて行かないとすぐに
…………少し話を変えるか。
「ところでミカ、先日手に入れた特典武具の使い心地はどうなんだ?」
「うーん、AGI補正はいい感じなんだけどねー。…………スキルの方はモンスター相手じゃ強さを感じずらいかな。どちらかにというと対人や強敵相手に真価を発揮するタイプかな?」
まあ、モンスターは生身での攻撃がメインだから《闇纏》は使いにくいだろうし、ミカの場合雑魚はほぼ一撃で倒してしまうから【再生阻害】が活きる場面も少ないか。
…………とは言っても、ミカに緊急回避スキルとか組み合わせちゃいけないモノの筆頭だしなぁ。お陰で広域殲滅系の魔法もほぼ効かなくなったし。
もう一つの《不治呪瘴》も【ギガース】で対応出来なかった回復系能力を妨害出来るから相性は良いだろう。
そんなことを考えていると、ミュウちゃんが話出した。
「やっぱり兄様と姉様は凄いのです。それにこの前の<
『その意気だよミュウ! 僕も第三形態に進化出来たしこれからだよ!』
そんな感じでミュウちゃんとフェイが決意を新たにしていた…………いや、ステータスで圧倒的に勝る【ブラックォーツ】相手に当たり前のように攻撃を当てていた様な……?
あと、第三形態に進化したフェイだが新しいスキルは覚えず、既存スキルの強化とステータス補正の上昇のみの変化となっている…………自身にバフをかけて戦うミュウちゃんにとっては、バフの元になるステータスを上げた方が有効だからそういう進化になったんだろう。
「いや〜ミュウちゃん、燃えてるね〜」
「…………そう言うなら、これからレベリングも兼ねて<墓標迷宮>にでも行くか?」
五階層までは俺の【
そう考えつつ、俺はオリジナルスキルの開発と調整を終わらせた…………のだが、
【武術系・魔法系・生産系を含むオリジナルスキルの五十種類開発を達成しました】
【条件解放により【
【詳細は各種クリスタルでご確認ください】
…………突如、そんなアナウンスが俺の元に届いた。
「…………………………ファッ⁉︎」
「うぉぅ! ビックリした〜。…………どうしたのお兄ちゃん?」
「一体どうしたのです兄様⁉︎」
えー…………とー…………、って周りが凄くこっちを見てるな…………驚いて変な声出たからな…………。
「…………とりあえずさっさと会計を済ませてここを離れるぞ」
「は、はい……」
「お騒がせしました〜」
俺達は周りから奇異の視線を向けられながら、慌てて喫茶店から出て行った。
◇
喫茶店から出た俺達は急いで人気の無いところに集まっていた。
「それでお兄ちゃん、本当に何があったの? あんな変な声を出すなんて只事じゃないでしょ」
「…………本当にどうしたのです? 兄様」
「ああ。…………さっき急に“超級職の転職条件を満たしました”というアナウンスがあってな…………それでつい驚いてあんな声を出してしまったんだ。…………驚かせて悪かったな」
何分、超級職について悩んでいたから余計に驚いてしまったしな…………。
「えーと…………とりあえずおめでとうなのです? 兄様」
「…………なんか妙にあっさり達成出来たね。超級職ってもっと就くのが難しいものだと思ってたけど。…………それで? どんな条件だったの?」
「条件は『武術系・魔法系・生産系含むオリジナルスキル五十種類開発を達成』だったな。…………正直、これは《百芸創主》の仕様上のバグじゃないのか?」
本来オリジナルスキルと言うのは、才能があるティアンが一生に一つ作れるかどうかのものだと聞いている。それを武術系・魔法系・生産系含めて五十種類開発すると言う条件は、確かに難易度としては非常に高いモノだと言えるだろう。
だが、俺の《百芸創主》で作られたスキルは《
「そのせいで、今までの《百芸創主》によるスキルの開発と調整が、『オリジナルスキルを開発した』とシステムに認識されたのではないか? …………本来ならあんなショボいスキルがオリジナルスキルとして認められないと思うしな」
「んー、そう考えれば辻褄が合わなくもないかな?」
「でも、そういうのは修正されたりしないのです?」
…………まあ、普通のゲームなら修正案件かもしれないがな。
「この<Infinite Dendrogram>でそういう修正とかは無いと思うよ」
「そうだな。…………そもそもこのゲームに修正というシステムがあるのかも怪しいしな…………」
「?」
「まあ特に気にすることは無いって事だよ」
…………まあ、俺達には特に関係の無い話だろうしな。
「とりあえず、せっかく条件満たしたんだしさっさと取っちゃえば?」
「…………まだ、転職の試練があるから取れるとは限らないんだが……」
「兄様ならきっと大丈夫なのです!」
「それに試練を受けるだけならタダだしね、もっと気楽に行けば? 所詮私達にとってはゲームのジョブだしねー」
…………まあそれもそうか。以前から気にしていた超級職の事だから少し神経質になっていた様だな。
「じゃあちょっと超級職の試練を受けに行ってくるよ」
「いってらっしゃーい」
「頑張ってなのですー」
『頑張ってねー』
◇
とりあえず俺はあまり人が来ない冒険者ギルドのジョブクリスタルに来ていた。
…………各種クリスタルとアナウンスでは言っていたから、おそらくどのクリスタルでもいいと思うんだが。
「…………成る程、これでいいみたいだな」
クリスタルに触れて就けるジョブに一覧を見ると、その中に【技神】の選択肢もあった。
…………だが、他のジョブと違って色が薄いな、まだ条件を全て満たしていないからか?
とりあえずその選択肢に触れてみると、
【転職の試練に挑みますか?】
という表示が出た。
「Yesで」
そう答えると俺は奇妙な空間に飛ばされていた。
「ここは……」
そこには目の前に大きな決闘場の様なものがあった…………というよりギデオンで見た舞台にそっくりだな。
そして、そのそばには一つの石版があり、そこにはこう記されていた。
【先代【技神】の再現体を決闘で打倒する、又は生産において【技神】の同等以上の作品を造り提示せよ】
【成功すれば、次代の【技神】の座を与える】
【失敗すれば、次に試練を受けられるのは一カ月後である】
【決闘か生産かを選び舞台へ上がれ】
「…………成る程ね。まあ技の神と言うぐらいだし、相応しい
俺の生産技能なんて少し【ジェム】が作れるぐらいだからな、まだ決闘の方がいいだろう。
そうして、俺は戦闘用の装備に変更してから舞台に上がった。
「それで相手は……⁉︎」
すると舞台の反対側に腰に一本の刀を挿した壮年の男性が現れた。
…………この時点で俺はこの先の展開を察してしまった。
(あ、これ無r)
次の瞬間、その男性の刀に添えられた手がほんの僅かに霞んだ様に見え…………気付いた時には、既に俺の身体はコマ切れにされていた。
◇
「ウボァぁぁぁ…………」
「…………え、えーと…………大丈夫ですか兄様」
「転職の試練に失敗したの?」
あの後、試練に失敗した俺は冒険者ギルドの一角にある机で突っ伏していた。幸いなことに試練の空間はギデオンの闘技場と同じ仕組みだったのでデスペナはしていないが。
…………いや、あんなバグっぽい方法で条件を満たしたから試練に失敗することは想定していたし、今回はどんな試練なのか様子見するぐらいのつもりだったんだけど…………。
「…………正直【技神】に就くの無理じゃね?」
「そんなに難しい試練だったの?」
「…………まあ、改めて【技神】の転職条件を考えれば、ああいう難易度なのも納得なんだが……」
つまり<エンブリオ>などというズルが出来ないティアンが【技神】に就くことがどういう意味なのか、という事何だよなぁ。
「才能があるティアンが一生に一つ作れればいいオリジナルスキルを、
「…………そんなに凄い人だったのです?」
「…………これでも俺はお前達も含めてそれなりの数の規格外な才能の持ち主を見てきたつもりだが…………先代【技神】ははっきり言ってケタが違う」
正直、俺程度ではその才能を測る事すら出来ないレベルだ。はっきり言って勝ちの目が微塵も無い。
…………ちなみに最後、コマ切れにされながらも《看破》を使ってみたがレベルもステータスも全て見えなかった。
「お兄ちゃんはまだレベルを上げられるけど……」
「…………俺があと何千何万レベルを上げても勝てる気がしない」
「じゃあ生産の方はどうなんです?」
「…………先代【技神】が持っていた刀からは古代伝説級武具の【ドラグテイル】を遥かに超える威圧感を感じた…………おそらく先代【技神】が自分で作った刀、という展開だろうな」
結論、戦闘でも生産でも勝ちの目が無い。
…………<エンブリオ>によるインチキによって、なんちゃってオリジナルスキルを作った程度で就かせる気など無い! …………という鋼の意思を感じる…………。
「…………じゃあ兄様は【技神】を諦めるのです?」
「いや、これからも挑戦は続けていこうと思う。…………この世界でなら何か才能を覆す方法があるかもしれないし」
「お兄ちゃんは負けず嫌いだからね〜」
あの先代【技神】を倒すにはそれ以上の才能を持っているか、
…………俺の【ルー】にはそういう理不尽さがある様な<エンブリオ>ではないしな。今後の進化時に新規スキルを習得出来ないのも足を引っ張っているし。
やっぱり魔法かな、それも自分が死んだ瞬間に闘技場全体を消し飛ばす感じのやつとか。それと【
じゃあ、《百芸創主》だけでは難しいし…………どうせ【技神】を目指すなら<エンブリオ>に頼らないオリジナルスキルの自力作成にも挑戦してみるか? ミレーユさんもある程度熟練した魔術師ならスキルに頼らない魔法の調整が出来ると言っていたし…………。
「まあ、色々試行錯誤してみよう。まずはレベリングだな、とりあえずジョブ枠を全て埋めよう。それと<エンブリオ>のさらなる進化に、あと技術の錬成も必要かな」
「その意気だよお兄ちゃん。まだまだデンドロの先は長いよ!」
「そうなのです! みんなでもっと強くなるのですよ!」
…………今までは妹達の面倒を見る事がメインでデンドロをやって来たが、どうせなら俺自身も明確な目標があった方がゲームは楽しめるだろう。
考えてみれば規格外な才能を持つ人間に勝つ事は昔からの目標だったしな。あの事故以来色々割り切って…………いや、諦めてしまったがこの世界でなら多少無茶をしても大丈夫だろう。
「そうだな。これからは【技神】への転職を目指して頑張ってみるとするか!」
…………これが俺にとって、この<Infinite Dendrogram>で初めて自分自身の明確な目標を持った瞬間だった。
あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説
兄:兄の超級職(に就けるとは言っていない)
・【技神】を目指す言ったが、まともな方法で先代【技神】に勝てるとも思っていない。
・なのでこれからレベリングなどと並行して、まともじゃ無い方法を探す予定。
妹達:兄が目標を持ってくれて良かったと思っている
・自分達の事ばかり考えてる兄には、多少思うところがあった。
・ちなみに妹は既に【
フェイ:第三形態に進化した
・スキルに関しては《エール・トゥ・ザ・ブレッシング》のレベルが三になった事が強化点。
・この進化は数多くの魔法をラーニング出来た事でリソースが圧迫された事と、末妹がステータスの高い兄妹に早く追いつきたいと思った事が原因。
【ガーディアン・エレメンタルゴーレム】:<墓標迷宮>十階層ボス
・高いENDと各種防御系スキルを持つ典型的な耐久型ボスモンスターで、取り巻きとして各種エレメンタルを召喚してくる。
・だがAGIが低いので高いENDや防御スキルを無視出来る妹にとっては、高級な属性素材を落とすサンドバッグ扱いになっている。
・取り巻きのエレメンタルも兄と末妹に蹴散らされている。
【
・スキル特化型の【神】の中でも『ジョブスキル』を運用することに特化している。
・転職条件としては“全てのジョブ及びジョブスキルへの適正”と“あらゆる種類のオリジナルスキルを作る才能”を要求する。
・兄は前者を<マスター>としての適正で、後者を<エンブリオ>の特性でクリアして転職の試練に挑む事が出来た。
・【神】でありながら【技神】自体のスキルは奥義一つだけで、ステータスも超級職としてはあまり上がらない(上級職の平均より少し上ぐらい)
・だが【技神】自体の特性として、歴代の【技神】が作ったオリジナルスキル全てがジョブスキルとして記録されている…………が、それらのスキルを習得するには作成者と同等以上の技術が必要になる。
・複数の【神】系ジョブに就いたハイエンドが就く事を想定されたジョブ。
先代【技神】:【覇王】や先々代【龍帝】と同じハイエンドのティアン人外枠
・フラグマンがいた先々期文明時代よりも更に古い時代にいたハイエンド。
・その生涯で【技神】含め七つの超級職に就いていて(内訳は【技神】【刀神】【抜刀神】【斬神】【超闘士】【地神】【鍛治王】)合計レベルは三千ぐらい。
・先々期文明時にも転職条件は分かっていたが、誰も試練での再現体を倒せずに実質ロストジョブになっていた。
・基本的に剣技がメイン(【地神】と【鍛治王】は自分で使う刀を作るのに必要だからとりあえず就いた)
・オリジナルスキルを使って作り上げた刀の性能は、武器としてなら【グローリアα】と同等以上。
・兄をコマ切れにしたのは、
・その生涯をほぼ技量の研鑽にのみ費やしていた為、先々期文明時代にも記録はほとんど残っていなかった。
・試練に登場したのは再現体である為か本物よりも実力は劣化しており、大体平均的な
読了ありがとうございました、意見・感想・評価・誤字報告などはいつでも待っています。