とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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初投稿です、よろしくお願いします。

※妹の身長を165cmから160cmに変更しました。
※1/2 文章を大幅に追加しました。


2043年7月15日
ログイン・<アルター王国>


 □アルター王国・王都アルテア南門前 レント

 

「青い空、白い雲、目の前にはまさにファンタジーな都市、そしてこれらの光景が現実と変わらないように見えるクオリティ、まさか()()()VRMMOだったとは」

 

 なんというか盛大な大言壮語をぶち上げて発売されたゲーム<Infinite Dendrogram>、正直言ってネタゲー枠で買ったけどどうも本物くさい…………まあ、チュートリアルが終わったらいきなり上空からスカイダイビング(パラシュート無し)をやらされるとは思わなかったが……。

 

「三倍時間に関しては後で確認するとして……ん? 何か上から……プレイヤー?」

「にょわ〜〜〜〜〜〜」

 

 そのどこか聞き覚えのある声につられて空を見上げると、上空から一人の少女が降ってきた。その少女は上空から勢いよく落ちてきた後に地上スレスレで急減速して地面に着地した…………俺の時も側から見ればあんな感じなのか。

 

「痛っ‼︎くはないけど……まさかいきなり紐なしバンジーとは思わなかったよー。って五感すごっ‼︎クオリティやばっ‼︎やっぱこれマジもんのVRMMOじゃん‼︎」

 

 なんか物凄く()()()()()()()テンションの声のプレイヤーが落ちてきた。なのでちょっと声をかけてみることにした…………俺の予想が正しければ一緒にこのゲームを買った()()()だと思うのだが……。

 

「あ〜そこの君、名前(プレイヤー名)“ミカ”とか言わない?」

 

 と、現実での俺の()がゲーム内で良く使っているネームを出してみた。

 

「はい? 私の名前はミカですけど……あーひょっとしてレント? てゆーかマイブラザー?」

「ああ、俺の名前はレントだよ、マイシスター」

 

 やはり我が妹様だったらしい。流石に勘がいいな。

 

「また本名をもじったその名前(レント)にしたんだ、私もそうだけど」

「まあ、いちいち名前を考えるのも面倒だからな。それで早速合流できたけど……とりあえず目の前のファンタジーな都市に行ってみるか?」

 

 そう言って、目の前にある城壁に囲まれて中心には白亜の居城があるファンタジーな都市を指差した。

 

「そーだねー管理AIのネコさん(チェシャ)もこのゲームの事はあんまり詳しく教えてくれなかったしねー、まずは情報収集からかなー」

「チュートリアルでやった事はアバター作って、初期装備もらって、この<エンブリオ>を移植してもらったぐらいだからな。あ、俺の担当AIはダッチェスっていう女の人だったぞ」

 

 そう言いつつ左手の<エンブリオ>を眺める。曰く、このゲーム最大の売りであるすべてのプレイヤーに与えられるユニークなモノ、らしいが……。

 

「いったいどんな<エンブリオ>が産まれるんだろ〜ねー」

「さあな? いずれ解るだろう。それよりも入り口についたぞ」

 

 そして都市の門の前についた。いや〜間近で見るとまさに王道のザ・ファンタジーな街だなぁ。……ん? あの人は門番……かな?

 俺達二人が門の前で立ち止まっていると向こうから声をかけてきた。

 

「おい‼︎そこの二人‼︎“ジョブ”に就いていない者がなぜ外から来た。少し話を聞かせて貰おうか」

「ジョブ……って何?」

 

 なんか、門番っぽい人がこの世界の専門用語らしき言葉を含めながら話しかけてきた。よし、ここはこの世界の事について聞いてみよう。

 

「すみません、この世界に来たばかりであまりここの事をよく知らないんです。よろしければこの世界の事について教えてもらえませんか?」

「“この世界”……? ひょっとしてあんた達は<マスター>かい?」

 

 “マスター”って何だろうか?

 

「マスターって何だろう? お兄ちゃん知ってる?」

「いや知らない。とりあえず話を聞いてみよう」

 

 俺達はこの世界で初めて会った門番さん(仮)に、この世界の事について色々と聞いてみることにした。

 

 

 ◇

 

 

 あれからしばらくの間、門番さんの話を聞いた所によると、<マスター>とは<エンブリオ>に選ばれた者のことであり、絶大な力を持つ変わりに頻繁に別の世界にその身を飛ばされてしまうとの事。更に死の瞬間にも<エンブリオ>の力で別の世界に飛ぶことで生きながらえる事ができるらしい。ただし死んで飛ばされた場合は最低三日は帰ってこないのだとか。

 また“ジョブ”とはこの世界の人間が就くことが出来る職業のようなもので、就くことによってレベルを上げることができるようになって、ステータスを上げたりスキル覚えたり出来る。あと、この世界のNPC(ノンプレイヤーキャラクター)のことは“ティアン”と言うらしい。

 …………どうやら、このゲームでは俺達の様なプレイヤーをそんな風な設定でこの世界に落とし込んでいるらしい。

 

「ほえ〜プレイヤーの事はそんなふうに言われているのか。…………よく出来てるねお兄ちゃん」

「そうだな、死んだ時のことはデスペナのことか? …………3倍時間が本当なら24時間ログイン出来ないってところか」

 

 俺達がそんな事を話ていると門番さんが()()()()()()()()話しかけてきた。

 

「ところで今後多くの<マスター>がこの世界に現れると聞いたのだが、それは本当の事なのかい?」

「あ〜それは本当の事ですね。この後たくさん来るでしょうし」

「そうか……なら君達はどうしてこの国来たんだい? そしてこの国で何をするつもりなんだい?」

 

 おっと、ちょっと雰囲気が変わったな、これは返答には気をつけないと…………門番って事はこの国の治安維持組織に所属しているんだろうから、下手をするとこの世界の住人(ティアン)プレイヤー(マスター)に抱く印象が大きく変わるかもしれないし。

 

「えーと俺たちは……「はいっ‼︎私達はこの国に遊びに来ました‼︎あと冒険とかしてみたいです‼︎」っておいっ‼︎」

 

 ちょっマイシスター⁉︎ 今はシリアスな場面だから⁉︎ そんな率直な!

 

「そうか……遊びと冒険か……。じゃあ君たち<マスター>がこの国に害をなす事はあり得るかな?」

「あーそれは「私達はそんなことをするつもりはないけど、他の<マスター>の事は分かりません‼︎」ってちょっとマイシスター⁉︎」

 

 だから今シリアス‼︎ この国の<マスター>の扱いがヤバくなるルートいってない⁉︎

 

「そうか……<マスター>という括りではなく、<マスター>一人一人を見て判断していかなければならない……と言う事か」

 

 あっ、門番さんへの返答はこれでいいらしい…………流石に少し焦りすぎたな、うちのミカが()()()()()()()()()()()()()()()()しな。

 …………どうも本物のVRMMOという物を前にして思った以上に興奮していたらしい。もうちょっと落ち着こう。

 

「そーですね、<マスター>はこの世界では“自由”みたいですし」

「“自由”?」

 

 ミカのその言葉に、門番さんが疑問の表情で聞き返した。

 

「はい、私達をこの世界に送り込んだ者(チェシャ)はこう言いました。『英雄になるのも魔王になるのも、王になるのも奴隷になるのも、善人になるのも悪人になるのも、何かするのも何かしないのも、<Infinite Dendrogram>に居ても、<Infinite Dendrogram>を去っても、何でも自由だよ。出来るなら何をしたっていい』と」

「なるほど…………そういえば……俺を担当した管理AI(ダッチェス)も『この世界での貴方たち(<マスター>)は自由よ』とか言ってたな」

 

 そう、そんな事をあの女性は言っていた。するとミカが、

 

「だからこの国に害をなす<マスター>も出て来るかも知れませんが、この国を護ろうとする<マスター>だってきっといます」

 

 と言った…………つまりは“自由”それがこの世界での<マスター>の在り方になるのだろう。

 

「ふっ……そうか……冒険がしたいなら“冒険者ギルド”がこの国にはある。この道の先に案内看板があるからその指示に従えばいい、すぐに着く。そして……ようこそアルター王国・王都アルテアへ」

「「はい、いろいろありがとうございました」」

 

 そう言って門番さんと別れて、アルター王国・王都アルテアに入ることが出来た。

 

 

 ◇

 

 

「いや〜門番さんがいい人でよかったね兄さん」

「そうだな……ていうか、いきなりあんな事言いだすから驚いたぞ」

 

 まあ、ミカのことだから何か()()()()()()()()()()()んだろうが…………。

 

「んーあそこでは素直に本当の事を言ったほうが()()()()()()()()()んだよね〜」

「まあ、お前が直感で最適解を選ぶのは何時ものことなのは解ってるけどな。……今思えばあの返答が一番良かったと俺も思うが」

 

 そう言いつつ道を行くと看板が見えて来た、ふむ……ちょっと不安だったが字は読めるな。

 まあ、門番さんとも話は通じていたし翻訳機能でもあるのかな? 

 

「さあお兄ちゃん、いざ行かん冒険者ギルド‼︎私達の冒険はここからだよ‼︎」

「なんか打ち切りの漫画みたいなセリフだな」

 

 そんな事を言いつつ、俺達は冒険者ギルドに向かった。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

兄:アバター名『レント』
・アバター外見は身長175cmぐらいの金髪・碧眼の男性。
・本物のVRMMOに興奮して独り言が出ている。
・考えすぎて言葉が出てこないことがある。

妹:アバター名『ミカ』
・アバター外見は身長160cmぐらいの銀髪・赤眼の少女。
・本物のVRMMOに興奮してテンションが上がっている。
・基本的に直感で行動する。

チェシャ:管理AI、雑用担当
・原作のあとがきと感想返しも担当している。
・詳しくは原作を見よう‼︎

ダッチェス:管理AI、グラフィック担当
・兄のチュートリアル担当、まだ普通に喋れる。
・二日目以降は約束されたブラック労働(<マスター>の視界管理)が待っている。

門番さん:本名『リヒト・ローラン』
・実は門番ではなく王都警備を担っている第一騎士団の長。
・王国でも数少ないカンスト(レベル五百)勢であり、特典武具も所有している“王国の盾”とも呼ばれる実力者。
・実力だけでは無く頭脳・人望にも優れ、国王や騎士団長からの信任も厚い。
・たまたまレベル0で王都の外をうろついていた二人に声をかけ、以前から聞いていた噂(<マスター>が今後多く現れる)の事もあって《真偽判定》つきの質問をした。
・兄妹が嘘をついていなかったことで、<マスター>については今後もその在り方を見極めつつ、王国に益をもたらす者とは良い関係で()()()()()()()()()()()()()()()と考え始めた。
・妻と三人の娘がいる。


読了ありがとうございました。

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