とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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この話からアルター王国一周旅行の<ニッサ辺境伯領>編です。


それだは本編をどうぞ。


<ニッサ辺境伯領>・遭遇

 □ニッサ辺境伯領前 【騎兵(ライダー)】レント

 

 あれからギデオンを出た俺達は馬車を街道沿いに走らせていき、日が暮れた頃には<ニッサ辺境伯領>へ入る事が出来た。

 

「いやー、すっかり暗くなっちゃったね」

「これでも道中殆どモンスターに襲われなかったから、ペースは早い方だろう」

「襲ってきたモンスターもそこまで強くは無かったのです…………魔法を使うものが多かったですが」

『まあ、魔法自体は下級職レベルだったけど、モンスターの強さ自体も亜竜級以下ってところだったしね』

 

 俺達の辿ったのはギデオン西の<ジャンド草原>を抜けて、南西にある<サウダーテ森林>を通って<ニッサ辺境伯領>まで向かうルートだった。

 事前の情報ではこのルート上にいるモンスターが殆どが亜竜級以下のものであり、ギデオンから辺境伯領に向かうルートの中では一番無難であり、ティアンも普通に使っているという話だったので実際に問題無く通過できた。

 とはいえレジェンダリアに近い森林地帯だからか、魔法を使うモンスターが比較的多いのが特徴だった…………まあ、モンスター自体は弱かったのである程度の実力があれば問題が無いルートの様だったが。

 

「とりあえず、このペースなら今晩中に街に着くだろう」

「フーン、そっかー、じゃあ今日は野宿とかはしなくて済むか…………ん?」

 

 そんな話をしているとミカが何か感じ取ったのか、急に明後日の方向を向いた。

 

「……お兄ちゃん、あっちから何か来るよ。…………多分敵」

「《生物索敵》には反応が無いが…………いや《瘴気感知》の方には反応があったな。…………全員戦闘準備」

 

 常に発動していた《生物索敵》には反応が無かった、だが【祓魔師(エクソシスト)】で覚えた《瘴気感知》──周辺の呪怨系状態異常や()()()()()などの気配を索敵するスキル──には反応があった。

 …………という事は……。

 

「敵はアンデッドだ《ホーリーライト》!」

 

 すぐに俺は【祓魔師】の聖属性魔法《ホーリーライト》──聖属性の光の球体を出して周辺を照らし、その範囲にいるアンデッドへのステータスデバフと呪怨系状態異常効果を低下させるスキル──を使って辺り一帯を照らし出した…………すると、反応があった方向の暗がりから多数のアンデッドモンスターが姿を現した。

 

『『『『『◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️』』』』』

「うわぁー、凄く沢山いるね」

「ふむ……【ブラックウルフ・ゾンビ】【ポイズンスネーク・ゾンビ】【ハイドスパイダー・ゾンビ】その他色々……ここらに出て来るモンスター達がゾンビ化しているみたいだな」

「種類は全部バラバラなのです。…………どこかに親玉が居るのでしょうか?」

 

 確かにこれだけ種別がバラバラにモンスターがアンデッド化しているという事は、どこかにコイツらをアンデッドにしたヤツがいる可能性は充分に有るだろう…………事前の情報ではこの辺りにアンデッドが生成されるような、怨念が大量にある場所は無かった筈だしな。

 

『『『『『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️』』』』』

「とりあえず伏兵に気を付けながらアイツらを殲滅するぞ……《ピュリファイ・アンデッド》!」

 

 近づいてきたアンデッド達に対して、まず俺が《詠唱》で強化された浄化魔法を使い、その何割かを浄化して残りを大幅に弱体化させる…………【祓魔師】のアンデッドや悪魔に対するスキル効果を上昇させるパッシブスキル《エクソシズム》が効いているな。

 それに、奴らはこの辺りのあまり強く無いモンスターがアンデッド化したものだから、個々の能力は低い様だ。

 

『いくよミュウ……《ホーリー・ブレッシング》!』

「ゾンビはあまり殴りたくは無いのですが……そうも言ってられないのです! 《ソニックフィスト》《ラピッドフィスト》《回し蹴り》!」

 

 更にフェイが俺からラーニングした聖属性エンチャント魔法をミュウちゃんに掛けて、そのバフを受けた彼女が敵アンデッドを次々と格闘で倒していく…………《ホーリー・ブレッシング》は攻撃に聖属性を付与する効果に加えて、自身を不浄から守る効果もあるのでゾンビを素手で殴っても汚れないのである。

 

「あんまり無理はしない様にねー……《テンペスト・ストライク》!」

 

 そしてミカが暴風を纏った【ギガース】でゾンビ共を纏めて消しとばしていく…………確かに、いくら再生能力の高いアンデッドでもミンチにされれば殆ど再生しないのだが……。

 

「おいコラ! ミカ‼︎ あんまり肉片を飛び散らすんじゃない!」

「ちょっ! 姉様、こっちに飛んできたのです⁉︎」

「あっ⁉︎ ごめーん‼︎ っていうか思ったより脆いよコイツら‼︎」

 

 その暴風の所為で、砕け散ったゾンビの肉片が飛び散る事さえ無ければいい戦術だったんだが……少しデバフが効き過ぎたか。

 

「しょうがないな……二人共、下がっていろ! ……《ホーリー・バースト》‼︎」

『僕もやるよ……《ホーリー・バースト》!』

 

 止む終えずやや混乱していた二人を下がらせて、俺とフェイの聖属性広域攻撃魔法で敵アンデッド共を吹き飛ばす事にした。

 

『『『『『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️』』』』』

 

 俺達から放たれた聖なる光の奔流は、残りのアンデッド達を纏めて消しとばし浄化した。

 

「ふぅ。…………とりあえずこれで片付いたかな」

「…………最初からそれで吹き飛ばしておけば良かったんじゃ……」

「仕方ないだろう、相手の詳細が分からなかったから弱体化を優先させたんだから」

『それに下級職の広域攻撃魔法だから威力は低いしね』

 

 だが、あれだけ弱体化を重ねれば問題無く撃破出来た様だがな…………正直、最初から聖属性魔法で攻撃していても倒せた気もするが、それは言わなくてもいいだろう。

 

「ところで俺の各種探知系スキルには、敵の反応は無いが…………そっちはどうだ、ミカ?」

「うーん…………これといった危険はもう無いみたいだよ。ミュウちゃんは?」

「私も特に視線とか殺気とかは感じないのです」

 

 俺達三人の各種索敵能力に引っかからないという事は、ここら辺にはもう敵は居ない様だな。ちなみに視線や気配を感じ取れるのはミュウちゃんのリアルスキルである(一応《殺気感知》《気配察知》も覚えているがレベルは低い)

 曰く「相手が攻撃してくる前に殺気とか気配とかを感じるのです。それを読めば相手が攻撃する位置とかも大体読めますよね?」とのこと……いや、普通そんな事あっさり分からないから、ミュウちゃんの戦闘センスが頭抜けているだけだから。

 

「でも、なんでこんなところにアンデッドが? この辺にアンデッドが発生する場所なんてあったっけ?」

「事前に調べた時にはそんな情報は無かったが。…………とりあえずさっさと街に入ろう、そこでなら情報を得ることも出来るだろうさ」

 

 俺達は急いで戦闘の後始末を終えると、すぐに街に向かった。

 …………幸いな事にこれ以降は何事も無く普通に街に着くことが出来ので、俺達は旅の疲れを癒す為に一旦ログアウトする事にした。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □ニッサ辺境伯領・冒険者ギルド 【壊屋(クラッシャー)】ミカ

 

 あれから私達は現実で三日程、デンドロでは一週間ぐらいこのニッサ辺境伯領に滞在していた。ここニッサ辺境伯領アルター王国とレジェンダリアの国境付近にある為か、ギデオンと比べても亜人の数が多いようだった。

 更にその街並みはレジェンダリアの影響を強く受けているのか、王国の他の街よりもファンタジーな感じで、売っている物もレジェンダリア産のマジックアイテムが多かった。

 …………そして今まで私達はこの街を観光したり、冒険者ギルドのクエストを受けたりしつつ、手分けしてこの街に来た時に遭遇したアンデッドの情報を集めていた。

 

「とりあえず今まで集めた情報を纏めよう…………冒険者ギルドの職員からの情報によると、ここ最近夜になるとアンデッドモンスターが出没する様になったみたいだな」

「街の人達も、今まではこの辺りにアンデッドなんて滅多に出なかったのに、ここ最近はよく見かける様になったって言ってたね」

 

 街の人達の証言を纏めると、どうもアンデッドが頻繁に目撃され出したのはここ最近の事の様だね。

 

「実際、冒険者ギルドのクエストでも『夜間に出没するアンデッドモンスターの討伐』のクエストが出ていたのです」

『僕達も何度か受けているよね』

 

 その際に出て来る奴らは、その殆どがこの辺りに居る弱いモンスターがアンデッド化したものであり、アンデッド化した事により耐久力は上がっていたがそれ以外の能力はむしろ下がっていたので倒す事自体は簡単だった。

 …………だが、そのアンデッド達には一つの厄介な能力があって……。

 

「…………まさか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんてね。まさかのバイオなハザード方式とは」

「幸いな事にアンデッド自体は弱いので被害はそこまで広がってはいない様なのですが……」

「…………冒険者ギルドでは“この辺りに高位のアンデッドモンスターが住み着いた可能性もある”として現在調査中らしいがな」

 

 高位のアンデッドモンスターの中には死体をアンデッドに変えて使役するモノもいて、更に極一部のモノには今回の様にアンデッド化を伝染させるスキルを持つモノもいる様だ。この世界ではアンデッド化を伝染させるスキルを持つアンデッドは特級の危険生物に指定されており、その情報や討伐には相当な額の懸賞金がかけられている程みたい。

 …………その可能性も考慮して、現在この領の騎士団と冒険者ギルドで調査が進められており、更に王都に居る近衛騎士団が派遣されているという話もあるみたいだね。此処が王国の端にある所為か、捜索に参加している<マスター>は少ないみたいだけど。

 

「まあ、俺達は所詮外様、通りすがりの<マスター>だからな。…………自分達が巻き込まれたならともかく、この街の問題に関しては基本的に蚊帳の外だ」

「そうなんだけどねー。…………このまま放置しておくと()()()()()()()()()()()んだよね」

 

 …………そう、この街に来てから何度かアンデッドと戦っているうちに、私の『遠い勘』が“早くこの問題を解決した方がいい”と警告を発し始めたのである。

 

「姉様の勘に反応があったのですか、だとすると何か行動を起こさなければいけませんね。…………ところで姉様、どうすればいいのかは分からないのですか?」

「問題はそこなんだよねー。…………“このまま調査を続行した方がいい”って感じしかしないんだよね」

 

 私の『遠い勘』は、正直言って自分でもどういうモノなのかが分かっていないのでかなりムラがあり、前回の誘拐事件の時の様に明確な行動の指針が出る事もあれば、今回の様に曖昧な感じで伝わる事も多い。

 …………むしろ明確な指針が出る事は少なく、そういう場合は大体事件の核心に近づいた時に『近い勘』として出る事が多いんだよね。

 

「ふむ、じゃあ少し考え方を変えてみよう…………この世界でのアンデッドの発生原因は基本的に二種類ある、自然発生するか誰かが作るかだ」

「えーっと、前者が怨念のある場所の死体がアンデッドになる事とかで、後者が【死霊術師(ネクロマンサー)】のスキルで死体を加工して作る感じだっけ?」

「大体そんな感じだ。…………実際はもっと細かい分類があるみたいだが、俺も詳しい訳じゃないしその辺りは置いておく。…………そしてアンデッドは基本的に日の光の下では大幅に弱体化する特性を持っている」

 

 まあ、真昼間にバリバリ動くアンデッドはあんまり居ないよね…………ああ、成る程ね。

 

「兄様、それはつまり原因がどうあれアンデッドが発生する場所は日の光が刺さない場所、という事ですか?」

「まあそういう事だ。…………普通ならこんな当たり前の事をわざわざ確認しても意味が無いんだが、ミカの直感なら“なぜ”や“なに”や“どうして”が分からなくても“どこで”ぐらいは分かるだろう」

「…………要するに、この辺りにある日中の間に光が刺さない場所を片っ端から調べて、その中で私の直感が反応したところにこの騒動の原因があるって事?」

「そうだ。…………正直調査方法としては下の下だが、この街に来たばかりの俺達に出来る事はそのぐらいだろう」

 

 …………まあ、私達にコネもツテもない以上足で探すしかないよね。

 

「とりあえず、この冒険者ギルドにある資料や地図を調べてみよう。…………それでミカの直感に引っかかってくれれば良し、そうでなければここら辺を回って足で探す、という感じで行こう」

「「『はーい』」」

 

 

 ◇

 

 

 そうして資料や地図を漁る事小一時間…………とある資料に目を通した時にピンと来た。

 

「<サウダーテ霊林>…………多分ここかな、“ここに行った方がいい”って出てるし」

「ふむ…………<サウダーテ霊林>はこの領内にある()()()()()()()みたいだな」

 

 自然ダンジョンとはこの世界において、(運営)が作った神造ダンジョン以外の自然に出来たダンジョンの事である。

 

「この<サウダーテ霊林>は<サウダーテ森林>の一部がダンジョン化した物の様だな」

 

 どうやら地形的な問題で通常よりも空間の魔力濃度が非常に高い所為で、植生やそこに住むモンスターが変質している為に自然ダンジョンとして扱われている様だ。

 更に空間の魔力濃度が高い所為で隣国レジェンダリアの森と同じく、魔法現象が自然発生する<アクシデントサークル>が起きる事もある、と資料には書かれている

 

「鬱蒼とした森だから昼間でもあまり光が刺さないみたいだし、多分ここに原因があるみたいだよ」

「侵入自体は制限されていないから、入る事自体は出来るみたいだな」

「とはいえ、自然ダンジョンの中でも難易度がそこそこ高いみたいなのです」

 

 資料を詳しく見ると周りの森と比べてモンスターのレベルも高い上に、<アクシデントサークル>まで起きる可能性がある以上対策は必須だしね。

 でも、ここでしか取れない植物の採取以来もあるから入る人もそこそこいて、中の事も結構詳しく書いてあるみたい。

 

「とりあえず準備を整えて<サウダーテ霊林>に行ってみるか」

「そうだね。…………それに自然ダンジョンにも一度行ってみたかったしね」

神造ダンジョン(墓標迷宮)には何度か行った事はありますが、自然ダンジョンは初めてなので楽しみなのです」

「まあ、ダンジョン攻略はゲームの楽しみの一つだからな」

 

 こうして、私達は自然ダンジョン<サウダーテ霊林>の攻略に向かう事になったのだった。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

三兄妹:とりあえず妹の直感で事件が起きそうだと分かった所には首を突っ込んでいくスタイル。

《ホーリー・ブレッシング》:【祓魔師】の聖属性魔法スキルその一
・自身または味方一人を対象として聖属性を付与するスキル。
・付与された対象は攻撃が聖属性になり、呪怨系状態異常耐性が上昇、更にゾンビの肉片程度なら弾ける不浄耐性もつく。

《ホーリーライト》:【祓魔師】の聖属性魔法スキルその二
・光が当たる範囲内の悪魔・アンデッドのステータスを下げ、範囲内の呪怨系状態異常の効果を下げる光の玉を出す魔法。
・《ピュリファイ・アンデッド》と違って浄化による即死効果は無いが、周辺を光で照らすので夜間戦闘では有用。

《エクソシズム》:【祓魔師】のパッシブスキル
・種族が悪魔・アンデッドの相手を対象とするスキルの効果を上昇させるスキル。
・種族特効系スキルの中でも単純なダメージの増加などではなく、効果対象へのスキル効果を上昇させる珍しいタイプ。
・スキルによるダメージや各種スキル効果を上昇させるが、スキルを使わない攻撃には効果を発揮しない。

《ホーリー・バースト》:【祓魔師】の聖属性魔法スキルその三
・聖属性の光の奔流を放射状に放つ高域攻撃魔法スキル。
・攻撃範囲が広い分威力は低く、特攻対象のアンデッド以外には対して効かない。

<サウダーテ霊林>:<ニッサ辺境伯領>に存在する自然ダンジョン。
・<サウダーテ森林>の中にある魔力溜まりによって、その周辺の森が変質した事で出来たダンジョン。
・レジェンダリアの森に近い性質を持っていて、発生頻度は低いが<アクシデントサークル>も発生する事がある。
・王国では手に入らず、レジェンダリアでも輸出していない植物が生えていたりもするので、たまに採取依頼があったりする。
・モンスターは周辺にいるものが魔力によって変質した亜種や、魔力溜まりから発生したエレメンタルモンスターが主に生息している。
・モンスターの強さは最大で亜竜級ぐらいだがごく稀に純竜級モンスターがいる事も。
・特に侵入は禁止されていないがその特性から対策装備は必須。


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