それでは本編をどうぞ。
□ブリティス伯爵領・<水精洞窟> 【
「さて、やって来ました自然ダンジョン<水精洞窟>! 今日こそ超級職の転職条件を満たすよ!」
「頑張って下さい、姉様」
『頑張ってね』
「しかし、ブリティス伯爵には感謝しないとな。…………何せ、報酬のオマケにミカの要求した情報までくれたんだから」
以前、港町ウェレンで【デッドリー・オーシャン・スライム】を倒した俺達は、その討伐依頼の報酬を受け取る為に領主であるブリティス伯爵の下に向かったのである…………ウェレンの人達はスライムから受けた被害が酷くて報酬を出す余裕がなかったので、代わりにブリティス伯爵が支払ってくれるという話になったのだ。
そこでミカは呆れた事に「お金とか要らないのでこの領周辺の純竜級以上のモンスターの所在地の情報を下さい!」と言ったのだ。その要望に対して、ブリティス伯爵は報酬の一部として領内の有害なボスモンスターの情報をくれたのだ。
曰く「領内の有害なモンスターを討伐してくれるならば此方としても嬉しいので。何より貴方達の実力と人格なら問題ないでしょう」との事。スゴくいい人だよなぁ、ブリティス伯爵。
「まあ、俺達の王国での行動を調べた上で渡しても構わない情報を寄越したんだろうがな」
「ブリティス伯爵、有能だね! …………理由はどうあれ有力な情報ばかりだったから、コッチとしても有り難かったしね」
その情報の中でも私の目的を達成するのに丁度良いと思われたのが、領内を流れる河川の近くにあったこの“自然ダンジョン”<水精洞窟>である。
…………かつて、この洞窟は光熱エネルギー減衰の特性を宿す【マナフィア水晶】や水属性を宿す【アクエリア水晶】などの鉱物が採掘される場所で、モンスターもほぼ居ない為に採掘者も多く訪れる場所だったのだが、今は
「ここが自然ダンジョンと化したのは<
「その【アニワザム】という<UBM>がここの水晶を気に入って、その固有スキルによってこの洞窟を自然ダンジョンにしてしまったらしいよ」
「…………以前には討伐隊も組まれたが返り討ちにあって、このダンジョンに入った少数の<マスター>もほぼやられているみたいだな」
そう、この<水精洞窟>はこの付近でもトップクラスの難易度を持つ自然ダンジョンなのである。その理由とは……。
『『『KYAAAAAAA‼︎』』』
「おっ、出て来たね。【アクエリア・エレメンタル】が三体か。三人共下がっていてね」
「《看破》してみたが三体共亜竜級だ、
『…………このエレメンタルは【アニワザム】が召喚したモノなんだよね』
出て来たのは半透明の身体で、身長150cmぐらいの人型をしたエレメンタルモンスターだった。そう、<UBM>【アニワザム】の能力の
この洞窟で採掘される【アクエリア水晶】は水属性を宿す鉱石なので、ここに居るのは水属性のエレメンタルになる。更に、それらのエレメンタルが【マナフィア水晶】の光熱エネルギーの減衰特性によって、強固な光熱耐性・レジスト系スキルを得ているのである。
…………ちなみに上位のエレメンタルは自身の身体を司る属性と同じにする《精霊体》というスキルを持っており、水属性のエレメンタルなら身体が水になって物理攻撃が効かなくなるのだ。つまり、ここに居るエレメンタルは『物理攻撃無効・光熱エネルギー攻撃耐性』を持っているという事になる。
…………改めて考えてみると酷いダンジョンだな。普通のゲームなら修正案件だろうが……。
「まあ、私には関係ないけどね《竜尾剣》」
『『『KYAAAAAAA⁉︎』』』
ミカは【ドラグテイル】の剣尾を伸ばして、目の前の【アクエリア・エレメンタル】の身体の端を切り裂いて、僅かにHPを減らしていた…………防御をスキルに頼る相手に対しては、とことん強いのがミカの<エンブリオ>だからな。
だが、ミカは相手のHPを僅かに減らしただけでそれ以上の攻撃はしなかった…………というのも、ここのエレメンタルにはとある特性があり……。
『『『KYAAAAAAA!』』』
「お、来るかな?」
何と、ダメージを受けた三体の【アクエリア・エレメンタル】はその身を融け合わせ一つとなった…………そう【アニワザム】が生成したエレメンタルは窮地に陥ると合体して、より上位のエレメンタルに進化する特性を持っているのだ!
『KYAAAAAAA‼︎』
生まれて合体モンスター【グレーター・アクエリア・エレメンタル】は身長3メートル程の人型をしていて、その能力は完全に純竜級上位の力を持っていた。
合体したソイツは、その力でもって俺達侵入者を排除しようとする…………よりも前に、合体中の無防備な時に接近していたミカの攻撃を受けてしまった。
「はい、お疲れ様《アストラル・ブレイカー》!」
『⁉︎ KYAAAaaaa…………』
そのスキル《アストラル・ブレイカー》──【
基本的にこいつらみたいな非実体系エレメンタルのステータスは、魔法を使う為のMPに特化している…………つまり、HPやENDは純竜級モンスターとしてはかなり低いのだ。
特に物理無効や属性耐性を持つ此処のエレメンタルはHPやENDといった
「やっぱり予想通りだね。…………此処のエレメンタルなら一撃で倒せるし、何より
そう、今回この自然ダンジョンに来た目的は『ミカになら簡単に倒せる上位純竜級エレメンタルと遭遇出来る此処で、モンスターを倒して超級職の転職条件を満たそう』という事である。
…………ちなみにこのエレメンタル達は<UBM>のスキルで作られたモノだからか、倒してもアイテムをドロップせず経験値もほぼ貰えない様だ。
「というわけで、そーれ、ガッチャンコ!」
そんな気の抜ける声と共に、ミカはその辺りにあった水晶を砕いた…………すると、その行動に反応してダンジョン内に居た【アクエリア・エレメンタル】がミカに向かって来た。
『『『KYAAAAAAA!』』』
「うん、此処のエレメンタルは水晶に手を出す相手を積極的に狙って来ると言う情報は本当だったみたいだね。…………今度はバフも掛けてっと。さーて! 狩るぞ!」
俺が渡した単体バフ魔法の【ジェム】などを使って自身を強化したミカは、向かって来た【アクエリア・エレメンタル】との戦闘を開始した。ちなみに転職条件はソロで戦う事が条件らしいので、俺達はパーティーを解除して離れた所でミカに万が一の事があった場合の救出役として待機している。
…………しかし、これは……。
「…………RPGでよくあるやつですね。経験値稼ぎの為にワザと仲間を呼ばせて延々と倒し続けるやつなのです」
「…………むしろ、ワザと合体させてドロップアイテム狙うやつじゃないか?」
『側から見ていると結構シュールだね』
VRだと大分アレな光景になるな…………いつの時代も人間がやる事は変わらないんだなぁ……。
◇
それからも、ミカと【アクエリア・エレメンタル】の戦闘は続いていた。
『KYAAAAAAA‼︎』
「甘いよ《闇纏》!」
今も【グレーター・アクエリア・エレメンタル】が大威力の水流を放ち、ミカはそれを【ブラックォーツ】のスキルを使ってで擦り抜けて一気に距離を詰めているところだ。
…………最初の方は合体した時の隙を狙い打ちにされていた相手だが、今では学習したのか初めから純竜級モンスターになった状態で戦いを挑んでいた。まあ、ミカは『合体させる手間が省けた』と言っていたが……。
「《インフェルノ・ストライク》‼︎」
『⁉︎ KYAAAAaaaa…………』
そのまま接近して《闇纏》を解除したミカが、豪炎を纏うメイスの一撃で【グレーター・アクエリア・エレメンタル】を消し飛ばした…………さて、これで何体目だったかなぁ。
「しかし、これだけ暴れて大丈夫なのでしょうか? …………此処は
「正確に言うと【アニワザム】の
古代伝説級<UBM>【魔鉱蚯蚓 アニワザム】はアルター王国近辺にあるいくつかの希少鉱石が存在する鉱山などに、自身が生成したエレメンタルを配置して自然ダンジョンにしている様だ。
だが、縄張りを荒らされたり鉱石を採掘されたりしても、それを理由にして人間を積極的に襲ったりはせず、再度エレメンタルを配置するだけで済ませているらしい。
…………もっとも、食事中にたまたま遭遇してしまった人間は躊躇なく葬っている様なので、単に人間に興味が無いだけなのだろうが。
「それにミカの直感が反応していない以上、此処での戦闘行動は特に問題はないんだろうさ」
「そうですよね」
そのミカは、今も一体の【グレーター・アクエリア・エレメンタル】を撲殺していた…………アレもかなり強いモンスターなんだが、防御スキル特化型だからミカとの相性が最悪なんだよな。
…………そんな事を考えていると、敵を倒し終わったミカが突然その動きを止め虚空を見つめていた。
「ん? …………よっしゃあァァァ‼︎ 【
ミカはそんな事を叫びながらガッツポーズをしていた…………さっき見ていたのは転職条件クリアのアナウンスだった様だな。
「いやー、長く苦しい道のりだったよ」
「…………転職条件が明らかになってから、デンドロ内で一カ月ぐらいしか経っていないが」
「…………モンスターとの戦いも一方的な蹂躙ばかりだったのです」
『…………長くも苦しくもないよね?』
…………それは未だに転職の試練をクリア出来ない俺への嫌味か? そう思ったのだが、どうもミカは転職条件を満たした事でかなりハイになっている様だ。
「あははー! …………あと、アナウンスには【戦棍王】じゃなくて【
「そうなのですね。……あと姉様……」
「それに! さっきステータスを見たら【ギガース】が
「そうか。それは色々おめでとうと言いたいんだが…………とりあえず後ろを見ろ」
「へ? 後ろ?」
…………そうやってハイテンションになっているミカの後ろでは、今まで散々倒して来た【アクエリア・エレメンタル】の
「…………えーっと、もう此処には用が無いので見逃してくr『『『KYAAAAAAAAAAA‼︎』』』る訳ないですよね⁉︎」
「…………あれだけ暴れればなぁ」
「…………あちらも流石に怒るのです」
『当然だね』
その後、俺達は襲いかかって来た【アクエリア・エレメンタル】達をどうにか退けつつ、急いで<水精洞窟>から脱出したのだった。
◇◇◇
□<ブリティス伯爵領> 【戦棍鬼】ミカ
あれからなんとか街まで帰ってきた私は、休憩もそこそこに【戦棍姫】転職の為に戦棍士系統に転職可能なジョブクリスタルまでやって来ていた。
ちなみに道中とダンジョン内での戦闘で【
「さて、やりますか」
そう言って私はジョブクリスタルに触れた。転職可能なジョブの一覧には確かに【戦棍姫】の文字があったが、お兄ちゃんが言っていた通り他のジョブと比べて色が薄いね。
その選択肢に触れると……。
【転職の試練に挑みますか?】
という表示がなされたので、当然『Yes』を選ぶ。
…………その直後、私は妙な空間に飛ばされており、目の前には円形の舞台があった。
「ふむん、闘技場かな。お兄ちゃんのと同じだね。……脇の石版になにか書かれているね」
そこにはこう書かれていた。
【制限時間以内に試練の番人を撃破せよ】
【成功すれば、次代の【戦棍姫】の座を与える】
【失敗すれば、次に試練を受けられるのは一カ月後である】
「…………成る程。よく見ると闘技場の外縁部にはデカイ砂時計が置いてあるね。今は止まっているけど多分私が舞台に上がったら砂が落ち始めて、落ち切ったら終了って感じかな」
試練の内容を把握した私はさっさと舞台に上がっていった。
…………そして、その反対側には5メートル程の大きさの金属製ゴーレムが鎮座していた。
「……【トライアル・アダマンタイト・ゴーレム】か……あれを倒せばいいっぽいね。砂時計も動き始めたし、さっさと始めようか」
『────────』
私は【ギガース】を構えて【トライアル・アダマンタイト・ゴーレム】に突っ込んで行った。それに反応した相手もこちらに向けて拳を振り下ろして来るが、その速度は遅く軌道も直感で先読み出来るので、容易く回避してその足を殴りつけた。
…………だが、殴った足は大きなヒビこそ入ったが砕く事は出来ず、相手はこちらに反撃の蹴りを叩き込んで来たので、私は一旦距離を取った。
(……第五形態に進化してステータス補正と【ギガース】の攻撃力が上がっている私の攻撃を受けても、あれだけしかダメージを与えられないという事は、多分END一万は超えているね)
そこで砂時計を見ると砂は少しずつ落ちていたが、まだ上の砂はタップリと残っていた。
(制限時間は大体三十分ぐらいかな? ……お兄ちゃんの話からすると転職の試練はティアンが受ける事しか想定されていない様だし、アクティブスキルを使って攻撃すれば余裕を持って時期内に倒しきれると思うけど……)
おそらく、あの高ENDを持つゴーレムの攻撃をかいくぐり的確にアクティブスキルを当てて倒すか、どこかにあるコアを砕くとかみたいな事を想定した試練なんだろうけど……。
(……うん、ここは多少のリスクを覚悟してでも
そう考えた私は……。
「《
……先程覚えた【激災棍 ギガース】の
◇
「…………よしっ! 【戦棍姫】ゲット‼︎」
あの後、必殺スキルを使った私は【トライアル・アダマンタイト・ゴーレム】を
「しかし、この舞台が決闘の闘技場と同じ様に、戦いが終わったらリセットされる仕様で助かったよ。……必殺スキルの
…………私の【ギガース】の必殺スキルは確かに強力なんだけど、使用後には
「…………空いている最後の下級職には【
…………そう考えて、私は試練の空間を後にしたのだった。
あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説
妹:祝! 超級職転職&必殺スキル取得!
・【ギガース】は第五形態になって《バーリアブレイカー》のレベルが五になり、ステータス補正と装備攻撃力・防御力が上がったりもしている。
・必殺スキルの詳細はまだ秘密。
《アストラル・ブレイカー》:【戦棍鬼】のスキル
・ゴーストや実体の無いエレメンタルに対して攻撃を当てられる様になる特効スキルで、それらの相手に対するダメージ上昇効果もある。
・習得条件は『メイスを装備した状態で非実体系モンスターを一定数撃破』であり、妹は【ギガース】のスキルで条件を満たした。
【戦棍王】/【戦棍姫】:戦棍士系統超級職
・ステータスはSTRが高く、HP・END・AGIがそこそこ伸び、SP・DEXがあまり上がらず、MP・LUCはほとんど上がらない。
・固有スキルは通常スキルが二つ、奥義が一つ存在する。
【トライアル・アダマンタイト・ゴーレム】:【戦棍王】試練の番人
・ENDは一万を超え、カンストした戦棍士がアクティブスキルを使ってようやく砕ける様に調整されていた。
・実は胸の中央部にコアがあり、制限時間以内にアクティブスキルを駆使して身体を砕きコアを壊して倒す事を想定していた。
・だが、必殺スキルを使った妹には全身を粉砕された。
兄:実は妹の為に単体バフや防御用【ジェム】を大量に作ったりしていた
末妹:どこかに超級職落ちてないのです?
・フェイ『流石にそんな事は早々無いでしょ』
【アクエリア水晶】:水属性を宿す水晶
・加工して水属性の装備や水中行動用装備を作るのに使われている。
【マナフィア水晶】:光熱エネルギー減衰の効果がある水晶
・加工すると《炎熱耐性》《光耐性》などのスキルを装備に付与出来るので、防具の作成などに使われている。
【アクエリア・エレメンタル】:<水精洞窟>のモンスター
・【アニワザム】が【アクエリア水晶】と【マナフィア水晶】を素材に作り出したエレメンタルモンスターで、《精霊体・水》による物理攻撃無効と光熱エネルギー耐性とレジストスキルを持つ。
・だが、その分攻撃能力は低く低級(合体時は上級)相当の水魔法による攻撃しか出来ない。
・実は【アニワザム】が鉱山などに配置するエレメンタルには《魔鉱熟成》と言う周辺の鉱物の質を上昇させるスキルを持っており、それによって鉱物の質を維持・上昇させるのが主な役割で戦闘型では無い。
・また、生成されたエレメンタルが死亡した時には《精鉱昇華》と言うスキルにより、有していたリソースのほぼ全てを近くの鉱物か【アニワザム】に与える様になっている。
・今回は妹に片端からやられていたが、【グレーター・アクエリア・エレメンタル】になると兄や末妹では相性的に倒しきれないぐらいには厄介。
【魔鉱蚯蚓 アニワザム】:王国周辺に居る古代伝説級<UBM>
・普段は王国地下深くで眠っており、偶に食事の為に地上の鉱物を食べに来るが、人里を襲ったりしないので古代伝説級の中では危険度が低い。
・食事の後は《魔鉱熟成》のスキルを使って、その場所の鉱物を十年ぐらいの時間をかけて元よりも質が高い物を生成される様にしたりしている。
・また、特に気に入った場所(主に希少な鉱石がある場所)には環境維持用のエレメンタルを配置しているが、その気になれば破壊された鉱山の完全再生も可能なので配置したエレメンタルが倒された程度ならあまり気にしない。
・だが、食事の際には周りの邪魔なモノに対して
・<UBM>としては多重技巧型で捕食した鉱物のリソースを蓄積し、その性質を学習・スキル化する《魔鉱喰王》と言うスキルを持つ(エレメンタル生成はエレメンタルを生む鉱物から学習したもの)
・全力戦闘時には周辺の鉱物を大量に捕食しながらリソースを蓄積し、それをを使って大量の伝説級エレメンタルを生成しつつ、自身も超級職の奥義に匹敵する様々なスキルを連発してくる。
・とはいえ、基本的に面倒臭がりでグルメなので自身が襲われない限りは戦闘をしようとはせず、戦闘時でもなければ美味しくもない鉱物を無差別大量捕食とかはしない。
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