とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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前回のあらすじ:三兄妹「道中PK集団に遭遇したと思ったら、いきなり<UBM>が乱入して来た件」


今回は長くなったので前後編に分けます。では本編をどうぞ。


VS【磁改奇馬 マグネトローベ】前編

 ◾️ 【磁改奇馬 マグネトローベ】

 

『劣化“化身”15体確認。……内一体ガ超級職【戦棍姫】』

 

 現在、()()()()の指示によって最近地上に増殖し始めた劣化“化身”供の戦力調査をしていた私──個体名【マグネトローベ】──は、偵察の為に空中を走行している際に超級職【戦棍姫(メイス・プリンセス)】に就いた劣化“化身”の反応を感知し、手始めとして対象に《電磁加速(レイル・アクセル)》によって加速された金属弾を放った。

 だが、その対象を含む三体の劣化“化身”は事前にこちらの攻撃を察知して回避した…………よって、私は対象の脅威度を上昇させると共に地上に降りて全力戦闘を行う事にした。

 

『コレヨリ、知覚範囲内ニオケル劣化“化身”ノ殲滅ヲ開始シマス』

 

 その宣言を人型の頭部から発すると共に、まず私は目の前に居る11体の劣化“化身”を排除しようと、人型部分の両手から《プラズマ・ブレード》を展開し()()()()()()で出せる全速力で奴等に接近した。

 

「来るぞ! 全員散k『遅イ《磁界制御(マグネティック・コントロール)》』

 

 一団の中に居た黒服の劣化“化身”が周りの奴等に指示を出そうとするが、それよりも早く私は《磁界制御》を使って急加速した…………このスキル《磁界制御》は自身を中心とする半径約十メートルの空間で磁力を発生・制御するスキルであり、今はそれによって私の金属製の身体を前方に弾く事で加速しているのだ(《電磁加速》にはクールタイムがある)

 そのまま浮き足立っている奴等に接近した私は両手の《プラズマ・ブレード》によって、まず二人の劣化“化身”の身体を焼き切った…………奴等もそれなりにいい防具を装備している様だが、オリハルコンすらも容易く溶断出来るこの《プラズマ・ブレード》にとっては問題にはならない。

 

「クソッ! 《パワースラッシュ》!」

「《ストーム・スティンガー》!」

「《レーザー・ブレード》!」

 

 次の瞬間、左から斧を振りかぶった劣化“化身”が、右からは槍を構えて高速で突っ込んで来る劣化“化身”が、後ろからは光を纏わせた劣化“化身”が襲いかかってきた…………中々良い連携ではあるが、武器が()()()では意味がないな。

 

『逸レロ』

「「「ナニィ⁉︎」」」

 

 それらの攻撃を私は《磁界制御》によって磁力を操作して、奴等の武器の軌道を逸らす事によってその攻撃を全て自分から外した。

 そのまま攻撃して来た三体を含む効果範囲内に入った劣化“化身”供が装備している金属製武具を磁力によってその場から動けない様にし、両手の《プラズマ・ブレード》でまとめて焼き切った。

 …………その間、最初に指示を出していた黒服の劣化“化身”は私から距離を取っており、【戦棍姫】を含む三体の劣化“化身”は先程から遠巻きにこちらを観察していた。

 

『(さて、今の攻撃で五体は消せたからこの一団の残りは()()か…………効果範囲外で魔法を使おうとしている劣化“化身”が三体いるな)』

 

 なので、その三体が固まっている方向に人型部分の頭部に付いている一本のツノを向け、そこを基点にして魔法を発動させた。

 

『《サンダー・スマッシャー》』

「「「ぎゃああああァァァ⁉︎」」」

 

 ツノから放たれた上級職の奥義に匹敵する威力の雷撃が三体の劣化“化身”を飲み込み、その準備していた魔法を霧散させた…………とはいえ、三体を攻撃範囲に収める為に雷撃を拡散させた所為で仕留めきれなかったので、《磁界制御》によって加速して《プラズマ・ブレード》で三体共焼き切った。

 …………これで眼に映る範囲の劣化“化身”は黒服と【戦棍姫】の一団のみになった。

 

「クソが! 散会しろっつったのに……。ていうか、お前達も遠巻きに見てないで手伝えよ!」

 

 その光景を見た黒服の劣化“化身”が、その後方の【戦棍姫】を含む三体の劣化“化身”に声をかけたが……。

 

「いや、いつ後ろから撃って来るか分からない相手と共闘なんて無理だから」

「PKしに来たのに虫が良すぎるよ」

「まあ、こちらから貴方達を襲う事はしませんのです」

「チクショォォォ‼︎」

 

 そんな言葉を黒服の劣化“化身”に言い放った【戦棍姫】を含む三体の劣化“化身”はそのままこちらの観察に戻った……この一団とあちらは協力関係にはないらしいな。

 …………では、先にこの一団の残り()()を始末しようか。

 

「だったら俺一人で<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>をブチ殺してやラァ!」

 

 そう叫んだ黒服の劣化“化身”は手に持った木製の槍を持ってこちらに襲い掛かって来た…………コイツの装備は全て非金属製だから《磁界制御》は意味がないな。

 …………なので、私は両手の《プラズマ・ブレード》で迎撃する事にしたが……。

 

「クッ! そラァ!」

『ム……』

 

 黒服の劣化“化身”は私の《プラズマ・ブレード》による攻撃をギリギリとはいえ回避しながら、手に持った槍で反撃しつつこちらに接近して来たのだ…………なので、私は戦い方を《磁界制御》を使った加速・急旋回などでその周囲を走り回りながら斬り込んでいく戦法に変えた。

 

「クソォ!」

『終ワリダ』

 

 私のその攻撃に黒服の劣化“化身”は徐々に対応しきれなくなり、遂にはその左腕を焼き切られた…………が、その瞬間、今まで姿を消していた劣化“化身”が背後から襲いかかって来た。

 

「《スニーク・レイド》!」

 

 その劣化“化身”が短刀で私に斬りかかる…………よりも先に、私は馬体に付いている尾を相手に向けてスキルを使用した。

 

『《サンダー・スマッシャー》』

「グワァァァ!」

 

 先程と違い収束されて放たれた雷撃はその劣化“化身”の身体を焼き払った…………私には電磁波で周囲を索敵する《エレクトロマグネティック・サーチ》というスキルがあり、それを常時使い続けていたので初めから姿を消していた劣化“化身”がいる事には気付いていたのだ。

 …………今まで放置していたのは、単にこちらに近づいて来るのを待っていただけである。

 

「良くやった! くらえ!」

 

 だが、その攻撃によってほんの一瞬だけ黒服の劣化“化身”から注意が逸れてしまい、その隙に奴は片手で槍の後端部分を持ち私の人型部分に突き込んで来た。

 …………そんな持ち方では槍の穂先が当たるだけでダメージはないはずだが、奴は会心の笑みを浮かべていた。

 

「取った! 《其れは戦神を穿つ槍(ミスティルテイン)》!」

 

 奴がそのスキルを使った瞬間、その槍の穂先が当たっている部分を中心に私の()()()()()()()()()()…………どうやら、先程のスキルは敵に当たりさえすれば効果を発揮出来るスキルだった様だな。

 

『(…………やはり“化身”は危険な存在だな。より多くのデータを集めてかの者に送らなければ)』

 

 そんな事を()()()()()()()()()()()()()()で考えつつ、私は近接防御用スキルを使用した。

 

『《サンダー・カタラクト》』

「何ィ⁉︎」

 

 全方位に電撃を発生させる攻性防御スキル《サンダー・カタラクト》を発動させた…………このスキルは接近して来た敵を弾き飛ばす為に物理的な干渉能力を高く設定されており、主に周辺にある物理的な障害を破壊する為に使われる。

 そんなスキルが直撃した黒服の劣化“化身”はダメージこそ装備していた【救命のブローチ】で無効にしたものの、その身体は電撃によって弾き飛ばされた。

 

『(人型部分の再構成を実行)』

 

 その思った直後、私の破壊された部分から雷が迸り次の瞬間には人型部分が元どおりになっていた。

 …………私は元々創造主達であるとある人間の科学者によって作られた“MPバッテリー付き試作型煌玉馬”であり、それをベースとした馬体に“あの者”が作成した【ハイエンド・ライトニング・エレメンタル】を人型部分として融合され生み出されたモノである。

 故に雷属性のエレメンタルである人型部分は馬体部分に蓄積されたMPを消費すれば即再生可能なのだ…………まあ、人型部分は外見が機械の様になっていたり頭部から声が出せるなどして、そこが本体であるかのように偽装されているが。

 

『消エロ』

「ガッ⁉︎」

 

 そして私は再生が終わった人型部分の両手から再び《プラズマ・ブレード》を展開し、黒服の劣化“化身”を頭部から真っ二つにした。

 

『(さて、これで黒服の一団は片付け終わったな……ッ!)』

「《竜尾剣》!」

 

 私が次は【戦棍姫】に就いた劣化“化身”の番だと考えた瞬間、その劣化“化身”の女が身につけていた鎧に付いていたワイヤー付きのブレードをこちらに超音速で射出して来た。

 私は即座に《磁界制御》によってそのブレードを逸らすが、それを見た【戦棍姫】の劣化“化身”は即座に装備していた鎧を《瞬間装着》でアイテムボックス内に収納した。

 

『《ヒート・ジャベリン》!』

「《ホーミング・ブレイズ》!」

 

 その直後、もう一人の劣化“化身”の女が肩に乗せている小動物(ステータスが見えないのでおそらくその女の“化身”としての異能)がこちらに向けて複数の炎の槍を放ち、最後の男の劣化“化身”も同じく火属性魔法である複数の追尾式炎弾をこちらに向けて撃ち放って来た。

 

『チィ!』

 

 先程の戦闘を見ていたのか、それらの魔法はこちらの馬体部分を正確に狙って来ていた…………が、私は速度差から最初にこちらに到達した炎の槍を《磁力操作》で横にスライドして全弾回避し、それを追って来た追尾式炎弾を両手の《プラズマ・ブレード》で打ち払う。

 

「せいっ!」

「とうっ!」

「《パワージェム・スロー》!」

 

 そこにあの劣化“化身”たちはこちらに向かって一斉に()()を投げつけて来た…………あれは【ジェム】か⁉︎

 

『クッ!』

 

 それに気付いた私はすぐさまその場から離脱しようとするも……。

 

 ドドドガガガアアアァァァ────ァァァン!!! 

 

 それらの【ジェム】は私の近くに来た瞬間に一斉に大爆発を引き起こした…………これは火属性魔法の《エクスプロージョン》か。

 

『……損傷確認。……軽微、戦闘ニ支障ハナシ』

 

 …………その爆発を受けた私はダメージを受けたが、人型部分はMPさえあれば再生可能であり、馬体部分も内蔵された金属粒子を使っての再生で問題ない程度のダメージでしかない。

 

「ふーむ、流石にこんな攻撃じゃ倒せないか」

「あの<UBM>相当硬いですね」

「加えて再生能力持ちか……厄介だな」

 

 そう言っている劣化“化身”達は互いにやや距離を取りつつ、こちらを油断なく見ながら戦闘の構えを取っていた…………私に内蔵されている《MP蓄積バッテリー》の残量からして、全力戦闘可能時間は残り二時間程か。

 

『……問題ナシ。【戦棍姫】含ム敵劣化“化身”トノ戦闘行動ヲ続行シマス』

 

 全てはかつての創造主達が私に望んだ事…………この世界の悪である“化身”を駆逐する為に……。

 

 

 ◆◇◆

 

 

 □クレーミル領内 【高位付与術師(ハイ・エンチャンター)】レント

 

 今、俺達はクレーミル領内の林道で、PKクラン<オーヴァー・デンジャラス・ブリゲイト>を僅か一分足らずで全滅させた<UBM>【磁改奇馬 マグネトローベ】と相対していた。

 現在、奴は先程俺達が投げた【ジェムー《エクスプロージョン》】の爆発でダメージを負っており、今はそれを再生させているところだ…………なので今のうちに【テレパシーカフス】を使って妹達と状況を確認していこうと思う。

 

『まあ、彼等の()()()()のお陰で奴の能力は大分明らかになったがな』

『電撃に光の剣(ビームサーベル)に磁力操作……どれも厄介な能力だね』

『特に磁力操作が厄介なのです』

 

 確かに、奴の磁力操作能力のお陰で俺は()()()の特典武具である【ヴァルシオン】を、ミカも同じく特典武具の【ドラグテイル】を外す事になってしまいステータスが大きく下がっているからな。

 具体的に言うとミカちゃんは金属製の籠手を外しただけだが、俺は弓も短剣も使えないので以前ニッサ辺境伯領で買ったレジェンダリア産の木製の杖を装備しており、ミカに至ってはメイスは基本的に金属製なので無手になってしまっている。

 …………幸いな事に俺達三人は戦闘では機動力を重視しているため金属製の防具はあまり付けておらず、装備変更による戦闘能力の低下は最低限に抑えられているが。

 

『それでもステータスは下がっているしな。……ミュウちゃんは必殺スキルを頼む』

『分かったのです』「《我等が成るは光の使者(フェアリー)》《エコー・オブ・トゥワイス》」

『《霊環付与》』

 

 俺の指示でミュウちゃんとフェイが融合し、更に彼女の特典武具【ハデスルード】の持続回復スキルが付与された…………これにより今ミュウちゃんに掛かっている単体バフ効果が俺とミカにも効果を及ぼす様になる。

 また、事前にミュウちゃんには単体バフ魔法と炎熱・雷耐性レジスト魔法を込めた【ジェム】を使って貰っており、それらの効果も俺達に掛かってくれる筈だ。

 

「(更に俺とミカもそれぞれ単体バフ魔法の【ジェム】を使っている上に、俺が使ったパーティー全体バフ魔法の効果もあるからな。……単体バフ魔法と全体バフ魔法は併用出来ないが、全体バフ魔法を使いながら単体バフのアイテムの使用は出来るのは良かった)」

 

 さて、これでこちらの準備は整ったな…………あちらは……。

 

『……問題ナシ。【戦棍姫】含ム敵劣化“化身”トノ戦闘行動ヲ続行シマス』

 

 …………どうやら再生は終わったようだな。

 その【マグネトローベ】は両手のビームサーベルを振りかざして、更に身体から青白い電撃を走らせている……? 

 

「ヤバっ⁉︎ 私から離れて!!」

「「ッ!」」

 

 その焦った様なミカの指示に対し、俺達は即座にその場を全力で飛び退いた…………次の瞬間、全身に青白い電撃を纏った【マグネトローベ】が()()()()()()()()()()()()()()()()でこちらに突っ込んできた。

 その進路上にいたミカはとっさに【ギガース】を紋章から取り出して防御したものの、奴が超高速移動しながら振るったビームサーベルに弾き飛ばされてしまった…………奴め、最初に撃ったレールガンらしきスキルを自分自身に使いやがったな! 

 そうやってミカを弾き飛ばしながら通り過ぎていった奴は、そのまましばらく進んだところで静止した。

 

「《ヒート・ジャベリン》!」

『《ブレイズ・バースト》!』

『《サンダー・カタラクト》』

 

 そこに俺とミュウちゃん(と融合しているフェイ)は攻撃魔法を浴びせ掛けるが、奴は全方位に発生させた電撃でそれらの魔法を相殺した…………とりあえずそのまま魔法や【ジェム】を放って奴を牽制しつつ、ミカに【カフス】で連絡を取る。

 

『おいミカ、無事か?』

『なんとかね。……アイツのビームサーベルを【ギガース】で防いだ時に、勢いに負けて吹き飛ばされただけだから』

『良かったのです』

 

 …………こうやって念話をしている間にも攻撃は続けているのだが、奴は磁力操作で自身を不規則に移動させたり、両手のビームサーベルでこちらの攻撃を切り払ったりしているので目立ったダメージは与えられない…………更に、まれに攻撃が当たった時でもすぐさま再生されてしまうので決定打にはならない様だ。

 一応、事前に俺とミュウちゃんはMPを持続回復させるポーションを使っているが、このままでは特典武具のスキルでMPの回復が出来るミュウちゃん達はともかく俺はMPが切れるだろうし、持っている【ジェム】の数にも限界がある。

 

『……このままだとジリ貧だからまずは接近戦を挑むぞ。狙いは馬の方、俺が最初に動きを止める』

『了解。じゃあ次に私が突っ込むよ』

『まとめて行くと電撃で一網打尽にされますからね。三方向から時間差で行きましょう』

 

 …………そうやって簡単に作戦をまとめると俺達はそれぞれ行動を起こした。

 まず、俺は動きを止める為の魔法を発動させつつ、アイテムボックスから【ジェムー《アクアバインド》】を四つ取り出した。

 

「《グランド・ホールダー》! 《バラージスロー》!」

 

 魔法が発動した瞬間【マグネトローベ】の周囲から土で出来た腕が四本生えてその身体を掴もうとし、更に俺が投げた四つの【ジェム】から一本ずつ水の縄が奴に向かって伸びて行く。

 

『ム』

 

 だが、奴はそれらの拘束魔法を両手のビームサーベルで次々と斬り払って無効化して行った。

 …………とはいえ、そのせいで奴の動きは一瞬鈍ったので、その隙にミュウが【ギガース】を振りかざして奴の正面から突撃した。

 

「そりゃあ!」

『止マレ』

 

 その突撃を奴はミカが振りかぶったままの【ギガース】を磁力操作で停止させる事で防ぎ、そのまま動きの止まったミカにビームサーベルを振るい…………その攻撃を()()()()()ミカは直前に【ギガース】を紋章の中にしまってその一撃を回避した。

 

「せいっ!」

『《サンダー・カタラクト》』

 

 無手になって奴のビームサーベルによる斬撃を掻い潜って接近したミカはそのまま殴り掛かろうとしたが、奴の全方位電撃で吹き飛ばされた。

 …………まあ、ミュウちゃんの《エール・トゥ・ザ・ブレッシング》の魔法ダメージ減少と雷耐性のお陰でダメージは大した事はなく、何より全方位攻撃を使()()()()という囮としての役割は十分に果たしていた。

 そして、ミカが弾き飛ばされるのとほぼ同時にミュウちゃんが奴の背後から接近した…………だが、奴は尻尾をミュウちゃんに向けて魔法を発射しようとしていた。

 

『《サンダー・スマッシャー》』

「ッ! 無駄なのです!!」

 

 その尾から拡散型の電撃が放たれるが、ミュウちゃんは自身に掛かっている魔法耐性効果を頼りに電撃の中を突っ切った…………しかし、ダメージは無くとも僅かにその動きは鈍ってしまった。

 …………そんなミュウちゃんに対して、奴はその()()()()()()()()()()()()()()青白い人型の電撃に変化させた。

 

「なっ⁉︎ 離脱するのです!」

『偽装解除、攻撃』

 

 奴のその姿に危険を感じたのか、ミュウちゃんは即座にその場から飛び退いた…………次の瞬間、奴はビームサーベルを展開している()()()()()()()()()()()()、背後にいるミュウちゃんに斬撃を放ってきた。

 …………幸い、先にその場から離脱したお陰でその攻撃はミュウちゃんに当たる事は無かった。

 

『《クリムゾン・スフィア》!』

『回避』

 

 距離を取ったミュウちゃんは融合していたフェイが準備していた《クリムゾン・スフィア》を【マグネトローベ】に放つが、奴は磁力操作で宙に飛び上がりそのまま空を走って俺達から距離を取った。

 …………それを見た俺とミカは即座に遠距離攻撃での追撃を図った。

 

「《ストライク・ブラスト》!」

「《ロングスロー》!」

『回避困難、防御』

 

 空を駆ける奴に対し、ミカは取り出した【ギガース】で衝撃波を放ち、俺はやや遅れて【ジェムー《クリムゾン・スフィア》】を投擲した…………奴はミカの衝撃波こそ回避したものの、その回避先に投擲した俺の【ジェム】は避けきれずに巻き起こった火球に飲み込まれた。

 …………妙だな? これぐらいの攻撃なら奴は磁力操作による不規則な起動で回避出来た筈だが…………どうやら、奴は地上よりも空中の方が動きが鈍くなるようだな。

 

「……と言っても、このぐらいでは仕留めきれないだろうが……!」

『《サンダー・アロー》掃射』

 

 火球の中から出てきた奴はビームサーベルを解除した腕をこちらに向けて、そこから何十発もの雷の矢をこちらに撃ち放って来た…………この矢は速度が速い上に広範囲にばら撒かれている為回避は難しいが、その威力は低いので耐性を上げている俺達には大したダメージにはならない。

 …………そう考えていると、奴の青白い人型の頭部に一本の()()()()角が生えている事に気づいた。

 

「お兄ちゃん! 最初の攻撃来るよ!!」

「レールガンか! 《魔力視》!」

 

 ミカの警告を聞いた俺は《魔力視》で奴の角を注視する…………あの角から磁力のレールが伸びていてその方向は……俺か!

 

『《電磁加速砲(レイル・アクセル・カノン)》ファイア』

「チィ!!」

 

 咄嗟に俺は身を翻すと、それとほぼ同時に奴の角が超高速で射出され先程まで俺が居た場所に突き刺さり、大爆発を起こして地面に巨大なクレーターを作り上げた。

 …………その攻撃で怯む俺達を尻目に奴は再び地面に降り立ち、再度両手からビームサーベルを展開してこちらに向き直った。

 

『ダメージ許容範囲。再生シツツ戦闘続行』

「やれやれしぶといね」『ミュウちゃん必殺スキルの残り時間は?』

「かなり硬いのです」『残り四分なのです』

 

 …………そのミュウちゃんの答えを聞き、俺はこの戦いは相当に手間取りそうだと内心ため息をついた。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

三兄妹:三人とも“後ろから撃って来るかもしれない相手との共闘とか無理”と考えるタイプ。
・一応、妹の直感で『共闘したら最後の方で裏切りそう』と出たので当て馬にする事にしたというのもある。
・ちなみに妹の【ギガース】は構造が単純でスキルも少ないので、紋章は出し入れする時間が非常に短い。

《ホーミング・ブレイズ》:【紅蓮術師】の魔法
・敵を追尾する炎弾を発射する魔法。
・追尾術式が組み込まれているせいで威力・弾速共に《ヒート・ジャベリン》には劣り、主に牽制用に使われる事が多い。

<オーヴァー・デンジャラス・ブリゲイト>:今日最も運の悪かったPKクラン
・今回の敗因は妹二人の強さを見たり、初めて<UBM>に遭遇したりしたせいで動揺してまともに戦えなかった事。
・あと、クレーミルで売っている高性能な金属製防具を着けているメンバーが多かった事も敗因になっている。

シュバルツ・ブラック:初の<UBM>戦にしては健闘した方
・彼の<エンブリオ>は【滅神呪槍 ミスティルテイン】と言い、主に対象のステータスが高い程効果が上がるスキルを複数持つ木製の槍型アームズ。
・必殺スキル《其れは戦神を穿つ槍》は穂先が当たった相手に対し、その対象のMP・SPの十分の一及びSTR・END・AGI・DEX・LUCの内一番高い数値の五倍の防御・身代わり効果無視の固定ダメージを与えるスキル。
・本人が身軽さとかっこよさを重視して金属製防具を着けていなかったので、唯一【マグネトローベ】と互角に戦えた。

【磁改奇馬 マグネトローベ】:伝説級<UBM>
・元は先々期文明時に作られたMP蓄積バッテリー搭載試作型煌玉馬(非フラグマン製)を、とある存在が改造して出来た<UBM>。
・戦闘時にはMP消費の激しい各種スキルを連発するスタイルを取っているが、事前にエレメンタル部分で生成したMPを馬体部分に搭載されたMP蓄積バッテリーに溜め込む事で解決している。
・空中走行時には磁力の反発を使い空中に擬似的な足場を作る方式をとっており、磁力操作のリソースを足場生成に割り振っているせいで磁力を使った急加速・急旋回などはやり難くなっている。
・とある存在から『地上に増えた劣化“化身”の戦力調査』を頼まれたが、本人が『“化身”は絶対に滅ぼすべき』という思考であり、『劣化“化身”(<マスター>)を殲滅してそのデータを送る』という行動方針になっている。


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