とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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今回は前回の続きです、それでは後編をどうぞ。


VS【磁改奇馬 マグネトローベ】後編

 □クレーミル領内 【高位付与術師(ハイ・エンチャンター)】レント

 

 俺は現在、妹達と共に上半身が雷で出来た人型、下半身が機械の馬という<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>【磁改奇馬 マグネトローベ】と戦っていた。

 

『排除』

「チィ! 《ヒート・ジャベリン)!」

 

 今は地を駆けている奴の振るう()()()()()()()()()雷の腕から展開されている長さ二メートル程のビームサーベルを避け、その反撃に装備している【精霊樹の杖】から炎の槍を放ったところだ。

 また、奴は上半身のもう一本の腕も同じ様に伸びており、そちらはミカの方に振るわれていた…………幸いにも腕の速度自体は亜音速程度(AGI5000以上)なので、ミュウちゃんの必殺スキルによるバフを受けた俺達なら躱せない事も無いのだが……。

 

『回避』

「あー!! また逃げた!」

 

 その炎の槍を奴は磁力を操ることで一時的に自身の身体を加速する事によって回避し、それと同時に距離を詰めようとしていた俺達から遠ざかった…………そう、腕のリーチが大幅に伸びた所為で奴に近付く事が非常に難しくなっているのだ。

 更にあのビームサーベルは耐性バフを受けている俺達ですら直撃すればやられかねない威力なので、回避するしかないのも距離を詰められない事に拍車をかけている。

 …………距離を取った奴に対し、一番近くにいたミュウちゃんが横合いから接近するが……。

 

『《サンダー・スマッシャー》』

「くっ!」

 

 それを奴は馬の()()()()()()から放たれた拡散する雷撃で牽制した…………これまでの攻防から奴は身体の如何なる所からでも雷属性魔法を放てるらしい事が分かっている。

 …………雷と言うのが厄介で速度が速くて避けにくい上に、耐性バフでダメージ自体は少なくても電撃で筋肉が萎縮するせいで僅かに動きが止まってしまうのが最も厄介だ。

 今も一瞬動きが止まったミュウちゃんに対して奴は腕を伸ばしてビームサーベルを振るい、それをミュウちゃんはギリギリで回避しつつ距離を取っている。

 

『《ブレイズ・バースト》!』

「《ヒート・ブラスター》!」

『《サンダー・カタラクト》』

 

 距離を取ったミュウちゃんと融合しているフェイが奴に向けて拡散する炎の砲撃を放ち、俺も【紅蓮術師(パイロマンサー)】の魔法の中で最も弾速が速い収束熱線魔法を放つが、奴は全方位に電撃を放つ近接防御魔法でそれらの魔法を防いだ。

 …………あの全方位雷撃も厄介なんだよな。下手な範囲攻撃は防がれる上に、近づいた相手を弾き飛ばす事も出来るから距離を詰めても安心出来ん。

 それでも奴の動きは止まったので、その間に超音速機動が出来るミカが接近するが……。

 

『跳躍』

「ああもう! 《ストライク・ブラスト》!」

 

 奴は磁力操作による大跳躍で上空に移動して、そのまま宙を走り出した…………それに対してミカは【ギガース】を取り出して衝撃波を放つが、奴は宙を駆けてそれを回避した。

 …………空中を移動する奴は地上と比べてやや動きが鈍る様だが、こちらはそもそも空を飛べない上に対空攻撃手段も限られているので地上戦よりもやり難い。

 

「《バラージ・スロー》!」

『《ロック・ジャベリン》!』

 

 それでも何もしないよりもマシだと、俺とフェイは空を駆ける奴に対しそれぞれ複数の【ジェムー《エクスプロージョン》】を岩で出来た槍を放った。

 …………だが、それと同時に奴の身体に青白い電流が走り……。

 

『《電磁加速(レイル・アクセル)》』

 

 直後、超超音速まで加速した奴はそれらの攻撃を振り切りながらその場を離脱した…………そう、奴はあの超加速スキルを主に回避に使用し出したのだ。

 あの加速スキルはチャージに少しだけ時間が掛かり使用後に僅かだが磁力操作を使えない時間が出来る様で、更にその移動方向を俺は《魔力視》、ミカは直感、ミュウちゃんは洞察力によって事前に見切る事が出来るため、()()()使()()()()()()は対処するのはそこまで難しくは無いんだが…………今の様に回避に使われると途端に厄介になるのだ。

 …………何せあの速度で離脱されると流石に追い切れないし、使用後の磁力操作不能時間も落下中に終わる程度のものなので空中での回避に使った場合にはさしたる隙にはならないのである。

 そうやって奴が距離を取って地面に着地した時、ミュウちゃんから【テレパシーカフス】で連絡があった。

 

『……兄様、必殺スキルの残り時間は後二分なのです』

『……そうか』

 

 …………そう、一番の問題はこうやって時間を稼がれている所為で、ミュウちゃんの必殺スキルの制限時間が迫っている事なんだよなぁ。

 とりあえず、奴が自身の損傷を回復させている隙にこちらもポーションでMPなどを回復させる…………《魔法発動加速》や《魔法威力拡大》とかの魔法拡張スキルも使っているからMPの消費が非道いんだよなぁ。

 そして、それと同時に妹達と作戦を立てていく。

 

『ミカ、《エフェクトバニッシュ》で奴のスキルを封じられないか?』

『無理。あいつ【戦棍姫(メイス・プリンセス)】の事を知っているみたいだから、上手く間合いに入れないよ』

『ステータスに寄らない技量も相当高いですよね』

 

 …………確かにミカに対しては雷属性魔法を殆ど使って来なかったし、常に自分が磁力操作出来る空間をミカに近づけないか逆に完全にその範囲に入れるかしていたな。

 コッチの最大戦力のミカがあまり機能していないのがキツイな、メイスという武器種は金属製の棍棒を指す物だし…………それに、ミュウちゃんの言う通り奴はスキル頼みの相手じゃないから隙も少ないし。

 …………そんな事を考えているとミカがとある提案をしてきた。

 

『いっそ私の必殺スキルを使う?』

『……いやダメだな。お前の必殺スキルはデスペナ確定だし、何より分かりやすいから奴が逃げに徹する可能性もある』

 

 確かにミカの必殺スキルなら奴を叩き潰せるかも知れないが、空中を移動出来て一時的とは言え超超音速機動が出来る奴相手だと逃げられる可能性が高い。

 …………今のところ俺達が奴と戦っていられるのは、奴自身がこちらに向かって来るからなのも理由の一つだからな。

 

『とりあえず、ミュウちゃんの必殺スキルの時間切れまでは使うなよ』

『分かったよ、お兄ちゃん』

『そうですよ姉様、デスペナしたら一緒に旅行が出来ないのです! ……それに、これまでの戦闘で奴の動きはおおよそ見切りましたのです』

 

 そう、別に俺達だってこれまでただグダグダと戦い続けてきた訳じゃない…………これまでの戦闘では敢えて全力を出さずに相手の能力を見る事を優先して来たのだ。

 …………それに再生能力がある所為で一度の攻撃で仕留めきらないと詰むし。

 

『時間も無いから、次の攻撃では今まで温存していた手札も全て使って仕掛けるぞ。……狙いは奴の足だ』

 

 奴は空中を移動する際にも“空を駆ける”という方法を使っていたから、馬の部分の足を奪えば移動速度は大きく落ちる筈だ…………問題は奴の再生能力と胴体部の装甲の頑丈さだが……。

 

『じゃあ、足は私が何とかするよ』

『胴体部の装甲は私とフェイの新スキルで破壊します。……なのでフォローは任せました、兄様』

『了解。……それじゃあ行くか』

 

 そんな感じでかなりアバウトに作戦を立てた俺達は、こちらに向かって来る【マグネトローベ】と相対した…………何分、あまり時間が無いんでな。

 …………それに、この二人ならこの程度の指示で十分だろうよ。

 

「《不治呪瘴》」

『迎撃』

 

 まず最初にミカが特典武具(非金属製)【ブラックォーツ】が有する自分の攻撃に【再生阻害】効果を付与するスキル《不治呪瘴》を使いつつ、こちらに迫って来る奴に全速力(超音速)で突っ込んだ。

 その一見無謀に思える突撃に対して、奴は即座にビームサーベルを展開した両手をその進行方向に置く様にしながら伸ばしてミカを斬り裂こうとする…………全速力で突っ込んでいる以上は途中で軌道変更は出来ないと踏んでの行動だろうが……。

 

「《闇纏》!」

『!?』

 

 そのビームサーベルはミカの身体に()()()()()()()()()()…………直前でミカが使った【ブラックォーツ】のもう一つのスキル、魔法攻撃を含む生物以外の干渉を透過する《闇纏》の効果である。

 …………あのビームサーベルは確かに強力なスキルだが、スキルであるからこそミカならば一度は確実に突破出来る。

 

「っと、捕まえたよ!」

『! 排除!』

 

 奴に接近したミカはそのまま相手の右前足に組み付いた…………《闇纏》は()()()()()干渉を透過するスキルであり使用時には自分もスキルや武器などで他の生物に干渉出来なくなるが、それは逆に言えば生身通し(エレメンタルの肉体も生身判定)で接触する事は可能なのだ。

 奴は激しく動いて組み付いたミカを引き剥がそうとするが、メイスを装備していない状態でもSTRが二万を超えるミカを引き剥がす事は出来なかった…………そしてミカは片腕で奴の足を掴んだまま、もう片方の手を引き絞り……。

 

「《破城槌》ィ!!」

『!!』

 

 そのままチャージの終わった【壊屋(クラッシャー)】のスキル《破城槌》を乗せた拳を奴の足に叩き込み、その右前足を粉々に粉砕した…………打撃ダメージを六倍化する代わりにチャージ時間が必要なスキルである《破城槌》を確実に当てる為に相手に組みつき、更に《闇纏》を使って電撃で弾かれ無い様にする戦術だな。

 …………その上、相手の損傷部分に黒いモヤの様なモノ──《不治呪瘴》のスキルエフェクト──が纏わり付いているのですぐには回復しないだろう。

 

『ッ離脱!』

 

 だが、奴も足が破壊された事でミカの拘束が外れたのを見ると即座に磁力を操り跳躍してその場を離脱しつつ、片手のビームサーベルをオフにした上でその雷の腕で技後硬直で動けないミカを殴り飛ばした。

 …………それを見ていた俺は杖を腰に挿しつつ《瞬間装備》で弓を取り出し、それに【霊樹の矢】──付加した魔法効果を増大させるレジェンダリア産の()()矢──を番えて、奴が着地した瞬間に磁力操作範囲外からスキルを使ってその矢を放った。

 

「《カーズド・アロー》!」

『ガッ! コレハ……!』

 

 呪術《カース・バインド》と弓系アクティブスキルを融合させたオリジナルスキルを使って放たれた矢は奴の人型上半身部分に命中し、その付加されたスキル効果である【呪縛】を増幅した上で奴に齎した…………と言っても<UBM>である奴に対しては、ほんの一瞬だけ動きを止めるのが精々だが。

 …………今、奴に接近しているミュウちゃん(武闘派天災児)はその隙を見逃す事は無かった。

 

「フェイ、あのスキルを」

『分かった《ミラクル・ミキシング》ー《クリムゾン・スフィア》イン《シャイニング・フィスト》』

 

 奴が動けない一瞬の隙をついて、ミュウちゃんは新スキルを使いながらその懐に潜り込み…………それに対して、動けない奴は魔法による迎撃を選択した。

 

『《サンダー・カタラクト》!』

「《バックステップ》」

 

 奴が迎撃の為に発動した全方位雷撃を、ミュウちゃんはそれとほぼ同時に【拳士(ボクサー)】の《バックステップ》──後ろに一歩だけAGIを倍加した上で移動するスキル──を発動させる事によって回避した。

 

『!!』

「それの範囲とタイミングはもう見切りましたのです《ファントム・ステップ》《真撃》!」

 

 …………その言葉通り、奴の雷撃はミュウちゃんの()()()()()()()()()までしか届いていなかった。

 そして直ぐに、ミュウちゃんは【拳聖(フィスト・マスター)】のスキルでその場に残像を残す程の速度で奴の懐に踏み込み、拳を握りしめながら【武闘家(マーシャル・アーティスト)】の奥義を使った…………それに対して、奴は動ける様になった身体で迎撃を試みるが……。

 

『迎……!』

「遅い《シャイニング・フィスト》!」

 

 奴が迎撃のビームサーベルを振るうよりも早く、ミュウちゃんの《シャイニング・フィスト》──光属性を纏わせた正拳突きを放つ【拳聖】の奥義──がその馬体部分前面に直撃し…………その拳から()()()が起こった。

 …………これがミュウちゃんとフェイの新スキル《ミラクル・ミキシング》──フェイがラーニングした攻撃魔法の一つを、ミュウちゃんが習得している格闘系アクティブスキルの一つに付加する──の効果である。

 先に使った《真撃》を含めて上級職三種の奥義を重ね合わせた一撃の威力は凄まじく、奴の馬体部分の前半分を吹き飛ばし…………その馬体部分の腹部にあった()()()()()()を溶かすだけに留まった。

 

「ッ!? 二重装甲ですか⁉︎」

「コアは覆っていたか! 《瞬間装着》!」

 

 恐らく、あの金属は話に聞く神話級金属(ヒヒイロカネ)か…………それで内部にあるコア部分などを覆っているのだろう。

 それを見た俺は即座に弓を放り出し、装備を《瞬間装着》によって【射手の手套】を《炎熱耐性》スキルの付いた【耐火グローブ】に切り替えた上で奴に向けて駆け出した…………だが、その前に奴はまだかろうじて残っている上半身部分からビームサーベルを両手に展開した。

 

「ミュウちゃん!」

『ガアアアァァァ!!!』

「グッ⁉︎」

 

 自身の必殺攻撃を防がれたミュウちゃんと追撃の為に接近していたミカに対して、奴は人型を成せないぐらいに崩れた上半身を全力で稼働させ、その両手に展開されていたビームサーベルを振るって二人を切り飛ばした…………幸いその攻撃は二人が装備していた【救命のブローチ】によって防がれたが、攻撃の威力によって二人はそのまま吹き飛ばされた。

 そして、そのまま奴はビームサーベルを仕舞い…………その両手を失った前足代わりに地面に着いて態勢を整え、更に()()()()()()()()()変化させてそこから一本のビームサーベルを展開した。

 

『ガアアAAAAAA!』

「しつこい! 《空想秘奥(ブリューナク)》!」

 

 そして、その頭部をこちらに伸ばして俺を突き刺そうとしてきた…………それを避けられないと判断した俺は、スキル(空想秘奥)を使いつつ【ブローチ】頼りで()()()()()()()()()()でビールサーベルを受け止めて、そのまま伸びた頭部の側面を辿って奴の元まで接近し……。

 

「《サファイア・ライン》!」

『ガアアァァァ!』

 

 その右手から残りMPほぼ全てを注ぎ込み、更に《空想秘奥》によって強化もされた《サファイア・ライン》──高圧水流によるウォーターカッターで相手を切り裂く【蒼海術師(ハイドロマンサー)】の奥義──を放って、雷の身体ごとコアを覆っていた金属を切り裂いた…………その攻撃でかろうじて残っていた雷の身体は完全に消滅した様だ。

 

『ササササsAAAAAAイイイセsssイイイ!!』

 

 …………だが、どうやら中身までは完全に破壊出来ていない様なので、俺は左手に【ジェムー《クリムゾン・スフィア》】を取り出して、起動しながらその切れ目に押し込んだ。

 

「爆ぜろ」

『AAAAA…………マ…………タ………………』

 

 …………その即時起動する様に設定してあった【ジェムー《クリムゾン・スフィア》】はその絶大な火力で奴の装甲内部を焼き尽くし、そのコアを完全に破壊して【マグネトローべ】を沈黙させた。

 

 

 ◇

 

 

「…………ふう、やっと終わったか……」

 

 …………俺は沈黙した【マグネトローべ】の残骸が光の塵になるのを見て、ようやくこの戦いが終わった事を理解した。

 

【<UBM>【磁改奇馬 マグネトローべ】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【レント】がMVPに選出されました】

【【レント】にMVP特典【磁蹄騎馬 マグネトローべ】を贈与します】

 

 そんなアナウンスが流れたので、どうやら本当に奴は討伐出来た様だ…………あと、久しぶりに特典武具ゲットだぜ。

 …………そんな事を考えていると向こうからミカとミュウちゃんとフェイ(もう五分経った)がこちらに向かってきた。

 

「はーい、お兄ちゃんMVPおめでと〜。…………って! お兄ちゃんその手!」

「ん? …………ああ、これか」

 

 ミカに言われて自分の左手を見ると、そこには重度の【火傷】を負った手があった…………【ジェム】による自爆対策で付けていた【耐火グローブ】も焼け落ちているな。

 

「ふむ、ゼロ距離で《クリムゾン・スフィア》を受けたにしては大したダメージじゃないな」

「…………そんな呑気なこと言わずに回復したらどうなのです?」

「そうしたいがもうMPが無くてな……。フェイ、頼めるか? 

『了解《フォース・ヒール》』

 

 フェイが発動した回復魔法で手の【火傷】は見る見るうちに回復して行った…………ミュウちゃんのバフのお陰で【炭化】もしなかったし、あっという間に治ったな。

 

「…………よし、治ったな。…………助かったぞフェイ」

『どういたしまして。ほかに回復がいる人は?』

「じゃあ私も頼もうかな」

「私は《霊環付与》の効果がまだ続いているのでいいのです」

 

 そん感じで、フェイ魔法でがミカのダメージを回復していく…………まあ、ダメージ自体は全員大した事は無かったからすぐに終わったが。

 

「しかし、今回はかなり苦戦したのです」

「まあそうだな。…………だが【ブローチ】と【ジェム】を大量消費したからしばらくは金策かな」

「そうだねー。…………でも! 全員生き残って<UBM>を倒せたんだし良かったよね!」

 

 まあ、それは幸いだったな。お陰で旅行の予定も変えずに済むし…………何より自分達が強くなった事を実感出来たしな。

 …………そんな事を考えていると、ミカがふと疑問に思った事を口にした。

 

「そういえば、あの【マグネトローべ】はなんでこんなところに居たんだろうね。…………機械系のモンスターはお隣さん(ドライフ皇国)の領分なイメージだけど」

「ふむ、別にこの国にも機械系モンスターが居ない訳では無いみたいだが。…………偶に見つかる先々期文明の“遺跡”の中で、昔の機械が見つかる事があるみたいだし」

「では、この近くにそういったものがあるのでしょうか?」

 

 うーむ、そんな話は聞いたこと無いが…………或いはこの近くにまだ見つかって居ない“遺跡”があるのかもしれないな。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 ◾️とある遺跡 【???】

 

『【磁改奇馬 マグネトローべ】の撃破を確認。それまでの劣化“化身”との戦闘データを解析……』

 

 そこは先々期文明時代に作られ、強力な偽装が施されているため未だに地上の人間には見つかっていないとある地下遺跡…………その最深部にある遺跡全体のコントロールルーム。

 …………そこに存在する【マグネトローべ】を()U()B()M()()()()()し、劣化“化身”(<マスター>)の調査を命じて地上に遣わせたモノは、今もただひたすらに自身に与えられた使命をこなしていた。

 

『【マグネトローべ】の戦闘データは防衛用モンスターにフィードバック。…………地上に増殖を始めた劣化“化身”の強度、及びその能力の多様性は想定以上。…………今後の《ハイパーデータリンク》による調査は、()()()()()()()他の<UBM>ではなく量産型の調査用モンスターを使用する』

 

 ソレは自身が有する《ハイパーデータリンク》──自身が制作したモノとの距離を無視した情報共有を可能とするスキル──で入手した【マグネトローべ】と<マスター>の戦闘データを解析し、そのデータを開発していた量産機に反映させていた。

 …………更に、今後の地上調査の為に、制作した調査用モンスター達を地上に展開していった。

 

『…………シェルターの防衛、隠蔽機能を再確認。…………可能な限りの強化を実行』

 

 …………その遺跡は、元々“化身”から人々を守る為に作られたシェルターであり、ソレもその遺跡全体を管理・防衛用、及び対“化身”技術を研究する為の生体コンピューターだった。

 だが、ソレは自立意思を持っていた為に<UBM>に認定されてしまったのだ。

 

『…………最優先事項は防衛戦力の強化、及びシェルター隠蔽機能の強化。…………ソレと並行して、地上に増加した劣化“化身”対策の技術開発を実行』

 

 嘗てはシェルター管理用生体コンピューターだったモノ…………()()()<UBM>【完理全脳 アークブレイン】は、今も自身の制作目的を実行し続けている……。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

兄:《クリムゾン・スフィア》は上級魔法職の最強奥義だと思っている。
・妹達への指示は『あの天災児達ならそんなに細かい指示は要らないだろう』と思っているので割と適当……だが、お互いのやる事は大体分かるので完璧に連携が出来る。
・ちなみに、妹達も『何かやらかしても兄がフォローしてくれるでしょう』という感じなのでどっちもどっち。
・作中使った【霊樹の矢】や【耐熱グローブ】などの特殊な用途で使われるアイテムを旅の中で結構買い込んでいる。

【精霊樹の杖】:兄の装備
・レジェンダリア産の杖で《魔法発動加速》と《魔法威力上昇》のパッシブ装備スキルが付いていてそこそこ強力。
・特定属性特化でより安く強度の高い杖もあったが、複数の属性魔法を使う兄は魔法全体に補正がかかるこれを選んだ。

《ヒート・ブラスター》:【紅蓮術師】の魔法
・熱線を発射する魔法で、【紅蓮術師】の魔法の中では弾速が最も早く威力も高め。
・だが燃費が悪く、発動までの時間も長い(兄は本編中《魔法発動加速》を併用している)

《サファイア・ライン》:【蒼海術師】の奥義
・ウォーターカッターを発生させる魔法で射程は非常に短いが、物理的な威力は全上級魔法の中で最強。
・出力・範囲を調整した上で、ヒヒイロカネなどの高硬度物質の加工に使われる事もある。

妹:今回は相手との相性が悪かった
・《破城槌》は今回初使用。
・また【ブラックォーツ】との兼ね合いで格闘系ジョブを取ろうかどうか考え中。

末妹&フェイ:今回は新スキルを披露

《ミラクル・ミキシング》:フェイの新スキル
・発動条件として末妹の両手装備枠が未装備状態である事と、フェイと末妹が接触又は融合状態である必要がある。
・発動時には付与する魔法分のMPを消費し、その付与時間は三十秒。
・付与された格闘スキルが当たった時に付与した攻撃魔法効果が上乗せされて発動する感じになっている。
・このスキル自体のクールタイムは十分で、更に付与した魔法スキルと付与された格闘スキルは二十四時間使用不能になるデメリットがある。
・決め技が欲しいという末妹の願いにより、兄のジョブスキル強化・融合のスキルを参考にして発現した。

《ファントム・ステップ》:【拳聖】のスキル
・一歩だけ自身のAGIを三倍化した上で移動し、更に元いた場所に一瞬だけ残像を残す格闘系スキル。
・【拳士】系統はパンチ系スキルの他に、これや《バックステップ》などの歩法系スキルもいくつか覚える。
・ちなみに末妹は素で似たような事が出来るので、今まであまり使わなかった。

【磁改奇馬 マグネトローべ】:伝説級の中でも上位の実力がある
・『マグネトローべ』という名前が付いていた試作煌玉馬を改造して単独戦闘を可能ににしたが、その所為で純粋に走行能力は元となった煌玉馬と比べてやや劣化している(空中機動時に磁力操作能力が下がるなど)
・コア及び人工知能、MP蓄積バッテリーなどの重要機関は馬体部分の胴体部に収められており、その部分はヒヒイロカネを使った二重装甲になっている。
・元いた遺跡の中で戦闘シュミレーションを繰り返していたため技術もかなり高い。
・劣化“化身”調査の為に地上に出されたが、本人は『製作者達の為に“化身”は絶対倒す』という考えだったので、劣化“化身”と積極的に戦って戦闘データを調査するという行動パターンになった。

【完理全脳 アークブレイン】:【マグネトローべ】を開発した張本人である神話級<UBM>
・能力を簡単に言うと『フラグマン+フランクリンの能力を持つダンジョンマスター型神話級<UBM>』みたいなやつ。
・本編への本格登場はかなり後の章の予定。


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