とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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前回のあらすじ:冒険者ギルドで初クエストを受けたぞ!


それでは本編をどうぞ。

※1/28 兄のエンブリオに効果の一部を変更しました。


兄妹の<エンブリオ>

 □王都アルテア・冒険者ギルド レント

 

 さて<エンブリオ>とは<Infinite Dendrogram>最大の特徴であり、プレイヤーのパーソナルにより千差万別化するオンリーワンのパートナー。

 そのカテゴリーはいくつかあり

 プレイヤーが装備する武器や防具・道具型のTYPE:アームズ

 プレイヤーを護衛するモンスター型のTYPE:ガードナー

 プレイヤーが搭乗する乗り物型のTYPE:チャリオッツ

 プレイヤーが居住できる建物型のTYPE:キャッスル

 プレイヤーが展開する結界型のTYPE:テリトリー

 これらのカテゴリー以外にもレアカテゴリーや、<エンブリオ>が進化するとなれる上位カテゴリーやオンリーワンカテゴリーもあるよby管理AI。

 さて、これらの情報から俺の<エンブリオ>を見てみると……。

 

「ふむ……()()()()な」

 

 あれから<エンブリオ>の輝きが消えた後は特に何も起きず、ただ“太陽を背負った人”のような紋章が左手に現れただけである。

 

「と……いうことは……「お〜〜なんか出た‼︎ お兄ちゃんこれ‼︎」ん?」

 

 そう言われて妙にハイテンションな(ミカ)を見てみると……。

 

「見て見てお兄ちゃん! これどう思う⁈」

「すごく大きいです……とでも言えばいいのか?」

 

 実際、ミカの手には約二メートル程の大きさの棍棒(メイス)が握られており、その形状は長さ一メートルぐらいの棒に、高さ一メートルぐらいの殺意の高いデザインの四角錐がくっついてる感じだった。

 

「ふむ、某シリーズ物ロボアニメの主人公機の中に、こんな感じの武器があった気がするな」

「ああ、ビームが無くて実弾と鈍器で戦うヤツの主役機だね。…………まあ、今の私と名前的には似てるかもしれないけど」

 

 とまあ、大体そんな感じのデザインである。

 

「しかしそれ(<エンブリオ>)重くないのか?」

「うーん、不思議と重さは感じないんだよねー、片手でも持てるし、ちょっと持ってみる?」

 

 たしかにミカは自身の<エンブリオ>を片手で持ち上げている。

 

「わかった……ってちょっ重い‼︎無理だこれ‼︎ 早く退けろ‼︎」

「オッケー……っと、()()()()<マスター>にだけ重さとか感じさせないタイプか〜」

「解っていたんだったら俺に持たせるなよ……」

「いや〜何事も実験と考察は必要でしょ?」

 

 ミカは特に悪びれもせずにそう言った。まったく……。

 

「そう思うなら、まず<エンブリオ>のステータス見ろよ……」

「そうだねー……ふむふむ……こんな感じだよ〜」

 

 と、ステータスを操作して俺に見せてきた。

 

 

【激災棍 ギガース】

 TYPE:アームズ

 到達形態:Ⅰ

 

 装備攻撃力:200

 装備防御力:50

 

 ステータス補正

 HP補正:D

 MP補正:G

 SP補正:G

 STR補正:D

 END補正:E

 DEX補正:G

 AGI補正:D

 LUC補正:G

 

 『保有スキル』

 《バーリアブレイカー》Lv1:

 攻撃対象の防御系スキル効果・ENDへのバフ効果を減衰させる。

 減衰効果はこのスキルのLvと攻撃する際の自身の攻撃力に比例する。

 パッシブスキル。

 

 

「ふむ、<エンブリオ>の重さを軽減する効果は書いていないな」

「それは<エンブリオ>の基本的な機能なんじゃないかな〜」

「まあ、そうでなければ“<マスター>が生まれた<エンブリオ>を持てない”なんて事態になってしまうからな」

「そうそう、だからさっきのは私が悪いわけじゃないよね?」

 

 と、ミカはニヤニヤしながら言ってきた。まあこのゲームの仕様はまだ分からない事だらけだからな。

 

「はあ〜〜わかったから、とりあえずそれは物騒だからしまいなさい」

「はーい」

 

 そう言って、ミカは左手の“棍棒を肩に担いだ巨人”の紋章に<エンブリオ>をしまった。

 

「それじゃあ次はお兄ちゃんの<エンブリオ>の番だよね、早く見せて!」

「見せると言っても……俺の<エンブリオ>は多分テリトリーだからな……えーとステータスは……これだな」

 

 その要望に答えて、俺も自身の<エンブリオ>のステータスを操作してミカに見せた。

 

 

【百芸万職 ルー】

 TYPE:テリトリー

 到達形態:Ⅰ

 

 ステータス補正

 HP補正:G

 MP補正:G

 SP補正:G

 STR補正:G

 END補正:G

 DEX補正:G

 AGI補正:G

 LUC補正:G

 

 『保有スキル』

 《光神の恩寵(エクスペリエンスブースター)》Lv1:

 自身が獲得する経験値を最大で+100%する。

 パッシブスキル。

 

 《空想秘奥(ブリューナク)》:

 自身のHPを現在値の50%を消費し、ジョブに由来するアクティブスキル一つを強化する。

 効果の強化度合は消費したHP量に比例する。

 クールタイムは<Infinite Dendrogram>内時間で10分。

 効果終了後、選択されたスキルは<Infinite Dendrogram>内時間で24時間使用不能状態になる。

 アクティブスキル。

 

 

「お〜〜、VRMMO物小説主人公お約束の経験値ブーストチートスキルじゃないか(笑)、ルビもふってあってカッコいいね(笑笑)!」

「やめい! ……というかステータス補正が全部最低値(オールG)なんだが……」

 

 まあ、レベルが上がりやすくなっているからこんなものなのかな? 

 って、アイラさん無視して喋りすぎたな…………なんかすごいこっち見てるし‼︎

 

「すみません! いきなりの事(<エンブリオ>の孵化)だったので……」

「いえ、大丈夫です。私も<エンブリオ>が生まれるところは初めて見たので驚きました。しかし、あの【猫神】のもの(<エンブリオ>)とは随分違いますね」

 

 そう言って、アイラさんは興味深かそうに俺達の左手を見ていた。

 

「まあオンリーワンが<エンブリオ>のウリだからね〜」

「そうだな……ってこれ以上アイラさんを待たせるわけにもいかないからな。さっさとジョブを決めるぞ」

 

 さて、改めてジョブのリストを見て、その中から孵化した<エンブリオ>と相性が良さそうなのを選ぶか…………よし。

 

「はいっ! 私は【戦士(ファイター)】にします!」

「俺は【狩人(ハンター)】にします」

 

 ようやく俺達は自分のジョブを決めることが出来た。

 

「かしこまりました、ミカさんが【戦士】、レントさんが【狩人】ですね。二つとも冒険者ギルド内のジョブクリスタルで転職出来るのでご案内します。あと初心者講習は受けて行かれますか?」

 

 一人三千リルの初心者講習か……手持ちは五千リルだしなぁ。

 

「お兄ちゃん、ここは()()()()()()()()()()()んだけど……」

「なるほど、お前の直感がそう言っているなら受けたほうがいいか……わかりました、受けます」

 

 まあ、ミカの勘が外れることはまずないからな。この世界で戦うのなら戦闘のコツとかを教えてもらう事も必要だろうし。

 

「わかりました、それではお二人の初心者講習を始めさせていただきます。担当はこの私、アイラ・ローランです。あとクエストの報酬は講習終了後にお渡しします」

 

 アイラさんが担当か……いったいどんな内容なのかな?




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

妹:RPGではその時一番攻撃力が高い武器を装備して“たたかう”タイプ。

兄:RPGではレベルを安全マージン以上に上げて攻略するタイプ。

【激災棍 ギガース】:妹の<エンブリオ>
・特性は“防御効果減衰”。
・モチーフはギリシア神話において巨大な樫の木や山脈を武器にして神々と戦ったという巨人を指す言葉“ギガース”。
・装備する場合は両手の装備欄が埋まる。
・スキルは<エンブリオ>で装備欄が埋まっていなければ発動しない。
・逆に装備欄さえ埋まっていれば<エンブリオ>を投げようが、素手で殴ろうが、蹴ろうが、噛み付こうが発動する。
・減衰効果は対象に攻撃が当たった時のみ発揮される。

【百芸万職 ルー】:兄の<エンブリオ>
・特性は“ジョブ及びスキルの運用補助”。
・モチーフはケルト神話において自身は諸芸の達人であると言ったとされる太陽神“ルー”。
・《空想秘奥(ブリューナク)》で選択したアクティブスキルを十分以上使用しなかった場合、効果はリセットされる。
・その場合は使用不能状態にならない。

アイラさん:実は<エンブリオ>の孵化を見て凄く驚いていた。
・初心者講習は凄く()()()を出している。

冒険者ギルド内のジョブクリスタル:基本下級職転職用
・ほぼ全ての基本下級職に転職出来る。
・戦士系統なら【戦士】だけ、狩人系統なら【狩人】だけに転職出来る。
・派生下級職や上級職には転職出来ない。
・主に下級職一職目の転職に使われる。
()()()()()、この場所に冒険者ギルドが建てられた。


次回、アイラさんとの()()()初心者講習。

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