とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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今回からは末妹の過去が語られる予定です。それでは本編をどうぞ。

※3/31 意見があったので【武闘王】の読みを“キング・オブ・マーシャルアーツ”に変更しました。


祐美の今・ミュウのクエスト

 □地球・とある小学校 加藤(かとう)祐美(ゆみ)

 

 ハロウィンも終わりこちら(現実)での暦は11月に入った頃、私は小学校の教室で隣の席の子と共通の趣味──<Infinite Dendrogram>の事について話していました。

 

「なるほど。…………では、そちらも天地の各地を旅して回っているのですね」

「ええ、各地を巡って様々な強者と仕合をしたりしていますね。天地は強者が多いので実に良い経験になっています」

 

 各地を巡ってまでやる事が対人戦闘とは、やっぱり天地は修羅の国らしいのですね…………私も戦い自体は嫌いではないのですし、人間と戦う必要があるなら躊躇はしませんが、そこまで積極的にガチな対人仕合をしたいとは思いませんし。

 ちなみに、クラスメイトの彼は現実でやっている剣術を活かした一撃必殺の抜刀術を使って天地でブイブイ言わせているらしいのです…………まあ、彼は初めて会った時から『鞘に収まった名刀』みたいな雰囲気がしていたのでさもありなん、という感じでしたが。

 

「うーむ、話を聞く限り天地は凄い殺伐としているのです?」

「んー……確かに複数の領地に分かれて争っていたり、武芸者達は積極的に野試合をしていたりしますが、それらにもちゃんとしたルールの様なものがありますから。戦わない者・戦う気のない者は比較的平穏に暮らしていますよ。それに武芸者の実力が高い分モンスターによる被害は少ないので、街中では平和に暮らせますし」

「成る程、独特の雰囲気がある国みたいですね」

 

 姉様はデンドロで色々な国を旅することが目標みたいですし、そう言った国ごとの違いを感じるのも旅行の醍醐味だと思うので他の国に行くのも面白そうですね。

 …………その後もお互いの近況(彼は最近とあるPKクランにつけ狙われていて、それを毎回返り討ちにしているとか)を話し合ったり、いつかは国の外に旅に出たいと言う話をしたりしたのです。

 そうしているうちに休み時間が終わったので会話を終えて授業が始まりました…………学生の本分は勉強なのでそちらを疎かにする訳にはいきませんからね。

 

 

 ◇

 

 

 そして放課後、私は授業が終わった後に一目散に下校していました…………デンドロをやり始めてからは早く家に帰ることが多くなったのですよ。

 …………ちなみに去年から始めた空手の道場にも通い続けていますが、元々週に1〜2回ぐらいしか出ておらず、更に割とゆるいところなのでそんなに生活のペースは崩れていないのです。

 

(まあ、私は()みたいに自分の武を磨く事にあまり熱心にはなれませんしねぇ)

 

 以前、師範に誘われて小さな大会に出た事もありますが、ほどほどに戦っただけであっさり優勝してしまいましたし…………師範には『あまりそういう大会には出たくない』と言っておいたので、それ以来は大会に出る事も無くなりましたが。

 …………まあ、師範は私が自分の才能に向き合う機会を作る為に誘ってくれた事は分かっているのですが……。

 

(何分、同年代の相手だと基本的に勝負になりませんから、全力で手加減をしなければなりませんし……。熱心に空手をやっていない私が本気でやっている相手を下すのは心苦しいですし…………この考え方が傲慢なものだと言うのは分かっているのですが)

 

 …………そもそも私にとって武術というのは、生まれつき()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で覚えられるモノでしかないので、やり甲斐とかはほとんど感じないのです。

 もちろん、それだけでは精度100%のモノにしかならず、それ以上に極めるとかは出来ないのですが……。

 

(それ以前に、私が武術を始めた理由は()()()()()()()()()()()ですからね)

 

 別に武術自体はそこまで嫌いではないですし、本来の実力は師範以外には完璧に隠蔽しているので、道場のみんなともそれなりに上手く付き合っているのですが…………やはり、全力を出せない以上はどうしても鬱憤が溜まってしまうのです。

 …………デンドロをやっているのは相手を選べば全力を出しても問題ないから、というのもあります。

 

(…………あ)

 

 …………そうやって考え事をしながら歩いていた所為か、前方の曲がり角から出てきた()()に気付く事が僅かに遅れてしまいました。

 

真里亞(まりあ)ちゃん……」

「ッ!」

 

 曲がり角から出て来た少女は私の顔見た瞬間に()()()()()()()()()()()()、そのまま身を翻して走り去って行きました。

 …………私は彼女を追いかけようと思いましたが、その考えに反して私の足はまるでその場に縫い付けられたかの様に動きませんでした。

 

「…………はぁ……。情けないですね……」

 

 その自分のあまりの無様さに思わず天を仰いでしまいました…………まさか()()で足が動かないとは。自身の肉体全てを自分の意思で制御出来る私がこのザマとは、情け無いにも程がありますね。

 …………その少女の名前は赤城(あかぎ)真里亞ちゃん。私が幼稚園児だった頃からの幼馴染であり…………一年前、私が自分の才能を制御出来なかった所為で、守る事が出来ず()()()()()()()()()()()()少女です……。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □城塞都市クレーミル 【魔拳士(マジック・ボクサー)】ミュウ

 

 あの後、帰宅した私はそのままデンドロにログインして、フェイと一緒にクレーミルの街をぶらついています…………ジョブレベルはあと一つでカンストですが、何もする気が起きませんね。

 …………ちなみに、兄様と姉様は私に気を使って別行動をしてくれています。

 

『…………ミュウ、大丈夫?』

「ええ、大丈夫ですよ。…………ただ、自分の情け無さに嫌気がさしているだけですから」

 

 …………ああ、確か<エンブリオ>は<マスター>の記憶を共有しているのでしたか。

 

『うん。…………だから、ミュウがあちらで何があったのかも知ってるよ。…………僕はミュウを助ける為に生まれた<エンブリオ>だから、こちらでは君が自分の才能に答えを見つけるまで側にいるよ』

「…………ありがとうなのです」

 

 フェイ──【支援妖精 フェアリー】の能力特性は『他者の支援』…………これは他者を助けられる様な自分になりたいという私の願いと、全力を出すために()()()()()()()()()()()()()()()という私の自分の才能への恐怖がパーソナルになっているのです。

 …………だからこそ、この問題に関してフェイは何も言いません。…………これは私自身が向き合わなければならない問題ですから。

 

「…………さて! せっかくソロですし格闘家ギルドにでも行ってみましょうか」

『普段は三人いる所為で冒険者ギルドにしか寄っていないしね』

 

 全員メインジョブがバラバラなので、三人で一緒にいる時にはジョブクエストとかは受けにくいですからね。

 

 

 ◇

 

 

 そんな感じで、私達はクレーミルの格闘家ギルドにやって来ました…………ここ格闘家ギルドでは格闘系ジョブ全般のジョブクエストを受ける事が出来るのです。

 

『…………基本的には討伐系かな。後は格闘技の指導とかあるけど……』

「それはダメですなのです。…………私には他人に指導する能力はありませんから」

 

 何せ私にとって武術とは『出来て当たり前』のモノで、他人に教えるにしても何故出来ないのかが理解出来ないという感じになってしまうので。

 …………さて、何かいい感じのクエストは……『力になれなくてすまない』「いえ、こちらも無理を言ってしまってすみませんでした」おや? 何か聞き覚えのある声なのです。

 

『どうやら、俺達では()のお眼鏡には適わなかったようだ。…………優れた格闘家を連れてくるというクエストだったから、このメンバーなら何とかなると思ったんだが……』

「『お前達では条件を満たさない』って言われちまったしなぁ」

「だが、彼を見る事自体は出来たからな。その条件ってのが分かれば……」

「…………本当にすみません。曽祖父は()()から格闘一筋で身内の私達にもよくわからない所があって……」

 

 格闘家ギルドの一角にいたのは一人の女性と五人程の男性でした…………男性の内一人は日曜午前な仮面を着けていたのでマスクド・ライザーさんの様ですね。

 …………女性の方は見覚えがありませんが手に紋章が無いのでおそらくティアン、他の男性は先日この街に来た時に見た顔なのでおそらく同じ<バビロニア戦闘団>のメンバーでしょう。

 私がそう考えている間にも彼等の話は続いていきました。

 

「…………しかし、この王国に格闘系の高レベル<マスター>は他にいたか?」

「居るには居るだろうが…………俺達以上っていうのは中々居ないんじゃないか?」

『そもそも、条件自体がはっきりしていないしな。…………これまでの情報からすると、格闘系のジョブに就いている事が姿を見る条件だと思うんだが……ん?』

 

 私が彼等の様子を伺って居ると、どうやらライザーさんが私に気付いた様でその仮面をこちらに向けて来ました。

 …………気付かれてしまったのでとりあえず挨拶をしておくのです。

 

「お久しぶりなのですライザーさん。…………どうやら、お話の邪魔をしてしまった様ですみませんのです」

『いや、別に邪魔にはなっていないから気にすることは無いよ、ミュウちゃん』

「おうライザー、そっちの嬢ちゃんは知り合いか?」

 

 私がライザーさんに挨拶をすると、他の男性の中で見覚えが無い人がこちらに話かけてきました。

 

『ビシュマル、この子は俺のフレンドの一人であるミュウちゃんだ。…………それでコイツはビシュマル、俺と同じ決闘ランカーだよ』

「初めましてビシュマルさん、ライザーさんのフレンドのミュウなのです」

「おう、よろしく。…………しかし、こんな可愛い子とフレンドとはライザーも隅に置けんな」

 

 ふむ、どうやら二人はかなり気安い関係みたいですね…………そうしていると、ティアンの女性が何かに気が付いた様にこちらに話かけて来ました。

 

「あのー、もしかしてあなたは【マグネトローべ】を倒した<マスター>の一人ではありませんか?」

「? そうですが……貴女は?」

「申し遅れました。私はこの格闘家ギルドで受付嬢をしているマリア・グランツと申します。…………実は、貴女を名のある格闘家と見て頼みたいクエストがあるのですが……」

 

 …………そうして、私はとあるクエストについての話を聞く事になったのでした。

 

 

 ◇

 

 

 とりあえず、私とライザーさん達は詳しく話をする為にギルドの一角にあるテーブルに座る事にしました…………少し話を聞いたところによると、ライザーさん達は彼女からクエストを受けたが失敗してしまったらしく、それで先程の会話に繋がるみたいなのです。

 

「それで? 一体どんなクエストなのです?」

「はい、今回の依頼は私事なのでギルドを通してのものではありません。…………実は、私の曽祖父──格闘家系統超級職(スペリオルジョブ)武闘王(キング・オブ・マーシャルアーツ)】アスカ・グランツの()()が現れる様になったのです」

 

 詳しく話を聞くと、まず彼女の曽祖父のアスカ氏は王国の格闘家の頂点として名を馳せていた人物なのですが、今から十年程前に寿命でお亡くなりになったそうなのです。

 …………ですが、つい最近そのアスカ氏の幽霊が彼が生前使っていた廃道場に姿を現わす様になったと言うのです。

 

「ふむ、成る程。…………ですが、そういうのは【死霊術師(ネクロマンサー)】の領分では?」

「ええ、最初は私もそう思ったのでこの街の死霊術師ギルドに依頼したのですが…………私には見えている曽祖父の幽霊が死霊術師達には見る事が出来ず、彼等のスキルでもその存在を感知する事が出来なかったのです」

 

 そしてその時、アスカ氏の幽霊は彼女にこう告げた様なのです…………『私の武を受け継げる人間を連れてこい』と。

 

「そう言われて、まずは祖父や父・曽祖父の古い友人達に事情私説明して連れて行ったのですが…………父達の何人かは姿を見る事は出来たものの、曽祖父は『条件を満たしていない』と言ったきりそのまま消えてしまったのです。…………その時、曽祖父の姿を見る事が出来たのは格闘系のジョブに就いている者だけだったので『後を継ぐ者を探しているのなら実力のある格闘家を連れてくればいいのでは』と考えて、格闘家ギルドの中でも実力があって信頼出来る人間を連れて行ったのですが、そちらも同じ結果に終わりました」

 

 そして、これらの結果を受けて彼女は『超級職を継げる程に高い実力がある人間ならば条件を満たすのでは』と考えたそうなのです。

 …………とはいえ、今の格闘家ギルドにはカンストしている人間もいなかったので……。

 

「それでライザーさん達に依頼したのですね」

「はい…………伝説の<マスター>であれば或いはと思って、このクレーミルで名高い<バビロニア戦闘団>の方達に依頼しましたが……」

『依頼を受けた俺達はクランの中で格闘系のジョブに就いている者と、たまたま遊びに来ていたビシュマルを誘って彼女の曽祖父の元に向かったのだが…………『条件を満たしていない』と言われてしまったんだ』

「つーか、実力だけならここに居る連中が王国の格闘家の中でもトップクラスだと思うんだがなぁ。決闘ランキングでも俺やライザーより上に格闘系ジョブの持ち主はいないし。…………ライザー、この子で大丈夫なのか?」

 

 おおよその話を聞き終わると、ライザーさんの友人であると言うビシュマルさんが彼に私の実力について疑問をぶつけていました…………どうも大分面倒な依頼の様ですし心配するのも当然ですがね。

 …………最も、話を聞く限りでは単純な実力が条件ではない気もしますが。

 

『ビシュマル、ミュウちゃんの実力に関しては俺が保証するよ。…………それにお前も噂では聞いた事があるだろう、“ニッサ辺境伯領ゾンビ大量発生事件”や“港町ウェレン猛毒スライム襲撃事件”などの王国内で起きた事件を次々と解決している三人組の<マスター>がいると言う話を。…………彼女はその内の一人だよ』

「えっ! マジで⁉︎」

「…………どんな噂が立っているのかは知りませんが、それらの事件を解決したのは私達ですね」

 

 まあ、姉様が直感で事件を嗅ぎつけて、それらの事件を私達で片端から解決しているので、そういう噂になるのは仕方ありませんがね。

 …………とはいえ、私の実力を疑問視している人もいるみたいなので、ここらで一つアピールをしておきましょうかね。

 

「その依頼を受ける事に関しては構わないのです。…………その条件に関しては分かりませんが、実力のある格闘家が必要というのならばパーティーで<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>を三体程討伐をしており、其の内一つでMVPに選ばれて特典武具を手に入れた私なら該当する可能性もありますしね」

「本当ですか! ありがとうございます! このお礼は必ず!」

『成る程、<UBM>の討伐数が条件というのはあり得るか?』

「…………というか、<UBM>ってそんなに遭遇出来るものだったか?」

「うちのクランでの総討伐数だってそこまでは……」

 

 そんな感じの事を話すと、マリアさんは物凄い尊敬の眼差しでこちらを見てお礼を言ってくれて、他の人達にも私の実力のアピールが出来た様なのです…………それに、今の私には()()()さんの頼みを断る気分にはなれませんしね……。

 さて、どうやらクエスト【曽祖父の幽霊の願いを叶える──マリア・グランツ 難易度:十】を受注出来た様ですが……。

 

「しかし()()()()()とは。これは一筋縄では行きそうにありませんのです」

『ああ、恐らくアスカ氏の要望を満たす様な人間を連れて来るのが、非常に難しいからだと考えられるのだが……』

「後、凄腕の格闘家だったって言うアスカさんの武術を継承出来るだけの技量も必要になるんじゃないか?」

 

 ライザーさんやビシュマルさんの言う通り、アスカ氏が言う条件にはクエストの難易度が最高になる様な理由があるのでしょうね。

 …………もう少し情報を集めておきますか。

 

「さて、マリアさんに少し質問があるのですが…………そのひいお爺様は一体どんな人物だったのでしょうか?」

「はい…………私の曽祖父アスカ・グランツは一言で言えば物凄い()()()鹿()な人でした」

 

 曰く、彼は幼い頃から様々な武術に興味を示しており、その中でも自分に才能があった格闘技をただひたすらに修練続けていたらしいのです。

 そうしている中で【武闘王】のジョブに就いたり武者修業として世界中を巡ったりしていた様で、死ぬ寸前まで武術の修練をしていたそうなのです。

 …………最も子や孫が出来てからはこのクレーミルに住む様になり、時折修業も兼ねて凶悪なモンスターを倒したりしていたので街の人達からはそれなりに慕われていたようですが。

 

「それで弟子や【武闘王】のジョブを継ぐ様な後継者は居なかったのですか?」

「ええ、何でも『自身の武を極めるのに忙しい』と言って人に武術を教える事は殆ど無かった様ですし、超級職に関しても『条件を知ったところでどうにもならない類いだから』と転職条件を話す事は無かったですね。…………そんな曽祖父がどうして幽霊になってまで後継者を探しているんでしょうか……」

 

 …………ふーむ、【武闘王】への転職条件とかがその条件に該当するのかとも思いましたが、これではよく分かりませんね……。

 

「とりあえず、そのひいお爺様の幽霊に会ってみましょうか。…………それでダメならまた別の方法を考えましょう」

「よろしくお願いします」

 

 こうして、私は少し変わったクエストを受ける事になったのです。

 

 

 ◇

 

 

 そういう訳で、私達はそのアスカ氏の幽霊が出ると言う廃道場にやって来ました…………ちなみに、ライザーさん達も『失敗したままでは終われないし、条件についてのヒントが得られるかもしれないから』と言う理由で付いて来てくれました。

 

「ここが曽祖父の幽霊が出る道場です」

「ありがとうございます。…………それでは、お邪魔しますです」

 

 そう言って、私達は道場の中に入って行きました…………中はそれなりに広く、きちんと掃除をしているのか結構綺麗な感じでした。

 

「…………ここに曽祖父が居るのですが……」

「…………フェイ、何か居ますか?」

『《魔力視》や《魔力感知》も使ってるけど特に何も感じないね』

 

 成る程、どうやらマリアさんの話は本当の様ですね…………何せ、私の目の前には()()()()()()()()()()()()()()姿()がはっきりと見えているのですから。

 …………その老人は道場に入って来た私達に気付いた様でゆっくりとこちらを向きました。

 

「アスカお爺様、また人を連れて来ましたが……」

「…………その少女…………()()()()()()()()()な……」

 

 こちらを向いたアスカ氏は私を見てそんな事を言いました…………どうやら、私は彼のお眼鏡に適った様ですね。

 …………次の瞬間、目の前の彼が獣の様な笑みを浮かべると共に、その全身から凄まじいまでの闘気が膨れ上がり、半透明だったその輪郭が急に実体を持ち始めました。

 

「なっ! お爺様⁉︎」

『これは一体……⁉︎』

「どうやら条件を満たしたみたいだが……!」

 

 その一気に様変わりした彼の姿を見た他の人達に動揺が広がりますが、その闘気を一身に受けていた私は彼を注視している…………正確には、その頭上に現れた()()に目を奪われていました。

 

「【武王残影 アスカ】……! <UBM>ッ⁉︎」

「《黒界・技指導》」

 

 …………その言葉と共に、私の視界は一瞬で闇に包まれました……。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

末妹:彼女の過去については次回
・クラスメイトの『彼』とは“同じ趣味を持っていて休み時間に偶に話す友人”ぐらいの関係。
・どちらかがもう一方の国に行くように事があれば一緒に遊んでもいいかなというぐらいには仲が良い。
・内心は抜刀術に全力で邁進している彼の事を羨ましく思ってもいる。
・師範と末妹の母親は知り合いであり、その伝手で道場に通っている。

マリア・グランツ:格闘家ギルドの受付嬢
・ギルド職員として優秀な<マスター>の情報は可能な限り集めており、末妹の事もその際に知った。
・曽祖父に格闘技を習っていた時期が僅かにあり、それでサブジョブに格闘系のジョブを取っている。
・その為、家族内では曽祖父と一番仲が良かったので、どうにか曽祖父の未練を晴らしたいと思い今回の依頼を出した。

ライザーさん一行:全員格闘家ギルドに行く事もあったのでマリアさんとは顔見知り
・なので、人気受付嬢である彼女からの依頼は快く受けた。

【武王残影 アスカ】:逸話級<UBM>
・元【武闘王】アスカ・グランツの幽霊が<UBM>化したもの。
・スキル《残影》により格闘系ジョブを持つ者以外には認識不可能(認識させるかどうかは彼の任意で選択可能)であり、『条件』を満たさない限りはあらゆる要素から干渉されず、また干渉する事も出来ない。
・また、このスキルには『条件』を満たした人間以外には<UBM>である事を認識出来なくする効果もある。
・『条件』を満たした人間が現れた場合には上記のスキルは解除され、その上で実体を得て《黒界・技指導》というスキルが発動される。
・その『在り方』を含めてかなり特殊な<UBM>。
・ちなみにクエストの難易度は彼を倒すのではなく、条件を満たした上で彼の未練を果たすのが目的であるが故の難易度。


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