とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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※この話は以前ノベルアッププラスの方に投稿した話の加筆・修正版です。


閑章 昔々のお話
先々期文明のとある技術者達の話:或いはその成れの果て


 □ とある【技師(エンジニア)】の話

 

 …………私が“ソレ”を最初に見た時、言葉に言い表せない程の衝撃が全身を走った。

 

 世界に名を轟かせる()()()()()()()()が作り上げた五騎の煌玉馬の初号期【黄金之雷霆(ゴルド・サンダー)】…………その黄金の馬体が背に超級職(スペリオルジョブ)の人間を乗せ、その名の通り雷霆を纏いながら地を駆け、天を駆けるその姿に私は憧れたのだ。

 

 …………私はその後、どうにかして煌玉馬に関わりたいと思い、機械を作り整備する【技師】の道を歩み始めた…………本当は煌玉馬に乗りたいとも思っていたが、残念ながら私には【騎兵(ライダー)】の才能が無かった。

 

 幸いなことに私には【技師】としてはそこそこの才能があり、サブジョブとして【整備士(メカニック)】や【設計士(アーキテクト)】にも就き、努力の結果もあってどうにか上級職にも就く事が出来た…………そして、私と同じ様に煌玉馬を作りたいと思っている同士達とも出会う事が出来た。

 

 それから仕事の傍ら煌玉馬の研究をしていた私に一つの転機が訪れた…………量産型煌玉馬の開発計画にスカウトされたのだ! 

 

 私は即座に承諾し『量産型煌玉馬開発計画』のメンバーの一人になった…………そこにはかつて知り合った同士の姿もあったので、チームにはすぐに馴染む事が出来たのは幸いだった。

 

 煌玉馬の量産機(レプリカ)の開発は難航したが、かのフラグマン氏からの技術協力といくつかのスポンサーに恵まれた事でどうにか初期量産型煌玉馬の開発に成功したのだった…………とはいえ、その初期量産型煌玉馬は技術レベルとコストの関係でオリジナルに搭載されていた“動力炉”と“特殊機能”を廃止して、搭乗者のMPを微量消費して地を駆けるだけの物だったので自分達にとっては満足いく出来では無かったが……。

 

 それでも、かのフラグマン氏が開発した作品の一つである煌玉馬を、大幅なデッドコピーとはいえ量産に成功した私達チームはは一躍有名になり、多くのスポンサーや国からの依頼も来る程だった…………最も、私達にとって一番嬉しかった事は彼等から大量の資金援助と技術開発の協力を得られた事だったのだが。

 

 多くの援助を受けた私達は、早速量産型煌玉馬に特殊機能を搭載する次世代量産型煌玉馬開発計画(セカンド・プラン)を実行に移したのだが…………これはかなり難航した。

 

 何せ“動力炉”はフラグマン氏の秘中の秘であるため私達では開発出来ず、オリジナル煌玉馬の各種特殊機能を搭乗者のMPのみで使うには魔法系超級職クラスのMPが必要になってしまうからだ(そもそも魔法系超級職なら自前のMPで超級魔法を使った方が明らかに強いだろう)…………そこからは様々な試行錯誤の日々だった。

 

 その一つに私が開発した事前にMPを蓄積しておける高性能バッテリーを煌玉馬に搭載するプランもあったが、そのレベルのバッテリーを煌玉馬に搭載出来る程に小型化する作業は難航し、ようやく出来た小型バッテリーもコストや整備性などに問題を抱えた代物だったので、結局技術試験機が一機作られただけでお蔵入りになってしまったが……。

 

 

 ◇

 

 

 …………それらの技術開発を経て、MP変換炉の高効率化と搭載機能を飛行と簡易バリアに限定するプランでようやく次世代量産型煌玉馬(セカンド・モデル)の設計図とその雛型と言える機体が作れたのだが…………それと同時期に、私達でも予期せぬ事態がこの世界を襲った。

 

 …………“化身”の襲来である。

 

 異大陸船から現れた“化身”達は瞬く間にこの大陸を蹂躙した…………あのフラグマン氏が作り上げた煌玉竜すらも“化身”達には通じなかったと聞いた時には、あまりの驚愕に私は気を失ってしまった。

 

 …………“化身”による蹂躙が始まってからしばらくした時、私達メンバーもシェルターに避難する事になったが、その際に私達は複数のチームに分かれて各々が煌玉馬の研究データを持ち、それぞれ別々のシェルターに避難する事にした…………私達は『あのフラグマン氏の兵器すら通じなかった“化身”には、この大陸の全戦力を持ってしても勝つ事は出来ないだろう』と考え、せめて自分達が作った量産型煌玉馬を未来に伝えようと思ったのだ。

 

 …………誰か一人でも“化身”から生き残る事が出来れば、後世の人間に私達が作った量産型煌玉馬のデータが伝わるかもしれないと期待して……。

 

 私がいたチームが避難したのは大陸西側にあるシェルターの一つで、そこでは同じく避難していた技術者達が比較的多かった…………その中でもリーダー格の人物は【大教授(ギガ・プロフェッサー)】の超級職に就いていた男だった。

 

 彼は生物工学の分野においては世界最高峰の人間──フラグマン氏は生物工学には手を出していなかった──で、自分達の研究チームと一緒にこのシェルターに避難していた様だ…………そして彼は『いつの日か“化身”を打倒出来る技術を作り上げてみせる!』と豪語して、更にその為の協力を他の技術者や魔術師達に求めていた。

 

 …………私達は“化身”の打倒など不可能だと半ば諦めていたので聞き流していたが、彼の『なら、せめてこのシェルターの人達の生活を良くする為に協力してほしい』という言葉には技術者としては思うところはあり、結局私達のチームも彼と協力して技術開発と研究をする事になった…………まあ、やはり私達も科学者だったのだろう、人の為に研究している間はそれなりに充実した日々を過ごす事が出来ていた。

 

 私達チームが対“化身”用の研究として行なっていた事は、私が持ち込んでいたバッテリー搭載型の試作煌玉馬の改造だった…………と言っても殆ど自分達の趣味で改造していたが。

 

 とりあえず、その試作機をバッテリーが尽きるまでの間、オリジナル煌玉馬に近いレベルの機動が出来るまで強化する事が出来たのは結構嬉しかった…………最も魔改造が過ぎた為か整備性や運用性にはかなり問題を抱えており、それ以前にこのシェルターにはソレに騎乗出来る程の人間はいなかったが。

 

 

 ◇

 

 

 それからいくらかの時間が経ち私が壮年と言える様な年齢になった頃、リーダーの【大教授】がこのシェルターに居た技術者・魔術師達に一つの提案をした…………『ここに居る者達の脳を使って超高性能なコンピューターを作ろう!』と……。

 

 …………流石にあまりにも突拍子の無い提案だったので、その提案を聞いた私達は困惑した…………だが、彼の話を聞くに連れて次第に賛同する人間が増えてきた。

 

 その主な賛同理由を簡単に言えば『これまで研究してきて何の成果も出せず、更には寿命が尽きそうだから』である…………実際シェルター内の環境改善はそれなりに上手くいったが、肝心の対“化身”用技術の開発は全くと言っていいほど進歩が無かったのだ。

 

 …………まあ、私達が作った煌玉馬も“化身“と戦えば瞬殺されると断言出来る程度の物でしか無いからな…………そして、それが割と上手くいった側の研究であるというのがここの実情である。

 

 また、シェルターの環境改善も限界が来ており、これ以上の維持・開発を行うには高性能な演算装置が必要になるというのも理由の一つであるだろう…………そして、その為の()()はこのシェルター内には他に無かったという事もある。

 

 更にこのシェルターに居たもう一人の超級職【人形姫(パペット・プリンセス)】の女性──彼女は自分の研究に没頭しており、私達と話す機会は殆ど無かった──がその計画に賛同した事で、その場に居た人間達の多くは賛同に傾いた…………だが、私達チームがその提案に乗った理由の最も大きなところは、彼が発したある言葉にあるのだろう。

 

 …………『私達の頭脳を結集させれば、あのフラグマン氏以上のモノが作れる筈だ!』……という言葉に……。

 

 やはり、頭では彼が別格の存在だと解っていても、心の何処かには彼への嫉妬や対抗心があったのだろう…………最も、こんな計画が実行に移される事になったのは、こんなシェルターの中でただひたすら研究を続けた結果、思考が狂気に犯されていた所為なのかもしれないが……。

 

 …………私は特に自分の生に未練は無いが…………強いて言うなら、私達チームが作り【マグネトローべ】と名付けたあの煌玉馬が未来に残ってくれればいいのだが……。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □◾️ シェルター管理用人口知能【アークブレイン】

 

 こうして、彼等の脳を素材としたシェルター管理用人口知能は完成した…………少なくとも、そんな事が出来るぐらいには【大教授】と彼等研究者達は優秀だった。

 

 そして、その名前は名工フラグマンが就いていたジョブ【大賢者(アーチ・ワイズマン)】からとって【アークブレイン】と名付けられた…………その【アークブレイン】は素材となった科学者達の技術と知識を全て受け継いでいた。

 

 この【アークブレイン】には主に二つの命令が与えられていた…………『シェルター内環境及び人員の守護・保守・管理・発展』と『対“化身”技術の開発』である。

 

 最初の方はその莫大な演算能力においてシェルター内の環境を大幅に改善し、研究者達が残した対“化身”技術を大幅に高性能に改良したりも出来ていた…………少なくともその力によって、諦めと不満が蔓延していたシェルター内の人間に希望を持たせる事には成功していた。

 

 だが、そのシェルターにはひとつだけ不幸に事があった…………そのシェルターで“化身”達の目を誤魔化していた隠蔽結界が非フラグマン製の不完全なモノで、時間経過によって綻びが出来てしまった事である。

 

 その結果、施設を管理していた【アークブレイン】の存在が“化身”達に気付かれてしまったのだ…………そして【大教授】が中心となって作り上げた【アークブレイン】は、自立意思を持つ非人型範疇生物(モンスター)であった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

【(<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>認定条件をクリアしたモンスターが発生)】

【(過去に類似個体なしと確認。<UBM>担当管理AIに通知)】

【(<UBM>担当管理AIより承諾通知)】

【(対象を<UBM>に認定)】

【(対象に能力増強・死後特典化機能を付与)】

 

【(対象を古代伝説級──【完理全脳 アークブレイン】と命名します)】

 

 

 ◆◆◆

 

 

 ◾️ 【完理全脳 アークブレイン】

 

 …………【アークブレイン】は自身が“化身”の能力影響下に入った事をその莫大な演算能力で即座に理解し…………その結果、それは狂った(壊れた)

 

 だが、【アークブレイン】は<UBM>になっても、かつて自身に与えられた命令は忘れる事は無かった…………その行動方針は大きく変化したが。

 

 まず、“化身”達からシェルターを守る為に<UBM>化して強化された自身の能力を持ってシェルターの防衛機構を全力で拡張・強化したのだ…………シェルター内の人間の生活用リソースを犠牲にして。

 

 その結果として生活水準が下がり、未来に希望を抱いていたシェルター内の人間は一転して暴徒と化してしまった…………【アークブレイン】は即座に彼等を配下の警備用モンスターを使って鎮圧し、強力な【催眠】を掛けて幸福な生活が出来ていると思い込ませた上で、増設したシェルター最下層に()()した。

 

 更に【アークブレイン】はその保管した人間達を生きたまま()()し、シェルター内を管理する為の動力源として利用し始めた…………彼等の意識は新しく編み出した精神干渉スキル《燈幻狂》で作り上げた仮想空間内に閉じ込めて、そこで()()()()()を送らせているが。

 

 また、その事件によって幾らかリソースに余裕が出来たので、【アークブレイン】は更なる戦力の増強を開始した。

 

 …………例えばとある科学者達が作った試作煌玉馬を、自立機動する黄金の機械人馬に。

 

 …………例えばとある【人形姫】が亡き娘を模して作った人形を、永久に踊り続ける舞踏人形に。

 

 …………例えばとある【大教授】が対“化身”用に作り上げた魔獣達を、より強力な融合魔獣に。

 

 そのように戦力を強化していく中で自立意思を持ち再現不可能なモノが<UBM>化する事態も発生したが、それらが作成者である【アークブレイン】には友好的だった事と、そのスキル《ハイパーデータリンク》──自身の作製物との距離を無視した情報共有を可能とするスキル──によって協力関係を築く事が出来ていた…………また、いくつかの実験の結果<UBM>するのは【アークブレイン】の制御下にないモノ達であり、自身が完全に制御下においているモノは<UBM>には認定されない事も分かった。

 

 そして、その後も【アークブレイン】はシェルターの防衛・強化と対“化身”技術の開発と実験をただひたすらに続けて行き、その結果シェルターの防衛能力の大幅な強化や配下であるモンスターの増産を進めていった…………その最中<UBM>化したモンスターが説得を受け入れず制御下から外れる事もあったが、それらのモンスターも《燈幻狂》で催眠をかける事によって封印、又は思考を誘導する事で対処出来たので基本的には問題無かった。

 

 …………最も、彼等が<UBM>化している時点で“化身”の管理下にあるので、対“化身”というその在り方は根本的に矛盾しているのだが…………既に狂った【アークブレイン】はその事に気付く事は出来なかった……。

 

 

 ◆◇◆

 

 

 ◾️□ 管理AI4号ジャバウォック

 

 …………ふむ、【アークブレイン】はなかなか面白い事になったな。…………まさか、自力で<UBM>に認定されるモンスターを作成し、更にそれらと協力関係を結んでいくとは……。

 

 シェルターの強化や拡大にしたがって自己強化もしているようだし、いずれは神話級…………制作物を制御するあのスキル次第では()()()に至る可能性もあるか……。

 

 …………問題は、その在り方からこちらに引き込む事がほぼ不可能な事なのだが…………まあ、基本的にシェルターを防衛しながら地下に篭って技術開発をしているだけであるし、地上のパワーバランスに影響を及ぼす事はあまりないだろう。

 

 …………とはいえ、地上に<マスター>が現れた時には何か行動を起こす可能性もあるか…………それまでにイレギュラーになっていればこちらで処理をする事にして、そうでなければ<マスター>達への試練の為にあのシェルターの情報を地上に出すのも面白いだろう。

 

 …………何せ、今のあのシェルターは難易度だけなら神造ダンジョン()()にすら匹敵する最高難度の自然ダンジョンだからな…………<SUBM>はなかなか数を揃えられないのだし、<マスター>達への試練は多い方がいいだろう……。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

とある【技師】:【マグネトローべ】の開発者
・先々期文明に居た普通に優秀なティアンの研究者。
・小型高性能MPバッテリーを開発するなど“普通なら”歴史に名を残せたかもしれない人物。

【大教授】:実は普通に善人な天才
・地上にいた頃は自身の研究成果を医療分野に応用したり、稼いだ富を福祉や医療分野に寄付したりもしていた。
・……だが、普通に善人であったが故にシェルター内という閉鎖環境で、自分でも正直無理ゲーだと分かっている対“化身”研究を続ける事に耐えきれずに壊れてしまった。

【人形姫】:詳細はまだ秘密
・人形制作に特化した【人形師(パペッター)】系統の超級職。
・尚、彼女が作った人形は【アークブレイン】配下の()()()()である。

【完理全脳 アークブレイン】:現在は神話級<UBM>
・先々期文明のシェルターの管理用人口脳が<UBM>化したモノで、外見はカプセルに入っている巨大な脳みそであり、種別は多重技巧型兼条件特化型。
・ステータスはMP・SP・DEXに極特化しており、固有スキルは《全脳ノ叡智》《超高速演算》《超並列演算》《燈幻狂》《ハイパーデータリンク》など。
・《全脳ノ叡智》は素材となった科学者達の全知識・技術・スキルそのもので、それらは長年の技術開発と自己強化によって現在では生前の彼等よりも遥かに強化されている。
・具体的には各種魔法系及び技術者系超級職のスキルすらも再現可能なほど。
・《超高速演算》によって思考速度を大幅に上昇させ、《超並列演算》によって多くのスキルを同時使用出来る。
・《燈幻狂》は《全脳ノ叡智》内の精神干渉系スキルを整理・統合・強化して独自のスキル化させたもので、神話級となった現在は効率化の為クローン複製した脳で作った分体に使わせている。
・他にもその方が効率が良いと判断された分野のスキルは同じ手法で独立スキル化させ分体に使わせている。
・《ハイパーデータリンク》は制作物との五感の共有や、分体脳との思考同調、効果範囲内での遠隔スキル行使の座標特定にも使える。
・《ハイパーデータリンク》によってシェルター内の防衛設備や制作したモンスターを制御しつつ、《全脳ノ叡智》の各種スキルで支援する事でシェルター内限定でなら条件特化型になる。
・ちなみにコイツは三兄妹の物語のラスボス的なポジション(予定)に居る為、“本人の”登場はまだまだ先(願望)。

【アークブレイン】の配下の<UBM>:洗脳されているモノと自分の意思で協力しているモノが居る
・【マグネトローべ】は自分の意思で協力していたが、元々『“化身”抹殺』の使命に忠実だったので地上に劣化“化身”が増えた事を知って『地上への出撃』を【アークブレイン】に強く要求した。
・それと劣化“化身”の戦力調査を行いたい【アークブレイン】の目的が一致した為、外に出る事が許されている。
・ちなみに【アークブレイン】の基本方針は<UBM>の洗脳は難しい事もあって『協力関係にあるモノは敵対を避ける為、可能な限り相手の意思を優先する』になっている。
・現在は<UBM>の制御が難しい事や戦力的に不安定な事もあって、戦力強化はそれらのデータを元に完全に自身の制御下にある強力なモンスターを作る方向にシフトしている。


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