それでは本編をどうぞ。
□アルター王国北部 【
爆発音が聞こえて来てから、私とミュウちゃんはその方向へ全速力で走っていた…………近づくに連れて爆発音以外にも剣撃の音や複数のモンスターらしき声も聞こえて来たので、どうやらかなりの規模の戦闘が繰り広げられているみたいだね。
「見えて来たね。……あれは」
たどり着いたそこで私が見たものは、空を飛び回り或いは地上を走り回る
…………また、馬車を守っている者達の中に一際目立つ一台の戦車と一人の着ぐるみがおり、その戦車は砲撃を撃って周囲モンスターを駆逐して、着ぐるみ(多分カンガルー)は手に持ったハンマーで近づくモンスターを殴殺していた。
「爆発音はあの戦車から聞こえて来たみたいだね。…………ていうか、あれは多分シュウさんだよね?」
「姉様、それより早く助けた方が良いと思いますよ。…………馬車の中を《看破》した所、あの中には戦えない人達がいる様なのです」
「おっと、そう言う事なら早く助けに行きますか」
そう言った私はとりあえず戦闘が行われている場所に突っ込み、そのまま近くにいたモンスター達を薙ぎ倒していった…………しかし【ブラックウルフ】に【ホブゴブリン・ウォーリアー】に【ツインヘッド・ヴァイパー】などと、私が屠ったモンスターだけでも種類が見事にバラバラだね。
また、それらのモンスターはお互いを襲う事が無く、更に近くにいる人間だけを狙っているみたいだし…………これは以前の【テンプテーション・マンティス】や【ラーゼクター】の時みたいな精神干渉、それもより大規模なヤツだね。
…………そうやってこの事件の原因について当たりをつけながら、私は敵中を突破して馬車に接近する事が出来たので、ひとまず周囲の敵を吹き飛ばしてから近くにいた女性の騎士に話を聞く事にした。
「《テンペスト・ストライク》! っと、大丈夫〜?」
「え⁉︎ はっはい、大丈夫です。……って、貴女はミカさん⁉︎」
「おや、確かリリアーナさんだったかな?」
なんか見覚えがあると思ったら、以前王都で起きた事件を解決した時に遭遇したリリアーナさんだったみたいだね。
…………とりあえず、今のうちに詳しい話を聞いておこうか。
「それで? これは一体どう言う状況なのかな? なんかピンチっぽかったから殴りこんだけど。……あ、今更だけど助けっている?」
「あ、はい! 私達はこの馬車をクレーミルまで送り届ける任務を行なっていたのですが、いきなりこのモンスター達に襲われて応戦していて、偶々近くにいた<マスター>のシュウ・スターリング氏の協力でなんとか持ちこたえていた所で……後、助けは大歓迎です!」
成る程、やっぱりあっちで戦っているのはシュウさんだったみたいだね…………守る馬車が近くにいて、更にこの乱戦だと広域殲滅もやり難いか。
「それじゃあ、私とミュウちゃんで馬車を守りながら周りの敵を倒そうか。フェイちゃんは怪我した人を回復させつつ援護で。……後、シュウさんはほっといても自分で何とかするだろうから放置で」
「分かったのです」
『了解』
何か向こうの方から『凄く雑に扱われた気がするガルー!』と聞こえた気がしたけど、そもそも戦えない人が乗った馬車及びティアンの騎士達とシュウさんならどちらを優先するかは考えるまでも無いしねぇ。
…………と、そんな事をしている間にも、向こうから突っ込んで来る【デュアルホーン・デミドラゴン】を初めとして、色々なモンスター達が地面を走って来たね。
「ミカさん! 危な「《ギガント・ストライク》!」『GYAAAAA!!』
とりあえず、私は突っ込んで来た【デュアルホーン・デミドラゴン】をメイスの一振りによるカウンターでそのツノを粉々にしながら吹き飛ばして光の塵に変えた。
更に向こうからやって来るモンスター達を《ウェイブ・インパクト》──地面にメイスを叩きつけ、前方の地面に扇状の衝撃波を発生させて敵を攻撃する中距離用スキル──で吹き飛ばしておく。
「全く、誰に操られているのか知らないけど面倒な連中だね。……それで、何かなリリアーナさん?」
「…………いえ、何でもありません……」
何故かリリアーナさんが凄く遠い目をしているけど、これ以上話をする時間はなさそうだと判断した私は吹き飛ばした敵がいる方向へと突っ込んで行き、そのままメイスと《竜尾剣》を振り回して周辺の敵を殲滅していった。
…………そうやって、私やミュウちゃんがモンスターの相手をしたお陰で騎士達に掛かる負担が減ったので、彼等もどうにか態勢を立て直した様だ。
だが、裏で糸を引いている黒幕もこれで終わるつもりはない様で……。
『KEEEEEE!』
「! 《エフェクトバニッシュ》!」
いきなり上空から降下して来た【クリムズン・ロックバード】が
…………にゃろう、私達に勝てないからって馬車を狙ってコッチの動きを封じる方向に戦術を変えたな。
「ミュウちゃん!」
「了解なのです! 《軽気功》《空歩》!」
私の言葉と共にミュウちゃんは《軽気功》──自分の重量を軽くするスキル──を使って大ジャンプし、更に《空歩》──スキルレベルに応じた歩数だけ空中ジャンプが出来るスキル──を使って【クリムズン・ロックバード】に接近した。
…………ちなみにミュウちゃんがスキル名を宣言しているのは、使えるスキルが増えたので何のスキルを使っているのかを周りの味方に伝える為である(当然、無詠唱発動も可能らしい)。
それに対して、相手は迎撃の為に炎を吐こうとするが、私の《エフェクトバニッシュ》の効果でスキルを封印されている為に何も出来ず、その隙に接近したミュウちゃんは相手の背に飛び乗って……。
「《発勁》」
『KYAAAaaa……』
その頭部に掌底を放ち、スキル《発勁》によって内部に浸透した衝撃で脳を内側から破壊して【クリムズン・ロックバード】を絶命させた。
しかし、空中にはまだ多くのモンスターがおり、その内の一体【ストライクワイバーン】が空中から降下中のミュウちゃん目掛けて強襲を仕掛け…………横から【マグネトローべ】の新スキル《
「兄様、助かったのです」
「ていうか、お兄ちゃん来るの遅いよ!」
「仕方ないだろう、途中で此処に向かっている飛行モンスターの一団と遭遇して、そいつらを倒していたんだからな! 《ブレイズ・バースト》!」
お兄ちゃんは空中を駆け回ってモンスターを長槍で貫きつつ、私達とそんな会話をしながら《詠唱》していた魔法を放って近づいて来たモンスター達を消し炭にした…………そして、そのままお兄ちゃんは【マグネトローべ】を駆って空中戦を続行していった
「とりあえず空中の敵は俺が何とかするから、地上のモンスターをどうにかしろ!」
「了解〜」
「分かりました!」
そんな感じで私達とシュウさんによって周辺の敵が減って来ると騎士達にも余裕が出て来た様で、態勢を立て直しつつ馬車をモンスターが少ない安全な所へと避難させ始めた。
…………なので私は、今のうちにシュウさんと話して連携を取れる様にしておこうと思い、モンスターを蹴散らしながら彼の元へと移動した。
「ヤッホー、シュウさん」
『おお、ミカちゃん。援軍に来てくれて助かったガル』
私が話かけると、カンガルーっぽい着ぐるみを着たシュウさんはこちらを向いて礼を言ってきた…………ちなみに、その間も彼の<エンブリオ>であるらしい戦車は砲撃を周りのモンスターに撃ち放っていたが。
…………とりあえず、彼と今後の行動について話し合おうと思ったのだが、そこで私はとある事に気がついた。
「敵の数が減ってきている……。いや、
『そうみたいガルね。…………裏でモンスターを操っていたヤツが手を引いたのか?』
そう、おそらく私達が来た時辺りからモンスターの援軍が居なくなっていたのだ…………多分、私達が来た時点でモンスターを操っていた何者かが、此処にモンスターを誘導するのをやめた所為なんだろうけど。
「どうしてこんな事態になっているのか、シュウさんは知ってるの?」
『いや、知らんガル。……俺もついさっきリリアーナ達が襲われているのを見て助けに入っただけだからなガル』
ふむん、やっぱりリリアーナさんに詳しい事情を聞く必要があるかな…………先日から働いている私の直感にも関わりがある気がするし。
「じゃあ、さっさと敵を殲滅して彼女に事情を聞こうかな?」
『そうガルね。……バルドル、第五形態』
『
その言葉と共に戦車形態だったシュウさんの<エンブリオ>──バルドルが光に包まれると共にその質量を大幅に増加させ、その光が晴れた所には一隻の戦艦が鎮座していた…………噂には聞いていたけど戦艦の<エンブリオ>とかもあるんだ……。
そして次の瞬間、バルドルは先程までの戦車形態とは比べ物にならない威力の砲撃を放って周辺のモンスターを殲滅していった。
「流石は討伐ランカー。基本プチプチ潰すぐらいしか出来ない私とは殲滅力が違うね」
『(亜竜級モンスターを)プチプチ潰すガルね、分かるガル。…………まあ、これでも結構大変ガル……主にコストが』
まあ、これだけの火力を出すには、当然代償が必要みたいだね…………さて、あんまりシュウさんばかりに任せておいても申し訳ないし、私も残存モンスターを掃討してくるとしましょうか。
◇◇◇
□アルター王国北部 【
「マグネトローべ、
『GYAAAA!』
俺は今にも電撃を吐こうとしている【ライトニング・デミドラゴン】に対して、マグネトローべのスキルによって
そう、これが【マグネトローべ】の新スキル《電磁加速》…………まあ、<UBM>だった頃にも使っていた磁力による超加速スキルだな。
…………ただ、
「さて、これで空の敵は大体片付いたかな。…………まあ、三割ぐらいはシュウさんの<エンブリオ>による対空砲火のお陰だが」
それに、途中からこの場所にモンスターが誘導される事が無くなった様だしな…………ミカの直感の事もあるし詳しい事情は知っておきたいか。
「それじゃあ、地上に降りて騎士達やシュウさんに話を……ん?」
俺がそんな事を考えつつ地上に降りようとすると、北側の森がある方向から何か物凄いスピードでこちらに向かって飛行してくる者がいる事に気がついた。
…………とりあえず、俺は戦闘の構えを取りながら《遠視》を使って相手を確認すると……。
「えーと【セイクリッド・ハイペガサス】か。…………おや? 乗っているのはひょっとしてリヒトさんか?」
こちらに飛行してくる相手をよく見るとそれは一頭のペガサスで、その背にはアルター王国第一騎士団団長のリヒトさんがまたがっていた。
…………どうやら向こうもこちらに気がついた様なので、俺は話を聞くために彼の下へとマグネトローべを走らせた。
「お久しぶりです、リヒトさん」
「! レント君か、久しぶりだね。……ところで、グランドリア卿からモンスターの集団に襲われていると聞いたのだが……」
どうも、彼はモンスターに襲われているという連絡を受けたので援軍に来たらしい…………なので、モンスターは偶々通り掛かった俺達とシュウさんが粗方倒した事を伝えた。
「そうか、王国の民と騎士達を救ってくれて感謝する。…………では、話の続きは地上に降りてからでも良いだろうか。詳しい事情はそこで話そう」
「分かりました」
そうして、俺とリヒトさんは地上の馬車の所まで降りていった。
◇
「グランドリア卿、被害状況は?」
「はい、避難民・騎士達共に死亡者はおりません。また、騎士達には負傷した者もいましたが既に回復済みです」
「そうか、それは何よりだ。……実はこちらにも襲撃があってな、そのせいで遅れてしまった。時期に村の方から残りの騎士達も来るだろう」
地上に降りた後、リヒトさんは馬車と騎士達の様子を確認しに行ったので、その間俺はミカ達やシュウさんと情報交換をしておく事にした。
「はーい、お兄ちゃんお疲れ〜」
「はい、お疲れ様。…………それで、シュウさんはこの事件の事情はご存知で?」
『いや、さっぱりガル。俺も襲われているところを助けに入っただけだガル』
「今分かっているのはあれらのモンスターが何者かに操られていた事ぐらいなのです。…………後、逆探知は周りのスキルや意識が多すぎて無理だったのです」
…………ふむ、やっぱりリヒトさん達からの説明待ちかな、これは。
「…………すまない、待たせてしまったね。…………とりあえず、君達にも事情を説明しておきたいのだが構わないだろうか。そして、出来れば今回の件について手を貸して欲しい、もちろん報酬は出そう」
「ッ! ローラン卿! 今回の件は王から我等騎士に命じられた事で<マスター>の手を借りる訳には……!」
状況の確認が終わった後、リヒトさんが俺達に説明と協力の申し出をしようとし、そこで護衛の騎士の一人がそれに異を唱えたりもしたが……。
「先程言い忘れていたが村の方にも襲撃があった上、その隙に
「はっ!」
そんな感じであっさりと部下を説得してしまった…………実に出来る上司って感じだよな、リヒトさんは。
…………そして、部下の説得を終えたリヒトさんはこちらに向き直り改めて聞いて来た。
「途中で話を切ってしまってすまない。それで、如何だろうか?」
「…………とりあえず、詳しい事情を聞いてから判断させて下さい」
流石にまだ話が見えて来ないので、まずは詳しい事情を聞いてみる事にした…………妹達やシュウさんもそれで良い様だ。
「そうだな。…………時間もあまりないから簡潔に話すが、馬車に居る彼等はこの先にある<クリラ村>の住人で、俺達は彼等をクレーミルまで避難させる任務を行なっている最中なんだ。…………そして避難させている理由だが、クリラ村には【封竜王 ドラグシール】という古代伝説級の竜王が居てね、その彼が『この土地に
…………ミカの直感で俺達が危険に突っ込んでいくのは何時もの事だが、どうやら今回はかなり厄介なネタを引いたみたいだな……。
あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説
三兄妹:古代伝説級が複数登場する事件をドローした
・尚、今回は事前に危険の強度を下げるのは難しいので、色々な人の協力が必要な模様。
《電磁加速》:【マグネトローべ】の新スキル
・スキル使用までのチャージ時間は速度を上げても多少上昇するぐらいでそこまで大きく変化しない。
・スキルのチャージ時間・消費MP・クールタイムはマグネトローべの人口知能が成長する毎に少しずつ軽減される(これは他のスキルも同じ)。
《スピアチャージ》:【突撃騎兵】のスキル
・槍を持った騎乗時に使えるスキルで、突撃速度と突撃時における槍系武器の攻撃力を上昇させる。
・ちなみに兄が持っている槍はクレーミルで買った【ライド・ポールランス】という武器で、騎乗時の使用に補正がかかるスキルを持っている。
シュウ・スターリング:今回の協力者(予定)の一人
・最初から戦艦を使わなかったのは、戦車状態で狩りをしている時に事件に遭遇してそのまま戦闘していたので変形させる暇が無かった事もある。
リリアーナ・グランドリア:<マスター>の理不尽さには大分慣れて来た
・主に着ぐるみとか某宗教クランのせい。
リヒト・ローラン:騎士団の中では親<マスター>派
・別に<マスター>に好意を抱いている訳では無く、これからの王国には<マスター>の力が必要だと思っているので積極的に力を借りるべきだと思っている人。
・とは言え、力を借りる<マスター>はちゃんと選ぶべきだと考えており、その為に王国内で有名な<マスター>の情報を集めたりもしている。
・乗っていた【セイクリッド・ハイペガサス】は彼の騎獣であり、名前は“デュラル”と言う雄のペガサスで、主に聖属性の防御・回復スキルに長けている。
取材犯:大規模な戦闘が見れて少し満足
・しかし、どこかの戦艦のせいで割とあっさり片付いたので少し不満。
・だが、あのクラスの連中だと下手な戦力を嗾けてもさっきと同じ結果になるだけなので、とりあえず観察を続行中。
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