それでは本編をどうぞ。
□アルター王国北部 【
ミカがいつも通りその直感によって事件を察知したので、俺達はクレーミルを出て北東に向かっていた(ストーカー付き)のだが、そこで馬車とそれを守る騎士達がモンスターの大群に襲われている所を発見した…………なので、俺達は同じく偶々通りがかったシュウさんと一緒にそれらのモンスターを殲滅したのだが、そこに現れたリヒトさんから俺達は衝撃的な話を聞く事になったのだ。
…………と、そんな経緯で俺達はリヒトさん一通りの話を聞いたのだが……。
「ええと、つまり『この馬車の人達はこの先にあるクリラ村の住人で、そこには【封竜王 ドラグシール】という古代伝説級<
「そういう事だ、レント君」
「見事に纏めたね、お兄ちゃん」
『分かりやすい纏めガル』
改めて聞くと予想以上に厄介事の気配がする案件だな…………まあ、元々
とか考えていたら、突如ミカが手を挙げてリヒトさんに質問しだした。
「ハイはーい! リヒトさん質問です。その封印って後どれぐらいで解けるんですか? 残り三日ぐらい?」
「封竜王殿からは後半年ぐらいは持つと聞いているな。…………まあ、外部から干渉を受けた場合は分からないが」
成る程、そのぐらいか…………だが、ミカが
そんな事を考えていると、次はシュウさんが質問をした。
『俺からも質問良いガル? 村人の避難はどれくらいで終わるのかと、その封印された<UBM>の危険度について聞きたいガル』
「村人の避難は後一週間ぐらいで済ませる予定だったが、今回の事件もあるし王都やクレーミルから増援を募って出来るだけ早く終わらせるつもりだ。そして封印されている<UBM>の事は五百年程前に封印されてもので、封竜王殿は『理性もなく近くにいた人間とモンスターを手当たり次第に食い散らかし、その結果としていくつかの街が滅ぼされた』と言っていたな」
…………話を聞く限りでは非常にヤバそうな相手だな。幸いなのはその【封竜王】さんが味方ポジションっぽい事だが……。
「私からも質問があるのです。封印を破ろうとした者がいたという話ですが、その者達がどういう連中だったのです?」
「俺は直接見た訳ではないが、封竜王殿は『人形をしていたが、おそらくアレはホムンクルスの類である
機密保持の為の自爆とか、この事件の裏で糸を引いているヤツも相当ヤバそうだな…………本当に今回は冗談抜きで危険なヤマっぽいなぁ。
…………じゃあ、俺も一つ質問をしておこうかな。
「俺からも一つ質問です。依頼を受けるとして、俺達は村と馬車のどちらを守ればいいんですか? 後、その期間は?」
「ふむ……。戦力的には主に狙われるだろう村の方に行ってほしいのだが…………実は以前、特典武具狙いで封竜王殿に戦いを挑んだ<マスター>がいてな、それ以来クリラ村では<マスター>に対する警戒感が強まっているんだ。…………後、期間についてだが後三日もすれば王都から援軍も来るし、これからクレーミルで協力者を募るつもりだから1日ぐらいの間は頼みたいな」
あー……まあ、そういう奴等もいるよなぁ……。一応、手出ししたら罪に問われる<UBM>がいるって事も周知はされているんだが。
それと期間の方だが今日明日は休日だし俺達は1日ぐらいなら問題はないかな。後、シュウさんの方も問題はないらしい。
…………さて、とりあえず一通りの情報は出集まったんだが。
「それで? どのルートだと上手くいきそうだ、ミカ?」
「うーん…………まずは村に行ってその【封竜王】さんに会う必要があるかな? 多分だけどこちらの時間で
「では、村の方に行く感じですね」
「…………いや、ちょっと待ってくれ。君達は今回の事件の犯人を知っているのか⁉︎」
とりあえずミカと今後の方針について相談していたら、それを聞いたリヒトさんからツッコミが入った…………まあ、普通はそういう反応になるよなぁ。
…………さて、どう説明したものか……。
「まず、俺達は今回の事件を起こしたのが誰かとかは分かりません。…………ただ、ミカは生まれつき勘がいいので、危険な事がいつどんな風に起こるのかがある程度事前に解るんですよ」
「今回はこのあたりで何か起きそうな気がしたから来てみただけですし」
「…………それは……」
うーん、やっぱりいきなりこんな事を言われても困惑するだけだよなぁ…………と、思っていたのだが……。
「待ってください、ローラン卿。…………ミカさんは以前王都で起きた誘拐事件を解決した時にも、何の手掛かりも無い状況で誘拐した人を見つけ出していました。なので彼女達の言っている事は《真偽判定》に反応が無いですし、嘘ではないと思います」
「…………そうだな、どの道彼等に協力を依頼するつもりだったのだし、今回の事件が起きた事でクリラ村の住人の避難も出来るだけ早く済ませるつもりなのだから、彼等の話が本当かどうかは別に構わないか。…………それに、生まれながらにしてそういう力を持つ人間がいるのは
この様にリリアーナさんのフォローもあり、どうにか納得してくれた様だ…………やっぱりコッチの世界だと《真偽判定》がある分、色々と説明が楽だな。
…………おっと、そういえばシュウさんに確認を取るのを忘れていたな。この依頼をどうするのかをキチンと聞いておかないと。
「それで、シュウさんはどうします?」
「出来れば、私達について来てほしいんですけど……。その方が色々と上手くいきそうなので」
『依頼は受けるし村の方でいいガルよ。ミカちゃんには借りもあるし、どうせ暇だから手伝うガル』
有り難い、今回の事件はかなりヤバそうだからシュウさん程の<マスター>が協力してくれるのは助かるな。
「それじゃあ、君達には正式にクリラ村の人間の護衛を依頼する。そろそろ村の方から追加の騎士達が来る筈だから、その彼等と俺達で馬車を護衛するので、君達へ彼等の代わりに村を守ってくれ。案内には面識のあるグランドリア卿に頼む。…………どうか力を貸してほしい」
「分かりました」
【クエスト【護衛──クリラ村避難民 難易度:十】が発生しました】
【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】
こうして、俺達のクエストが始まったのだった…………しかし、
◇◇◇
□アルター王国北部森林 【
あれから援軍に来た騎士達とリヒトさんが馬車を護衛してクレーミルに行ったのを見送った私達は、リリアーナさんの案内でクリラ村がある森の中を徒歩で進んでいた…………途中から森が濃くなって来た所為で馬車が使えなくなったからね。
後、道中はリリアーナさんがお兄ちゃんの【マグネトローべ】について聞いて来たり(何でも彼女の父親が似たような煌玉馬に乗っているらしい)、リリアーナさんが最近【
「そういえばリリアーナさん、さっきは私の話を信じてくれてありがとうね」
「いえ、ミカさん達には色々と助けて貰っていますから。…………それに、どちらにしろ避難は急ぐつもりでしたから、協力してくれる方が有り難いですし」
まあ、既に事件が起きた後だったから私の話も違和感なく受け入れてくれたんだろうし、そもそも私の話を信じる信じないに関わらず彼等騎士達の行動は対して変わらないけどね…………そういう訳で今のところ上手く行っているけど、今後も綱渡りになるかなぁ。
…………そう考えていると、シュウさんが先導しているリリアーナさんから離れて私に近づいて来た。
『…………ところで、さっきから覗き見をしているヤツについては気付いているガル?』
「うん、多分エフって人だと思うんだけど。クレーミルを出たあたりからコッチをつけているっぽいね」
シュウさんはリリアーナさんに聞こえない様にそんな事を私に耳打ちして来たので、私も同じ様に追跡には気付いている事と私達が以前エフさんから取材を受けた事を含むそれに関しての事情を説明した…………ちなみにリリアーナさんはお兄ちゃんとミュウちゃんが話し掛けているので、コッチには気付いていないね。
…………そして、それを聞いたシュウさんは頭を抱えた。
『ハァ……全く、面倒な時に面倒なヤツが……』
「エフさんってそんなに面倒な人なの? まあ、何かやらかしそうな人だとは気付いているけど」
『ああ、あのエフって男は……』
流石に気になったのでシュウさんに聞いてみると、物凄く面倒そうな雰囲気になって色々とエフさんについて教えて貰った。
…………どうやら彼は自分の取材の為に意図的に事件を起こして、それに巻き込まれる人を観察するという事を各地で行なっており、シュウさんもそれに巻き込まれた事があるらしい。
『エフは事件を長引かせる為に有利な方を攻撃するぐらいはするヤツだからな、対処は早めにした方がいいと思うガル』
「んー…………多分、それは今じゃない気がする。今は村に向かう事を優先するべきだと思う」
『成る程ガル。…………まあ、このメンバー相手に下手に仕掛ければ返り討ちになるのはヤツも分かっているだろうからな。戦闘はさっき見ただろうし、マンネリになるからモンスターを嗾ける事も無いだろうガル』
一通りの事情を聞いた上でまだ対処するべき時では無い気がしたので、シュウさんにそう伝えると彼も私の意見に賛成してくれた。
「…………ていうか、シュウさんもあっさり私の直感を信じてくれたね」
『ん? ああ、ミカちゃん達が嘘を付いている様には見えなかったからなガル。…………後、
妙にあっさり私の直感を信じてくれたのが気になったので、彼にその事を少し聞いてみるとそんな答えが返ってきた…………シュウさんの言っている“誰か”が気になるけど、彼の雰囲気がなんか物凄い影を背負った感じになっているので、多分深く知ったらいけない感じだろうから黙っておこう。
…………という訳で、適当な話をして話題をそらす方向で。
「そういえば、シュウさんはリリアーナさんと以前からの知り合いなの?」
『ああ……以前
「え? 巻き起こしているとかじゃなくて?」
『俺は巻き込まれている側ガル。どちらかと言うとそれは女狐かアイツの役割ガル。…………と言うか、ミカちゃんには言われたくないガル』
「私は事件を感知して突っ込んでいるだけだから」
まあ、そんな感じで適当に話をしてしばらく経つと、リリアーナさんが目的地へ到着したと私達に伝えて来た。
「皆さん着きましたよ。ここがクリラ村です」
そこにあったのは民家が十数件並ぶ程度の小さな村であり、周辺には何人かの騎士達が辺りを巡回していた…………そしてリリアーナさんはそのまま巡回していた騎士の一人に近づいていった。
…………おや? あの騎士には見覚えが……。
「ローラン卿、ただいま戻りました」
「お疲れ様ですグランドリア卿」
ああ、確か【ハデスルード】事件の時に出会ったリヒトさんの娘さんのリリィさんだね。彼女も此処に来ていたんだ、挨拶はしておこうかな?
…………と思ったら、お兄ちゃんが前に出て先に挨拶してくれたよ。
「お久しぶりです、リリィさん」
「お久しぶりです皆さん。貴方達の事は既に父から話は聞いているので今回は宜しくお願いします」
そんな感じでみんな簡単に自己紹介をした後、私はやっておかなければならない気がする事をリリィさんにお願いする事にした。
「それじゃあ、お願いがあるんですけど…………ここの封印を守っているっていう封竜王さんに合わせて欲しいんだよね」
「…………会ってどうするつもりで?」
…………ふむん、以前やらかした<マスター>が居るせいでちょっと警戒されているかな? ここはちゃんと事情を説明しておくべきか。
「ここに封印されて居るって言う<UBM>について聞きたいんだよ。…………多分、今回の依頼ではソイツとは戦う羽目になると思うし」
「…………封竜王殿の言では、封印が解かれるまである半年はある筈ですが「いや、話をするぐらいなら構わないよ」っ!」
私がリリィさんに説明をしていると、その会話に割り込む様に村の方から声が掛けられた…………声が聞こえて来た方向を見ると、そこには一人の銀髪青眼で古びた黒いローブを羽織った男性がいた。
…………だが、その男性が現れた瞬間にその場の雰囲気は一変し、張り詰めた様な空気が辺りを包んだ気がした。
「えーと、ひょっとして貴方が……」
「ああ、私が【封竜王 ドラグシール】で間違いないよ。…………最も、今は人化しているけどね」
確認してみたところ、彼がこの村に住んでいる【封竜王 ドラグシール】で間違いない様だね。
「封竜王殿。貴方は先程封印の様子を見ておくと言っていましたが……」
「封印の方はあのホムンクルスに多少緩められていたけど、問題無く補修出来る範囲だったからもう直したよ。…………それよりも、この村にかなり強い気配が近づいて来たから様子を見に来たんだけど、君達が連絡があった追加の人間でいいのかな?」
「あ、はい、そうです」
…………まともに言葉を交わせる<UBM>には初めて会ったけど、思った以上に理性的な感じだったね。
「…………ふむ、成る程。全員<マスター>で
「<マスター>ではダメでしょうか?」
封竜王さんがこちらを見て少し目を細めたので、お兄ちゃんが<マスター>に悪印象を持っているかを聞いてきた。
「ん? ……ああ、以前に<マスター>に襲われた事もあるけど、それで<マスター>と言う存在自体にどうこう言う気はないよ。…………まあ、戦いを挑んでくるなら容赦をする気は無いけど、これでも竜王の端くれだからね」
その言葉と同時に彼から凄まじい威圧感が発せられ、それに対して私達は即座に身構えた…………しかし、それを見た彼はあっさりと威圧感を消して薄い笑みを浮かべた。
「そんなに身構える必要は無いよ。別にここで君達をどうこうする気はないし。…………うん、ここで話すのも何だし詳しい話は村の中でいいかな?」
「え、構いませんが……」
「それじゃあ色々と話を聞かせてもらおうか。…………特にそちらのお嬢さんにはね」
…………
あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説
三兄妹:難易度:十のクエストを受ける事に
・事件に首を突っ込む系。
シュウ・スターリング:今回の三兄妹の協力者
・事件に巻き込まれる系(自称)。
リリアーナ・グランドリア:<マスター>に対して顔が広い人
・なので厄介な<マスター>の相手を押し付けられる事が多い。
リヒト・ローラン:今回の避難計画でのリーダー格
・娘のリリィが三兄妹と知り合いな事は知っていたので、それもあって村の警備に回した。
・後、各国の歴史にも詳しい。
リリィ・ローラン:実は父程親<マスター>派ではない
・王国での事件は出来る限り王国の騎士で解決すべきだと思っている。
・だが、自分達の実力について過信はしておらず、必要なら<マスター>と協力するぐらいには割り切っている。
【封竜王 ドラグシール】:竜王の中では非常に温和な性格
・詳しくは次回。
読了ありがとうございました、意見・感想・評価・誤字報告などはいつでも待っています。