とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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前回のあらすじ:妹&ニーサン「『こっちに協力するか死ぬかを選べ。返事は“はい”か“Yes”な』」取材犯「ええぇ……」


それでは本編をどうぞ。


来たるモノ達

 ◼️アルター王国北部 【ハイ・マインド・アバターホムンクルス】

 

 クリラ村から離れた場所にある森の中、そこに居るのは中肉中背の何処にでも居そうな男性…………だが、その顔には感情というモノが無く、ただクリラ村がある方角をジッと見つめていた。

 …………彼こそが【アークブレイン】の遠隔操作用分体の一人【ハイ・マインド・アバターホムンクルス】であり、現在は作戦の開始時間を待ちながら隠密モードで待機していた。

 

(現在の【ギガキマイラ】封印地点には複数の劣化“化身”とこの国の騎士、そして封印の要である【封竜王】が配置されている。…………()()()()である“【ギガキマイラ】掌握”の難易度は上がったが、()()()()の遂行には問題ない。計画は“アレ”が到着次第、予定通り実行する)

 

 ちなみに彼の監視方法は偵察用に持ち込んだ【フローター・ハインドアイ】──策定・隠蔽能力に特化した空を飛ぶ一つ目型モンスターで《透視》《遠視》《光学迷彩》《気配遮断》などのスキルを持つ──を【封竜王】に感知されない様、領域である森から離れたところに複数配置して、それらが得た情報を《ハイパーデータリンク》で取得する方法をとっている。

 …………そうして、しばらくの間監視を続けつつ待機していると、突然()()()()()()()()()

 

(どうやら“アレ”が到着した様だ。…………これより作戦行動を開始する)

 

 そうして準備が整った【ハイ・マインド・アバターホムンクルス】は、息を潜め隠密系スキルを使いながらながら目標地点であるクリラ村に近づいていったのだった。

 

 

 ◆◇◆

 

 

 □クリラ村 【突撃騎兵(チャージライダー)】レント

 

「と、言うわけで、今回の事件の解決を手伝ってくれる事になったエフさんです!」

「宜しくお願いしますね」

 

 一通り騎士達や<バビロニア戦闘団>、そして【封竜王】さんとの打ち合わせを終えた頃、エフさんとの交渉を成功させたミカ達が村に戻って来て彼が今回協力者になってくれる事を伝えた…………のだが……。

 

「…………本当に大丈夫なのか?」

「信用出来ないですね」

「こいつ嫌ーい!」

『うん、予想通りの反応ガル』

 

 まあ、予想通り<バビロニア戦闘団>の皆さんからの反応はかなりキツイものだった…………尚、騎士団の人達は<バビロニア戦闘団>から話を聞いていたのか、それとも彼の悪名が広まっていたのかやや懐疑的な雰囲気で、封竜王さんは我関せずな感じだった。

 

「うーん、分かっていたけどエフさん信用ないねー。…………一応【契約書】で二十四時間はこちらを撃てない様に縛っているんだけど」

「今回は普通に協力する気なんですけどね。古代伝説級<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>との戦いなど滅多にありませんから、満喫させて貰いますよ」

「…………一応《真偽判定》にも反応は無い様だな」

『まあ、何かやらかしそうなら後ろから撃てばいいガル』

 

 その後、<バビロニア戦闘団>の皆さんはいくつかの確認や話し合い、そしてミカとシュウさんの取り成しの末、どうにかエフさんが今回の事件に協力する事を認めてくれた…………最も、疑惑の視線は最後まで変わらなかったし、彼が何かする気配があればすぐに斬り捨てる事も条件に加えられたが。

 ちなみに、エフさんはそんな針のむしろ的な状況の中でも終始いい笑顔を浮かべていた…………この人本当に面の皮が厚いな。

 

「…………おいミカ、これ戦力は増えたけど連携とかに問題が出来てないか?」

「うーん……多分大丈夫だと思うよ。この方が被害は少なくなる気がするし…………それに、()()()()()()()そんな事を気にする余裕はなくなると思うから」

 

 この状況は不味いのでは無いかとミカを問い質してみたら、そんな感じの答えが返ってきた…………薄々分かってはいたが、今回はそんなにヤバイ事件なのか……。

 …………俺が今後の事を思案していると、ミカが更に話を続けてきた。

 

「それでお兄ちゃん、ちょっと頼みがあるんだけど……」

「何だ?」

 

 …………そして、話を聞く事しばらくして俺はミカの“頼み”を聞き終わり……。

 

「…………分かった。()()がこの事件を解決する為に必要な事なんだな?」

「うん、お兄ちゃんが頑張ってくれればこの事件で被害が出る確率少しでも減らせると思う」

 

 やれやれ、どうも今回は俺の活躍が事件に影響を与える比重がかなり大きいらしいな…………プレッシャーはかかるが、ここは兄として妹の頼みぐらいは聞いてやらねばな。

 …………それに、さっきの“説得”の事や死んだらそれまでのティアンの騎士達がいる事もあって、今回はミカもかなり余裕がないみたいだしな。

 

「じゃあお願いね、お兄ちゃん。…………私はミュウちゃんにも話してくるから!」

 

 そう言ったミカは急いで今言った二人の元へと駆けていった…………まあ、ミカの言う事を全面的に信じてくれる人間は俺やミュウちゃんぐらいだからな、他の人間だと説明が面倒だし。

 

「…………さて、俺も“お兄ちゃん”として頑張りますかね」

 

 …………そうして、俺はミカからの“頼み事”を熟す為に行動を開始したのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □クリラ村 【戦棍姫(メイス・プリンセス)】ミカ

 

 さて、お兄ちゃんとミュウちゃんに一通り支持を出しておいたし、後は相手の出方待ちかな…………私の直感でも“これ以上は出来る事は無い”って感じだけどちょっと不安かな……。

 …………と、そんな事を考えていたら、それを察知したミュウちゃんが話しかけてきた。

 

「…………姉様、大丈夫なのです?」

「あ、うん、大丈夫だよミュウちゃん。…………出来る事はやったからね、後は……ッ!」

 

 …………その時、私の“直感”が今回の事件の始まりを告げた。

 

「どうやら来るみたいだね。…………とりあえず、封竜王さんに伝えに行こうか」

「お供するのです」

 

 そうして、私はミュウちゃんを伴って封竜王さんの所に向かい、彼にもうすぐ敵が来る事を伝えに行った。

 

「封竜王さん? 多分もうそろそろ此処に敵が来ると思うよ」

「ふむ、私の探知には引っかからないが……。常時発動しているパッシブ型の探知は封印の監視にリソースの殆どを割いている所為で、隠蔽は光学迷彩ぐらいしか見破れないしな。…………じゃあ能動探知で詳しく調べてみるか……」

 

 そう言った封竜王さんは目を閉じて探知に意識を集中させ始めた…………ちなみに、その話を聞いた他のみんなは半信半疑だったが、封竜王さんの反応を見て戦闘準備を整えつつ周囲を警戒していった。

 …………後、シュウさんとミュウちゃんは一見普段と特に変わらず自然体だけど、多分アレで常時警戒してる感じらしい。

 

「…………ふむ、確かに侵入者がいるな。…………位置はそこの民家の影だな」

「ッ! 全員警戒!」

 

 目を瞑ったままの封竜王さんが侵入者がいる事を伝え、その位置として一つの民家を指差した…………それに真っ先に反応したフォルテスラさんが全員に警戒を呼び掛け……。

 

「しかし、珍しいジョブだな…………【犯罪王(キング・オブ・クライム)】とは」

「「『ッ!!』」」

 

 封竜王さんがその()()()()を口にした瞬間、騎士団の皆さんとシュウさんの警戒度合いが大幅に膨れ上がる…………そして、それとほぼ同時に封竜王さんが示した民家の影から一人の男性が姿を現した。

 …………ふむん、見た目は眼鏡を掛けた普通の男性に見えるんだけど、シュウさんの警戒度が尋常じゃないから多分かなりヤバイ相手なんだろうなぁ。

 

「おや、あっさり見つかってしまいましたね。一応、この特典武具には王城の警備を潜り抜けられるぐらいの性能があるのですが」

『ゼクス……一体何の用ガル』

 

 客観的に見てかなりピンチな状況なのに、そんな事を言いながら平然としているゼクスさんに対し、彼を警戒しているのか前に出たシュウさんはそう問いただした。

 

「ああ、要件ですか。この私はこの村に戦うと罪になる<UBM>が居ると聞いたので戦いに来ただけですよ」

「? …………この人、行動指針がよく分からないね。シュウさん、分かりやすく説明プリーズ」

『世界派の犯罪ロールプレイヤー』

 

 要するに犯罪者になる為に行動している感じなのかとシュウさんに聞き直すと、彼は『その通りガル』と答えてくれた…………どうやらかなり変わった人みたいだね。

 …………さてと……。

 

「封竜王さん、多分彼は()()()()()()から引き続き探知をお願い出来ますか?」

「ふむ……了解した。少し範囲を広げてみるか」

 

 他のみんながゼクスさんに集中しているのを後目に、私は封竜王さんに探知の続行をお願いした…………そうしている間にも、以前からの知り合いらしいシュウさんがゼクスさんを牽制しながら問い詰めていた。

 

『しかし、らしく無いんじゃないか? これだけの戦力が揃っている所に突っ込んで来るなんて』

「いえ、この私は少し偵察でもするつもりだったのですが、不覚にもあっさり見つかってしまっただけですよ」

 

 尚、この二人は凄く和やかに話している様に見えるけど、二人の間には余人を寄せつけない様なヤバイ雰囲気に包まれているんだよね…………まあ、すぐにそんな事を気にしている余裕は無くなるんだけど。

 

「…………来たね」

「ッ! 地下から超大型モンスターの反応! これは……ッ!」

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!!』

 

 そして、私が直感で、封竜王さんがスキルによる探知で“ソレ”の襲来を感知すると同時に地面が激しく揺れた…………その直後、村がある森のすぐ外側、私達から見て後方数百メートル程離れた地面が、咆哮と共に地中から出てきた“何か”によって大爆発を起こした様に爆ぜ飛んだ。

 …………そうやって土煙りの中現れたのは直径十メートルを超え、高さは数十メートルにも達しそうな円柱…………否。

 

「あれは生物みたいだね。…………巨大な蚯蚓かな?」

「馬鹿な⁉︎ 【魔鉱蚯蚓 アニワザム】だと! 何故奴が此処に!!」

 

 ソレは地上に出ている部分だけでも数十メートルに達する大きさを持つミミズ型モンスターだった…………それを見てゼクスさんが現れた時にすら余裕を崩さなかった封竜王さんが、焦った様に【魔鉱蚯蚓 アニワザム】という名前を告げた。

 …………ふむ、聞いた事がある名前だね。確か私が超級職に転職する際にお世話になった自然ダンジョン<水精洞窟>を作った古代伝説級<UBM>だったかな。

 そして、【アニワザム】は動揺する私達を後目にその鎌首をもたげ、先程現れた時とは比べ物にならない程の大音量で咆哮した。

 

『⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ッッッ!!!』

「ちょッ! 耳が痛いね!」

「ちょっと待て! これは……!」

『地面が揺れて……!』

 

 その大咆哮に私達が怯んでいると、いきなり地面が先程現れた時とは比べ物にならない程に揺れだした…………その揺れの規模は戦闘職である私達ですらバランスを崩す程で、更には周囲の地面が割れたり隆起したりする程だった。

 …………そして、古代伝説級<UBM>の能力がただ大声を出しながら地面を揺らすだけの筈が無く……。

 

「これは……! 地属性魔法による此方の領域への強制干渉⁉︎ 封印術式への干渉ではなく、大魔力によって領域そのものを無理矢理破壊するつもりか! これでは流石に……!」

『⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ッ!!』

 

 封竜王さんが発したその言葉を裏付ける様に地面の揺れは更に勢いを増し、とうとう森の木々や民家すら壊れる程の地割れや隆起が起きる程だった。

 …………そして、その揺れがピークに達した時、村の地下から()()()()()()()()()()()()()()が鳴り響いた。

 

「不味い! 封印が解けr『GAAAAAAAAAA!!!』ッ!」

 

 封竜王さんの焦りの声とほぼ同時に地中から咆哮が聞こえて来て、更に私達から見てゼクスさんを挟んだ向こう側の地面が吹き飛び、そこから一体の巨大な狼が現れた…………その狼は体長十メートル程で、よく見ると背には燃え盛る翼が生え、尾はサソリのモノ、更に四肢は虎のモノになっており、更にソレ等以外にも身体の一部が別の動物のモノに置換されている様に見えた。

 …………そして、その異形の狼の瞳からは狂気の意思しか伺えず、頭上には【十狂混沌 ギガキマイラ】の文字があった。

 

『GUUUUU……』

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️』

「これは……!」

「前門と後門に古代伝説級と……分かっていたけど面倒な事になったね」

 

 …………んー、流石に状況が混沌としすぎて、皆さんどうすればいいか分からずに居るみたい。

 幸い前方の【ギガキマイラ】は復活したてだからか周囲の様子を探っている様で、後方の【アニワザム】も大魔法を使った後だからか先程と比べてかなり大人しくなっている様だった…………が。

 

『…………GAAァッ!』

「む」

 

 周囲の確認を終えたらしき【ギガキマイラ】が音速の五倍以上の速度で近くにいたゼクスさんに襲い掛かり、その口で彼の身体の膝から上を噛み砕き丸呑みにしてしまったのだ…………【ギガキマイラ】はゼクスさんを咀嚼して飲み込み、残された彼の足半分はそのまま液体になって溶けてしまった。

 …………そして、この場に居る最後の古代伝説級<UBM>である封竜王さんは何も出来ずに居る……()()()()

 

「《永遠竜晶》全展開」

『ッ! GAAAAA⁉︎』

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️⁉︎』

 

 封竜王さんがそのスキル名を宣言すると同時に周辺一帯の地面から紫色の水晶が生え、更にソレ等の水晶からオーラの様なものが発生して二体の<UBM>を覆い尽くした…………そして【ギガキマイラ】を覆ったオーラはそのまま水晶へと変じて相手を閉じ込め、【アニワザム】の方はオーラが紐状に変形してその動きを拘束した。

 

「この五百年、私がただこの村でのんびりと料理の練習だけしてきたとでも? 当然、万が一の仕込みの一つや二つはしてあるさ…………と言っても、さっきの干渉で仕込みを半分ぐらい潰されてしまったからな。特に領域の範囲外だった【アニワザム】の方は長くは持たないだろう」

 

 流石は古代伝説級の竜王さんだね、動揺していたみんなを落ち着かせる為の時間稼ぎをしてくれたよ…………それに、この状況なら私が音頭をとる事も出来るだろうし。

 

「それじゃあ、手早く役割を決めようか。…………私と封竜王さんで【ギガキマイラ】の相手をするから、残りは【アニワザム】を相手にする感じで行こう」

『…………二人で大丈夫なのか?』

 

 そんな風に私が音頭をとると、いち早く状況に対応したシュウさんが疑問をぶつけてきた…………と言うより、敢えて反論する事で私が音頭を取りやすくしてくれてるみたいだね。

 

「必殺スキルを使えばどうにかなると思うから、多分大丈夫。…………それに【アニワザム】の方が相手をする為に人数がいるみたいだし」

『成る程、あれか』

 

 シュウさんの言葉に釣られて全員が拘束された【アニワザム】を見ると、そこには色とりどりの“何か”を多数召喚している相手の姿が見えた…………遠いからよく分からないけど、以前聞いた情報からしてアレは……。

 

「【アニワザム】のエレメンタル召喚能力か…………あっちは質量が大きすぎて全身を覆う事は出来なかったからな」

「そうみたいだね。…………お兄ちゃん、しばらく時間稼ぎよろしくー」

『無茶振りを言うな!』

 

 封竜王さんの言う通り、アレは【アニワザム】が召喚したエレメンタルモンスター達だった…………とりあえず事前に事情を説明して、近くに配置しておいたお兄ちゃんに時間稼ぎを頼んでおこう。

 …………その指示に対し文句を言っていたお兄ちゃんだが、【マグネトローべ】を駆って空中に躍り出ると各種魔法や【ジェム】でエレメンタル達を攻撃し始めてくれた。

 

「さて、あんまり時間をかけるとお兄ちゃんが死ぬから、こっちは私に任せてシュウさんはあっちで戦ってほしいな。…………と言うか、シュウさんがあっちに行ってくれないと詰むし」

『…………分かった、バルドル第五形態』

了解(ラージャ)

 

 私がそう頼むとシュウさんは呼び出した戦艦形態のバルドルに乗って【アニワザム】の元に向かって行った…………近くにいたエフさんをついでに乗せて。

 

「何故、私まで?」

『テメーは近くに置いておかないと(こっちが)危ないガル』

「信用無いですねぇ。…………まあ、今回は普通に戦う気でしたし別に構いませんが」

 

 そうしてシュウさんが率先して動いてくれたお陰で、他のメンバーも動揺から立ち直り始めた…………その中でも立ち直りが早かったのは、それぞれの集団のリーダー格であるフォルテスラさんとリリィさんだった。

 

「ミカちゃん、俺達はどうすればいい?」

「この状況を最も把握しているのは貴女の様ですから、この混乱した状況を打開する為に指針をお願いします」

「それじゃあ、二人は他の人を纏めて【アニワザム】の所に行ってほしいな。…………それとミュウちゃん、感知出来た?」

「…………はい、あの【アニワザム】を()()()()()()()()()()()は見つけたのです。以前と違って強力な力を一体に集中していた所為で分かりやすかったですね」

 

 そう、ミュウちゃんには事前に精神干渉を行う伏兵がいるかもしれないから、そいつをどうにか見つけてほしいと頼んでおいたのだ。

 

「それじゃあ、そいつを倒す為にミュウちゃんの方にも1パーティー分ぐらい援軍が欲しいかな」

「それなら、俺達の中で足に自身があるヤツ等を付けよう。…………ライザーは足の早いメンバーを何人か連れてミュウちゃんに同行してくれ」

『分かった』

「まずはクレーミルと王都に事件の連絡を! そして準備が終わり次第【アニワザム】の迎撃に向かいますよ!」

「了解!」

 

 私の提案にフォルテスラさんは即座に応じてくれて、リリィさんも素早く騎士達に指示を出して混乱を納めてくれた…………私じゃ何をすればいいか分かっても集団を纏めあげるのは難しいから、クランオーナーである彼や騎士達のリーダー格である彼女が協力してくれるのは有り難いよ。

 

「シャルカは残りのメンバーを率いて【アニワザム】の迎撃を頼む。…………ミカちゃん、俺とネイの必殺スキルならステータスで上回る相手にも打つ手があるから【ギガキマイラ】との戦いにも参加出来ると思うがどうだろうか?」

「む……それじゃあ、フォルテスラさんは私の援護をお願いします」

 

 そうして、頼れるリーダーの指示の下で態勢を立て直した私達は各々が向かうべき戦場へと向かって行った…………そのすぐ後に【アニワザム】の拘束が解けたから、本当にギリギリだったね。

 …………そして、私達の準備が整った事を見た封竜王さんがこちらに声を掛けて来た。

 

「【ギガキマイラ】の方の拘束もそろそろ解けるから準備をしておいてくれ。さて、私も本気で行こうか…………人化解除」

 

 その言葉と共に封竜王さんが光に包まれ、その質量を大幅に増大させた…………光が消えた後に私達の目の前に居たのは、紫色の水晶の様な鱗を持ち、背中には大きな翼を持つ西洋風の大型ドラゴンだった。

 …………その本来の姿に戻った封竜王さんは、私を見てこう質問した。

 

『さて、君はアレに対して有効な手段を持っている様だが、どう戦う気なのかな?』

「基本は私が必殺スキルを使って正面から殴り合いをしますので、二人は援護をお願いします。…………後、フォルテスラさんは出来れば必殺スキルの発動条件を教えて下さい」

「俺達の必殺スキルの発動条件は『相手の攻撃でネイが砕かれる事』だ」

「必殺スキルを使うと相手のステータスを自分に加えられるんだよ」

 

 成る程、それならステータスの差は意味がなくなるね…………そして説明を終えたネイリングちゃんは長剣形態になってフォルテスラさんの手に収まった。

 …………と、そうこうしている内に【ギガキマイラ】を閉じ込めた水晶にヒビが入り始めた。

 

「とりあえず、私の必殺スキルの効果は時間制限付きなので短期決戦を目指します。…………どうやら時間が無い様なので、後は臨機応変にやっていきましょう」

『まあ、それしかないか。…………来るぞ!』

 

 話しているうちに水晶のヒビが大きくなって来たので、私は話を打ち切り戦闘準備を整えて前に出た…………直後、封竜王さんの警告と共に水晶が砕けちり、中に閉じ込められていた【ギガキマイラ】が解放された。

 

『GYAAAAAAA!!』

 

 解放された【ギガキマイラ】は迷わず近くにいた私に飛びかかり……。

 

「《神砕刑崩(ギガース)》」

 

 その直前、私は【激災棍 ギガース】の必殺スキルを行使した。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

妹:必殺スキルの詳細は次回
・実は兄&末妹がフォローに入るぐらいには焦ってもいて、ここまで“条件”を揃える為に色々と調整した。
・妹が音頭を取れたのは超級職としての実力も大きい。

エフ:信用が微塵も無い
・当然、取材の為に【ギガキマイラ】のところにも自身の<エンブリオ>を配置している。

ニーサン:今回は妹のフォローをしてくれている
・ゼクスの事を含めて妹が色々と“動かした”事は察しているので、可能な限り妹の言う通りに動いてくれている感じ。

ゼクスライム:出オチ
・一応、封竜王相手に一当てした上で撤退出来る様な準備はしてあった……が、位置取りが悪く【ギガキマイラ】にモグモグされてしまった。

フォルテスラ&<バビロニア戦闘団>:頼りになる援軍
・緊急事態だったとはいえ、妹の言うことを普通に聞いてくれるいい人達。

リリィ・ローラン:ローラン一家は基本優秀
・現地での近衛騎士団側のリーダーであり、第一騎士団側のリーダーであるリヒトから指揮を任されていた。

【封竜王 ドラグシール】:サポート役として大活躍
・《永遠竜晶》は【ジェム】の理論を応用して《竜気結晶》を永続固定化するスキルで、事前に作っておいたそれらを《陣地作成》で周辺の地下に配置していた。
・固定化した《竜気結晶》はMPの外部バッテリーとして使ったり、それらに仕込んでおいた術式をノータイムで発動させたり、スキルの遠隔発動の触媒に使用したり出来る。
・《竜気結晶》自体が非常に頑丈だったので【アニワザム】の干渉にあっても半分以上は使うことが出来たが、それ以外の仕込みはほぼ全滅した。

【魔鉱蚯蚓 アニワザム】:【アークブレイン】が用意した手駒
・地下を移動していたところ【寄生型ナノマシン】を<UBM>に使う為のテストとして【アークブレイン】に捕獲されたモノで、ナノマシンにより脳を完全に侵食されて完全に操り人形になっている。
・エレメンタルを召喚したのは《従精召喚》という蓄積した鉱物リソースを使ってエレメンタルモンスターを召喚・使役するスキル。
・今回の役割は封印の破壊と囮で、コイツを暴れさせている内に【ハイ・マインド・アバターホムンクルス】を領域内に潜入させる作戦だった。
・尚、基本的な精神支配はナノマシンが行なっており、ホムンクルスの方は【アークブレイン】の指示を中継するコントローラーみたいな感じである。

【十狂混沌 ギガキマイラ】:スライムをモグモグしたが味は良くなかった模様
・ゼクスを食らったのは、近くにいたレベルの高い(リソース量の多い)相手だったから。
・現在の姿はデフォルトのモノで、必要に応じて《キメラアビリティ》で変身する。


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