それでは本編をどうぞ。
□クリラ村周辺・森林地帯 【
クリラ村へ【魔鉱蚯蚓 アニワザム】が襲撃し、それによって封印されていた【十狂混沌 ギガキマイラ】が復活した時、私は
そして、今はライザーさんを始めとする<バビロニア戦闘団>のメンバー四人とパーティーを組んで、逆探知できた方角に向かっているのです。
『ミュウちゃん、コッチで間違いないんだな?』
「はい。……ある程度近づいて来たので、大分詳細な精神干渉スキルの発生源が分かって来たのです」
スキル《第六圏》は『効果範囲内の“気”を感知する』という一見よく分からない効果なのですが、何度か使って行くうちに『スキルなどを使った場合に発生・移動する何らかエネルギー、及び生物に内包されているエネルギーを感知する』スキルらしい事が分かってきたのです…………多分、この二つは同じ物なんでしょう。
ただし、このスキルはそういった
「しかし、大したもんだねぇ超級職ってのは!」
「流石っす! ミュウさん!」
「スゲェっす! ミュウさん!」
「ありがとうございます、アマンダさん、サクさんとボウさんも」
そう、今回私に同行してくれたメンバーには、以前海水浴場で出会ったアマンダさんとサクさんボウさんの三人が加わっているのです…………どうやら彼等は最近<バビロニア戦闘団>に加わったらしく、ライザーさんと同じく私と面識があって実力も十分だと言う事で今回のメンバーに選ばれたそうです。
道中少し聞いた話だとアスカ氏の事件があった直前ぐらいに加入したそうで、その時にはタイミングが合わず私達と出会う事は無かった様なのです。
…………尚、村で再会した時にはこんな話をしていたのです。
「まあ、なんか調子に乗っていたところで“上には上がいる”事を知ったコイツらが、心機一転クランに所属して頑張ろうと言い出したのがきっかけだったね」
「クランに入ってみたら自分の視野が如何に狭いかがよく分かったっす」
「正直、決闘ランカーとか同じ人間だと思えないし……」
『いや、二人とも入って時と比べたら大分実力は上がっているし、結構頑張っていると思うぞ』
と、そんな感じの事を言っていたのです…………まあ、今回の依頼で村の防衛に選ばれる程度には実力と信頼がある様なので、もっと自信を持ってもいいと思うのですが。
ちなみに現在の移動手段は私が肩に乗せたフェイと一緒にライザーさんのバイクへ相乗りさせてもらっていて、アマンダさん達は彼女の<エンブリオ>であるベヒーモスに着けられた鞍(《騎乗補助》スキル付きらしいのです)に乗って追走しています。
…………さて、そんな事を考えている内に大分相手に近づいて来たのです。
「…………よし、ここまで近づけば正確な位置が分かるのです。…………前方五百メートル程先、数は一人で人型の相手ですね」
『そうか…………じゃあ急ぐぞ!』
そう言ってライザーさんはバイクのスロットルを回して更に速度を上げ、まばらに生えている木々をそのドライビングテクニックで掻い潜りながら疾走していきます…………急いで<
…………ッ! これは……!
「どうやら相手に気付かれた様なのです! 現在こちらから離れようとしているのです!」
『ッ! なんだと!』
どうやら相手もこちらに気付いたのか、捉えていた相手の気が急に離れて行くところを感知しました。
『どの方向への逃げているのかを教えてくれ!』
「えーと、相手はそのまま走ってこちらから離れて…………いえ!
感知したその相手は走っている途中で鳥型のモンスターを呼び出し、それに乗って空へと舞い上がってしまったのです…………そして、その直後に肉眼でも前方の上空を飛行している鳥型モンスターとそれに乗っている人型の影が見えました。
更にその鳥型モンスターの速度は亜音速を優に超えており、地上と空中という地形の差もあってこのままではそう遠からず感知範囲外に逃げられてしまうでしょう。
「この距離だと跳んでも追いつけませんね」
『クッ! このままでは!』
「なんだい? あれを撃ち落とせばいいのかい?」
相手との距離が広がって行く事に焦りを覚え始めていた私とライザーさんに、追走していたアマンダさんがそう声を掛けてきました…………彼女達にはこの距離で遠距離攻撃を行う手段があるのでしょうか?
「! どうにか出来るのですか?」
「ああ! ……サク! ボウ! 撃ち落としな!」
「「了解!」」
そう言ったアマンダさんに答えて、同乗していたサクさんとボウさんが左手の紋章からそれぞれ一本の剣を取り出しました…………彼等が取り出した二つの剣は色以外全く同じ形をしていて、持ち手の部分が銃のグリップの様な形をしており刀身の先端に銃口が付いている銃剣で、それぞれサクさんが黒色、ボウさんが白色をしていました。
…………そして、彼等は手に持った剣を空を飛んでいる相手に向けて……。
「《
「《
それらの言葉と共にサクさんの剣からは三つの羽が生えている黒い球体型の闇属性魔法が、ボウさんの剣からは太い光線型の光属性魔法が放たれました…………二人が発した言葉から、確かそれぞれ【
『! KEEEEEE!!!』
…………しかし、相手の鳥型モンスターは《危険察知》系のスキルを持っていたのか、彼等の魔法が放たれる直前に身を翻して回避行動を取ったのです。
まず、光属性魔法特有の光速によってボウさんが放った光線が相手まで届きましたが、その所為で直前まで居た場所を通過…………せずに、その光線は
『KEAAAAAA⁉︎』
翼を貫かれた相手はバランスを崩した所為で高度と速度を落としてしまい、そこにボウさんが放った羽根つき黒球が相手を追尾しながら
…………翼をやられて機動性が大幅に下がった相手はそれを避ける事が出来ず……。
『KEAAAAAA!!!』
その直前に相手は全方位に雷撃を放って自身に迫る黒球を搔き消しました…………アレは以前【磁界奇馬 マグネトローべ】が使っていた魔法と同系のモノですかね。
しかし、相手はダメージの所為でふらつきながらも飛行を続けてこちらから離れようとしていました。
「ちょっと! 防がれているじゃないか!」
「全くだ。ちゃんと当てろよなー」
「しょうがないだろ! 闇属性魔法は強化しても弾速はそんなに早くならないんだから!」
「……いえ、相手の飛行速度を落としてくれただけで十分なのです《
『《エンチャント・アジリティ》《エンチャント・ストレングス》』
そう、回避・防御行動を取った事と翼へのダメージによって飛行速度が落ちた事で、ライザーさんと相手の距離はかなり縮まってくれたのです。
更に私は必殺スキルを使ってフェイと融合しつつ、いつも通りフェイの魔法や【ジェム】で自身に単体バフを掛けていきました。
「ライザーさん、あそこまで
『お安い御用だ!』
私の頼みに応えてくれたライザーさんは更にバイクの速度を上げて相手との距離を急速に詰めていき…………そして前方にあった倒木に突っ込んで行きました。
『ミュウちゃん! 跳ぶぞ!』
そのままライザーさんはバイクの前輪を上げて、その倒木を踏み台にして大ジャンプをしたのです…………凄いバイクテクニックですね! 流石はリアル仮面ライダー!!!
…………そして私はジャンプの頂点に達した時、即座に《軽気功》を使って彼の肩に飛び乗り……。
「少し肩を借りるのです」
『《フォロー・ウィンド》!』
そして、魔法によって発生させた追い風に乗りながら、彼の肩を足場にして飛行中の相手に向かって大ジャンプをしました…………そのまま《空歩》を使って空中を駆け上がりつつヤツに接近していきます。
『⁉︎ KEAAAAAAAAAAA!!!』
私に気付いたのかヤツ──接近したお陰で見えた名前には【ライトニング・ガルーダ】とありました──は接近させまいとこちらに大量の雷撃を面で放って来ました…………やはり、この攻撃は【マグネトローべ】のモノと同じ、お陰で近づき難いですね。
…………なので、私はそれ以上近づかずに《空歩》のちょっとした応用で何も無い空中を踏み込みながら拳を引き絞り……。
「《粉砕波動拳》!」
そのまま正拳突きを放つと共に、触れた物体全てを粉砕し得る拳の形をした衝撃波を放ちました…………このスキルは以前アスカ氏から学んだモノの一つで、何でも【
…………まあ、雷撃など防御力が無いモノにはただの衝撃波なのですが、それでも超級職の奥義なので。
『⁉︎ KEEEEEEEEEEEE!!!』
相手が放った雷撃を突破してその身体の何割かを消し飛ばすには十分な威力があるのです…………まあ、レベルが低い所為でSTRが足りないので本来の使い手である【粉砕王】程の威力は出せませんし、SPもまだ少ないので連発も出来ませんが。
…………さて、今の攻撃で【ライトニング・ガルーダ】は飛行困難な程にダメージを受けているので……。
「当然追撃です。……フェイ!」
『《魔法多重発動》十三発《ヒート・ジャベリン》!』
『KEEEEEEEEEEEE⁉︎』
ふらついている相手に向けて事前にフェイが準備していた魔法を叩き込みます…………そうして放たれた数多の炎槍は【ライトニング・ガルーダ】と乗っている黒いフード付きローブをまとった人型に次々と直撃していきます。
『KEEEEEE…………』
「……離脱を実行」
度重なるダメージで【ライトニング・ガルーダ】は飛行を維持できなくなり墜落していきますが、乗っていた人型はローブで身を守りながら飛び降りて逃げようとしていました。
「……逃す気は無いのですよ? 《サイクロン・ターンキック》!」
「ッ⁉︎」
ですが、それを読んでいた私は即座に空を蹴ってローブの人型に接近して、身体を横回転させながら風を纏った回し蹴りを相手の胴に叩き込み、そのまま地面に向けて蹴り飛ばします。
…………付加された風の効果もあって勢いよく吹き飛ばされた相手は、轟音を上げながら地面に叩きつけられました。
「このままやられてくれるとありがたいのですが…………そうも行かないでしょうね」
その証拠に《第六圏》には相手の気が感知されているので、どうやら未だに健在の様です…………蹴り込んだ時の感じだと物理的ステータスはあまり高くはなさそうだったので、おそらくは【ブローチ】などの身代わり系アイテムか何かですかね。
私はそのまま地上に降りようとも思いましたがスキルを連発した所為でSPが心許ないので、落下しながらポーションを取り出して飲んでおきましょう。
(アスカ氏との“稽古”の際や超級職転職後にマリアさんから受けたジョブクエストで多くの格闘系スキルをラーニング
お陰で未だに【武闘姫】のジョブレベルは五十にも届いていないので、今の私のステータスはカンスト<マスター>に毛が生えた程度…………その所為で超級職のスキルを使うと直ぐにSP・MPが枯渇するのが今の問題なのです。
一応、フェイと融合していればMPの方は何とかなるのですが、そもそもMP消費の格闘系スキルはあまり多くはないですからね。
「それでは、急いで追撃するのです」
『分かったよ』
そして、私はポーションを飲み終わった後、急いで空を蹴って相手が落ちた場所に向かって降りて行きました。
◇
そのまま私は《軽気功》と《フォロー・ウィンド》を駆使して地上に降り、先に地上に落ちた相手に追いつきました…………相手もこれ以上逃げるつもりはないのかこちらに相対しています。
…………外見は人間そのものですがその顔には表情というモノが無く、更にもう隠すつもりも無いのか頭の上には先程までには無かった【ハイ・マインド・アバターホムンクルス】の文字がありました。
「さて、出来れば精神干渉を辞めてほしいのですが……」
「不可」
まあ、でしょうね…………しかし、地面に叩きつけられても【アニワザム】への精神干渉は途切れていないとは、あわよくばダメージで精神干渉を不可能に出来るかと思いましたが狙いが外れましたね。
「なら、仕留めさせてもらうのです! 《ライトニング・ストレート》!」
ことこうなれば倒すしかないと、私は《アクセル・ステップ》を使って超音速で接近して雷を纏った正拳突きを叩き込みます…………が。
「着装」
その雷を纏った拳は
「ッ!
そう、私が接近する直前に【ハイ・マインド・アバターホムンクルス】は黒色のパワードスーツを身に纏い、それによって強化されたステータスでこちらの拳を受け止めていたのです…………しかし、相手も踏ん張っているとはいえバフをガン積みした私の攻撃を受け止めて、更に纏わせた電気も効果が少ないとは相当高性能なスーツですね。
…………直後、相手の受け止めている腕から“嫌な気”が私の腕に流れ込むのを感じとったのです。
『《スリープ・マインド》』
「《心頭滅却》!」
『《マインド・レジスト》《霊環付与》!』
強烈な眠気に襲われた私は即座に手を振り払って距離を取りつつ、自身に精神耐性バフと状態異常持続回復を掛けました…………お陰でどうにか眠気は飛びましたが、精神干渉を使ってくる事を考慮してフェイに対策を取って貰って置かなければヤバかったですね。
しかし、距離を取った私に対し、相手は追撃せずにただ右手の甲をこちらに掲げ……。
『
『KETEKETEKETEKETEKETE!!!』
『GOAAAAAAAAAA!!!』
その手にあった【ジュエル】から三本角の巨大なカブトムシ型モンスターと、二本角のこれまた巨大なサイ型モンスターを呼び出して来ました…………配下のモンスターは先程の【ライトニング・ガルーダ】だけでは無かったんですね。
「……これは厄介ですね」
私は目の前の強敵達をどう倒そうか思案しつつ、相手を迎え撃つ為に構えを取りました。
あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説
末妹:レベルが上がらないのです……
・受けたジョブクエストは新しい【武闘姫】の力を示す為、アスカ氏と知己のあったティアン武闘家との試合とかだった。
・マリアさんから“ポッと出の<マスター>が超級職についた事の不満を逸らす意味もある”と事前に聞いていた為、末妹は<エンブリオ>の能力を封印して技術とジョブスキルのみで挑戦者を蹴散らして認めさせた。
《第六圏》:実は周辺のリソースを感知するスキル
・殆どの隠蔽スキルを見破れる非常に強力な感知スキルだが、感知するだけで識別は自分でやる必要があるので使いこなのにはある程度の訓練が必要になる(尚、アスカ氏は使いこなすのに半年ぐらいかかった)。
《フォロー・ウィンド》:風属性魔法
・自身の周囲に任意の方向から強風を吹かせるスキルで、主に移動補助に使われる。
《サイクロン・ターンキック》:【蹴士】系統のスキル
・風を纏った回し蹴りで相手にダメージを与えつつ吹き飛ばすスキル。
・末妹はこれ以外にもジョブクエスト時に上級職までの格闘スキルを多くラーニングしている。
ライザーさん:ハイレベルなドライビングテクニックを披露
アマンダ&サク&ボウ:<バビロニア戦闘団>新メンバーになった
名称:【闇食魔剣 ハティ】
TYPE:アームズ
能力特性:闇属性魔剣・追尾能力付与
到達形態:Ⅳ
固有スキル:《
・サク・ウッドベルの<エンブリオ>で、モチーフは北欧神話に登場する月を追いかける狼“ハティ”。
・《月食装填》は事前にMPを消費して自身が取得している闇属性魔法をストックし、それを必要な時にノータイムで解放するスキル。
・第四形態時でのスキルストック数は最大二十個で、ストック解放は
・《其れは月を追う狼》は魔法解放時MPを追加消費する事で、その魔法に対象への追尾能力・速度上昇・射程延長効果を付与するスキル。
・《グルーム・ストーカー》の様に元々追尾効果がある魔法には、速度上昇・射程延長効果のみを付与する事なども出来る。
名称:【光食魔剣 スコル】
TYPE:アームズ
能力特性:光属性魔剣・追尾能力付与
到達形態:Ⅳ
固有スキル:《
・ボウ・ウッドベルの<エンブリオ>で、モチーフは北欧神話に登場する太陽を追いかける狼“スコル”。
・《日食装填》は事前にMPを消費して自身が取得している光属性魔法をストックし、それを必要な時にノータイムで解放するスキル。
・第四形態時でのスキルストック数は最大二十個で、ストック解放は銃剣型の第二形態でのみ可能(近接用の第一形態もある)。
・《其れは日を追う狼》は魔法解放時MPを追加消費する事で、その魔法に対象への追尾能力を付与するスキル。
・ただし、光速の光属性魔法に追尾能力を付与しているので、燃費は悪く追尾効果もあまり高くない。
【ライトニング・ロックバード】:【アークブレイン】産の改造モンスター
・基本は純竜級AGI型の雷属性怪鳥だが、防御用のスキルとして【マグネトローべ】から得られたデータを元に作った搭乗者を巻き込まない仕様の《サンダー・カタラクト》を組み込んだ輸送・逃走用のモンスター。
・また、スキルを活かすために《危険察知》《殺気感知》などのスキルも高レベルで組み込まれている。
【ハイ・マインド・アバターホムンクルス】:今回の任務の為にサポート用モンスターをいくつか与えられている
・【アニワザム】への精神干渉は【アークブレイン】の中継役として行っているので、本人を破壊する事でしか止められない。
・纏ったパワードスーツは【ホムンクルス用強化甲冑・TYPEマインド】と言い、精神干渉系スキルの戦闘使用保持のスキルや高い防御力・各種耐性・物理的ステータス補正を備えている。
・更に与えられていたレベル10の《操縦》スキルと《デクスタリティ・データリンク》により【アークブレイン】の
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