とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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前回のあらすじ:兄「使い道に困る物を貰ってしまった」末妹「とりあえず新特典武具にしまっておきましょう」


それでは本編をどうぞ。


三兄妹のまったり駄弁り旅

 □アルター王国北部 【戦棍姫(メイス・プリンセス)】ミカ

 

 長かった私のデスペナが明けた後、私達は予定通り直ぐに馬車に乗りクレーミルを出て東へと足を進める事にした…………幸いにも【マグネトローベ】の修復は間に合ったので、今は快適な旅が出来ている。

 まあ、私達なら極論馬車とか引かずに走ったりした方が早く移動出来るんだけど、画面の中のキャラを動かすゲームならともかくVRで街から街への全力ダッシュとかしたら疲れるし、何よりゆっくり旅行を楽しめなくなるからね。

 …………そんな事を考えつつ、私は馬車の荷台の上に座りながら自身に装着された全身鎧を()()()()()()()()遊んでいた。

 

『ふむむ〜? これは結構応用が効くかな〜』

「…………姉様、その鎧の形状が凄い事になっているのですが……」

『凄く禍々しいデザインだね』

 

 そこに同乗していたミュウちゃんとフェイちゃんからそんなツッコミが入った…………今、この鎧の形状は全身からギザギザの棘を生やしたフルフェイスの全身鎧な上に色を黒く変えてあるので、側から見ているとどう考えても悪役が着ている鎧に見えるかな。

 まあ、形状変形は一通り試し終わったしとりあえず元に戻そうか……えいっと。

 

「あ、戻ったのです」

『ふむふむ、デフォルトに戻す分には早く簡単に出来るみたいだね……この【ギガキマイラ】は』

 

 元に戻したその鎧の外見は、狼っぽい形状の青いフルフェイスの兜を被り、胴体部分には竜を模した意匠が凝らされていて、更に手足などの至る所にまるで別の装備を継ぎ接ぎした様な様々な形状のパーツが取り付けられているという変わったモノだった。

 そう、これこそが先日の事件で私が手に入れた全身鎧型の古代伝説級特典武具【十装混鎧 ギガキマイラ】である…………それで()()ステータスはこんな感じ。

 

 【十装混鎧 ギガキマイラ】

 <古代伝説級特典武具(エンシェントレジェンダリーアームズ)

 十体の力ある獣が融合した狂気の合成獣の概念を具現化した至宝。

 極めて高い強度を持つと共に、他の装備品を融合させてその能力を取り込む事が出来る。

 ※譲渡売却不可アイテム・装備レベル制限無し

 

 ・装備補正

 無し

 

 ・装備スキル

 《キマイラ・アーマー》

 《シェイプ・チェンジ》

 《エクストラ・アビリティ》

 

 ちなみに【ギガキマイラ】の装備に必要な枠は頭部・上半身・外套・両手・下半身・両足の六つであり、元のデザインは頭部が狼の意匠があるだけのシンプルな青い全身鎧だったんだよね。

 

『…………最初は装備枠が【ドラグテイル】と被っていたからどうしようかと思ったけど、そこは特典武具だけあってちゃんと私にアジャストされていたから良かったな』

「確か、他の装備品を取り込んで強化されるのでしたか」

 

 そうなんだよ。この【ギガキマイラ】の第一スキル《キマイラ・アーマー》の効果は、説明文にあった通り()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というモノだったのさ。

 そして、このスキルで取り込める装備品の数は全部で十個…………しかも装備枠を複数使う装備でも一個分として計算されるので、二枠分使う【ドラグテイル】を取り込む時も一つの枠で済むんだよね。

 

『実質、装備枠が大幅に増える事になるからかなり強い特典武具だよ。取り敢えず、今まで付けていた装備品を全部突っ込むだけでも大分強化されたし』

『だから、そんなチグハグなデザインになったんだよね』

 

 まあ、装備を取り込むには五分ぐらい時間が掛かるから戦闘中の切り替えとかは出来ないし、一度取り込んだ装備を取り出すにはデンドロ内で一週間以上経っている必要があるといったデメリットもあるが、それでも十分過ぎる程に強力にスキルだね。

 …………後、融合させると装備に合わせて鎧の一部が変形する特性もあって、【ドラグテイル】の時には胴体部に竜の頭部を模した意匠が付いたりもした。

 

『まあ、デザイン自体は《シェイプ・チェンジ》を使えば変えられるんだけど…………やっぱり、フルフェイスの兜があると喋りにくいね。仕舞っておこう」

「あ、マスクオフも出来るんですね」

 

 そう言って、私は頭部の狼型フルフェイスメットを胴体部の鎧に収納する様に変形させた…………この、さっきからやってる【ギガキマイラ】自体を変形させているのが第二のスキル《シェイプ・チェンジ》の効果である。

 先程から色々試してみた結果、このスキルは無消費で使う事が出来て基本的にマニュアル操作で好きな形に変えられるが、その際には正確にイメージしなければならないので時間が少し掛かってしまう。

 …………ただし、元の形状や取り込んだ装備に由来する形、後は鎧の一部を収納又は展開する形でなら超高速で変形可能になっている様であり、どうも細かいところで色々な制限がある様にも感じる。

 

「例えば【ドラグテイル】の《竜尾剣》を背中に生やすのは一瞬で出来たけど、それ以外の部分に生やすのは時間が少し掛かっている上、一本以上《竜尾剣》を生やす事は出来なかったからね」

「融合させた装備以上の性能には変形出来ない感じですかね」

『無消費のスキルでそこまで出来るのは強すぎるからかな』

 

 まあ多分、二人の言う様な制限があるんだろう…………これに関しては今後も装備の融合と一緒に色々と試して行くしか無いかな。

 …………そして、最後のスキル《エクストラ・アビリティ》の効果だが……。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…………多分、私が複数の特典武具を持っている事にアジャストされたスキルみたいだね」

「実質的に他の特典武具のスキルを一つ増やせるのですから、凄く強いスキルですよね」

 

 ちなみに【ドラグテイル】を融合させた時に発現したのは《竜気鎧装》──MPを消費して鎧の表面に全ての攻撃を減衰させる《竜王気》を展開するスキルである…………このスキルは消費MPが非常に少ない代わりに持続時間が最大1分間、クールタイムが十分掛かる仕様になっているので緊急的な防御手段として使えそうかな。

 そして、【ブラックォーツ】を融合させた時に発現したのは《黒刃》──SPを消費して鎧から非生物を透過する黒色のブレードを展開するスキルだった…………さっき全身から生やしていたのがコレで、展開出来る数には制限が無く長さや形状もある程度自由に操作出来て、更に《闇纏》を使っている状態でも攻撃判定が出る仕様だ。

 この二つのスキルから考えると、発現するスキルは特典武具の元になった<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>の能力を私にアジャストされたモノになる感じかな。

 

「総合して、色々と応用が効きそうな特典武具だけど、使いこなすには要練習ってところかな? 融合させる装備もきちんと考えないといけないし」

「まあ、力をポンと渡されたとしても、それを使いこなせる様になるには練習が必要ですからね…………む? 《第六圏》」

 

 そうやって話している途中、ミュウちゃんが突然雰囲気を鋭いものに変ながら目を瞑り周囲を索敵し始めた…………直後、私の《殺気感知》にも反応があり、同じく感知したであろうお兄ちゃんも馬車を止めた。

 …………その直ぐ後にミュウちゃんの目が開かれた。

 

「兄様、九時の方向、上空に九体」

「《遠視》…………二人共、こっちに来ているのは【レッサーワイバーン】の群れみたいだ」

「あららー…………ていうか、さっきからドラゴン系のモンスターが良く襲って来るよね」

 

 そう、この辺りに通りかかってからしょっちゅうドラゴンが襲い掛かって来るんだよね…………まあ、強さは最大でも亜竜ぐらいだし、知性も無い様な連中だから全部返り討ちにしているけど。

 

「この辺りは天竜種の住処である<天蓋山>が近いからな。多分その所為だろう」

「そこからドラゴンが出てきてるって事?」

「<天蓋山>と言えば、アルター王国の北部にある複数の【竜王】を始めとする強力なドラゴン達が住む秘境でしたね。…………その割には襲って来るドラゴンは知性も無く弱いですが」

 

 そうなんだよねー。さっきから襲い掛かって来るドラゴン達は、どいつもこいつも彼我の実力差も理解出来ないレベルの連中ばっかりだしね。

 …………そう私達が駄弁っている間にも、彼我の実力差も理解出来ないレベルな【レッサーワイバーン】達はこちらに向かって来てるし。

 

『『『『『GYAAAAAAAAAA!!!』』』』』

「【ジェムー《ファイアーボール》】をコストにした自爆型を《多重同時召喚》で九体分、三十秒間《従精召喚》……行け」

『『『『『──────────!!!』』』』』

 

 そんな連中に対し、お兄ちゃんは自爆特化の【フレイム・エレメンタル】を九体召喚して嗾けた…………それらのエレメンタル達はお兄ちゃんの新ジョブ【高位召喚師(ハイ・サモナー)】のスキルによる強化もあって、かなりのAGIでワイバーン達に突っ込んで爆発した。

 まあ、所詮は下位亜竜である【ワイバーン】の更に劣化版でしかない連中が、低位とはいえエレメンタルの自爆に耐えられる筈もなくそのまま光の塵となった。

 

「ふむ、やはり自爆型は攻撃魔法の代用としてなら使いやすいな。内包された魔法と使われている魔石で召喚獣のステータスが決まる以上、召喚モンスター強化のスキルを乗せれば、ただ【ジェム】を使うよりも遥かに威力・速度が上がる。また、誘導性も付くから当てやすい」

「でも、あの程度の相手に使うにはコスパが最悪じゃない?」

「今回はスキルの試運転と未開放の第三スキルの解放条件を探る意味があるから別にいいんだよ」

 

 そんな風に喋りながら、私達は出てきたドロップアイテムを回収して行く…………正直、戦闘よりもこの作業の方が面倒くさいね。シュウさんが使っていたドロップアイテム自動回収カンガルーが欲しいよ。

 …………そうして一通りの作業を終えてから、お兄ちゃんが再び馬車を走らせた。

 

「さて、さっきの話の続きだが……そもそも、強くて知性の高いドラゴンなら<天蓋山>から外には出ないだろうからな。あそこは地竜種と怪鳥種が住むという<厳冬山脈>と違って食料とかも十分にある様だし」

「つまり、弱くて知性が無いから外に出てしまうと言う事ですか?」

「後は、そうやって外に出たドラゴンが繁殖するから、この辺りにはドラゴン型モンスターの生息数が多くなっている事も理由にあるだろうがな」

「要するに、近くに<天蓋山>があるからこの辺りはそこそこの強さのドラゴン型モンスターの生息地になっているって事だね!」

 

 まあ、私達にとっては純竜以上のドラゴンでも出てこない限りは問題にならないから、このまま旅行を続ける感じになるんだけど…………と言うか、先日からずっとこんな風にモンスターを蹴散らしながら馬車を走らせ続けているんだよね。

 途中で街や村とかも殆ど無いから休む事も出来ず、モンスターが居なさそうな所でのログアウトを駆使する事でどうにか進んでいる感じである。

 

「じゃあ、王国の北部に街が少ないのも多くのドラゴンが住んでいるからなのかな?」

「それは、どちらかと言うと<天蓋山>が近くにある事が原因だと思うがな。…………昔、<厳冬山脈>に攻め込んだ大国が逆侵攻して来たドラゴン型に滅ぼされたと言う話もあるみたいだし、そんな恐れのある場所の近くに住みたいと思う人は少数派だろう」

「でも、これから向かうカルチェラタン領は<天蓋山>の近くに有りますよね?」

 

 言い忘れていたけど、私達はアルター王国とドライフ皇国の国境にあるカルチェラタン領を最終目的地にして旅をしているのだ…………まあ、前述の理由でなかなか途中の街で休んだりが出来ないのが困りものだけど。

 

「そりゃあ、国境に街を作らない訳にも行かないだろう、国防的な意味で。…………それに<天蓋山>に住むドラゴン達は領域を侵さない限りは地上に降りる事は少ないし、山の両端には神話級の【竜王】が門番をやっているらしいからドラゴンが外に出る事は殆ど無いらしいし」

「でも、この辺りにはドラゴンが出るけど」

「それは、単純に山の横合いは面積が広くてカバーしきれないか、取るに足らない連中は止めるまでも無いと判断しているのか。…………まあ、俺は<天蓋山>内部の事情なんて知らないから、ここまでの話は又聞きの上に推測を重ねたもので確証とかはさっぱりだが」

 

 一通り話終わった後、お兄ちゃんは首をすくめつつそう締め括った…………そもそも、別に私達は長く馬車を走らせている間は暇だから駄弁っているだけで、真面目に考察とかしている訳でも無いし。

 

「空を飛んで行けば早いんだけど、私達の空中移動には少し制限があるしね」

『それに、ここで空を飛ぶともれなくワイバーンが付いて来るからね。さっきも空を飛んでいる最中に襲われて余計に時間を食ったし』

「【バルーンゴーレム】のクールタイムもまだ終わって無いしな、暫くの間は地上移動だ」

 

 やっぱり、私達の空中移動には【マグネトローベ】に二人しか乗れない事がネックだよね…………全員で移動するにはお兄ちゃんが《空中浮遊》持ちの【バルーンゴーレム】を召喚する必要があるんだけど、お兄ちゃんの消費MPや召喚時間とクールタイムの関係で長時間の移動はやや厳しい。

 

「どこかに宙に浮く馬車とか売ってないのかなー」

「王国内でそんなのが売っている所は見た事無いな」

「レジェンダリアとかで売ってそうですねソレ」

 

 じゃあ、アルター王国一周旅行が終わったらレジェンダリアにでも行ってみようかな? 確か、仲直りしたミュウちゃんの友達が所属していたし、コッチ(デンドロ)で会いに行くのもいいかもね。

 …………と、言う話をしてみたらミュウちゃんが凄く嬉しそうに賛成したので、私達の始めての国外旅行の行き先はレジェンダリアに決定したのだった。

 

「まあ、国外旅行に関してはこの旅行が終わってひと段落してからで良いだろう。…………それよりも、話の途中で悪いがまた【ワイバーン】だ」

「またぁ? なんか本当に多くない?」

「今度はレッサーが付かない普通の【ワイバーン】の様ですが…………姉様、何か事件の気配とか感じませんか?」

 

 そう言われてもねぇ、今のところは危険とかは感じないけど、何分“遠い勘”の方はムラが多いからあんまりアテにしたくないんだけど…………何より、()()()()()()()()()()()()()()()()()から。

 

「特に何も感じないよ。…………単に運が悪いだけじゃない?」

「ありがとうなのです姉様。…………最近トラブルが多かったから、どうも深読みしてしまうのです」

「まあ、俺達の特性上しょうがないさ。…………それよりも、さっきの連中よりは強いだろうし数も多いから、お前達にも戦ってもらうぞ」

 

 …………まあ、【ギガキマイラ】の実践試験には丁度いい相手が来たと思いながら、私はデフォルトの全身鎧モードに切り替えつつ紋章から【ギガース】を取り出して戦闘態勢へと移った。

 そして、お兄ちゃんも【マグネトローベ】を馬車から外して空に上がり、ミュウちゃんはフェイちゃんを馬車の護衛に残して私と一緒に前に出た。これが私達の旅行中における基本的なフォーメーションである。

 

「さて、じゃあ戦おうか」

『オッケー』

「はいなのです」

『『『『『GYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』』』』』

 

 そんな感じで襲い掛かって来るモンスター(九割がワイバーン系)を蹴散らしながら、私達は目的地であるカルチェラタン領までのんびりと旅をして行くのだった。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

妹:まったり駄弁り旅(ワイバーン添え)
・【ギガキマイラ】に関しては今のところ『まあまあ使いやすい鎧』ぐらいの扱いで、まだ《キマイラ・アーマー》にも空きがあるから色々と試して行く予定。
・実は自分の才能に関しての闇が三兄妹の中では一番深い。

【十装混鎧 ギガキマイラ】:後のクマニーサン『何それ超羨ましい』
・現在《キマイラ・アーマー》で融合させている特典武具以外の装備は、ステータス上昇・耐性系パッシブスキル持ちの物と《空中跳躍》や《壁面走行》などの移動範囲を広げるスキルを持つ物を選択している。
・《シェイプ・チェンジ》はある程度の損傷を修復する事も出来るが、大幅に形状を変え過ぎるとステータスが下がる事もあるデメリットがある。
・融合枠は装備アイテム一つで一箇所を消費する仕様なので、着ぐるみなどの装備枠を多く使う物とは相性が良い。

【ワイバーン】系モンスター達:三兄妹が通り掛かった場所に偶々大量発生していた
・大量発生の主な原因はワイバーンを生み出し従える<UBM>が現れた事と、<マスター>の増加による生態系の変動。
・更に、その<UBM>が増え過ぎたワイバーンの面倒を見るのを嫌がって、厳選した精鋭を連れて縄張りを別の場所に移したので、三兄妹が通った場所には弱いワイバーンが大量にいる事になっていた。
・大量発生自体はデンドロ世界では良くある事であり、肝心の<UBM>も別の場所に移動していて、残ったワイバーンも三兄妹にとっては驚異にならないレベルだった為、妹の直感は機能しなかった。
・また、三兄妹に積極的に襲い掛かって来るのは、<UBM>に率いられていた時の成功体験が警戒心を下げていた為。


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