とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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※リメイク版『とある三兄妹のデンドロ記録:Re』https://syosetu.org/novel/232018/の執筆を開始したので、そちらもよろしくお願いします。


ちょっと温泉宿行ってみた

 □カルチェラタン領・街中 【戦棍姫(メイス・プリンセス)】ミカ

 

 何か妙な再会があった後、私達は冒険者ギルド内の空気が微妙に居た堪れなくなったので予定を変更してクエスト探しを中断してカルチェラタン領内を散策する事にしたのだった…………正直、ピンと来るクエストが全然見つからないから意地になって迷走していた感があるし、今回はご縁が無かったという事でスッパリ諦めました。

 …………と、そうやって適当に街中をブラついている途中で、ミュウちゃんが私とお兄ちゃんにやや呆れた様な声で質問をして来た。

 

「ところで二人共、あの人達に一体何をしたんですか? 物凄いビビってましたけど、そんなにアレな人達だったので?」

『とてもそうには見えなかったけど』

「いや、大した事はしてないよ? あの二人がPKを仕掛けて来たから普通に返り討ちにしただけだし」

「ああ、()()()()()()()()()()()()()()ヤツらと違って、特に甚振ったり念入りに心を折る様な事はしていなかった筈だ」

 

 うんうん、あの二人はコッチをカップルと勘違いして襲い掛かって来ただけだから()()に返り討ちだけだった筈だからね…………こっちの事を特典武具を大量に持っているから、チートとかズルとか反則とか言って来る連中とは違って。

 確かに、私が直感で<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>を見つけ出せる事もあるのは事実だけど、これでもそれなりに苦労しているんだよ。それに、私の直感って悲劇が起きる事が感じ取れるから結構キツイし。

 

「コッチだって好き好んでこんな“チカラ”を持っている訳じゃ無いからね…………それをチートだのと言われるのは結構ムカつくんだよ」

「それに、そういう連中はしつこいからな、二度とこちらにちょっかいを出す気が起きないぐらいに念入りに潰さないとな」

「まあ、それに関しては別に良いんですが。…………あまりやり過ぎないで下さいね、あのお二人が改心したというのは事実でしょうし」

 

 別にさっきも言った通り、向こうから仕掛けて来ない限りは何もしないよ。それにあの二人みたいに『カップル爆発しろ!』とか、いつかの黒黒さん(仮)みたいに『お前たちを倒して名を上げてやる!』みたいなPKにはそこまで悪くは思わないし。

 …………もちろん、向かって来たら普通に倒すんだけどさ。

 

「とりあえず! この話はこれで終わりにして、しばらくはこの街での観光を楽しもうよ。最近は闘いっぱなしだったし」

「まあ、暫くはのんびりとするのもいいかもしれないな。…………どうせ、何か事件が起きたら首を突っ込む事になるだろうし」

「休める内に休んだ方がいいですかね」

 

 …………二人の言い分にはやや言いたい事も有るけど、今日私達はとりあえずカルチェラタン領内の観光をする事に決めて街へと繰り出していったのだった。

 

 

 ◇

 

 

 そんな訳で、私達は今カルチェラタン領の郊外にある天地様式(らしい)温泉宿でのんびりと温泉に浸かっています…………領内を観光している時に温泉宿があると聞いて、旅先で温泉を満喫するとか一回やってみたかった私の意見で今日は此処に泊まる事になったんだよね。

 …………そう言う事で早速私達は温泉に入る事になったんだけど、まさか()()()()()()()温泉に入る事になるとはね。現実(あっち)ではこういうのは中々ないし。

 

「しかし、この時間帯は混浴だったのですね。知りませんでした」

「うんうん、いきなりお兄ちゃんが入って来た時にはビックリしちゃったよ」

「それはこちらのセリフだ。男湯に入ったと思ったら何故かお前達がいるんだからな。慌てて《空想秘奥(ブリューナク)》付きのAGI単体バフを自分に掛けて、亜音速機動でここの暖簾やら注意版やらを確認する羽目になったんだからな」

 

 そうして確認した結果、ここの温泉は一定の時間帯は混浴になっている事が分かったので私達は安心して一瞬に温泉に入る事になった訳です。

 …………え? エッチなハプニングとかは無いのかって? 兄妹でそんな事が起きる訳ないでしょう(真顔)。

 

『ていうか、最初は慌てていたのに今はあっさりと混浴してるよね』

「別に兄妹なら混浴しても問題ないでしょう。そもそもこの身体はアバターだし」

「他に利用者がいるのならまた別の時間にしたかもしれませんがね」

「まあ、偶にはこういうのも良いだろう。本来旅行とはこうあるべきだ」

 

 確かにこれまでの私達の旅行は、旅先で片っ端から事件に首を突っ込んでそれを解決する水戸のご老公様方式になっちゃってたからね〜。この領にいる間ぐらいはのんびりとしていてもいいでしょう。

 

「しかし、この温泉宿は天地様式らしいけど天地ってこんな感じなのかなー。宿の前にはシーサーっぽい何かが置いてあったけど」

「どちらかと言うと“外国人から見た日本”みたいな感じだが……まあ、実際に天地に行った事が無いから何とも言えんが」

「天地所属のクラスメイトの話だと戦国時代の日本的な純和風の国らしいですが……いずれは行ってみたいですね」

 

 そんな感じで、私達は適当に駄弁りながら売店で売ってた温泉卵を食べたりして露天風呂を一通り満喫したのだった…………まあ、途中でミュウちゃんの《第六圏》で他の利用客が温泉に来る事が感知されたので、慌てて超音速機動で脱衣所に戻ったりしたけど。

 …………流石に肉親ならともかく他人と混浴はちょっと難易度が高いかな。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □カルチェラタン領・天地“風”温泉宿内 【高位召喚師(ハイ・サモナー)】レント

 

「風呂上がりの客室はノーマル牛乳派、コーヒー牛乳派、フルーツ牛乳派に分かれて混沌を極めていた……!」

「ちゃーらーらーらー、らーらー、らーらーらーら、このーままー♪」

「ハイハイ、ビルドビルド……というか、お前達知能指数が低くなっていないか?」

 

 予期せぬ混浴だった為、さっさと温泉から上がった俺達は、客室にあった浴衣を着て近くにあった売店で買った牛乳を飲みながら寛いでいた…………ちなみに俺はコーヒー牛乳派、ミカがノーマル牛乳派、ミュウちゃんとフェイがフルーツ牛乳派である。

 …………それで、俺のツッコミに対し部屋でゴロゴロしている二人はそのまま寝そべった体勢のまま返答してきた。

 

「えー、別に良いじゃん。最近は直感で感知した事件を解決するのに頭を使いすぎたしさ、今日はダルダルすると決めたのさ〜」

「そういう訳で、今日はお休みなのです〜」

「…………分かった、好きにしろ」

 

 どうやら完全にウチの妹二人はお休みモードらしいな。フェイもミュウちゃんの紋章の中で休んでいるし。

 まあ、最近は闘い詰めだったし今日一日ぐらいはそんな態度でも構わないだろう。

 

「それじゃあ、俺はこの旅館の中を散策してくるから」

「いってらっしゃーい」

「いってらっしゃいなのですー」

 

 そんなこんなで、俺は二人のだらけまくった声を背に客室を出ていった。

 

 

 ◇

 

 

 さて、そんな訳で特にやる事も無く暇なので天地風“らしい”この旅館内を歩き回っていたのだが……。

 

「ヒィィィ〜⁉︎ お、俺達は本当にPKからは足を洗ったんです!」

「いや、それはさっきも聞いたから……」

「やはり、念入りに潰さないと気がすまないと……! お、俺達をキルするのは構わないが、ここの旅館に迷惑を掛けるのはやめて貰おうか!」

「今この状況が一番迷惑を掛けていると思うのだが」

「えーっと、昔貴方とお二人は敵対していたかもしれませんが、今のこの二人はそれなりに良い<マスター>なので出来れば恩情を掛けてくれると……」

「………………ハァ……」

 

 余りにも理解を放棄したくなる状況に、俺は思わず頭を抱えてため息をついてしまった…………何故こんなカオスな状況になっているのかと言うと、まず俺が旅館の中を歩いていたらさっき冒険者ギルドで会ったモヒカン・ディシグマ&ボッチーと再会したのだ。

 まあ、そこまでは良かったのだが、こいつらは何故か俺の顔を見ると途端に怯え出すし、なんか一緒にいたこの旅館の店員さんには二人を許してほしいと懇願されるし…………俺はナマハゲとか荒御魂とかの類いでは無いんだが。

 

「とりあえず、そっちから仕掛けてこない限り俺からお前達に何かする事はないからいい加減に怯えるのをやめろ。…………というか、お前達にはそこまで怯えられる様な事はしていないだろ」

「え? 貴方達三兄妹は噂によるとPKには一切容赦せずに徹底的に痛めつけると聞いたんだが……」

「噂ではどれだけPKが泣き叫ぼうとも決して拷問の手を止めないと……」

「ちょっと待て、なんだその噂は」

 

 この二人から放たれたその話に俺は愕然とした…………いやまあ、それに関しては心当たりが無いことも無いんだが……。

 …………まさか、この二人が過剰に怯えているのはその噂が原因か? やれやれ、どう説明したものか……。

 

「とりあえず、俺はお前達二人にそこまでする程の悪印象を持っていないし、何度も言っているがこちらから何かする様な事は基本しないから」

「つまり、向こうから仕掛けられた上で印象が悪かった場合には容赦無く痛めつけると?」

「…………まあ、デンドロで二度と関わり合いになりたく無いと思う様な相手にはな」

「やっぱり!」

 

 だから、やっぱりじゃない! ここは一度懇切丁寧にこちらの詳しい事情を説明した方がいいか。

 

「とにかく! 俺達はこっちの事をチートとか反則とか言ってくるPK相手なら痛めつけもするが、別に『カップル爆発しろ!』とか言って襲い掛かって来る程度の相手にはそこまでしないから」

「…………えーっと、そもそもそう言うことを当たり前にやってるのが問題なのでは?」

「え? だって不死身の<マスター>相手にデンドロで二度と関わりたく無い場合には、もう相手の心を折るしかないじゃないか」

「ヒェッ」

 

 まあ、<マスター>には痛覚オフがあるし、一発逆転要素の<エンブリオ>もあるからな。実際には手足をへし折ったりスキルの発声を出来なくする為に喉を潰したり、後は痛覚オフでも呼吸困難の苦しさは消せない事を利用して死なない程度に肺を潰したりするぐらいだし。

 …………そう言う事を懇切丁寧に説明したら三人からはドン引きされた。その辺の悪役ロールのPKとやってる事はそんなに変わらないんだがなぁ。

 

「しかし、チートとか反則とか言われるのがそんなに嫌なのか?」

「まあな。少し<UBM>を人より多く倒したぐらいでそんな事を言われるのはイラつくんだよ。…………こっちだってそれなりに苦労しているのに」

「持てる者への嫉妬はMMOの常だからな。あまり気にする事も無いと思うが」

「噂されたり陰口を叩かれるぐらいなら、そこまで目くじらを立てたりはしないさ。…………それで、こっちをPKしようとするなら排除対象だが」

 

 どうやら、ちゃんと説明したお陰かモヒカンとボッチーもこっちを過剰に恐れる事は無くなった様だし、とりあえずこれで一安心かな。

 

「それじゃあ、俺は部屋に戻るから」

「そ、そうか…………今日は色々と迷惑を掛けて済まなかったな」

「申し訳ない」

「いや、分かってくれたならそれで良いさ。それじゃ」

「ゆっくりしていって下さいね」

 

 そう言って、俺は(多分)事情を分かってくれたであろう三人を背に自分の客室へと戻っていったのだった。

 

 

 ◇

 

 

「ただいま〜……」

「お帰り〜って、なんか疲れてるねお兄ちゃん。なんかあったの?」

「ああ、それはカクカクジカジカ……」

 

 あれかと、客室に戻って来た俺は二人に先程あった事を一通り説明した。

 

「ふーん、大変だったねーお兄ちゃん、ご愁傷様。…………しかし、私達の事ってそんな噂になってるのか」

「私達って基本的に身内でのプレイだけで他の<マスター>との交流がかなり少ないですし、掲示板とかも殆ど利用しませんからね。その手の噂に疎くなるのは仕方がないでしょう」

「まあそうなんだよな。話の分かる身内だけでプレイした方が楽だし」

 

 それに俺達の場合はミカの直感があるからな。事件が起きそうな時とかに説明する事が難しいので、その事情を知らない他の人間を誘いづらいという事もある。

 …………まあ、今回の件でもう少し他の<マスター>と交流を持った方がいいかなとは思い始めたが。

 

「まあ、その事に関しては気にし過ぎても仕方ないでしょう。基本今まで通り直接仕掛けて来る連中以外は無視で」

「噂なんてどうにかなる類いのものでも無いですし、今回の事も思い当たる事があったあの二人が過剰反応しただけでしょうし」

「それはそうなんだがな」

 

 …………畳の上で浴衣着て寝転がりながらゴロゴロしてる状態で言われてもなぁ……。

 

「とにかく〜、今日は休むと決めたのでゴロゴロするの〜」

「するのです〜」

「はいはい」

 

 まあ、この二人がこんな調子じゃしょうがないし、また明日で構わないかな。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

三兄妹:なんか色々面倒くさくなってきたのでお休みモード
・尚、自分達の才能の事は割と地雷原なので、そこを突かれると(相手が)酷い事になる。

モヒカン・ディシグマ&ボッチー:噂を真に受けた人達
・とにかく、こちらから仕掛けなければ安全だとは理解した(後、地雷を踏んだらヤバイ事も)


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