とある兄妹のデンドロ記録(旧)   作:貴司崎

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前回のあらすじ:ある日森の中で熊(ボス)に出会った。


それでは本編をどうぞ。


VS【亜竜血熊】

 □<ノズ森林> 【戦士(ファイター)】ミカ

 

『GUAAAAAAAAAAA‼︎』

 

 私は【亜竜血熊(デミドラグブラッドベア)】が振り下ろしてきた爪を()()()()()()()()、空いた懐に潜り込み【ギガース】で後脚をぶん殴った。

 

『GAAAAAA⁈』

 

 私が懐にいるのを嫌がった【亜竜血熊】は、両腕を振り回して突き放そうとするも、()()()()私はコイツから飛び退っていた。

 その隙にお兄ちゃんの《ハンティングアロー》が【亜竜血熊】に突き刺さる。

 

『GIAAAAAAAAAA!』

 

 攻撃されて怒った【亜竜血熊】はお兄ちゃんに向かっていくが、その進行ルート上に()()()()()()()私が予め置いておいた《スマッシュ》で殴り飛ばした。

 

『GAAAAAAAAA⁈』

 

 そうやって相手が怯んだ隙に私達は距離を取り、体制を立て直した。

 

(うーん、このままじゃジリ貧だね。ステータス差のせいでアクティブスキルを使わないとまともに攻撃が通らないし。……何よりHP高すぎ、これ削って倒すのは無理だね)

 

 実際、さっきからこの繰り返しで戦っているが、HPは3割程度しか削れていなかった。

 

(そろそろ体力と集中力がキツくなってきたし……お兄ちゃんの次のスキルをキッカケにして勝負を決めよう)

 

 そうして、私は息を整え次の攻撃……最後の交錯に備えた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □<ノズ森林> 【狩人(ハンター)】レント

 

(うん、相変わらずウチの(ミカ)はとんでもないな)

 

 そもそも、あれだけステータス差のある相手に真っ向から無傷で殴り合うなんて普通は不可能である。

 しかし、ミカは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事で不可能を可能にしていた。

 

(まあ、本気になったミカに当てたければ解っていてもどうしようもない攻撃をする必要があるしな。……とはいえ体力や集中力が上がる訳ではないし、SPもそろそろ限界、何より相手のHPが高すぎて削り合いじゃこっちが先に倒れるな)

 

 実際、目の前の【亜竜血熊】はまだまだ元気そうだ。

 

(狙うのは部位破壊、それも確実に倒しきれる頭部か……俺のスキル(ブリューナク)でどこまでやれるか…………仕方ない覚悟を決めるか)

 

 そうして、俺は次の攻撃……最後の交錯に備えた。

 

 

 ◇

 

 

『GAAAAAAAAAAAA‼︎』

 

 そしてついに、痺れを切らした【亜竜血熊】がミカに向けて突っ込んできた。

 これは……ステータスと体格差を活かしたタックルか! というか、後ろにいる俺ごとひき潰すつもりだな‼︎だが……! 

 

「うん、そう来るのは解っていたよ……《スマッシュ》‼︎」

 

 それをギリギリでかわしたミカが、すれ違いざまに()()()()()()()()()()()()()()にアクティブスキルを当てた。

 それにより、蓄積したダメージもあって体制を崩した【亜竜血熊】は、俺のすぐ横を転がっていった。

 

「お兄ちゃん‼︎」

「わかってる! 《空想秘奥(ブリューナク)》! 《ハンティングアロー》‼︎」

 

 そうして、俺の放った青白く輝く矢が【亜竜血熊】の頭部に突き刺さった。…………やったか‼︎

 

『GEEEEEAAAAAAAAAAAAA‼︎』

 

 ……やってなかったー! 

 そこには頭部から大量の血を垂れ流した【亜竜血熊】がおり、血走った目でこっちに突っ込んできた。

 

「ちっ! やっぱヘイトがこっちに移ったか……ほら、こっちだ熊公‼︎」

 

 とりあえず《瞬間装備》で短剣を取り出し、迎え撃つ姿勢を見せる。

 

『GAAAAAAAAAAA‼︎』

「《ダガーパリィ》!」

 

 俺は振り下ろされた爪を短剣の防御スキルで受け止め……きれずに、手に持った短剣と、とっさに盾代わりにした弓を砕かれて、そのまま吹き飛ばされていき、近くの木にぶつかった。

 

「ぐはっ! ……まあ、俺のステータスじゃこうなるか……だが役目は果たせたな」

 

 そう言う俺の目には、ようやく敵に攻撃を当てられてご満悦の【亜竜血熊】……の死角から接近してきたミカの姿が見えていた。

 

「囮役ありがとうね、お兄ちゃん! ……これで終わりだよ《チャージスマッシュ》‼︎」

 

 そして、ミカのチャージ時間に応じて威力を上昇させるスキルが【亜竜血熊】の()()()()()()()()()()()()頭部に突き刺さり、そのまま打ち砕いた。

 

 

 ◇

 

 

「あ〜疲れた。……ところでお兄ちゃん生きてる〜?」

「ああ、生きてるよ…………HP残り二割も無いけどな」

 

 俺は、急いでアイテムボックスから【ポーション】を取り出して飲みほした。

 そうしていると、ミカが手に“箱”を持って近ずいてきた。

 

「とりあえずおつかれ〜……あっ、さっき倒した【亜竜血熊】から宝箱が落ちたよ〜!」

「ハイハイ、お疲れ様……それはボスモンスターが落とす【宝櫃】だな。……さっきの戦いで武器が壊れたから、何か換金できるアイテムでも出ればいいんだが……」

 

 正直言って、これはかなり有難い。

 

「じゃあ早速開けようか?」

「いや、とりあえず王都に戻ろう。さすがにこれ以上の戦闘はキツイ」

「オッケー、私も今日はこれ以上の戦いはいいかな〜」

 

 そう言いながら俺達は王都に戻って行った。

 

 

 ◇

 

 

 王都の冒険者ギルドに戻った俺達は、クエスト達成の報告をしつつアイラさんに【亜竜血熊】と戦った事を伝えた。

 アイラさんは「冒険者になってまだ一日程度しか経っていないのに、もう亜竜級のモンスターを倒すなんて…………<マスター>とは本当に規格外な存在なんですね。…………しかし【亜竜血熊】が生息している場所は<ノズ森林>のもっと奥だったはずなのですが……人の血の匂いを覚えた個体だったのでしょうか」と言われた。

 また、ドロップアイテム【亜竜血熊の宝櫃】からは【亜竜血熊のコート・ネイティブ】と【怪力の指輪】が手に入った。

 この二つのアイテムは、アイラさん曰く「【亜竜血熊のコート・ネイティブ】の方は装備スキルでHPとAGIが増加し、更に装備者の索敵系スキルを強化出来ます……しかし、これを装備するには合計レベルが150以上必要なので、今のお二人には装備できませんね。また、売れば三十万リルはするでしょう。【怪力の指輪】の方はSTRを固定値で増加出来るアクセサリーで、装備制限もないのでお二人でも装備出来ますね。売った場合は二万リル程でしょう」との事。

 

「で、お兄ちゃん、この二つはどうする?」

「コートは売った方がいいだろう。装備出来ない物を持っていても仕方がないし……武器を揃える金も欲しいからな。指輪はどうする?」

 

 と、ミカに聞くと少し悩んでから。

 

「その指輪は欲しいかな。ああ、指輪分のお金はお兄ちゃんに渡すよ。私はそんなに装備にお金はかからないし」

「別に割り勘でもいいんだが……そう言うならありがたく受け取っておく」

 

 そして、俺達はアイラさんに紹介された雑貨屋で【亜竜血熊のコート・ネイティブ】とこれまでの狩りで手に入ったドロップアイテムを売り、その金で装備と消費したアイテムを買い込んだ。

 

 

 ◇

 

 

「いや〜初日から大変だったけど楽しかったね〜お兄ちゃん」

「そうだな……最初はネタのつもりで買ったゲームだったんだがな。確かに楽しいゲームだった」

 

 まあ、()()()()()()()()()()()()面白かったな…………あまり深入りするのは良くないかも知れないが……。

 

「うん、そうだねー…………まあそう言うスタンスの方が楽しめるかな〜」

「そう言う事だ、リアルよりこちらを優先する訳にもいかないしな。それじゃあ今日はもう終わり(ログアウト)だ」

「わかった、また明日もやろうね〜お兄ちゃん」

 

 そうして、俺達の<Infinite Dendrogram>初日は終わった。




あとがき・オマケ、各種オリ設定・解説

妹:天災児の本領発揮

兄:やっぱミカはスゲえよ……

《ダガーパリィ》:短剣のアクティブスキル
・短剣による防御時自身のDEX値を防御力に加算する。
・防御成功時、低確率で相手を極短時間【硬直】状態にすることがある。

《チャージスマッシュ》:【戦士】の打撃系アクティブスキル
・事前にチャージした時間に応じて威力を上昇させる。

亜竜血熊(デミドラグブラッドベア)】:今回のボス
・ステータスはHP、STR、AGIが高い。
・特徴的なスキルとして、血の匂いを覚えた生物の同種族を探知する《血臭追跡》がある。
・そのため匂いを覚えた種族を積極的に襲う性質がある。
・人の匂いを覚えた【亜竜血熊】が人里まで降りてくることがあるのでティアンからは危険視されている。

アイラさん:<マスター>の規格外さに実はとても驚いてる。


これで第1章は終わりになります。
この様な駄文に最後まで付き合っていただきありがとうございました。
次回の更新はまだ未定です。
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