ソウゴはアナザーキカイの軍勢、いや群体を切り抜けることに成功した。
とはいえ、無傷で突破できたわけではない。
追いすがる彼らを幾度となく振り払い、そして自身の『民』をできるかぎり救いながらの戦いは、熾烈を極めた。
いずれ時を統べる王といえど、今はまだその力は十全とはいえなかった。
――いや、むしろ喪いつつある。
使用したウォッチのうち、いくつかはシノビのウォッチ同様に、突如としてその機能を止め、ブランクに戻った。まるで内包されていた力が、時間が、どこか別の場所へと引きずり込まれるように。
負傷した肉体を引きずり、転がり込むように『クジゴジ堂』へとたどり着く。
こんな異常時においてもこの店は、この家は……まるで時から切り離されたように平穏そのもので通常営業だ。そのことに安堵さえ覚える。
「ど、どうしたのソウゴ君! 誰かとケンカでもしたの!?」
店番をしていた叔父の順一郎が、服も肌も裂傷だらけのソウゴの姿を認めるなり、慌てて駆け寄った。
「え、ええと……あ、そうだまず救急箱救急箱!! どこにしまったっけかなぁ?」
玄関先にへたり込むソウゴを担いで店の中に座らせると、おたおたとした様子のままに店の中を引っ掻き回す。そんな叔父を、ソウゴは押し留めるように手を突き出した。
「叔父さん。誰か、ここに来た?」
「え? 誰かって、誰?」
息を整える間もなく尋ねるも、その反応は薄い。救急箱を探すことに気を取られているというのもあるだろうが、来客をないがしろにできる人でもない。
つまりライセは、まだここへは来ていないのか。
――何か、ズレている。間違っている。
まるで時計の午前と午後とを勘違いするように。のぼりゆく旭と、沈みゆく夕陽を誤認するように。
上手く言葉にはできないが、ずっと付きまとっていた違和感が、ここに来て再燃した。
それも踏まえて、何が起こっているのか確かめなくては。
断片的でも良い。微細でも良い。とにかく情報を寄せ集めて皆と話し合って整理して、それから彼と、来海ライセを名乗ったあの少年と、もう一度話をしなくてはならない。
……会わなくては、いけない。
「じゃあ、ゲイツとツクヨミは?」
「あぁはいはい、ちょっと待っててね」
気軽に二つ返事。順一郎は箱を抱えたまま奥間の居住スペースへ行こうとして……その足を、止めた。
「叔父さん?」
ソウゴは怪訝そうにその背を覗きこんだ。
すると叔父はソウゴに振り返った。苦しげに。悩ましげに。
そして箱を適当な畳の上に置くと、彼はひどく言いにくそうに口を開いた。
「あーと……そう、だね。いやぁ、やっぱり僕も歳なのかなぁ。ほら、この間もお客さんの注文を取り違えちゃったことあったし。あぁいや最終的にはどうにかなったんだけどさ。やっぱもうちょっとしっかりしないとダメなのかなぁ、なんて。ははははは……」
叔父はもごもごと言い訳めいたことを続けていた。愛想笑いを張り付かせていた。
「――何が言いたいの?」
そんな彼の様子に、ざわざわとソウゴの胸で何かがうごめく。
直感が、報せようとしている。
知らずその語調は、剣呑な問い返しとなってしまっていた。
順一郎はそんな彼に、申し訳なさそうに尋ねた。
「ごめん、そのゲイツとツクヨミって…………なに?」
next episode:Who Wants to Be a destroyer?『2068』
ゲイツが消えた。
ツクヨミも消えた。
そして見えざる魔手はとうとうウォズにまで……
決して見たくはなかったアナザーライダーたち。それに抗するソウゴは、終わりが見えず迷走しつつ、ある仮説へとたどり着く。
そしてライセはソウゴの影を追う。
そんな青年たちの前に、ある男たちが現れる。
仮面ライダーの力を取り戻した男。
かつて仮面ライダーだった男。
彼らが導いたのは、一つの世界。一つの可能性。一つの時代。一人の男。一つの結末。
そして……すべての真実。
残酷な二択、知れ切った問い。
それらを前に、青年は慟哭とともに答えに向かって踏み出す。