それは、大いなる流れの間隙に生まれ出でた。
偶発的に生じた存在ではあった。命と呼べるかどうかさえ分からない。その段階では、自我があるかどうかさえ曖昧で、どう定義づけていけば良いのかさえ判然としなかった。
だが、生まれたモノとしての義務を果たすべく、それは蠢動し始めた。
蚕のように這いながら、廃棄された周囲の事物を、現象を飲み込んで肥大化しながら、前進を続ける。
だがそれを挟み込む大いなる流れは、その誕生を拒絶する。
増大していく存在を阻むように、波濤がせめぎ合い、それを削っていく。それこそ、生まれたばかりの身体がふたつに引き裂かれてしまうほどに。
それでもそれは、前進を止めることをしない。
引き戻すべき過去などないことを、それは知っていた。先に待ち受けるものが何物か、結末は知らない。
だが0の地点で立ち止まっているよりはよっぽど良いと思った。
遡上する鯉のように、産道をくぐる嬰児のように。
大きく躍動をつけて、ただ混沌の闇と力の渦の狭間で、変化を求めてあがく。
そしてその一念に感応するかのように、あるいはまったく別の外的要因によるもか。
奇跡は訪れた。
差し込んだのは一条の光明。輝きや、太陽というものを認知できないそれは、だがそこに運命を感じ取って、拓けた道を進んで追いすがった。
やがて光は一瞬の収縮のあとで拡散した。それを覆い包んだ。抗しがたい力強さでもって、それに肉付けし、意味を名づけ、名をつけ、記憶を植え付けた。
――『彼』を祝う者は、誰もいない。
この世に産み落とされるとしても、きっとその仔を知れば誰もがその生誕を呪うことだろう。
それでもその瞬間、たしかに彼は風を感じた。ぬくもりを感じた。力と勇気でもって踏み出せば、言葉にし尽せないほどの多くを得ることを学んだ。
そして最後に、彼は自由を知った。
「この本によれば」
語り部は自身の本を紐解く。
常盤ソウゴには時の支配者オーマジオウとなる未来が待っていた。
その前に立ちはだかったのは、タイムジャッカーのスウォルツ。彼は自身の野望のために、アナザージオウⅡ、加古川飛流を扇動し時間を書き換えた。
なんとか彼を倒した我々だったが、その隙を突かれて門矢士はディケイドの力を奪われてしまう。
ついに野心を剥き出しにしたスウォルツの計画はおそらく最終段階に入りつつあった。
時間を巡る熾烈な争い。世界の終末まであと数ページ。
これはその直前に挟まれた、空白の一ページです……。