RIDER TIME:仮面ライダーミライ   作:大島海峡

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episode4:そして来る星海0000(3)

 ライセを伴って王宮を後にしたソウゴだったが、現状として対策案はまだ見つかっていない。というかそもそも、どうやって現代に帰るかという算段さえ立っていないのだ。

 かと言って、格好をつけて出て行った場所にまたトンボ帰りするというのも、締まりの悪い話だ。

 

「うーん、主水のマシンって残ってるのかな……というか、俺にとっては型落ちだから、あったとしても乗れるかどうかもわかんないけどさ。ライセはどう思う? ……ライセ?」

 

 俯きがちに、手足を引きずるように、見えない鎖に繋がれたように後ろを歩いていたライセが足を止めたのは、ソウゴが顧みた瞬間だった。

 

「……なんで」

 垂れた髪の下で重く唇を動かして、極小の声量で呟いていた彼へと、ソウゴは反転して歩み寄った。

 

 そして、彼の感情は突如として暴発した。

 

「なんで、俺を責めない!?」

 ソウゴの襟首を掴んで捻り上げ、悲痛な声とともに睨みつけた。

 

「俺がすべての元凶だっ! 世界を破滅させて、お前の仲間も消した!! なのに、なんでお前は、何もしない!? そんな笑っていられる!? 魔王の力でも何でも使って俺を消せば良いだろっ!、なのに、なんで……お前は……そんな、笑っていられる!? なんで……そんなに……優しいんだ」

 

 ライセはソウゴの服を掴んだままに、膝から崩れ落ちた。

 たしかに、普通に考えてみれば、ライセこと『無』が事の元凶ではあるだろう。そして、ソウゴの立場からしてみれば、あくまで不滅かつ端末でしかないと言えども、目に見える恨みをぶつけられる対象なのだろう。

 

 だがそれは、彼の目指す王道ではない。

 そもそも、恨みなどあろうはずもない。

 

「……ライセ、覚えてる?」

 そっとその肩を支えて立たせ、ソウゴはそう尋ねた。

 

「俺と最初に会った時、言ってくれたよね」

「……何を?」

 

 何を自分は言ったのか。あるいは今ソウゴが何を言わんとしているのか。

 そのどちらかを、あるいはどちらとも問わんとしていたライセに先んじて、ソウゴは答えた。

 

「『俺たちにとってあのバス事故は辛いことだったけど、すべて悪いことじゃなかった』って」

「けどそれは、偽物の記憶だ。俺はお前の知る来海ライセじゃない」

 

 その事実をライセが認め、重く冷たく突きつけたとしても、ソウゴの笑みと気持ちは揺るがなかった。

 一度ライセから身を離す。一歩前に出て進み出て、その背を見せつつ歩き出す。

 

「俺にも仲間が出来たけどさ、やっぱみんなに暗いところは見せたくないし、あと飛流とはまぁ……色々あってそういうことが話せなくて、だから」

 

 珍しく歯切れ悪くソウゴは言葉と理屈を紡いでいく。

 だが、この感情はきっと理屈ではないし、説明のつかないものだ。

 

 だからいっそ割り切って、ソウゴは満面の笑みで身を翻し、自分の率直な気持ちをぶつけた。

 

 

「嬉しかったんだよね! あの事故のこと、乗り越えられるって言ってくれる誰かがいてくれてっ!」

 

 

 たとえそれが本当のことでなかったにせよ、たとえ彼自身が自分の知るライセでなくとも。

 たしかに常盤ソウゴは今、目の前にいる友の言葉に救われたのだ。

 

「それで十分だよ。君を信じるのには」

 

 屈託ない笑顔を称えたままにソウゴは言い切った。

 目を見開いてその言葉を聞いていたライセは、ぐっと唇を噛めしめ、何か内面的なものが突き出るのをこらえるように顔を伏せた。

 ソウゴはふたたび歩き出した。

 

「おい……どこへ行く? どうするつもりだ?」

 

 ライセは心もとなさげに、問いを重ねる。

 ――この絶望的な状況下で。

 本当ならそう続けたかったつもりだ。

 

「うーん、わかんないけど、なんかいけそうな気がするんだよね。ほら、良いアイデアがパッと思いつくかもしれないし」

 

 一応は考えるそぶりをしながらも、ソウゴはまっすぐに、自分の直感を伝えた

 それは捨て鉢にになったわけでもない、虚勢でもない。おのれの内の中にある確かな手ごたえだった。

 

「さっきゲイツにも言ったけど、未来はまだ決まってない」

 

 きっと、この状況は好転する。なんとかなる。

 いや、なんとかするのだ。

 他でもなく、王様であるソウゴ自身が。

 

「それを決めるのは、今この瞬間を生きる俺たちだよ、ライセ。だから君もここから先を、自分自身で決めて未来を選んで進んでいくんだ」

「自分なんて、俺にはない。どこへ行けばいいのかさえ、わからない」

「そうかな? 本当に何もなかったら、怒りもしないしそんな風に悲しまないよ」

「だからそれは、あくまで来海ライセの感情を真似ただけで、俺は」

「そういう難しい話は、せめて一歩踏み出してからじゃない?」

 

 ソウゴは歩みを止めない。

 ライセは足を留めたままだったが、あえてそれを待つこともしなかった。

 

「俺は先に行く。自分の夢見た未来にたどり着くために。……だからライセ、君の答えがちゃんと見定められたら、その時にまた会おうっ」

 

 自分の目に、たしかに映る王道。

 光り輝くその一本道を、彼はひたすらに進んでいく。

 後ろで見守る友のためを、導くためにも。

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