そして誰もいなくなった。
唯一残ったのは、最強の宇宙の覇者のみ。数的不利をねじ伏せた勝者に対する玉座や称賛など用意されていようはずもなく、朽ちた荒野が広がるのみだった。
「……やりすぎたか」
磊星のぼやきに答える者はない。むなしく響くだけだった。
だが言葉ではなく、その呆れに手でもって応える者がいた。
「ぁん?」
至近でベルトを掴んで放さない。
脚で地を踏みしめ、唇を噛み、不動の覚悟でもって、彼の力を得んと欲する。
無礼に対する怒りはなかった。代わりに「それもそうか」という奇妙な納得はあった。
何しろ、自分と同じ名を持つこの若者が滅んでいないからこそ、虚無の荒野はなお存在する。
――来海ライセは、まだ偽りの生にしがみついていた。
「ようやく届いたってわけか」
彼らを犠牲にその手が銀河に。
喪って初めて、彼らの想いが心に。
「だが今更どうだってんだ? そもそも、空っぽのお前がどうしてこいつを求める? すでに死んだ者たちの
「――それでも、俺の
言い切った。
いまだその眼底に迷いはくすぶっている。先のことなど定まっていない動揺を見せる。
それでも青年は声を振り絞って全力で答えた。真正面から斬り込んで、ぶつかってきた。
言の葉には、たしかに魂の重みを感じさせた。
「たしかに俺はニセモノだッ、言葉だって記憶だって、別の誰かから譲り受けた! だけど、それでもっ」
来海ライセは受け入れた。自分がまがいものだと。
だが目をそらしたまま諦めるのではなく、過ちを正しく認めてそれでも前進しようという意志を、掴んだままの手から感じ取る。
「俺自身が何も持ってなくても、彼らの見られなかった未来を創ることはできる! その意志を、明日へつなぎたいっ!」
それはライセが腰に巻いたベルトのハードウェアがギンガに反応したためか。あるいは芽生えた意志に感応してか。
磊星とライセの接触面が光芒を放つ。宇宙の力が彼の、もうひとりのライセの手をつたい、ベルトのバックルへと流入していく。その形を、まったく別の性質のものへと変容させていく。
「これは……ッ!?」
磊星は驚愕を隠さず声にした。
「それがっ、俺がただひとつ持てるもの……未来に託す
――それはまさしく、虚無より有が、偽より真が、暗黒より光が、誕生した瞬間であった。
その奇跡を目の当たりにして、肌身で体感し、ギンガはライセと額を突き合わせるようにして快笑した。
「面白ェ! だったらやってみせろ!!」
その高揚に応じてかは推し量るべくもないが、ますます輝度は極まっていく。
その美しさたるや、彼が巡り、喰らってきた星々にも負けないほどのものだった。
彼の心とやらの求めに応じ、その身を変えていく。
シノビでもハッタリでもクイズでもキカイでも、ましてやギンガでもない、独自の姿へと。
その願いが仮面を造る。そのために、友人たちから受け継いだ言葉を今解き放つ。
「変身ッ!」