RIDER TIME:仮面ライダーミライ   作:大島海峡

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冒頭の謎の文字郡は別にミスではなく、一応意味のあるものとなっています。
多分完全に復元できないと思いますが、作品全体のネタバレですので、何らかの方法で再変換する場合はご注意ください。


episode1:ニンジャ、再臨『2019』(2)

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 ――来海ライセ、は

 ――仮面ライダーである。

 

 

 

 『2019年』、彼は正義のため、人々の自由と平和のため、戦い続けてきた。

 今日も彼は、異変を聞きつけて愛機を駆って、現場へと急いでいた。

 

 渋谷に、隕石が降り注ぐ。

 その衝撃でスカイタワーの先端が崩落し、地表へと落下した。

 塔の中から、その根元の商店から、逃げ遅れた人々が這い出て、思い思いの方向へと散っている。

 

 もっとも、彼らが逃げ惑っているのは事故の衝撃のためではなかった。

 その隕石の破砕した跡地から現れた、成人ほどの大きさと自由のきく手足を持つ緑や白のサナギのような生物。それが人々を襲い始めたからだった。

 

 そしてその浸食は収まることを知らず、ついには近隣のショッピング街にまで広がっていた。

 

 そのフレンチレストランは、外観のセンスの良さや山海の味を存分に活かした良心的な価格の料理、何よりソムリエとして確かな資質を持つ店長により厳選され、管理されたワインはそれらに買い物帰りの主婦や、ゲストを歓待する会社員、デート帰りの恋人たちなど、幅広く支持されていた。

 

 その人々の安らぎの場も、この一時で地獄へと変わった。

 殺到する妖蟲たちを前のして客はテーブルの下を這うように、あるいは厨房を構わず突っ切って裏口から逃げていた。

 

 最後まで居残ったのは、その店長だった。

 騒動に巻き込まれてテーブルから落とされようとしていたワインのボトルを掴んで別のテーブルへと戻し、空いたその手で今度は白い虫の爪を掴んで握りしめた。捻り上げ、蹴り飛ばした。

 

「店長……!? 早く逃げてください!」

「僕のことはいい! 君は早くお客様を安全な場所へっ」

 

 彼の身を案じつつ物陰に隠れていたギャルソンに、普段は決して出さない強い語気で指示を飛ばす。そうして渾身の力でカーペットを踏みしめながら、数体の怪物を巻き込みながら、真正面から外へと向けて押し返す。

 

 店先まで引き下がらせた彼らを、最大限の力で弾き飛ばすと、空いた両腕で掌底を打ち出し、そのうちの一体を撃破した。

 体勢を立て直すべく後退した彼らを隙間から、その首魁と思しき、異形の怪人たちが現れた。

 

 隣接するフルーツパーラーの壁を破壊しながら現れたのは、枯れ木に取り憑かれた落武者と言った様相の刀を持った者。

 スカイタワーの陰から姿を見せたのは、ベルトのバックル幼虫を貼り付かせた、赤いカブトムシ。

 

 それぞれの部位には

〈GAIM〉

〈KABUTO〉

 と記されていた。

 

 そのうちの後者、『カブト』という怪人が自身の右腰を叩いた次の瞬間、その姿が消えた。

 いや、そう見えた。

 その彼の、超人的な動体視力をもってしても捉えきれない高速で動くその怪物は、店長のすぐ横で足を止めた。

 体勢を立て直すよりも速く、ボディーブローが脇腹を襲う。

 

 吹き飛んだ店長はオープンテラスのテーブルチェアを破壊しながら落下した。ダメージによって完全に立ち直れ切れていない彼の前に、『ガイム』が大剣を大きく振りかぶった。

 

 その時、その間一髪のタイミング。

 ホンダのVFR800Fが、駆動音を響かせながら、その合間に割り込んだ。

 『ガイム』の斬撃を後輪で受け流しながら、膝をするほどに車体を傾け、足をつけて止めた。

 

 ヘルメットを脱いで放って、青年、来海ライセは好青年然としたその素顔を外気に晒した。

 

「大丈夫?」

 

 見知った調子でライセは彼へと手を差し伸ばす。予期せぬ来援にしばし面食らったような彼だったが、つかみ返すその時点では、一切の迷いも見せなかった。

 

 

 

 店主を助け起こした青年は、肩から腰にかけて巻いていたバックパックを解いて、中から奇妙な形状のベルトを取り出した。左右にソケットのついた、黒いバックル。それを腹の前に来るように一息に回すと、その手にひとりでに、デバイスが転送されてきた。

 手裏剣のような、風車の形状。紫と銀の特殊合金を組み合わせてできたそれを持ち上げた瞬間、

 

〈出番か?〉

 

 ……などという声が、頭の中に響いてきた。

 軽い頭痛にも似たわずらわしさに顔をわずかにしかめつつ、それをバックルへと組み合わせた。

 

「変身!」

 鳴り響く和風なテイストのシークエンス音を打ち切るように、帆船の操舵手のように、両手でつかんで手裏剣を回す。

 

〈誰じゃ? 俺じゃ? 忍者! シノビ! 見参!〉

 

 背後で組み上がった巨大なガマのロボットが吐き出したパーツが、ライセの身体を覆っていく。

 最後に煙となって消えたそのガマが残したマフラーが首に巻かれ、煙が薄らいだ時には仮面の忍者が、仮面ライダーシノビに扮した来海ライセが立っていた。


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