仮面ライダージオウ、カリスアーマー。
その異形の黒鎧をまとった姿を見れば、戦端において消滅したウォズはなんと反応し、祝福しただろうか。このフォームと
その答えが出ないままに、ジオウは新たな力をもって敵陣へと殴り込んだ。
鋭く研ぎすました手刀を左右に旋回すれば、そこに疾風の力が宿り、リーチを伸ばしつつ敵の反抗の軌道を逸らす。
腕力それ自体にも勢いがついて、敵に触れた瞬間爪を立て振りかざせば、どのような装甲でも切り裂いた。
感じる力のままに我が身に念じ、高々と飛翔する。空中で翻し、腰のバックルを回す。
〈フィニッシュタイム! カリス! スピニング! タイムブレーク!〉
パージした肩の双弓が、左右一対の鎌となってソウゴの右手に収まった。
それを地上へと投げつけると、黒い旋風となって敵の一角を切り崩し、掃討していく。
その空いたポケットに降り立ったソウゴを、第二波が歓迎する。
赤と黒の異形の騎士。
アナザー龍騎。
アナザーリュウガ。
相通じる意匠を持つ双竜は、その手に嵌め込まれた竜の
〈クローズ!〉
だがソウゴの方もまた、次なる一手を打つ。
ウォッチを起動させると、龍騎士の甲冑がジオウと怪人たちの間に展開された。
拳を打ち鳴らすポーズをとったアーマーだったが、火球が直撃して飛散した。
――否、破壊されたわけではない。
散ったパーツは駆け出した素体に戻ったジオウのスーツを覆い込む。
青い装甲を熱く燃やす炎の紋様。
肩には二つに割れた横向きの飛龍と、ふたつの青いボトル。
〈アーマータイム! Wake Up Burning! クローズ!〉
ジオウ・クローズアーマー。
今この王道を踏み出すことのきっかけとなった仮面ライダーたちの、片割れ。
その男、万丈龍我の愚直な闘魂を宿すがごとく挑みかかったソウゴの眼前に、接近戦に切り替えたアナザー龍騎が、そしてアナザーアギトが立ちはだかる。
その両者を腕で抱き込むようにして肉弾戦に持ち込んだソウゴは、蒼炎を孕んだ掌底をもって敵を弾き飛ばしていく。
〈フィニッシュタイム! クローズ! ドラゴニック! タイムブレーク!〉
紅蓮を帯びた、のっぺりとした蛇とも竜ともつかないエネルギー体が、腰を沈めたジオウの脚部に
低く飛び上がったソウゴは、その炎脚をもってアナザー龍騎を、そのくり出した曲刀ごと刈り取った。
着地と同時に腰をひねり、背後に迫っていたアナザーアギトを蹴り穿つ。
だがアナザーリュウガは、その余波余熱を、自身の前に展開した鏡片の中に吸い取っていく。
倍化してリターンしてきたその蒼炎が、ジオウの全身を包み込んだかに見えた。
〈アーマータイム! レベルアーップ! ゲンム!〉
だがすでにソウゴがまとっていたのは別の強化装甲だった。
なぜかアナザーオーズこと
しかしそのジオウゲンムアーマーが現れたのは、大火の中からではなかった。
アナザーリュウガの頭上、紫紺の土管が前触れもなく伸びて、そこをくぐり抜けてソウゴはキックを見舞った。
当たる。ダメージが通る。
アナザーリュウガの厄介な点は二つ。一つには反射能力。与えたダメージが即時返ってくるという特性を、この妙な転移能力でしのぎ切る。
もう一つには、基となったライダー自体がすでに消滅した時間軸のライダーであるということ。ゆえに打倒できるのはジオウⅡ以降のフォームとなるわけだが……そのアナザーライダーのルールはこれらには適用されないことは初戦で判明している。
〈フィニッシュタイム! クリティカル! タイムブレーク!〉
着地したソウゴの眼前に、数秒前の自分の胸像、そのキックが迫りくる。
だがそれに対抗するべく伸びた土管の口が、それを飲み込んだ。反対に打ち出された写し身の弾丸が、またもリュウガに打撃を加える。
鏡像が再度生まれ、またそれが土管に呑まれる。
転写、転移、転写、転移、転写、転移……
際限のないループがアナザーリュウガにダメージを蓄積し、やがて爆散にまで至らしめることに成功した。
だが、それでも破滅は止まらない。
雲霞のごとく、物量がひたすらにソウゴを追い詰めていく。
「だったら、これだ!」
〈ナイト! アーマータイム! アドベント、ナイト!〉
蝙蝠の甲高い鳴き声が、どこからともなく聴こえてくる。
風の流れが変わる。ソウゴがその流れに飛び込むと、外殻と螺旋がその身を包み、旋風の力を得る
〈フィニッシュタイム! ナイト! ファイナル! タイムブレーク!〉
完全に取り囲まれる前に、ソウゴを抱く風圧は錐のように鋭く力を増して、敵中を一気に突っ切る。
その軌道上にあってハンマーを振りかざそうとしていたアナザーキバを難なく貫通したが、そこでエネルギーが急速に失われつつあった。
勢い余って横転したジオウの身体から、蝙蝠を意識したデザインのナイトのアーマーが泡となって消滅する。
その反動のように、歪んだ闇の騎士が虚空から浮かぶように像を揺らめかせて現れた。
その『アナザーナイト』だけではない。
アナザークローズ、ゲンム、カリス。
人面人骨を無理やりパーツとして当てはめたかのようなおどろおどろしいサブライダーたちが、虚より浮上して、代わりに自分の力が失われていくのを感じる。
ジオウとして集めるべき枠組みから外れたウォッチであれば、あるいは力は吸収されないのかと思っていたが、そう甘くはいかないらしい。
そもそも、何をどう倒せば良いというのか。
これは企図せず矛盾を孕んでしまった世界が引き起こした誤作動。善悪を超えた滅びの現象だ。
力を行使してもそれに応じて敵は力を増していき、討つべき悪の親玉というものなど存在しない。
――解決するすべなど、どこにも、ない。
その無情なまでの現実を目の当たりにして、心を折らないまでも、膝をつきそうになる。
「これまで、なのか……!?」
思わず独語がこぼれた、その直後だった。
光の波が足元を満たす。
それをゆったりとした足取りでかき分けて、ソウゴの背の向こう側から『彼』が現れた。
――還ってきた。
時を超え、世界の壁を越え、暗い深海の向こう側から。
泡のように淡く、音もなく、柔らかく。
「ごめん。待たせた、ソウゴ」
借り物ではない信念の強さを、確固たる軸のようなものの存在を感じさせる目。
その双眸を細めて、彼は……来海ライセは微笑んでソウゴを守るべく彼の前に立った。