RIDER TIME:仮面ライダーミライ   作:大島海峡

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すみません。昨日誤爆した分です。
あらためて書き上げたのでその時のことはどうか忘れてください。


last episode:仮面ライダーミライ(5)

 ふたつの未来は、撃ち出した拳を重ねるようにして組み合った。

 ライトのように黄色に輝く眼。仮面の奥の虚ろな窪。それが互いを障害と見なし視線を交わす。

 

 示し合わすように、鏡のごとく、彼らの腰が大きく捻られた。

 互いの回し蹴りが頭を超え脇下をくぐり抜け、そのポジションを入れ替える。

 

 だがライセの攻めはまだ続く。

 極限まで姿勢を低めて水面蹴り、それをかわすアナザーミライを側頭部目がけて、跳ね上がった爪先が飛んだ。

 避けられた。だが終わらない。軸足を切り替え、跳躍。独楽のように、あるいは灯台の、海路を照らし出すライトのように、光輝を帯びたその踵がアナザーミライの頭部を打った。

 

 つんのめるアナザーミライだったが、反射的に伸ばした脚が、ミライの胴部を衝き、吹き飛ばした。

 

 開いた間合いを埋めるように、アナザーライダーたちがなだれ込んでくる。

 ライセはためらわずにその群魔の中に、飛翔とともに我が身を踊り込ませた。

 

 右を蹴る。

 左を蹴る。

 そして正中を蹴り穿つ。

 

 宙で三体のアナザーライダーを蹴って昏倒させたミライは、空いたスペースに降り立って正拳を二発、放つ。アナザーダブルの攻撃をその肉体ごと防ぎ止め、ふたたび回転蹴りでアナザーオーズの爪を弾く。

 

 ロケットで右腕に武装して飛びかかったアナザーフォーゼを対空の構えでもって蹴り防ぐ。

 

 だが、そのフォーゼが放ったランチャーの乱射がライセの身体を爆炎で包む。

 

〈Follow your ゴーカイ!〉

 

 その爆炎を突きつけて、スパナが空へと向かって投げられる。

 それが再び炎に沈んだ瞬間、内側から冷気が放出された。またたく間に鎮火した先にいたのは、両の脚に氷霧をまとわせた仮面ライダーミライの屹立した姿だった。

 

 ロケットを旋回させて無理やりな機動をもって差し迫るアナザーフォーゼを、爪先をにじり寄せてライセは待ち構える。

 

「『キカイデハカイダー』……!」

 

 ソウゴも知る必殺技めいた言葉をつぶやいたライセは、飛び蹴りによってフォーゼを迎え撃つ。

 直撃を食らったアナザーライダーは大きくバランスを崩して失速し、地面に落下と同時に周囲を巻き込んで、文字通り破壊された。

 

「はっ……結局潰された未来にすがるしかない、出来損ないの仮面ライダーが!」

 

 敵中の奥で嘲りが聞こえる。

 だがライセはそれを無視する、行動をもってそれを否定すべく、自身のバックルに指をかけて回転させた。

 

〈Follow your Rising!〉

 

 ベルトのレンズが、虚空に光を照射する。

 そこに浮かび上がったのは、まるでタイトルロゴのように誇張された

 

 

 

〈仮面ライダー01(ゼロワン)

 

 

 

 という文字。ソウゴの知らない、ライダーの名。

 それが光となってライセの手中に落ちると、黄色い鍵、あるいはPCの基盤のようなアイテムへと変わる。

 

 それをまるで慣れたような操作で顔の横で掲げると、

〈Jump!〉

 という音声とともにボタンを押して展開させる。

 

 するとその鍵が、別の物体へと拡張される。

 アタッシュケースを想起させる、独特の武装。その側面をもってアナザーオーズの爪撃を防ぎ、

〈Bladerise!〉

 先端から展開した剣刃をそれへと叩き込む。

 その手元には、突如虚より浮いて現れた、赤い鍵が装填された。

 

〈Tigers ability! Chargerise! Full charge!〉

 

 アナザーオーズが飛蝗めいた跳躍力を発揮して、ライセの頭上を狙う。

 ライセは剣に炎を纏わせ、十字を切るように上下左右に大きく振り抜いた。

 

 フ

 レ

 イ

 ミ

 ン

 グ

 カ バ ン ダ イ ナ ミ ッ ク

 

 獣の咆哮が爆炎に轟く。

 その放熱の余波がアナザーミライの足下をも焦がす。

「やれっ!」

 低く呻きながらアナザーミライが第二波、アナザー電王とアナザーゴーストを投入する。

 

 ライセは天球を二度回転させた。

 

 

〈Follow your 覚悟! Follow your Strike!〉

 

 空中に映し出されたタイトルロゴが光となり、眼球となり、カードとなる。眼球のアイテム側面のボタンを押し、

〈Strike form〉

 カードを、自身のベルトに読み取らせる。

 

 それらが、二振りの大剣へ換わった。

 青鬼めいた顔のついたものと、鍔元に眼玉の刻印のついた幅広の刃肉を持つもの。

 それらを掲げてライセは新たなアナザーライダーたちを迎え撃った。

 

 10・9・8……

 カウントを刻むように異なる力のライダー二刀流でもってアナザー電王の投げは成った双鎌を弾き返し、肉薄して寄生されたカタツムリにも似たその角を突く。

 

 7・6・5……

 背後に忍び寄ったアナザーゴーストの気配を察知し、すばやくその胴を払いながら足を擦るようにしてスライドする。

 

 4・3……

 アナザーダブルとともになお追いすがるゴーストを移動しながらいなす。

 

 2・1……

 挟み込むように左右に分かれたアナザー電王とアナザーゴーストが、猛攻を仕掛ける。

 だが、その目線の先から、ミライの姿は霧、あるいは幽霊のようにかき消えた。

 

「カウント……0ッ!」

 刹那。眼の紋を虚空に描いて現れたミライは、彼らの頭上から大上段で斬りかかり、袈裟懸けに振り抜いた。

 破壊したアナザー電王たちから生じた爆風を返す刃で振り払い、視界を開ける。

 

 だがその先には、顔がひしゃげた事故車のような

 ――ソウゴの見るところ、おそらくはアナザードライブ。それは何種類もの攻撃的な形状をしたタイヤを連射し、ライセとその一帯をふたたび光と熱とで制圧した。

 

 ――だが、

 

「『パーフェクト・ウェポン』……!」

 

 ドーム状に展開されたエナジーフィールドが、ミライを護っていた。

 

〈Follow your NEXT!〉

 その中で両手の剣を解放したライセの手に、黄色と黒のミニカーが握られていた。

 それを手首の上を走らせるような所作をすると、

〈NEXT!〉

 という音声とともに、彼の腕を離れたアイテム目がけ蒼雷が降り注ぐ。

 中から創出されたのは、青いラインが奔る漆黒の自動車(マシン)。それはアナザードライブを跳ね飛ばし、一直線に駆け抜けて敵陣に穴を穿つ。最奥にいるアナザーミライへと至る。

 

 だが、アナザーミライがそのフロントに触れた瞬間、それは泡のように霧散した。

 

「無意味無意味無意味、このような吹けば飛ぶ幻を積み重ねたところで……!」

 

 その穴が埋められるより先に、防壁を解除したライセは前進した。

 翡翠色の暴風を伴って、アナザーダブルがその進路に先回りする。

 

〈LUNA! TRIGGER!〉

 

 ステンドグラス、あるいは地上絵のようなドライバーに触れた四面の悪魔の体色が一瞬、黄色と青色に二分される。

 

 手に生じた悪魔じみた造詣の銃から発せられた光弾は執拗にライセの身柄を集中して狙い、その進退いずれもを妨げる。

 そのライセは、ベルトをふたたび回転させた。

 

 

 

〈Follow your ACCEL!〉

 

 

 天頂に『仮面ライダートリプルA』の文字(ロゴ)が燦然と閃く。

 その輝きがライセの伸ばした手に集約される。上下三色、赤い端子を持つメモリへと変化したそれのボタンを押す。

 

〈ARMS ACCEL!〉

 

 野太い音声システムとともに、それはボウガンとも銃火器を掛け合わせたかのような兵器へと変わる。

〈ACCEL! MAXIMUMDRIVE!〉

 その銃把を両手でしっかりと握り、引き金を絞ると、迎え撃たんとしたアナザーダブルの連射ごと、無数の弾丸ごとその

 

 解放された風が地表を薙ぐ。

 それを受けて、アナザーミライが後ずさった。

 

「なんだ……ッ、その仮面ライダーの力は!? そんなライダーのいる未来など、存在するわけがないないッ!」

()()()()()()()()()()()

 

 どこか咎めるようなアナザーミライの怒号に、ライセは静かに答えた。

 

「未来は、誰かに定められるものじゃない。今そこに生きる人間が創り出すものだ。可能性がどこまでも増えて広がっていくから、人々はそこに希望を見出す。過去を乗り越えて、今を進める」

 

 そして来海ライセは一歩、また一歩と強く踏み出していく。

 無数に映し出されるこれから先のライダーたちの光景、そのまたたく希望の星々と背越しにつながりながら。

 

 

 

 

「俺はその未来(ミライ)を司るライダー。俺の力は……ここから先、無限に広がる仮面ライダーたちの可能性だ……!」


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