「凄かったじゃないか! スカウトされたのも納得だよ!」
「いやぁ……? そうなんすか」
「そうなんすかって、スカウトされたのは君じゃないか」
「試すような真似をして悪かったよ。そういうことをする性分じゃないんだけど、どうしても話題の人のことが気になってね」
俺と木村さんの楽しい楽しい時間はあっという間にすぎた。HONEYって3分超の曲だからそりゃあっという間だわなって感じなんだけど。
結局、俺は木村さんと金子さんに試されていたらしい。そういうことなら最初に言って欲しいのに。最初に聞いていたところでどうにかできる訳では無いが心の準備とかあるやん普通。
「ま、私から言わせればまだまだ伸びしろあったけどね」
「主にどの部分のことにゃ?」
「ふふん、もっとギュイーンっとロックな感じにだね……」
「ベースだからギュイーンって音は出ないぞ」
「えっ、じゃもっとバチバチっと……」
「HONEYでは基本的にスラップしないぞ」
「」
「惜しかったな、だりー。スラップが出てきた所まではよかったぞ」
「最初でめちゃくちゃコケてたけどね」
ベースでギュイーンって音はエフェクターかけても出るかわかんないからな。ギュイーンがどんな音をイメージしてるかにもよるけど。
多分多田の言っているギュイーンはギターのスライドのことだろうな。ベースでもスライドはめちゃくちゃやるけど、あれはギュイーンってよりブォンって感じだし。擬音ばっかで頭悪くなりそう。天才タイプのプロスポーツ選手かよ()
「もっと精進せよ」
「うぅ……最近ベースがマイブームだったのに……」
「へぇ、なんでまたベースに」
「だりー、この前急に『多弦ベースってロックだよね!』って言ってたから多分それからだろうな」
「そうそう! 女装したおじさんがすっごいなんかロックでね!」
「女装した……おじさん……?」
今、女装したおじさんって言ったな?
女装したおじさんで多弦ベースってもう確定だよな。どう考えてもあの美少女ベーシストのことだよな。ダイヤモンド☆フユカイのことだよな。
なんつーもん見てんだお前。洗脳されてないやつが見ると目が腐るぞ。俺は洗脳済みだからあの人見ただけで狂喜乱舞する体になってるけど。
「ね、ねぇ光クン。李衣菜チャンってもしかして変なのを見てるんじゃ……」
「変なのには変わりないし目は腐るかもしれんが、映像さえ見なけりゃ天国だから大丈夫だ」
「何を言ってるのかよくわからないけど、取り扱い注意の劇物でも扱ってるのあの子?」
「にゃを付けろよ」
「にゃ」
雑すぎて草って言いそうなったわ。現実でネット用語を持ち出すやつほどサムいやつはいないってそれいちばん言われてるから。たまにふらっと出てきたらそれはもう末期だから。俺のことだけど。
というか横で木村さんが苦笑いしてるんだけど、どう考えてもその笑い方はヤツを知ってるな? 正直ギターやベースをやってる人間なら一度は目にすると思うが。
「私も早くギターが弾けるようになって、なつきちみたいにロックに弾きながら歌えるようになりたいなー」
「練習すればすぐ出来るようになるさ」
「弾き語りは慣れだよ、慣れ」
「みくも早くソロ曲デビューしたいにゃ〜……」
「がんばれ」
「なんでみくにはそれだけなのー!」
なんでって言われましても……それ以外に言いようがあるんですか。だってどうすればデビュー出来るか知らんし。
「そういえば光っていつからベース始めたの?」
「ベース? ベースは……中一くらいからだったと思う。多分。きっと」
「なんでそんなに曖昧なんだにゃ……」
確かに。自分がベースを始めた時期が曖昧にしか記憶にないってどうなんだろうか。
覚えてないもんは覚えてないんだから仕方ないんだけど、それでもなんとなく思い出なんだからちゃんと覚えておけよとは思う。まぁ、結局覚えてないんだけどね(白目)
「光って確か高二だったよな? それだと、ざっと5年くらいになるのか? それならそのうまさも納得だよ」
「リズム感は昔からよかったの?」
「リズム感とかあんまり気にしたことは無いからなぁ」
「じゃあ生まれつき良かったのかもな」
リズム感ってよくわかんないじゃん。某メリーゴーランドでラブソングしてそうな人並みに突き抜けてないとわからない能力じゃん。
というか言葉で説明すること自体が難しいし、なによりも圧倒的に地味すぎる。
「なになに? 結局光ってどこがすごいの!?」
「俺も気になる!」
「本人が気になってどうするんだにゃ」
「仕方ないだろぉ、藤○くぅん。俺が一番わかってなかったんだから」
「おうおう、松井光ぅ! みくはヒゲのおっさんじゃないにゃー!」
「イマドキの高校生でもどうでしょう知ってるんだな……」
金子さんが信じられないような顔で見て来るけど、そりゃあ知ってるでしょうに。8時に全員集合するやつとかだってちゃんと知ってるんだからね。昔作られたコントなのに、今を生きる人たちが見ても爆笑できるっていうのは不思議なものがあるよな。
前川って大阪出身だよな。なんでどうでしょうネタが通じるんだよ。北海道民にしか通じねぇんじゃねぇのかよこのネタ(東京都民)
「光の凄いところはリズムキープの安定力だよ」
「……ベースが? りずむきーぷ? ドラムじゃなくて?」
「あっ、そこからなのね」
ベースってギターと同じ弦楽器だからギターと似たようなことしてるって思われがちだよな。
だがしかーし! 実際やってることはギターと違って鬼地味だし、ギターよりもドラムにやってることは近いんだよね。ドラムと一緒にリズム隊って言われるくらいだし。
「実際、隣にいてすげぇ弾きやすかったよ。光のバンドメンバーは恵まれてるな」
「でへへ……そんなこと言われても嬉しくねぇぞこんにゃろー!」
「長身の男子高校生が言ってもキモいだけにゃ」
うるせぇ!わかってんだよ、んなこたぁ! けどパスがまる見えだったんだから取るしかないじゃないの! それが生きとし生けるものの本能じゃないの!(違う)
「でも、正直地味な能力だよね。もっとロックな能力持ちだと思ったな〜」
「漫画の世界じゃねぇんだぞ。素人がトンデモ能力なんか持ってたまるか」
「いやいや、光のリズムキープって十分とんでもない領域に入ってると思うぞ?」
「へ?」
少し拍子抜けしていた緩んだ顔が驚きの色に変わる。
いやいや、リズムキープに凄いも何も無いと思うんだけど。
「少なくともアタシと金子さんが打ち込みかと聞き違えるくらいにはな。途中で遊んだりしてたからちゃんと光が弾いてるって確認できたけどな」
「機械と間違えるって言い過ぎっすよ」
「それくらいぶれなかったんだよ。音もリズムもな。そりゃレコーディングには向いてるだろうな。意識を持った機械みたいなもんだし」
「褒めてんのかよくわかんないにゃ」
「褒めてる褒めてる」
俺のすげーところってそんな所だったんだ。生まれてこの方、部活連中はもちろん、親にもそんなこと言われたことなんて無かったわ。なんて地味な強味やねん。
「なんというか……地味、ッスねー……」
「そんなことないって! 人間の手でやってるのに一切のブレもなく音も安定してるつって凄いんだぞ!」
「簡単に出来そうで実はできないって悲しいよな」
「みく、ベースとかよくわからないけど、光クンってなんかベースみたいだにゃ」
「どういう意味だそれ。俺が地味って言うのか」
「地味に見えて凄いって意味だにゃ」
なんだそれ。不思議と褒められてる気が一切しねぇ。泣きたい。泣くが? いや待てよ、俺がベースみたいってベーシストとしては最高の褒め言葉では? 違うな、うん。
「まぁ光がなんで私達専用のスタジオミュージシャンに選ばれたかは分かったよ。なつきちが認めるってことはそれだけ凄いってことだし!」
「ほんとに凄いってわかってる?」
「わかってるわかってる!」
自信満々に胸を張ってそういうが、絶対にわかってないしフラグにしか聞こえない。
という訳で、カマかけてみよう。こいつと出会ってまだ24時間も経っていないが、なんとなくこいつはかけたカマに面白いくらい綺麗に引っかかってくれそうなタイプな気がする。俺の直感は当たるんだ。知らんけど。
「どの辺が?」
「リズムキープ!」
「どこのフレーズ?」
「かーわいったー! って所!」
「可愛い。しかも合ってる」
「ふふーん! でっしょー!? これぞ、ロックなアイドルってね!」
「多分、知ってるフレーズ言っただけだにゃ」
ワイトもそう思います。まぁでも当たってたからいいんだよ! にわかをどうにかしてふるい落としに行くの良くない。それ先祖代々言われてるから。多分。
「ともかく、同じ趣味をもった奴が仕事仲間になるのは嬉しいよ。これからよろしくな」
「う、うっす」
「敬語じゃなくていいよ。それに、苗字じゃなくて気軽になつきちって呼んでくれ」
「いや、なつきちはちょっと……」
「冗談だって。なつきちってあたしを呼ぶのはだりーだけだしな」
なつきち呼びは恥ずかしいがすぎるからビビった。テレビで見てた人間がいきなりあだ名で呼んでくれとか言ってきても無理がすぎる。
にしてもこの2人。木村さんと多田の二人はまじで仲がいいんだな。なんか百合厨が大量に湧きそうだ。
というか、俺って木村夏樹になんか認めてもらったの? ヤバくね? これだけでご飯15杯おかわりできるんだけど。
嘘だわ、ご飯15杯とか現役高校球児が泣いて1000本マジノックに変えてくださいって頼み込むレベルの量だわ。
デレアニ(アニメ版デレマス)を見たことがある?
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1期2期全部見た!
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どっちかorちょっとだけ見た!
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見てないわからん!
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NO MAKEも知ってる!