「全く……ひでぇ目にあったぜ……」
まぁどれもこれも全部飯とか睡眠とか二の次にしてた自分のせいなんですけどね。今度志希ちゃんさんに会ったらお礼言っとかな……お礼でいいのか? いや、まぁお礼でいいのか。うん。
志希ちゃんさんの薬のおかげで完全復活を告げた俺はその瞬間布団から飛び出してその場にいた三人に土下座とお礼をかましてきた。三人ともシンプルに俺のことを助けてくれたからね。いやマジで助かった。
そんなわけで買ってもらったポカリやらおにぎりやらをお金を渡す渡さないの攻防の末、「私、光よりはお金持ってるのよ?」という最強の反撃を食らってありがたく頂戴し帰路についているところでございます。まぁ、帰路って言っても俺の部屋すぐ隣の部屋にあるから帰路も何もないんだけどね。
「ただいま……」
鍵があけっぱになっている。おそらくぶっ倒れる前に鍵だけは開けてたのだろう、不用意な奴め。ここで盗難なんて万が一にでも起きることなんてないんだろうけど。
取りあえず腹が減ってるわけではないんだけど貰ったおにぎりとかはありがたくいただいておこうかな。腹が減ってないっていうのも空腹が限界突破した先にある腹が減っただから。
なんで空腹の先に空腹でない部分があるんだろうな。これ普通に人類最大の謎だろ。まぁ人類最大の謎ってもっとたくさんあるんですけどね。知らんけど。
……ん? なんか扉の向こうからどたどた聞こえるんだけど。もしかしてリビングに泥棒いる? 怪盗いる? 腐女子に大人気のキッドの方かちょくちょく幼女になる探偵に負けてばっかの方かどっちだろ。 はたまた神聖か?
バンッ!
「うわびっくりした!?」
「……」
なんだよ……凛かよ……びっくりさせないでよ。危うくびっくりして女の子になるところだったわ(?)
リビングの扉が割と勢いよく開いてそこそこの音がしたもんでびっくりしたけど、中にいたのはよく見る人。怖い人じゃないよ。ただの幼馴染みたいなもんだよ。
というか凛がなぜかうつむいているせいで見事に顔が見えない。ちょっと貞子みたいになってる。そのまんま近づいてくるの怖いが。顔が見えないが。ねぇ、怖いが。怖いが!?
「……へ?」
「……っ」
なんか抱きつかれたんだけど。僕びっくり。もうさっきからびっくりして逆に落ち着いてるよね、うん。あまりにもいろいろと急すぎて手に持ってたコンビニ袋と制定鞄落とすかと思ったけど何とか死守した。えらい。
ってかあれ? 泣いてね? 凛ちゃん泣いてね? なんかすすり声が聞こえるんだが。
どうした? 一人で寂しかったか? そんなキャラではないだろうに。ごめんな、普通にちょっと倒れてたんだ。いやマジで倒れてるところ見られてなくてよかった。まだそうと決まったわけじゃないけど。
「えーと、凛?」
「……めん」
「はい?」
「……ごめん」
「いやなんで?」
なんで僕急に謝られてるの? もしかして俺のベースに傷つけた? それなら構わん。別に気にしないし。 皿割った? それも構わん。新しいの買えばいいし。もしかして今ハマってるゲームのデータ消しちゃった? それは少しだけへこむかもしれん。
「きいてたのに、なにもしなかった……」
「聞いて……何を?」
「なにをって……」
ガチャッ
「あら、開いてるじゃない? ちゃんとカギはしとかな……」
「へ?」
「誰……?」
凄いタイミングで扉が開いてついさっきまで聞いてた声が聞こえてくる。待って、いまこの状況を人に見られるのは不味い。たとえどこの誰であろうとこれは不味い。しかも声の主的にこの人にばれたら不味い! なんで最初にインターフォンを鳴らさねぇんだ!(困惑)
「……ふーん、光って中々やり手だったのね」
「いや、待って違う」
「光、誰、この女」
「こらっ! 敵意をむき出しにしないの!」
「誰って……うーん、光のオトモダチってところかしら?」
何で奏もそんなに煽るような言い方をするんだよ。いや待て、こいつ元からそういう話し方だったか? 初めて会ってから俺奏の手玉に取られてた記憶しかないぞ?
「嘘。光のこと下の名前で呼ぶ女がいるなんて私知らない」
「下の名前で呼ぶくらい当り前じゃない? ねぇ、光?」
「なんでそんなに煽るんだよ奏ぇ……」
「奏?」
「あっ」
「あら」
なんかバチバチやってる二人をそのままにしておくわけにもいかず、無理やりリビングまで上げてとりあえず凛が泣いていた理由を聞いてみたところ、案外すんなりとすべてを話してくれた。というよりも、そんなにややこしい話でも難しい話でもなかった。
「ふーん……光があの緑のアシスタントさんにそんな話をね……」
「その光って呼ぶのやめてくれない?」
「いいじゃない名前くらい」
「聞いてたって凛あそこにいたのね」
話を簡単に要約してみよう。俺が千川さんに色々と話をされてたあの朝に凛もいたらしく、急に部屋に入ってきた千川さんから身を隠すためについつい風呂場に身を隠してしまい、その場で色々と俺と千川さんの話を聞くことになったらしい。
ていうか、確かあんときって俺寝落ちしたけど多分凛の野郎一緒に寝てるよな? それは許さん。そういうのは将来できる大事な人のために取っとけマジで。
俺の話に関しては隠していたことってわけでも全くなかったからいいんだけどな。千川さん曰く、
「私も次の日からはいつも通りに行こうと思ってここにきてインターホン鳴らしたんだけど、全く反応がないから珍しく気に病んでるのかと思って……」
「あー……次の日って月曜か」
「月曜日ってちょうど3日前じゃない」
「そうだね」
3日前といえばちょうど俺が飯も食わすに不眠不休でHotel Moonsideを狂ったようにベースで練習し始めた日だな。インターホンとか鳴ってたのかよ。マジで全然気が付かなかった。
「一昨日も昨日も反応がなくて……今日来たら反応はないけど鍵は開いてたから……」
「それで中にいたと」
「でも光はいないし部屋も荒れてて……何かあったんじゃないかと……」
「あっ、そういうことね」
さっき言ってなかったけど、こいつらをリビングに挙げる直前に部屋に散乱してたゴミを掃除したんだよね。
ゴミっていうのは空になったペットボトルやエナジードリンクの空き缶。それにおにぎりを包んでた透明なアレとかな。
あんときはマジで別にあとで片づけるしいいやって思ってそこら中にポイ捨てしてたんだよな。空き缶とかはこぼれる心配ないし。いくら潔癖症ではないとはいえあれはヤバかったな。今度から近くにゴミ箱を置くようにしないと(違う)
「あの時私が無理やりにでも光に会ってたらって思うと……ごめんって……」
「……こんな優しい子を泣かせるって。どういうことをしたかわかってる?」
「いやほんとに……反省しきっております」
「無事だったらもう何でもいい……」
俺だって心当たりがある状況で凛と急にコンタクトが取れなくなってたら血相を変えて都内中を探し回る自信がある。そうやって思うと相当凛には精神的に負担をかけてたのかもしれない。別に俺のことなんか気にしなくてもいいのにって気持ちもあるが、心配させたのは事実だ。今度なんかお詫びしなきゃな。
(光が倒れてたってことは黙っててあげる)
(ごめんマジで助かる)
(周子たちにも根回ししておいてあげるから)
(天才)
唯一の救いは凛が俺が倒れたってことを知らなかったことだろう。この事実を知られたらワンチャン泣くどころじゃ済まなくなる。
一回小学生の時に野球部の試合で頭部死球食らって軽く脳震盪みたいになりかけたことがあったんだけど、その時たまたま凛が試合を見に来ててしばらく俺から離れてくれなくなったことがあった。あの時は小学生だったし、いまでは違うと思いたいけどな。こいつもアイドルなんだし。
「それで、話は変わるんだけど」
「はい?」
「この女の人は誰なの」
「あら? 私のこと?」
さっきまでしゅんとしていた凛のオーラが急に攻撃的になる。嘘でしょ? ここに来てまだやるの? そんなに奏に敵意向けるんだ(小並感)
そんなに俺に女友達がいるのって珍しかったっけ。ふつうに小中高と女の子とは話してきたつもりなんだけど。
「光のことを下の名前で呼ぶ女にろくな女なんていたことないんだけど」
「そうなの?」
「今までもそうだったじゃん。顔目当てのクソビッチが光に近づくから私が気を張ってたんだよ」
「初耳なんだけどそれ」
俺の名前を下の名前で呼んでた女の子って誰だ……? 小学生の時は大体みんな男女下の名前呼びだったんだけど。となると中学か? 確かに俺の名前を下の名前で呼んでくる女ってすっげぇチャラかったりあざとかったりしてた覚えはあるけど。あれもしかして凛抑えてたの? お前学年的には下のはずなのにそんなことできるの? 凄いが。怖いが。
「でも光が異性を下の名前で呼ぶなんて
「そうだっけ? 割と結構下の名前呼びするぞ。飛鳥も下の名前で呼んで……」
「何?」
「いやなんでも」
なんとなく奏なら対処できないけど飛鳥はなんか不味い。絶妙に空気が食い違いそうだけどそれでも会わせるわけにはいかない。飛鳥あれでも14歳なんだからな! そういや紗枝ちゃんも志希ちゃんさんも下の名前呼びだな。黙っておこう。
「名前の呼び方ひとつで特別扱いしてもらおうなんて浅いわね。変なあだ名で呼び合うバカップルじゃないんだし」
「バカップルならそれでもいいんだけど」
「違うが」
「否定されてるけれど?」
「じゃあバカップルじゃない」
凛ちゃん大丈夫? ネジ壊れてない? さっきから普段のクールビューティはどこへやらみたいになってんだけど。
そろそろ俺ヤバいぞ? 渋谷凛のキャラが崩れすぎてて気持ち悪いです。経緯が感じられないです。的な感じのことをフルボッコに言われてもなんも言えなくなるぞ?
「でも? 私と光は
「そんなこと言ったら私だって小中と同じ学校だったんだけどね」
「凛は学年が違うし奏はクラスが違くてついさっき初めて話したばっかりなんだけどな」
「「うるさい」」
「はい」
なんなんだよこいつら。何で俺がハーレム主人公みたいな立ち位置になってんだよ。
しかも奏は絶対違うじゃん。こいつは絶対に凛の反応を見て楽しんでるだけじゃん。こいつ天性のSだろ。ドSだろ。ニュースーパーサディストだろ最早。
俺、奏と初めて会話してから多分1時間たったくらいなんだけどなんだか奏のことが大分分かってきたぞ。こいつあれだな? 攻め手に回したらいけないタイプだな? よしわかった。こうなったら俺は静観してるぞ。知らない。あとは凛が何とかしてくれるだろ。
結局このまま放置してたら2時間くらい言い争いして、結局は奏の帰宅時間による時間切れで幕を閉じた。なんか気が合いそうな気がするのになぁ(小並感)
デレアニ(アニメ版デレマス)を見たことがある?
-
1期2期全部見た!
-
どっちかorちょっとだけ見た!
-
見てないわからん!
-
NO MAKEも知ってる!