女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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陽キャへの第一歩はまずLINE交換

「そんなわけで速水奏の連絡先ゲットしたわ」

「お前ほんとにやべぇな」

 

 

 会話のキャッチボールとマジモンのキャッチボールをするついでに一番最初に速水奏とか言う女の存在を教えてくれた元凶に報告だけぶん投げておく。

 ちなみにまだ放課の時間だからまわりには誰もいないぞ。授業中にやったら周りのやつらに聞かれるからな。別にやましいことではないけど。

 

 やっぱり体育といえば野球だよな。

 サッカーも楽しいけど俺には野球が性に合っている。まぁサッカーより野球の方が好きな理由はあんまり走らなくていいからってだけだけど。それに俺キャッチャーだから守備の間は基本的にしゃがんでればいいんだよね。楽極まりない。

 

 

「ほんとにサッカーチーム出来るじゃん」

「今やってるのは野球だけどな」

「うるせぇ」

「そういや宮本フレデリカって人とも話したんだけどお前知ってる?」

「お前ほんとにどうなってんの?」

 

 

 どうなってんのって言われても、倒れた俺を介護してもらっただけだが?

 やっぱり美人なアイドルと話せるようになるには自分の体の一つくらいは犠牲にしなければならないってことなんだろうな。そこまでして女の子とお近づきになりたいの? って言われたら俺はNoって即答するけど。そんなにアイドルには興味なかったし。

 

 

「最近死体みたいになりながら過ごしてんなと思ってたのに抜け目ないなほんと」

「死体て……」

「目が死んでたもん。泳ぐことを放棄したマグロみたいになってたもん」

 

 

 なんつー例えだよ。全く想像つかねぇよ。マグロってあれか、泳いでないと死ぬってそういう意味か? 俺は魚博士でもないしさかなクンさんでもないんだよ。大トロがなんかおいしいってことしか知らねぇんだよ。

 

 そんな話をしているとグラウンドになんか他クラスのやつらがちらほら入ってくる。

 おいおい、あいつら今日グラウンドじゃねぇだろ。誰だよ体育係。伝達ミスでもしてるんじゃないのか? はよ体育館行ってこい。今日は待ちかねた野球の時間やねんぞ。

 

 

「そういや今日ってグラウンド合同だっけ」

「えっ、そうなの?」

「お前昨日話聞いてなかったの?」

「聞いてなかった」

「じじいがよ……」

 

 

 ジジプマイクラじゃないだけまだいいだろ。卯〇コウかよ俺は。

 でもなれるもんならなってみたいよな、御曹司。生粋のエンターテイナーだからな。なんだかんだ人生楽しそうだし。でもなんか闇深そうだし。色んな意味で2.5次元な人物だよな。あぁいうのを推せるなんて俺くらいしかいねぇよな(コウガール特有の思考)

 

 

「それでどこのクラスと同じなん? どーせ何処とやっても知らん奴しかいないだろーけど」

「7組」

「あぁ、やっぱわかんねーや」

「速水奏がいるクラスって言った方がいいか?」

「は?」

 

 

 後ろに回した右手から軟式球がポトリと落ちる。嘘でしょ? いまなんて言った? 速水奏がいるクラス?

 

 ふーん、あいつって7組だったんだ。全く知らなかった。っていうか7組だったらそもそも校舎が違うじゃねぇか。ちなみにみんなは知らないと思うけど、俺たちの学校は1~5組と6~9組で校舎が変わる。一応コースは同じなんだけどね。その中でもスポーツ進学やら大学進学やらで細かく分かれてるから仕方がない。

 まぁスポ進は8組で大学進は9組だから6組と奏のいる7組は理不尽に離されている。食堂遠いからちょっと可哀そう(小並感)

 

 

「でも体育って男女別じゃなかったっけ?」

「そうだけどグラウンドは同じだろ」

「女の子危ないじゃん」

「俺に言うなよ。今までなんも言わなかったくせに馬鹿か?」

 

 

 くっそ。確かに明後日の方向にファールでも飛ばさない限りは女子が使ってる方になんかボールは飛んでかねぇしな。

 今日だけ女子が中とかないかな。無理か、うちのグラウンドバカみたいに広いもんな。

 

 

「ほら、来たじゃん。お待ちかねの方が」

「……今西って話したことあるの?」

「無くはないな。サイン持ってるし」

「お前ってドルオタだっけ?」

「いや? 将来大物になるだろうな~って思ってサインだけ」

 

 

 最低じゃねぇか。いや、最低ではないけど。

 そういやこいつってお父さんかおじいちゃんか叔父さんかはわからんけど346プロに身内の人がいたな。あの人とはあれ以降一回も会ってないけど。だからこいつアイドル事情とか詳しいのか? いや、そんなことはないか。気のせいやな。

 

 向こうから長袖のジャージ姿で歩いてくる速水の姿だけ見てると本当にモデルみたいだと思える。

 学校指定のジャージ着てても顔と胸のせいでスタイルがいいのが分かるもん。周りの男子も隠す気もなくガン見してるし。それもあいつは気にも留めてないし。

 あっ、こっち見た。無視しよ。

 

 

「今西ー。カーブ行くぞー」

「お前カーブ投げるって言って毎回暴投するだろやめろ」

「あら、今西君に光じゃない。二人とも3組だったの」

「おっす。オイ、呼ばれてんぞ」

「俺は知らねぇ」

 

 

 俺は知らんぞ、何も知らない。アイドル速水奏なんて初めて見た……って、ん?

 

 

「あれ? 奏って今西と知り合いなの?」

「知り合いっていうか……会社でよく見るから」

「……どゆこと?」

「あぁ、俺、おじいちゃんのおかげで346の機材使って練習させてもらってんだよね」

「何て贅沢野郎だ」

「いやぁ、コネ万歳だよな。マジで」

 

 

 こいつうちの部活の中でもずば抜けてギター上手いと思ってたけどそういうことか。

 そりゃあ、あんな機材のあるところで練習させてもらえてたらモチベも上がるしめっちゃ練習もしたくなるよな。シンプルにうらやましすぎる。まぁ今の俺ならやろうと思えばできるのかもしれんが。申し出をする勇気はないよね。この根性なし!

 

 

「……っていうことは? お前アイドルの連絡先ゲットし放題じゃねぇか! 最低だな!」

「てめぇと違って見境なしに連絡先を交換して回るヤリチンじゃねぇんだよ」

「あら? 光ってやっぱそういう……」

「言っておくが、年齢=彼女なし歴だぞ」

 

 

 高校生になったらすぐ彼女ができると思ってたんだけどな。どうやら完全に思い違いだったらしい。

 

 というか、俺って人生の中で一度も一目惚れとかをしたことないんだよな。

 周りのやつらの話を聞くと結構あるみたいなんだけど。おかしいなぁ、なんで俺だけないんだ。可愛いって思うことはいくらでもあるだけどそれまでなんだよ。付き合いてぇ! とかこの子が俺の運命の相手だ! 的になことには一切ならねぇんだ。

 

 

「それで経験がないことにはならないじゃない」

「馬鹿野郎。俺は初体験は愛したカノジョとって決めてんだよ」

「目星はついてるの?」

「いや全く」

 

 

 そんな女の子が居たら多分もうその子を彼女にするべく動いているだろうな。今こうやって呑気にキャッチボールしてだべってるってことはそういうことだよ。

 それに俺の初体験は絶対に彼女とイチャラブしてするって心に決め散らかしてるからな。童貞臭いとかいうんじゃねぇ。最悪三十路になって風の者で捨てることになろうが男っていうのは夢を追い続ける生き物なんだよ。まぁこれ下ネタなんですけどね。

 

 

「じゃあ私でいいじゃない」

「」

「わ゛ー゛!゛?゛ どこ投げてんだ!」

 

 

 急にロケットランチャーばりの重い一撃を綺麗に食らったせいでリリースされたボールが読売〇人軍の脳筋マッスルボーラーの宇宙開発ボールかっていうくらい明後日の方向に凄い勢いで飛んでいく。

 今までで一番飛んだんじゃねぇかなあのボール。窓ガラス割ってなければいいけど。

 

 

「てめぇ! 急になんてこと言いやがる!?」

「あら? 私じゃ不満?」

「お前あれか!? ビッチか!? 経験豊富系女子高生か!?」

「残念ながら私はまだ処女よ」

「嘘だろマジかよ」

「その反応。他の女性にしたら間違いなくはっ倒されてるから気をつけなさい」

 

 

 確かに今のは勢いがえぐすぎて今までになく失礼なことを口走った。反省。

 

 ていうか今更ながらお前ってまだs……未経験だったんかい。お前だけは絶対に違うかと思った。未成年アイドルの中でもかなり珍しい経験済みでも許される子だと思ってた。

 未経験なのにその色気と雰囲気出せるっていったいどういう人生歩んできたんだお前。修羅の道でも歩んできたか? もしかして家庭の事情で日常的に電気を浴びたり反政府軍に育てられたりしてきたか?

 

 

「てかてめぇさっきの話聞いてただろ! 俺のシモの考えのソレ前提の話を聞いてただろ!」

「聞いていたわよ?」

「それでも?」

「えぇ」

「この子怖い」

 

 

 なんでこんなにバンバン攻めて来れるんだよ……なんでそんなに余裕綽々な笑みを浮かべてるんだよ……なんでそんなにどうせ手を出す勇気なんてないでしょ? 的な雰囲気出してるんだよ……俺だってその気になればちゃんと男らしくなれるよ……知らんけど。

 

 

「もしかしてだけど、凛を弄るための口実作ろうとしてたりしてる?」

「……そんなことないわよ」

「今反応遅かったなぁ。確実に出てるなぁ狙いが」

 

 

 なるほどそういうことね。そういえば昨日は門限があるとかで強制退場させられて決着ついてなかったもんな。そうだよな。どーせ俺なんて……ぐすん。間違えた、ぴえん。

 

 

「でも私はあなたにも興味あるのよ?」

「もういい。フォローなんていらない」

「フォローじゃないわよ? 私だってそこらじゅうの男子にこんなこと言うタイプじゃないんだから」

「もう信じないぞ」

「これでも学校ではマジメなのよ?」

「ここも学校だけどな」

「でも今は光の前じゃない」

 

 

 こんにゃろ……あぁ言えばこう返しやがって。口が達者な野郎……野郎じゃねぇな。女の子の場合なんて言うんだ? アマっていうのは口が悪いよな。でも尼さんっては言うよな。アマって元ネタなんなんだろ。

 

 

「一応、昨日よりもずっと前から光のことは見てたんだけどね」

「そーなの?」

「そうよ」

「知らんかった」

「話す機会もなかったし当たり前じゃない」

 

 

 至極もっともである。だって俺たちは昨日話したばっかなんだから。

 

 昨日話したばかりの女の子でしかもアイドルとここまで話すことが出来てるのももはや奇跡な気がするけどな。

 奇跡な気がするっていうか普通に奇跡だよな。この状況に陥ることが出来てるのが本当に幸運。もはや俺は神に愛されているのかもしれない。でも神様も俺のことを愛してくれてたら女子寮にぶち込むなんてオーバーキルしてないよな。完全に悪ふざけしてるよな。

 

 

「去年の文化祭……体育館のライブで出てたじゃない」

「出てた出てた。あー、あんときに」

「あの時から目をつけてたのよ。ずいぶんカワイイ子が居る、ってね」

「かっこいいって言ってもらえた方が俺は嬉しいんだけどな」

「そういうトコロも好きよ?」

「どーも」

 

 

 あんときは可愛い歌とか歌った記憶ないんだけどな。なに歌ったっけ。ワンオク歌ってたっけ。気持ちよく歌ってた記憶しかなくてあんまり覚えてないや。

 ほんとに超気持ちよかったことだけは覚えてるんだよね。ワンオクが気持ちよかったのかあの空気が気持ちよかったのか完全に自分に酔ってたのかはわからないけど、とにかく気持ちがよかった。なんか言い方きもいな。気持ちいいしか言ってないやんけ。快楽狂いかよ。

 

 

「……随分余裕があるのね」

「何が?」

「一応、これでも色々と自信があるのよ? どことはいわないけど、ね」

 

 

 そのウインクしながら唇に指充てるのやめて、とってもsexy(ネイティブ)だから。ほんとにやばいから。あと胸に手を当てるのもやめて。万胸引力の力働くぞ? いいのか? キモイ目で見るぞ。

 

 

「ま、そういうところも面白いんだけど」

「ミステリアスな女だな」

「本人に直接言う人は珍しいわね」

「ごめんいったん考えるって作業を放棄してそのまんま口に出したわ」

「それ、危なくないかしら?」

 

 

 大丈夫だよ。あんまり気を許してない人にはやらないから。とりあえず奏はこれやっても大丈夫な人類って判断したからね。すっごいマジメでバラエティとかNG系に見えるけど、実はオールラウンダーなタイプだと俺は思うんだわ。

 

 この後、草むらからボールを引っ張ってきたため草まみれになってキレてた今西に追いかけられる形で奏と距離をとることに成功した。ほんとに底が分かりそうで全く分からん女だ。怖い。綺麗だけど怖い(小並感)

デレアニ(アニメ版デレマス)を見たことがある?

  • 1期2期全部見た!
  • どっちかorちょっとだけ見た!
  • 見てないわからん!
  • NO MAKEも知ってる!

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