女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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困ったときに相談できる友達こそ一番大事にするべき人

 昼間はちっこい子供たちや中坊たちが走り回っている公園も、夜になり街灯が灯れば静寂に包まれる。

 

 夜の公園はいい。基本的に人もいないし、街灯の明かりがなんともいい雰囲気を出してくれる。

 中二病モードになるときにも使えるし、ふと夜の中でのんびりと歩きたい気分になったときにも重宝する。

 

 

「ワン、ツー、スリー、フォー……」

 

 

 それに、こういう無性に外で運動したくなったようなときにも重宝する。とくにこいつみたいな人に努力しているところを見られたくないような人には余計にそうだろう。

 

 ベンチに座りながら凛の飼い犬であるハナコを膝に乗せて見るダンスというのも乙なものだ。全然そんなことはないんだけどね。

 だって俺がここにいるのってこいつが夜の公園で一人でいるのが心配すぎただけだし。だから俺がもうここにいるだけで俺の役割としては全うしてるから、見るくらいしかやることがないんだよな。あとはハナコをなでるくらい。

 

 

「今の良かったじゃん」

「……全然」

 

 

 ほんとにプライドが高いというかなんというか。目指す地点が高いというか。

 まともに今までダンスをしてこなかった小娘が短期間でここまで踊れるようになってんだから十分じゃないかと思うんだけどなぁ。本番も近いし、凛の性格上こうなるのは無理もないというのは全然わかるんだが。

 

 ただ、凛本人が言うように正直まだあの美嘉さんの後ろで踊れるようなダンスになっているかといえば、そうではない。あの人のライブの映像をYoutubeで見たが、まぁ凄かった。度肝抜かれた。キレがえげつなかった。たゆんたゆんだったし(違う)

 

 

「はっ……スリー、フォー……!」

 

 

 だがなんというか……とっても心配である。俺の知ってる渋谷凛という人間は多少無理しても大丈夫だし、基本的にセンスの塊だから俺がなにしなくてもほっときゃちゃんと仕上げてくるような奴なんだが……だけどとっても心配だ。わかるだろ? うん。

 

 

「……ご主人様頑張ってるなー」

 

 

 まぁ結局俺には口出すことさえできないから、こうやってハナコを撫でてる訳なんだけどな。ほんとにいい子だ。

 ハナコを撫でてると俺も猫とか犬とか飼いたくなるけど。絶対に買わない。逝ってしまったときに立ち直れる気がしないからね、仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「飛鳥ならこの気持ちわかるだろ?」

「残念ながら僕は一人っ子なんだ」

「俺だって一人っ子だよ」

 

 

 飛鳥と面と面を向かい合って熱く語るが、あえなく撃沈する。

 てか一人っ子関係あるのかよこの話に。確かに凛は立場的には妹みたいな感じかもしれないけども。でも凛みたいな顔のいい妹が居たらマジでアニメだよなぁ……ツンケンしてるのがやけにリアルだし。

 

 

「全く……急に部屋に来たと思ったら、惚気話を聞かされるこっちの身にもなってくれ」

「惚気てないだろ」

「惚気てなくてもキミがバカということはよくわかったよ」

 

 

 何処まで行っても失礼な奴だなこんちくしょう。確かに寮の部屋に戻ったその足で飛鳥の部屋に行ったのは申し訳ないけどさ。まさか部屋の中に入れてくれるとは思わなかったし。

 

 というか女子中学生の部屋に上げてもらうなんて中々ヤバいよな。下心とか皆無なんだけど、こいつがアイドルというところに問題があるし。

 にしてもまさか部屋に上げてくれるとは思わなかった。確かに俺の部屋に入れるわけにはいかないけど。逆も大問題だろうとは思う。もう入ってしまったんだけどね。

 それにしても、中々ちゃんとしている部屋だな。もっと中二病グッズ多いのかと思ったけど、なんというかカッコいい女の子のような部屋をしている。大人な雰囲気ではないんだけど、カッコいいような感じの家具が多めな印象だ。センスあるな。ちょっと憧れる。

 

 

「ダンスが上手くなるコツとか飛鳥知らない?」

「練習あるのみさ。それが最大の近道だよ」

「だよなぁ」

「随分あっさりと受け入れるんだね」

「大体何事もそんなもんなんだよ」

 

 

 楽器だってそうだしな。早く上手くなりたけりゃとにかく練習するしかない。

 何度も基礎練習を繰り返して、出来ないところは反復、反復、繰り返しの無限ループ。本当にこれが一番早いんだよ。

 安定感っていうのは普段の数えきれないほどの努力が地を固めて初めて生まれるものだってはっきりわかんだね。俺だって滅茶苦茶練習はしたし。

 

 

「ならその例の彼女にもそう教えてあげればいいじゃないか」

「彼女じゃねぇ」

「そういう意味の単語ではないよ」

「ハメやがったな」

「キミが勝手にハマっただけだろう?」

 

 

 確かにそうだな、ごめん(ごめん)

 そりゃあ飛鳥も苦笑いするよな。角野〇三じゃねーよ! みたいな感じで反射的に言ってしまったんだ。正直すまんかった。

 

 

「まぁそのなんだ。もう十分に努力はしてるんだよ。なんならちょっとパンク気味なくらい」

「じゃあそっとしておけばいいじゃないか」

「それはそうだけどさぁ……」

 

 

 呆れたような顔をして飛鳥がため息をつかれてしまう。

 

 

「心配しすぎなんだよ。僕はこの子と直接話したことはないからあまり知らないが、女の子という生き物は案外強いものだよ」

「あいつが強いってのは分かってるけどよ……」

「心配する気持ちもわかるが、少しは信じてあげてもいいんじゃないか?」

 

 

 信じていないわけじゃない。ただただ、心配なのよ。もし凛が倒れでもしたら全てをほっぽり出してブちぎれながら女友達に看病をお願いする自信がある。俺が看病するわけにはいかないからね、仕方ないね。体拭いたりとかできないし。

 

 

「『見守る勇気』……今、キミ必要なことじゃないか?」

「見守る勇気か……」

 

 

 元々俺はなんにでもかんにでも手を出すような人種じゃない。どちらかというと滅茶苦茶裏で隠れながら見てた部類の人間だ。だって手を出すと滅茶苦茶怒られるし。

 

 でももしかしたら、もうそろそろ目を離してもいい年ごろになったのかもしれない。あんなちっこかった凛ももう高校生だもんな。まぁ一個しか違わないからそういう感情あんまりないんだけどね。

 

 

「飛鳥って良いこと言えるんだな」

「ボクはただ歴史の偉人の言葉を借りてるだけさ。ボク自身はちっぽけな生き物だよ」

 

 

 飛鳥ってそういう系の中二病なんだな。歴史上の人物とか難しい本を読み漁ってそう。

 ていうか本棚を少し見てみたらなんかそれっぽい本ばっかりあった。なんか色々と納得したわ。悔しい。やっぱり本を読むと人間賢くなるんだな。一歩道踏み間違えたらこうなりそうだけど。

 

 

「ちなみに見守る勇気って誰の言葉?」

「この前、図書館で見かけた子育て本のタイトルだね」

「なんか急に薄っぺらく聞こえてきた」

 

 

 なにが歴史の偉人だよ! よくある子育て啓発本のタイトルじゃねぇか!

 しかもあぁ言うのって大体似たようなことしか書いてないし、親が自己申告で子育て大成功しました! ってどや顔で言ってることが大半だからうさん臭さしかないんだよな。

 本当にまともな人間なら本を出すような傲慢なことしないしもっと謙虚だわ、多分。

 

 

「そもそも君だって近いうちにライブを控えてるんじゃないのか」

「えっ、それ何処情報?」

「女の子の噂の伝達速度はバカにならないからね」

「飛鳥にも友達はいるんだな」

「キミ、今までで一番失礼なこと言ったって自覚はあるかい?」

 

 

 たまに脳内を通す段階を超えてそのまんま声に出しちゃうことがあるんだ、ごめんな。まぁでもよくよく考えてみたら、飛鳥って蘭子と知り合いだったっけな。

 そもそも飛鳥ってちょっとひん曲がってるだけで、普通にコミュニケーション自体は取れるタイプの中二病だし、常識はあるから普通に友達はできるわな。それにだいたい芸能界って基本的に変人ばっかだし。

 

 

「そんなに彼女のことが心配なら、僕が少し見てあげようか。こう見えても、ボクだってダンスには自信が……」

「いや、飛鳥が凛と会うのは不味い」

「……何故だい」

 

 

 その問いに一瞬馬鹿正直に『凛の目の前で下の名前呼びしたら呼ばれた対象が狙われる』って言いかけたけど、流石にギリギリのところで止まった。マジで出かかってた。超ファインプレー。菊〇もびっくり。

 あんなのがバレたら凛に変な印象が付いちまうからな。後俺も変な目で見られかねん。

 

 

「凛も多分拒否すると思うからな。多分、俺が言っても聞かないだろうし」

「ハハッ!……随分強情なんだね。彼女は」

「強情というかなんというか」

 

 

 まぁ間違ってはいないだろう。間違ってはいない。それがいいところでもあるしな。

 

 取りあえず凛と飛鳥を引き合わせるようなイベントを回避することには成功した。これでまぁ変なことは起きないだろう。

 ……あれ? 凛が大丈夫かどうか心配してるはずだったのに、どこで話変わった? ……ま、いっか!(脳死)

デレアニ(アニメ版デレマス)を見たことがある?

  • 1期2期全部見た!
  • どっちかorちょっとだけ見た!
  • 見てないわからん!
  • NO MAKEも知ってる!

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