女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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学年が変わってもそんなに大きな変化はない

「もーいーくつねーるーとー」

「お正月か?」

「今日は始業式ですね」

「なんなんだよ一体」

 

 

 今日は始業式ですね、えぇ。一週間あったかなかったか微妙なラインの休みを挟んだせいで実感とか全くないんですけど。事実、今日を境に進級ですよ。

 

 今までは高校二年生といいつつ括弧の中に高校一年生って入ってるような状態だったからね。

 これで俺も晴れてれっきとした高校二年生になったわけよ。そんなに進級が待ち遠しかったわけでは全然ないんだけどね。

 

 

「にしても話がなげぇ」

「あともうちょいだろ」

「あのおっさんタ〇リに似てない?」

「グラサンだけだろ」

 

 始業式に限ったことではないが、こういう式系はとってもだるい。

 立ちっぱなしで色々なお偉いさんっぽい人の話も聞いて……それだけの事がとても長い。

 今日に限って校歌も歌って、そんでもって新入生との顔合わせという名目上だけの儀式を終わらせなけりゃならぬからな。それさえ終われば、あとはもうパラダイスよ。

 

 

「クラスってもう分かるっけ」

「食堂前に紙貼ってあっただろ」

「知らん」

「アホか」

 

 

 新クラスってなんだかんだやっぱりわくわくはするよな。前のクラスで仲良かったやつとは同じがいいとかも思いつつ、他クラスの面白そうなやつとも絡んでみたいし。

 

 ちなみに二年生になっても今西とはおんなじクラスだった。お前は部活が同じなんだから、これ以上一緒に居なくても別にいいだろ。

 

 

『一日でも早く、先輩方のような城聖高校を代表する立派な高校生になれるよう────────』

 

「かわいそー」

「うちの高校のこと知らねぇんだろうな」

 

 

 うちの高校は酷いぞ~、可哀そうに。って新入生に対して思うの。高校生あるある説じゃね? 中学の時も似たようなこと言ってた気がするんだけど。

 

 実の所は、うちの高校の良くないところっていうのはそんなにない。

 強いて言うなら、今どきの世界を生きる高校の癖に、クーラーが弱すぎて真夏は教室の窓開けた方がまだ涼しい(涼しいとは言っていない)ゲキアツサウナになるくらいだ。

 サウナはサウナでも水風呂からの外気浴がねぇから整わねぇんだよ! サウナハットよこせ!

 

 

「今日部活あるっけ」

「新入生歓迎のヤツやらなきゃダメだろ」

「マジ? 俺入ってるん?」

「入ってる」

「終わった」

 

 

 我が高校には新入生歓迎会という名目上の部活動宣伝回みたいなものが新入生に向けて毎年あるのだ。

 毎度毎度、野球部のようなガチスポーツ部活がほんとにそれで新入部員が入るんか? って思うようなガチ宣伝をしたりだとか、ネタ系の部活がなんか変なことをしようとして若干スベったりだとかしている。控えめに言ってそこそこ地獄。

 

 そんな中でもわりかし目を惹いているのが、我らが軽音部。

 いやぁ、こういうのには滅法強いよね。ただ単に1曲か2曲くらい舞台で演奏すればシンプルにかっけぇんだもん。そりゃあわかりやすく宣伝になるよね。

 大体これで入った新入生の7割が半年以内にやめるんだけどね。楽器って割と難しいから仕方ないね。バンド存続問題とかも色々あるからね。

 

 

「今年は何するんだろうなー」

「適当にそれっぽいの選んでもらおうや」

「絶対に王道にしような」

「それは言えてる」

 

 

 尖った選曲して大爆発して文字通り死んだバンドを俺は何度か見てきたからな。絶対に同じ轍は踏まねぇ。少なくとも素人相手には絶対にやらねぇ。

 

 ネットで強いオタクって大体リアルでは浮いてるからな。ネットでは受けるような事でも、現実でやったらゲロ滑りだから。ネットミームとかあんまり使っちゃダメだぞ。

 ここ、特にテストには出ないからね。覚えなくても別にヨシ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新クラスの顔合わせも終わり、あっという間に解散時間。時間は現在お昼前。昼飯どうしよう。今日は外食でもしようかな。誰を誘ってみようか。

 

 ……なんてルンルンで思っちゃいるが、実質初対面がほとんどの面々相手には、急にご飯を誘うなんてことは流石にできない。俺ってそこまでコミュ強でもないし、そもそもそういうタイプでもないんだよね。

 そんなわけで今日はボッチ飯確定だ。もしくは今西を引きずっていくという選択肢もある。

 

 

「なーなー」

「なによ」

 

 

 そうそう、今西っていうのは今話しかけてきたこいつね。

 

 ちなみに初期の番号順の席だとそこそこ離れてるんだよね。今西は窓際の早い順だし、松井だとそこそこ真ん中から後半あたりになってくるから。必然的に席は離れてしまう。まぁ今西以外にも一年とおんなじクラスの奴いるから全然いいんだけど。

 

 

「一年に超かわいい女の子居るみたいなんだけど、見に行かね?」

「興味ないね」

 

 

 手〇よろしく未来が見えそうな金髪少年の真似をしたんだけど、多分これ通じてないよね。悲しい。

 ネタがそもそも通じてなくてスルーされるときが一番悲しいんだよね。

 

 にしても今西がわざわざ可愛い女の子がいるなんて俺を誘いに来るのは珍しい。そんなこと言ったのは今までだと奏の時……ん? 奏の時?

 

 

「……その子ってそんなにかわいいん?」

「可愛い。クール系」

「俺知ってる人?」

「…………知らんやろ」

 

 

 なんだその間! 嫌だぞ! 俺の後輩に俺と今西の要らない共通点上知りかねないような人がいるとか絶対に嫌だぞ! なんかはずかしいやんそれは!

 

 

「そもそも情報回るの早すぎだろ。どっから仕入れた」

「サッカー部の連中がナンパしに行ってた」

「よし、行こう」

「お前手のひら返し早すぎな」

 

 

 サッカー部のチャラ男たちの目って間違ってないからな。あれは信用できる。そこらの情報通よりも確実な物だからな。

 っていうかガチ運動部の中でもサッカー部だけダントツでチャラ男率高いのってなんでなんだろうな。

 バスケ部もチャラ男率高いといえば高いけど、サッカー部だけはマジでダントツじゃん。髪伸ばせるだけで人間あんなに変わるの?

 野球部なんて見てみろよ。全員丸坊主なだけなのにごつくてムサい集団ってレッテル貼られてるじゃん。実際、ごつくてムサいのは挨拶と体格だけだからな。坊主でゴリラみたいなやつがショートケーキ幸せそうにちびちび食ってたりするから。

 

 

「なんか明日から間違えて一年の教室入りそうだよな」

「わかる」

 

 

 一年の教室は俺たちのいる校舎の四階にある。ちなみに俺たち二年生は三階と二階にわかれている。

 だもんで毎朝一年生は寝起きの体に鞭打って四階まで階段で登って教室まで行かなきゃならないんだよな。これが地味に面倒くさい。きついというよりも面倒くさい。単純に長いんだよね。

 

 

「うわっ、めっちゃ人ごみ出来てるじゃん」

「あれ、一年じゃないよな」

「ほぼ二三年くさいな」

 

 

 階段を上ると、遠目からでも奥の教室の前に人だかりができているのが目視できる。人が多すぎてまるでゴミのようだ。ゴミカスゥ! そこまで人数多くはないがな。言ってみたかったから仕方ないじゃん、許して。

 集団の内訳は男が9割、女が1割って感じだろうか。みんな揃いも揃って教室をのぞき込んでる。あのクラスの新一年生可哀そうすぎるだろ。不憫にもほどがある。

 

 

「まだなんか話してんのかな」

「他のクラスはもう終わってる臭いし、多分あの集団のせいで出るに出れないんだろ」

「あっ、先生来た」

 

 

 教室の前に群がる野次馬たちを見てあざ笑う野次馬とかもうこれわかんねぇな。そんな状況。

 

 丁度、指導の先生が上がってきたからあそこにいる群衆も勝手に散るだろう。

 指導の先生ってマジで怖いもんな。なんであんなに怖いんだろう。どこの高校でも指導の先生は最強と決まっているのだろうか。うちの指導の先生なんて人殺せそうな顔してるもん。極道の世界にいても不思議に思わんもん。

 

 

「あー、散ってく散ってく。教師無双だな」

「コワ……ってあの子じゃね?」

 

 

 今西が指さす先には、黒髪ロングの後ろ姿。顔は見えないが、少なくともスタイルは良さそう。足は長いし、シルエットがとても美しいな。

 でもなんだか少し様子がおかしい。というか、なんか他の女の子に絡まれてるっぽい。片腕を両手でガッチリと掴まれている。

 

 高校始まって早々変なことに巻き込まれたとクラスメイトの女の子相手に虐められる直前かと思ったが、どうやらそんな感じではないっぽい。

 なんかグイグイ引っ張られてはいるけど、黒髪の女の子も抵抗していないというか。というか気のせいかな。なんだか引っ張ってる側の子も引っ張られてる側の子も見覚えがある気がするんだけど。

 

「どいたどいた~! 私たちもう帰るんで!」

「ちょ……加蓮、引っ張らないでも大丈夫だから!」

「そんなこと言っても凛のせいでこんなことになってんだから! 文句言わない!」

 

「……ボディガードじゃん」

「平和だな」

「本当か?」

「嘘」

 

 

 今、確実に凛って言ったな? 俺の耳がおかしくなっていなければ、凛と聞き取れた。

 俺の悪い予感は当たらないはずなんだが、おかしいなぁ。でもあの顔はどう見ても知ってる凛だなぁ。どう考えてもちょっと不機嫌になってる凛だなぁ。制服似合う。

 

 

「とりあえずセンパイと合流しなきゃ。奈緒でもいいけど、奈緒はこんな大人数のところ来れないだろうし……凛、センパイの教室とか知らない?」

「知らない」

「じゃあその線はないなー」

 

 

 っていうか、やっぱり俺あの女の子知ってるわ。中学の後輩だわ。だからなんか見たことあると思ったのか。しかも奈緒って聞こえたぞ。俺、確実に知ってるぞその女。

 いやー、それにしてもこの高校に来たんだなぁ。おんなじ学校の後輩が進学先にも入ってくるのなんか嬉しいな。接点がそこそこある人だから余計に嬉しい。

 

 

「大体、光ってこういう時にいないし」

「ここにいますが」

「あー! 遅いですよ~、センパイ」

「なんならあたしもいるぞ」

「うわ、びっくりした」

 

 

 階段に向かってそそくさと退散しようとするところをそのまま捕まえる。一瞬めちゃくちゃ警戒されたけど、俺だとわかって安心してくれたらしい。人望バンザイだわ。

 で、結局貴様もいるのな。なんならそのことに一番びっくりしたわ。同級生感のない奴め。

読者層気になるので知りたいアンケ

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