女子寮生活は難儀です   作:as☆know

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可愛い後輩には旅させなくていいから可愛がれ

「キャー♪ センパイによく分からない部屋に連れ込まれちゃった~」

「よく分からないとは失礼な」

「突っ込むところは本当にそこで合ってるか?」

 

 

 テンション高そうだな、お前な。入学早々楽しそうでなによりです。

 

 なし崩し的に合流した感じになったのもつかの間。ほっといたらまた騒ぎに巻き込まれそうな凛たちをどうにかせねばと悩んでたけど、結局ここに匿うってなったよね。ここ以外アテもないから当然といえば当然。

 

 

「……で、ここってどこ? 物置……には見えないけど」

「軽音部の部室」

「嘘!? こんなとこに部室があるの!?」

「そういえばそうだったな」

 

 

 こんなとことは失礼な。全く、去年のこの時期の俺みたいなこと言ってんな。

 

 別棟の三階の一番奥にある我らが軽音部の部室は、防音対策としてドデカい扉で守られてる。そのせいでパッと見では怪しい倉庫にしか見えないんだよな。中は普通の部屋なのに。

 ちなみにこんなにドデカい扉で塞いでてもドラムの音は簡単に貫通する。ドラムは音量調節出来ないからね。仕方ないね。

 

 

「確かに。ここならあの人たちもわかんないだろうね」

「全く、高校始まって早々大変な目にあったよ……」

 

 

 開幕早々学校の生徒に囲まれるなんてまるでアニメみたいな話だなほんとに。中学の時はこういうの無かったのに、やっぱり高校生って生き物はいろんな意味でちょうどいいんだろうな。

 

 

「……で、結局お前は全員と知り合いだったんだな」

「全員中学の後輩なだけだって」

「私は同い年だぞ」

 

 

 実際そうだからね、仕方ないね。

 にしても凛を守ってたのがこいつだったとは。中学の時から仲はめちゃくちゃ良かったんだけど、まさか高校でも同じクラスとはね。奈緒は……先輩感ないもんな。ごめんね。何がとは言わないけど。

 

 

「だってさー。悲しいな~」

「お前嘘つくなよ」

「嘘ちゃうわ」

 

 

 マジで文字通りの後輩なだけって言ってんだろ! たまたま凛と仲が良くて、その凜と面識のある俺とも顔見知りなだけよ。友達の友達的な。

 

 

「ったく、こんなに可愛い女の子がいるなら俺に紹介してくれよ」

「こいつら彼氏持ちだぞ」

「終わったわ」

「なんで嘘つくんだよ」

 

 

 今西に対しては脊髄で嘘をつきたくなるんだよ。絶望させてみたくなる。厨二っぽく言ったけど、単に反応が面白いから楽しんでるだけなんだよな。

 おい誰だクズって言ったやつ。聞こえてんだからな。俺を騙して346に入れたのを未だに忘れてないだけだからな。でもその件に関しては若干感謝してる迄あるからやっぱ俺の性格が悪いだけだったわ。

 

 

「まぁさっきまでのは冗談として……二人は新入生で知り合い、だっけ?」

「先輩ヅラすんなよ」

「してねぇよ。とりま名前でも知っとかないとだろ」

「それもそう」

「なんかすいません。うちの光が迷惑かけてそうで」

「お気になさらず」

 

 

 なんなんだよそのオカンムーブ。今西も高校生にしては礼儀正しいちゃんとした男の子ムーブしてるし、妙にリアル感あるのやめーや。

 

 それにしても、完全に失念していたけど、今西からしたら二人とも初対面だもんな。勝手に巻き込んでるが。こうやって見ると今西も若干の被害者な気がする。まぁいいや。男だしな。

 

 

「じゃあ……誰から行く?」

「それじゃあアタシから~!」

 

 

 はいはーい、なんて言葉も一緒に飛び出しそうな勢いで手を挙げながら先頭を切っていく。

 お前凄いな。俺なんか陰キャだから、絶対にそう言うのは真ん中あたりで上手いこと目立たない具合で収めに行くわ。

 

 

「北条加蓮。元病弱体質の城聖高校一年生だよ!」

「未だに病弱だろ」

「油断してたら救急車呼ぶからな」

「やめて」

 

 

 そんな感じで先陣を切っていったのは加蓮でした。

 

 オレンジと茶髪の狭間くらい明るい色に染まった髪を肩にかかるぐらいまで下ろしているが、これは今日に限った話。

 女性にしては珍しい? といえば珍しいのか、日によって髪型がしょっちゅう変わる。

 今日みたいに下ろすだけだったり、編み込んできたり、後ろ髪がコロネみたいになったり、ポニテにしたり横にポニテを作ったり、ツインテにしたり、なんかパーマ? みたいなのをかけてふわっとさせたり……

 

 本人曰く飽きるかららしいが、とにかくレパートリーが多すぎて見てる分にはビビる。しかも全部似合う。全て顔が良いのが悪い。

 

 

「凛と奈緒とは中学からの友達で、センパイは中学の先輩だったからセンパイ!」

「あたしも一応先輩なんだけどな」

「奈緒は先輩っていうより友達じゃん」

「ゲシュタルト崩壊しそう」

「先輩って概念はなんなんだろうか」

 

 

 ちなみに病弱体質だったっていうのはマジだ。

 今でこそこんなにも元気元気してるが、幼少期は入院続きだったらしく、体が大きくなった今でも調子に乗ったらフラっと逝きかける。マジで心配。お兄ちゃん心配しちゃう。

 

 余談だけど、これだけ見るとはっちゃけた明るい可愛い後輩娘に見えるこいつだが、実はすごいマジメ。だから決して頭の軽い子ではないってだけ言っておこう。彼女の名誉のために。

 というか、本来は凄い尖ってる子なのよね。俺と初めて会った時も若干とげが残ってたし。こんなに明るくなったのは奈緒と凛のおかげなんだろう。友達ってマジで素敵。

 

 

「ほな、次は」

「渋谷凛。よろしく」

「この子も後輩と?」

「いえす、後輩」

 

 

 加蓮に比べると、もう少しだけ親密というか歴が長いというか。まぁどちらにせよ、後輩は後輩だ。

 

 凛も加蓮も俺と同じ中学で後輩だったとはいえ、高校でも二人そろってここに来るとはな~。奈緒も同じ中学だったから、ちょっと不思議な感覚だ。

 

 

 

「じゃあ、ついでに奈緒も挨拶しときなよ」

「あたしもかよ!」

「奈緒って今西とは初対面だろ?」

「まぁそうだけど、わかったって。……んんっ、かm」

「こいつ神谷奈緒。もっふもふでもっふもふしてるけどポメラニアンじゃないから」

「だー! あたしのこと犬扱いすんな! セリフも奪うなー!」

「キャラ把握したわ」

「おもろい奴だろ」

 

 

 奈緒はこういうやつなんだよ。高校デビューとかしなくてよかった、マジで。そのままの奈緒でいて。

 凛と加蓮と仲が良いが、正真正銘、俺と同級生。よく後輩と間違えそうになって怒られるけど、ちゃんと二年生なんだよな。

 

 ちょっと大きめの眉に真ん丸でなんか犬っぽい眼つき。そして極めつけは御団子にした部分からもガッツリ伸びる、若干色の抜けたもっふもふの髪の毛。例えるならばやっぱりポメラニアンだろうか。それが神谷奈緒という女の子。違うか、違うな。

 

 

「まぁ俺は一方的だけど神谷の事は知ってたんだけどな」

「なんで?」

「うちの高校ではひそかに有名じゃん。目立たないけど顔が良いからファンも多いんだぜ」

「な、なんだその話。あたし初めて聞いたんだけど?」

「嘘だけど」

「なんなんだよお前!」

 

 

 今西も奈緒の扱いを早速理解しているようで何よりだ。基本的に奈緒はいじられキャラだもんな。

 

 ちなみにこいつ、性格が鬼のようにいい。いい子っていうイメージをしてみたら大体この子の顔が頭に思い浮かぶくらいにはいい子。

 単純にいじられやすいキャラなだけで常識もあるし性格もいいし顔もいいし髪の毛もっふもふだしで、本当にマジでいい子なんだよな。凛が懐くのも納得な気がする。

 

 

「それにしてもお前のいた中学どうなってんだ。顔面偏差値おかしいだろ」

「こいつら三人は頭一つ抜けてたよ」

「キャー! センパイだいたーん!」

「違うから」

 

 

 まぁ顔が良いだけでモテてたというわけではないけど。いや、モテてたといえばモテてはいたが、顔の割にはという話だ。

 

 というのも、大体は凛と加蓮に原因がある。

 二人とも基本的に近づいてくる下心のある男子には敵意をむき出しにして威嚇するし、先輩の奈緒に関しては近づいてくる男共をボディガードみたいに二人で蹴散らしてた。

 そんなことをしていれば、そう簡単に男たちも近寄れないわけで。それでも告白する奴は一定数居たけどな。ほんとに凛と昔からの知り合いで良かった。こんな後輩、怖くて近づけねーもん。

 

 

「それにしても、まさか凛と加蓮までうちの高校に来るとはな~」

「奈緒が寂しいかなって思って」

「別に特段行きたい高校もなかったしね」

 

 

 しっかし、こうやって三人並べると本当に圧巻。美女が三人そろってらぁ。類は友を呼ぶってね。

 さっきまで先輩たちに囲まれてたあれ、確実に凛ひとりのせいじゃなくて、加蓮がいたってのがある気がする。というか絶対にそう。

 可愛い女の子一人いるだけであんな大騒ぎになることは普通ないもん。

 

 

「ほーん。それじゃあほんとにお前の知り合いの後輩ちゃん二人がそのまま入ってきたと」

「そうみたいでさぁ」

「他人事かよ」

「だって俺も今知ったもん」

 

 

 ここの高校ってそんなにあの辺の中学の生徒がホイホイ来るような高校じゃないんだけどなぁ。多くもないけど少なくもないって感じ。

 

 俺の代では五人くらい同じ中学の奴がこの高校に来てたけど、知り合いが二人揃ってっていうのは、故意でもない限りはそうそうないよな。まぁ女の子だしそこらへんは合わせたのかもしれない。昔から仲は良かったけど、高校まで一緒とは思わなんだ。

 

 

「俺、今西達也。松井とは去年からの同級生なんだわ。とりあえずよろしくね」

「どうも、よろしくお願いします」

「……よろしくお願いします」

 

 

 俺からしてみれば、この今西とか言う男も相当プレイボーイ気質があると思う。

 346で散々可愛かったり綺麗だったりな女の子と交流してるから扱いに慣れてるだけってかもしれないけど。なんというか女の扱いに慣れてる感がとてもうざい。羨ましいんじゃなくてうざい。

 

 

「ところで、御二方はなぜこんな高校に揃って入学したんだい」

「確かに」

「ここってなんというか普通の学校だし。なんとなくって感じ? 凛も行くって言うから」

 

 

 確かにこの高校はたいそうな名前をしているが、実情は工業科が引っ付いている以外は何の変哲もない普通の学校だ。

 何かに優れているわけでもなく、学力もごく一般。安定性のあるといえばそうなんだけどね。完全に城聖という名前に負けている。何で名前だけこんなにかっけぇんだよ。中二病かよ。

 

 

「でも凛は違うもんねー」

「いや別に……私も色々ちょうどよかっただけだから」

「お前ぶっ殺すぞ」

「なんで俺がキレられてるんだよ」

 

 

 まるで恋するセンパイにくっついてきた青春的なそれだけど、実際絶対違うぞ。こいつ俺が近くにいた方が色々と便利に決まってるからだぞ。

 

 実際、凛の志望校を去年くらいに聞いた時から、ここは選択肢に入ってたからな。他の高校はレベルが高かったり低かったり、もしくは距離的に遠かったりでほんとにここってベストな立地なんだよな。

 なにより通り道にどでかい駅を通るから帰りに遊び放題だし(重要)

 

 

「いや~、イケメン様は流石ですわ! 速水さんの件といい流石ですわ!」

「なんかあったの」

「ううん」

 

 

 こういう時の凛には決して目線を合わせていけない。そうやって僕は17年間生きてきたんだ。

 

 あれだよ、ほら。山脈とかキャンプ場とかなんかでクマと遭遇したときのあれ。違うか、あれは目を合わせながらじりじり後退するんだっけ。

 雑学は身を救うってね。そんなわけで、こういう状況の時に助かる雑学を誰かに教えてもらいたいものだ。

 

 

「なんかあったの」

「いいえ」

「なんでこっち見ないの」

「いいえ」

「りーん。あんまりイジめるとセンパイかわいそうじゃん?」

 

 

 といいつつ加蓮ちゃんは助けてくれないんだよね。僕知ってる。この子はこういうところで全部傍観者になるタイプの子だから。

 

 

「凛ちゃん。帰りにアイスを食べたくないかい?」

「いや、別に」

「奢りで」

「光、早く帰るよ」

 

 

 はい、買収成功。高校生相手には困ったらこれしかないってはっきりわかんだね。自分のお財布が軽くなるというとんでもない諸刃の剣だけど。

 

 結局30の次に来そうな数字をしている有名アイスクリーム屋さんに行って、ちゃんと女子三人にアイスを奢った。

 俺のお財布はとても軽くなった。美味いけど高いんだよなぁ……

読者層気になるので知りたいアンケ

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